人生の案内板
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#601 [幸]
>>592すみませんホホ
手話の読みとり方
ではなく、
口パクの読みとり方でしたm(_ _)m
:09/02/06 01:05 :W53H :Li7Rh2v.
#602 [幸]
あと2日でセンター試験に迫った。
私はそれまで、一生懸命勉強した。
かけるは初詣の日以来
どこか私には不自然な態度をとっていた。
メールでは普通なのに…。
でも、だからといって
落ち込んでる暇はない。
と、いうより私は
その悲しみを勉強にぶつけていた。
:09/02/06 01:23 :W53H :Li7Rh2v.
#603 [幸]
学校は、もう1月の始業式から
家庭研修で休みだ。
私は週に2、3回は
じじさんの所で勉強をしていた。
かけるの綺麗な音楽を聞くために。
しかし本当はかけるに会うために…。
:09/02/06 01:25 :W53H :Li7Rh2v.
#604 [幸]
今日は家で勉強。
明日じじさんの所に行って
本番を迎えよう!!
そう思い、勉強に励んだ。
翌日。
:09/02/06 01:27 :W53H :Li7Rh2v.
#605 [幸]
『おっ?頑張ってますね〜』
と、じじさん。
『明日なんで。』
辺りを見回すがかけるの姿は
見えなかった。
『あの、かけるは?』
恐る恐る聞いてみた。
:09/02/06 01:29 :W53H :Li7Rh2v.
#606 [幸]
『なんか、大学の教授と
面談だから来れないって。』
『えっ…そうですか…。』
まじ‥‥
かなりショック。
:09/02/06 01:31 :W53H :Li7Rh2v.
#607 [幸]
私はその夜、早めに寝ようと思い、
いつもより早くベッドに行った。
〜♪〜♪
メール着信音。
この着信音はかけるからだ…。
私は急いでメールを見た。
動画つきだった。
:09/02/06 01:52 :W53H :Li7Rh2v.
#608 [幸]
再生……。
かけるが手話で話してる動画だった。
‘ちゃんと勉強しとるか?
本当は今日渡したかったけど
教授に呼ばれて渡せなかった。
明日、早起きしたら渡すから。
じゃあ、明日は頑張れよ!
おやすみ’
:09/02/06 01:56 :W53H :Li7Rh2v.
#609 [幸]
……『ありがとう…』
嬉しい…なんでこんなにも
嬉しいのだろう。
かける、本当にありがとう。
‘動画ありがとう!
まじ頑張る!
だから明日早起きしてほしいな〜’
そう送信して、眠った。
:09/02/06 01:59 :W53H :Li7Rh2v.
#610 [幸]
翌朝、玄関の所に行くと
ス―パ―の袋がぶら下がっていた。
袋の中身はキットカットと
ホッカイロと手紙だった。
感謝しろよ
手紙の内容はそれだけだった。
:09/02/06 02:01 :W53H :Li7Rh2v.
#611 [幸]
2日間の試験を終え、
次の日学校で自己採点をした。
『かな〜!』
『ちえみ!!』
『かな、大丈夫?
かなの場合、センターだめだったら…』
ちえみは聞きずらそうに聞いてきた。
:09/02/06 02:04 :W53H :Li7Rh2v.
#612 [幸]
『大丈夫!!』
私はそう断定した。
だって、父さんの手作り弁当と
兄さんのポッキーと
かけるのキットカットが
あったからだもん!!
先生と面談をし、
センターの点数を大学に
速達した。
:09/02/06 02:07 :W53H :Li7Rh2v.
#613 [幸]
『お疲れ様』
早速、じじさんの所へ行った。
そこに、かけるもいた。
『ありがとうございます!!』
私はそう答えた。
:09/02/06 02:09 :W53H :Li7Rh2v.
#614 [幸]
‘結果はいつ?’
『まだ先だよ』
‘輸送?’
『電話だよ。』
かけるはソワソワしていた。
そのせいでじじさんに怒られていた。
‘なんでお前はそんなに
冷静なんだ?
俺は一般だったけど
そんな冷静じゃなかったぞ’
:09/02/06 02:12 :W53H :Li7Rh2v.
#615 [幸]
かけるはそう聞いた。
『自信あるから。』
私は自信満々に答えた。
そして結果発表の日がきた。
家には誰もいない。
1人で見る。
自信満々とは言え、
やはり緊張はするもんだ。
:09/02/06 02:14 :W53H :Li7Rh2v.
