access 〜フロッピーディスクに消えた少女〜
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#13 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

名を名乗られてやっと、僕の脳で埃を被っていた古い回線が繋がった。

竹内芽衣子。

中学三年生の頃に学級委員をしていたクラスメイトである。

「覚えてる。大人びたね。何だかイメージが変わったよ」

竹内芽衣子は頬を紅く染めて笑った。

⏰:08/10/19 20:56 📱:L704i 🆔:he7Mo6ZI


#14 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「そうかな?」

そう言って、彼女は恥ずかしそうにしながらマフラーに顔を埋めた。

大人びた。

お世話などではなく、ごく自然にでた本心からの発言だった。

変わったものは何か、と、僕は真剣に考えた。

⏰:08/10/19 20:58 📱:L704i 🆔:he7Mo6ZI


#15 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

たんに髪が伸びたとか、顔が変わったとか、そういうものではない。

彼女を覆う雰囲気が、大人と何ら変わりないそれなのである。

どんな経験が彼女を変えたのだろう。

少なくとも、僕よりは明るくまっとうな道を歩んできたのだなと思った。

そう思った瞬間から、羞恥心と劣等感が凄まじい勢いで胸に込み上げ、今すぐにでも彼女の前から走って逃げたい衝動にかられた。

⏰:08/10/19 20:59 📱:L704i 🆔:he7Mo6ZI


#16 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

早く家に帰って布団をひっかぶりたい。

思い切り悲鳴をあげて突き付けられた現実を忘れたい。

気がついたら、僕はいつの間にか彼女とアドレス交換をしていて、手にしていたCDの支払いを済ませ、帰宅していた。

⏰:08/10/19 21:01 📱:L704i 🆔:he7Mo6ZI


#17 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]



その日の夜。

受験勉強も一段落つき、肩を揉んでいると携帯電話からサン=サーンスの「死の舞踏」が流れてきた。

竹内芽衣子からのメールだった。

それからしばらく、他愛ない内容のメールのやり取りを繰り返していると、彼女は電話をかけてもいいかと訊いてきた。

⏰:08/10/19 21:08 📱:L704i 🆔:he7Mo6ZI


#18 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

断る理由もなかったので、了解のメールを送る。

すると間髪あけずに再び携帯電話からサン=サーンスの「死の舞踏」が流れた。

彼女からの着信。

通話ボタンを押して携帯を耳に押し当てると、彼女の吐息が混じった柔らかい声がきこえてきた。

⏰:08/10/19 21:09 📱:L704i 🆔:he7Mo6ZI


#19 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「……もしもし? 夜遅くにいきなり電話なんてして、迷惑だったかな。今日は久しぶりに彰くんに会って、もっと話したくなっちゃたんだ」

竹内芽衣子は申し訳なさそうに言った。

「そう。全然構わないよ。ちょうど受験勉強も一段落ついたところだったし」

それから彼女といろいろなことを話した。

⏰:08/10/19 21:10 📱:L704i 🆔:he7Mo6ZI


#20 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

中学時代の思い出話や、志望校のこと、最近捨て猫を飼い始めたこと。

時間はあっという間に過ぎて、時計を見ると深夜一時をまわっていた。

「今日は話に付き合ってくれてありがとう。久しぶりに彰くんとたくさん話せて、すごく楽しかったよ」

「僕も。また気軽に電話かけてきてよ」

「うん。ありがとう。おやすみなさい、彰くん」

⏰:08/10/19 21:10 📱:L704i 🆔:he7Mo6ZI


#21 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

この出来事をきっかけに、僕と竹内芽衣子は頻繁に連絡を取り合うようになった。

携帯電話の着信履歴はほとんど彼女の名前で埋まっていた。

いつの間にか僕の読む小説のレパートリーに彼女の薦めた作家がいくつも追加されていた。

僕は無意識のうちに、彼女にかなり影響を受けていた。

⏰:08/10/19 21:11 📱:L704i 🆔:he7Mo6ZI


#22 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「わたしと彰くん、だんだん趣味が似てきたね」

竹内芽衣子にこう言われる度に、僕は部屋の隅で縮こまり頭を抱えて自己嫌悪に陥る。

彼女の無垢な瞳に見つめられる程に、幸せそうに家族の話をされる程に、自分の汚さを浮き彫りにされるようだった。

そんなとき、彼女ならもしかすると、という馬鹿げた期待を抱く自分に、かろうじて理性を保っている自分が教え込むのだ。

⏰:08/10/19 21:12 📱:L704i 🆔:he7Mo6ZI


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