人生の案内板
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#820 [わをん◇◇]
「なんで?」
そこには。病室のベッドに身を埋めて眠る自分の姿があった。口元には呼吸を助けるためなのか、規則正しい音を出す機械が伸びている。呆然とするわたしの前で、母は、せっせと世話をし始めた。
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#821 [わをん◇◇]
花瓶の水を変えている母を眺めていたら、ふと我に返る。即座に病室の前の名札を見に行けば、桜井千恵と書かれていた。間違いない……わたしだ。もう一度目を向けると、ベッドの上の自分は眠るように胸を上下させていた。予想は当たっていた?わたしは死んでなかった?
:23/01/06 18:48 :Android :pRdUKMH2
#822 [わをん◇◇]
夢を見ているのではないか。喜びと同時に疑問も溢れた。母や父が元気になった理由は頷ける。
しかし、自分の葬式は確かにあった。
:23/01/06 18:49 :Android :pRdUKMH2
#823 [わをん◇◇]
ならば。いつ、わたしは生き返ったのだろうか。いやそれより、何故、わたしは肉体に戻れないのだろうか。これは意識不明の昏睡(こんすい)状態というものか。それとも植物状態というものか。それより。
:23/01/06 18:49 :Android :pRdUKMH2
#824 [わをん◇◇]
問題は“からだ”に戻れないこと。何度試しても、映画のように魂が肉体に戻ることはなかった。これじゃあ、生き返ったなんて言えない。肉体は生き返っても、わたしのこころはこうして死んだままだ。
:23/01/06 18:49 :Android :pRdUKMH2
#825 [わをん◇◇]
でも、悲しくはない。ようやく希望が見えた。生きているとわかったその時から、わたしのこころの中心は、あるカンジョウに支配されていた。あの時、奥深くに封印したはずの想いが、いつの間にか溢れ出していた。
:23/01/06 18:49 :Android :pRdUKMH2
#826 [わをん◇◇]
孝。
この数日、孝は悲しんでいただけかも知れないけど、わたしは変わったと思う。孝には悪いけど、わたしはもう止まれない。例え希望が断たれても、突き進むと決めた。まだやり残したことがある。
:23/01/06 18:49 :Android :pRdUKMH2
#827 [わをん◇◇]
孝の気持ちを聞いていない。盗み聞きはよくないと思うが、いまじゃなきゃ、出来ないのも事実だ。わたしはまた走っていた。学校に行ってみたが今日は孝はいなかった。ならばと、家まで押しかけたが、生憎(あいにく)の不在。
:23/01/06 18:49 :Android :pRdUKMH2
#828 [わをん◇◇]
だったら、と、次の場所にすぐさま向かう。脱力感は最高潮に達していた。だって。もしあそこにいなかったら、しばらく動けなくなるに違いない。
:23/01/06 18:50 :Android :pRdUKMH2
#829 [わをん◇◇]
一歩進む度に、孝に近付いているのだろうか。鎖(くさり)が巻き付いたような重い足を踏み出しながら、歩を進める。やがて足は動かなくなり、そして完全に停止した。
「も、動けない」
:23/01/06 18:50 :Android :pRdUKMH2
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