#616 [幸]
私は深呼吸をすると
一気に開けた。
合格
の字が見えた。
:09/02/06 02:15 :W53H :Li7Rh2v.
#617 [幸]
いやったぁぁぁ!!
私は早速、父さんに電話、
兄さんにメールを送った。
そしてじじさんとかけるには
この紙を見せに行った。
:09/02/06 02:16 :W53H :Li7Rh2v.
#618 [幸]
『よかったね!』
『おめでとう』
この言葉が返ってきた。
学校にも報告し、父さんと一緒に
手続きをした。
:09/02/06 02:18 :W53H :Li7Rh2v.
#619 [幸]
ここまで、順調だったのに…。
不幸は突然訪れる。
人は誰だって、人生最後まで
幸せなはずがない。
それはそうだ…。
でも、納得できない!
私たち人間はどうしても
他人との幸せを比べてしまう生き物だからだ。
知能があるだけ、そうしてしまうのだ。
:09/02/06 02:21 :W53H :Li7Rh2v.
#620 [幸]
>>614すみませんホホ
『電話だよ』
ではなく
『そうだよ』
ですm(_ _)m
:09/02/06 09:41 :W53H :Li7Rh2v.
#621 [幸]
2月の中旬だった。
とある、普通のニュースを見ていた。
学校はもう休み。
受験には無事合格したので
朝はゴロゴロしていた。
「昨年の7月。
障害を持っていた弟を
殺害容疑で兄が逮捕されたんですが
精神的ショックを受け、
記憶を失っていた母親が
昨晩、自白したということが
明らかになりました。…」
:09/02/07 00:28 :W53H :jdZX7Qp2
#622 [幸]
えっ……?
私はある程度家事をしてから
警察署に向かった。
警察署の前は報道陣でいっぱいだった。
:09/02/07 00:30 :W53H :jdZX7Qp2
#623 [幸]
私はどうしていいか分からず
その場にずうっと立っていた。
『鮎川さん…?』
私の名が呼ばれたので
振り返ってみた。
そこには、あの時の
雰囲気のいい警察官がいた。
:09/02/07 00:33 :W53H :jdZX7Qp2
#624 [幸]
『あの少年は!?』
私はすぐに聞いてみた。
『あの少年の母親が…
あなたと話したいそうだ。。。
いいかね?』
『なっ…なぜ?』
『それは…話したときに
聞いてみるがいい。』
そう言い残し、私の前から消えた。
:09/02/07 00:36 :W53H :jdZX7Qp2
#625 [幸]
おそらく…あの時のお礼かな?
私はあまり深く考えなかった。
私はあまりにもの、
かけるへの思いに
あの少年のことを助けたいという気持ちを
忘れていたことに気づいた。
:09/02/07 00:38 :W53H :jdZX7Qp2
#626 [幸]
私って、口だけの女だ……。
その日の夜、
かけるからあの少年の話しを切り出した。
メールだと話しが長くなるので
次の日に会うことになった。
:09/02/07 00:40 :W53H :jdZX7Qp2
#627 [幸]
翌日。
会う場所は……
初めて出会った場所だった。
『かける!』
‘やぁ。’
かけるはどう思ったのかな?
そしてこれからも……
:09/02/07 00:43 :W53H :jdZX7Qp2
#628 [幸]
しばらく沈黙が続いた。
『警察の人にね…
今度、少年の母親に会ってほしいって。』
私はいきなり話しを切り出した。
‘そうか…’
かけるは素っ気ない返事をした。
:09/02/07 00:45 :W53H :jdZX7Qp2
#629 [幸]
また沈黙が続いた。
いつもと違う空気が流れた。
‘会うの?’
今度はかけるから切り出した。
『そう頼まれたからね。』
するとかけるは一気に話し出した。
:09/02/07 00:47 :W53H :jdZX7Qp2
#630 [幸]
‘中途半端な優しさ
やらねー方がいい。
もし本当にその少年たちを
救いたいならよく考えてから
行動しろよ。’
『なんで…?』
‘障害を持っていた子どもの
家族だからだ。’
:09/02/07 00:50 :W53H :jdZX7Qp2
#631 [幸]
『そんなの関係ない!!』
私はそう言ったが
かけるは怖い顔で手話ひし始めた。
‘障害を持ってる人や
その周りの人は
人の優しさに惚れてしまうんだよ
そしてやがてはその
優しい人に頼ってしまう…’
『それは別にいいじゃない!!
人はお互いに支えあいながら
生きてくんだから…』
:09/02/07 00:54 :W53H :jdZX7Qp2
#632 [幸]
‘あなたは何もわかっていない!!
支えあうなんて無理だ!!
いづれ健常者は障害者に
嫌気をさしてしまう!!
それが当たり前なんだ。
健常者なんだから…。
だから障害者の気持ちなどわからない!!
あの家族は今まで助けてくれる
人がいなかった…
だから殺害をしたんだ
ところがあなたが出てきた
とても嬉しかったと思う。
でも、だからこそ…’
『言ってる意味がわからない!!』
:09/02/07 00:58 :W53H :jdZX7Qp2
#633 [幸]
かけるは困った顔をしていた。
その顔がさらに私を苦しめる。
‘……あなたは本当に
あの少年を助けたいの?’
『…私はあの少年のおかげで
心理学に興味を持った。
心理学に関わる仕事をしたいと思った。
でも何よりも……
あの少年のようなことを
繰り返しに起こしたくない。』
:09/02/07 01:07 :W53H :jdZX7Qp2
#634 [幸]
かけるは黙って聞いてくれた。
『私は何のために勉強
していたのか分からなかった。
でも、あの少年のように
苦しんでる人がいるなら
その人たちのために
私はなにをできるか?
そのために勉強したい…
だから心理学の有名な
L大学に受験した…。』
:09/02/07 01:10 :W53H :jdZX7Qp2
#635 [幸]
‘夢…あったんだね……。’
かけるの顔がいつの間にか
優しい顔になっていた。
『でも、これってさぁ
どういう職業なの?』
‘カウンセラー…かな?’
:09/02/07 01:12 :W53H :jdZX7Qp2
#636 [幸]
カウンセラー…
‘話ができてよかったよ’
かけるは笑顔で話した。
『なんで?』
‘絶対悩んでるって思ったから。
実は俺、あなたに話したいことがある…。’
かけるの顔が真剣な顔になった。
:09/02/07 01:15 :W53H :jdZX7Qp2
#637 [幸]
『なあに?』
とは聞いたのも、実際は
聞きたくなかった。
なぜか、嫌だったからだ。
‘俺………、
アメリカに行く……。’
:09/02/07 01:16 :W53H :jdZX7Qp2
#638 [幸]
えっ……?
今、 何て言った?
‘じじさんの所で
ピアノ弾いてたら、
偶然そこにいた客が
アメリカで修行しないかって
誘ってきて。
小説の夢は諦めてない
でも俺、ピアノ弾きたいんだ…。
そして……歌いたい……。’
:09/02/07 01:20 :W53H :jdZX7Qp2
#639 [幸]
涙が出てきた。
かけると もう会えないの?
‘初めてあなたの前で
ピアノを弾いたとき
気持ちよかった…
耳を傾けてくれる。
俺の音楽…思いを聞いてくれるって思うと、
ワクワクして…’
なんでそんなに嬉しそうなの?
:09/02/07 01:29 :W53H :jdZX7Qp2
#640 [幸]
かけるにとって私は
何だったの?
‘…どうした?’
私が泣いてることを
ようやく気づいたかける。
何も話したくなかった
かけるは私のことなど
どうでもいいのね。
私はかけるに背中を向いて去った。
:09/02/07 01:32 :W53H :jdZX7Qp2
#641 [我輩は匿名である]
頑張ってください
:09/02/07 15:49 :P703i :FsufpeMA
#642 [幸]
:09/02/08 12:43 :W53H :rl7D203I
#643 [幸]
がしっと、掴まれた私の左手。
‘どうした?’
…どうした?じゃねぇ〜!
その気持ちもあったが
悲しみの方が上回ったみたいだ。
涙がどんどんでてくる。
:09/02/09 00:20 :W53H :jQ/U2XNo
#644 [幸]
気がついたら私はかけるの腕の中。
されるがままの私。
涙はまだ流れていたが
大好きなかけるの匂いに
酔ってしまいそうだった。
なぜこんなにも落ち着くのか?
:09/02/09 00:23 :W53H :jQ/U2XNo
#645 [幸]
そしてかけるは私をゆっくり離し
私の流れた涙を親指で
拭いた。
‘本当は行きたくなかった…
でも、耳が聞こえなくなる前からの夢だったんだ。
俺の音楽をみんなに聞かせることが…’
私は黙ってかけるの手話を見つめた。
:09/02/09 00:27 :W53H :jQ/U2XNo
#646 [幸]
『小説は耳が聞こえなくなってから…?』
‘そうだよ’
……本当に?
かけるは表情が豊か。
なぜか本当のことを言ってないような
気がする。
私の、いや!女の感。
:09/02/09 00:29 :W53H :jQ/U2XNo
#647 [幸]
『…いつアメリカに
行っちゃうの?』
‘2月の最後の日。’
もうすぐじゃん…
なんで私はドラマのような
素敵な恋ができないの?
なんでこんな困難が訪れるの?
:09/02/09 00:38 :W53H :jQ/U2XNo
#648 [幸]
‘14日、暇?’
かけるがいきなり聞いてきた。
『…わかんない。』
‘会えない?
てか、会おう!?’
本当にかけるがアメリカに行ってしまいそうで
悲しかった。
:09/02/09 00:40 :W53H :jQ/U2XNo
#649 [幸]
14日。
結局会うことになった私たち。
最初は2人で散歩をした。
そして写真をたくさん撮った。
この時間と感情は決して
忘れてはいけない。
:09/02/09 00:43 :W53H :jQ/U2XNo
#650 [幸]
ポツンと雨が降り出した。
『うわ〜最悪…。』
‘風邪ひくぞ。一旦
雨宿りしよ’
私たちは近くにあった
神社に行った。
:09/02/09 00:45 :W53H :jQ/U2XNo
#651 [幸]
‘結構雨凄いな…。’
『…うん…』
しかし、この雨は私の
今の本当の気持ちを表してくれている。
止みそうにない、この雨が。
:09/02/09 00:47 :W53H :jQ/U2XNo
#652 [幸]
‘らちあかねぇ!
俺ん家行こう!?
タオルでちゃんと拭いた方がいい’
『大丈夫なの?』
‘風邪ひかれたら困るからな’
私は別にこのなみだなら
濡れてもいい…。
そう思ったが、くしゃみが出たので
かけるの家に行くことになった。
:09/02/09 00:50 :W53H :jQ/U2XNo
#653 [幸]
『お邪魔します…』
私はかけるの部屋を見渡した。
この光景が2週間後には
なくなると思うと胸が
キシキシと痛くなる。
‘風呂先入れ。
着替えは置いとくから’
かけるにいきなり言われ
戸惑う私。
『でも…』
:09/02/09 00:53 :W53H :jQ/U2XNo
#654 [幸]
‘下着は濡れてないだろ?’
『うん…』
弱々しく答えた。
かけるの聞き方がいつもより
あまりにもキツかったから
少し怖かった。
私は黙ってお風呂に入った。
:09/02/09 00:55 :W53H :jQ/U2XNo
#655 [幸]
ザ―っと聞こえる雨。
どうやら私はまだ泣いているようだ。
しかも大量に、声をあげて。
風呂から出ると、着替えがあった。
着てはみたが、ブカブカ。
鏡に映った私を見て
思わず笑ってしまった。
雨はさっきより弱くなっていた。
:09/02/09 00:58 :W53H :jQ/U2XNo
#656 [幸]
‘何笑ってんだ?’
かけるが鏡の中に現れた。
『いつからいたの?』
私は驚きながら後ろを向き、聞いた。
‘今さっきだよ’
『だって私、着替えてた!!』
:09/02/09 01:00 :W53H :jQ/U2XNo
#657 [幸]
‘俺が覗いたとでも言いたいの?’
『別にそんなんじゃ…』
するとかけるは近寄ってきた。
無性に恥ずかしくなって
思わず下を向いてしまった。
‘次は俺が風呂入るから
どいて。’
:09/02/09 01:03 :W53H :jQ/U2XNo
#658 [幸]
そう話すと洋服を脱ぎだした。
その時ぐぅ〜っと、
かけるのお腹が泣き出した。
かけるは恥ずかしそうに
私を見た。
私は思わず笑ってしまった。
するとかけるもつられて笑ってしまった。
:09/02/09 01:05 :W53H :jQ/U2XNo
#659 [幸]
『しょ―がないから
なんか作るよ。』
‘作れるの?’
『一応ね。』
かけるは風呂に、
私は台所へ向かった。
:09/02/09 01:06 :W53H :jQ/U2XNo
#660 [幸]
冷蔵庫の中を見た。
焼きそばがあったので
焼きそばを作った。
テ―ブルに運ぶとき
ズボンのすそが長かったので
ぐいっと折り曲げた。
トントンと肩を叩かれた。
‘うまそうじゃん’
かけるは笑いながら話した。
:09/02/09 01:10 :W53H :jQ/U2XNo
#661 [幸]
『じゃあ、食べようか。』
いただきます
と言い食べ始めた。
食べ終わった時
かけるがあまりにも
かわいい顔で
‘うまかった’
って話すから思わず涙が出てしまった。
:09/02/09 01:12 :W53H :jQ/U2XNo
#662 [幸]
かけるは呆れながらも
私の隣に来て、涙を拭いてくれた。
しばらく見つめ合った。
そして優しくキスをした。
初めてのキスは焼きそばの味。
顔を離すとかけるも泣いていた。
:09/02/09 01:15 :W53H :jQ/U2XNo
#663 [幸]
‘かな……’
初めて…私の名前を手話で
呼んでくれた。
しかし、私の名前を呼んだかけるの顔を見て
なんだか切ない気分になったので
あまり嬉しくなかった。
かけるは手話を続けた。
:09/02/09 01:18 :W53H :jQ/U2XNo
#664 [幸]
‘悪い…勝手にキスしちゃって…’
かけるはそう話すと
2人分の食器を台所に運んだ。
かける……
その時、ちえみが話した事を思い出した。
「障害者ってなかなか自分に
素直になれないと思う」
:09/02/09 01:21 :W53H :jQ/U2XNo
#665 [幸]
かけるは私にキスをしてくれた。
じゃあ私は……。
私はかけるの方へ行き
後ろから抱きついた。
するとかけるはばっと
私の方を向いてもう一度
抱きしめた。
:09/02/09 01:23 :W53H :jQ/U2XNo
#666 [幸]
優しい匂い。
大きな手。
茶髪の綺麗な髪。
優しい目。
広い背中。
全てが私を狂わしてく…。
私は一度、かけるを離してから
手話で話した。
『好き』
と。
:09/02/09 01:26 :W53H :jQ/U2XNo
#667 [幸]
かけるはしばらく黙っていた。
私と目も合わせなかった。
私は心配になって
『かける…?』
と聞いてみた。
かけるはため息をつき
話した。
:09/02/09 01:28 :W53H :jQ/U2XNo
#668 [幸]
‘俺みたいな男を?
他にいっぱい男がいるだろ!?
かなも見る目なさすぎだよ!!
俺なんて…
例えば車が後ろからきた時
気づかなくて事故る
しょぼい奴だし。
後は…’
また見つめ合った。
:09/02/09 01:32 :W53H :jQ/U2XNo
#669 [幸]
『かけるといると
まるで、自分が酔ってるみたいに
癒されるの……。
全てが…好きなの。
アメリカに行くって言われて
会えなくなって、
……辛いよ。
毎回会うだけですごく嬉しがる
自分がいる……
それなのに……。』
今の感情を全て言葉に表した。
:09/02/09 01:36 :W53H :jQ/U2XNo
#670 [幸]
するとかけるはまた私を抱きしめた。
抱きしめられると
かけるの匂いがもっと
嗅ぐことができる。
もっと一緒にいたいって
いう気持ちになる…。
‘もう…我慢できない…’
かけるは一旦、私を離し、手話で話した。
:09/02/09 01:39 :W53H :jQ/U2XNo
#671 [幸]
『えっ……?』
かけるは私をお姫様だっこをし、
ベッドまで運んだ。
すると、かけるは私に
近寄ってきた。
『こっ、怖い…』
思わず言ってしまった。
‘……ごめん…頭冷やしてくる’
:09/02/09 01:42 :W53H :jQ/U2XNo
#672 [幸]
…かける……
なにやってんだよ私!!
もう会えなくなるのに…
でもやっぱり怖い!!
でもこのまま帰りたくない!!
かける…
:09/02/09 01:44 :W53H :jQ/U2XNo
#673 [幸]
ねぇ、もしかけるが
耳聞こえてたら普通に
好きって言えたのかな?
誰だって恋はするのに
自分の気持ちを伝えられないのは
悲しいね……。
むくっと起きた。
時計を見ると4時になっていた。
:09/02/09 01:48 :W53H :jQ/U2XNo
#674 [幸]
はっ……?
寝てた?
‘やっと起きたかよ’
かけるは引っ越しの準備をしてたのか
ダンボールがいくつかあった。
『ごめんなさい…』
:09/02/09 01:50 :W53H :jQ/U2XNo
#675 [幸]
‘本当だよ…’
私は思い切って大胆な
行動をとった。
自分からかけるにキスを
した。
かけるは最初、戸惑っていたが
だんだんと深くなってきた。
‘いいの?’
かけるに聞かれ
こくっと頷いた。
:09/02/09 01:53 :W53H :jQ/U2XNo
#676 [幸]
かける……
かける……
あなたに出会えて良かった。
こんなに嬉しいことを
味わうことができた。
他の男じゃ、かけるの代わりにならないんだよ。
かけるじゃないと私が
嫌なんだよ…。
:09/02/09 01:56 :W53H :jQ/U2XNo
#677 [幸]
‘平気か…?’
かけるは私を腕まくらをし
右手で私の髪を撫でながら聞いた。
『……うん』
幸せ……。
:09/02/11 00:10 :W53H :nFnq5eKM
#678 [幸]
次の日の夕方。
じじさんの所へ行き
チョコを渡した。
『いや〜初めてもらった』
じじさんはとても嬉しそうだった。
初めてだったんだ…
じじさんは確かにおじさんみたいな顔立ちだが
目が女みたいにくりっとしている。
だからチョコぐらい一回は
もらってると思ってた。
:09/02/11 00:16 :W53H :nFnq5eKM
#679 [幸]
そこへかけるが来た。
『昨日、渡すの忘れてた。』
と言い、かけるに渡した。
‘大事なこと忘れるな’
『うるさいな〜』
こんな日が続いたらいいのに。
:09/02/11 00:18 :W53H :nFnq5eKM
#680 [幸]
いつも通りかけるに家まで送ってもらった。
そして別れる時は…
おやすみのキス。
受験が終わっても、
勉強は続けている。
勉強しなきゃ一般を受験
する人たちとの差が開くからだ。
私は勉強をし、深い眠りに落ちた。
:09/02/11 00:21 :W53H :nFnq5eKM
#681 [幸]
刻々と、かけると別れる日が近づいてくる。
でも私たちは、1日1日を
大切に過ごしてきた。
21日。
一本の電話がかかってきた。
:09/02/11 00:23 :W53H :nFnq5eKM
#682 [幸]
『もしもし!?』
『鮎川かなさんですか?』
あの警察官からだった。
『あなたにお会いしたいって
前に話してたことを
覚えてる?』
『はい……』
『28日でお願いします
って言われたんだけど…。』
えっ………? 28日………。
:09/02/11 00:26 :W53H :nFnq5eKM
#683 [幸]
『その日じゃないと
ダメなんですか?』
『ええ、どうしてもって…。』
神様………
あなたはどうしてこんなにも
意地悪なのか?
:09/02/11 00:28 :W53H :nFnq5eKM
#684 [幸]
『その日は無理です!!
日にちを変えることは
できないんですか!?』
私はそう強く聞いたが
答えはNOだった。
『…考えさせて下さい…』
私はそう言い、電話を切った。
:09/02/11 00:30 :W53H :nFnq5eKM
#685 [幸]
私はじじさんの所へ
走って行った。
バンっと乱暴に開け
私は涙目でじじさんの腕を掴んだ。
『かける、今日の午後
暇だから大学に行ってみな!?』
じじさんにそう言われたので
L大に行った。
:09/02/11 00:33 :W53H :nFnq5eKM
#686 [幸]
私はメールで
“そっちに行くから待ってて”
と送信し、門に行った。
門にはかけるがボ〜っと
立っていた。
‘勝手に来てどうした!?’
かけるは私に気づき、
そう聞いた。
:09/02/11 00:36 :W53H :nFnq5eKM
#687 [幸]
『…ねぇ、どうしよ……』
私は警察官からの電話の事を話した。
するとかけるは真剣な顔で
手話をし始めた。
‘俺の見送りなどいい!!
そっちの方へ行け…’
『……やだ』
:09/02/11 00:38 :W53H :nFnq5eKM
#688 [幸]
‘かな!!’
『やだよ!!ちゃんと
かけるを見送りたい…』
‘あの少年を救いたいんじゃないのか!?
救いたいんだろ?
中途半端な覚悟じゃないんだろ?’
『……でも…でも』
涙が私の頬に流れてきた。
:09/02/11 00:41 :W53H :nFnq5eKM
#689 [幸]
『かけるが……好きなの!!』
私は大声で言った。
周りのL大の生徒たちに
聞かれたのか、こっちを
何人か見ていた。
‘かな…
男を追いかける女になるな!!
かなは、夢に向かって
走れ!!’
:09/02/11 00:44 :W53H :nFnq5eKM
#690 [幸]
『かける……』
泣いてるせいで
うまく話せなかった。
‘俺も夢に向かって
アメリカへ行く…。
かなもそうしろ…。
夢に向かって生きろ。
そこで恋愛をするんだ!!
…俺より素敵な人と。’
:09/02/11 00:48 :W53H :nFnq5eKM
#691 [幸]
『かける!?』
‘やっぱ無理だ…。
俺たちは障害者と健常者。
つりあえなってない…。
俺……が……
かなに支えられると
惨めな気持ちになるんだ。
どうしても。’
かけるの顔も悲しい顔をしていた。
:09/02/11 00:53 :W53H :nFnq5eKM
#692 [幸]
‘かなは、ただ耳が聞こえないだけと
思ってるだろ!?
でも、こっちは大きな問題なんだ。
障害者はこの問題を
一生背負って生きてく。
この気持ちと覚悟、
健常者じゃ決して分からない。
障害者と恋愛をするって
こういうことなんだよ。
普通に恋愛すると…
普通になりたいって思ってきて
惨めになってくるんだ’
:09/02/11 00:59 :W53H :nFnq5eKM
#693 [幸]
『……なんで!?』
時間が止まったように
感じた。
‘健常者は偏見な目で
障害者…俺を見てるから。
例えば、駅の切符売り場で点字を
読んでる人を偏見な目で
見下してる。
知的障害者がいれば
その人をからかう子供や大人。
俺は耳が聞こえなくなって
気づいたんだ……。’
:09/02/11 01:04 :W53H :nFnq5eKM
#694 [幸]
『…私を…信じてなかったの?』
‘かなみたいな人、
めったにいないよ…。
かなはカウンセラーの
仕事をしてみたいんだろ?
このチャンスを生かして
健常者に障害者のことを伝えてほしい’
:09/02/11 01:08 :W53H :nFnq5eKM
#695 [幸]
『…え?』
‘伝えてほしい…
少しでもいいから、
障害者のことを理解してほしい。’
かけるは空を見上げた。
‘助けてあげてとは言わないけど
偏見はしない…
そんな都合のいい世界には
なれないと思うけど
理解してほしいんだ。
俺たちはただ、それを
願ってる。’
:09/02/11 01:17 :W53H :nFnq5eKM
#696 [幸]
‘かなには、そういう人
になってほしい。
いや、別にならなくてもいいけど…
とにかく、俺のために
自分の夢が遠ざかる事は
よしてくれ’
私は手で自分の顔を覆った。
そして14日の雨のように泣いた。
:09/02/11 01:20 :W53H :nFnq5eKM
#697 [幸]
かけるは私のその姿を
黙って見ていた。
何もしてこないかけるを見て
私はもう無理なんだと思い
かけるの横を通って
ふらふらと歩いた。
:09/02/14 01:11 :W53H :v0nXhjkM
#698 [幸]
私……
もう一度聞いてみるよ…
そして、なんとかかけるの見送りに
行くよ………。
そう何度も思った。
しかし、電話で聞いてみたが
母親は精神的な病気
なので無理だった。
:09/02/14 01:14 :W53H :v0nXhjkM
#699 [幸]
私は自分の部屋に着き
ベッドに寝転んだ。
2月最後の日。
28日が刻一刻と迫ってくる。
:09/02/14 01:18 :W53H :v0nXhjkM
#700 [幸]
‘27日。会いたい’
私は思い切ってかけるに
メールをした。
…これでかけると会うのは
これで最後だ。
そう自分に言い聞かせた。
:09/02/14 01:20 :W53H :v0nXhjkM
#701 [幸]
27日。
私がかけるの家に行くことになった。
これで最後……。
これで最後。。。
私はなるべく笑顔で
かけると話した。
かけるは静かに笑っていた。
:09/02/14 01:22 :W53H :v0nXhjkM
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