人生の案内板
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#803 [わをん◇◇]
>>950-999

⏰:23/01/06 18:44 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#804 [わをん◇◇]
変わっていない。九年前と。あの頃は子供だった、なんて、笑ってしまう……わたしは、いまも子供だ。変わっていない。九年前と。九年前に、気持ちを置いてきてしまったのかもしれない。だけど、気付いてしまった。

⏰:23/01/06 18:45 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#805 [わをん◇◇]
九年もの間、全く気付かなかったことに、わたしは、気付いてしまった。じわりじわりと熱が蘇ってくる。


 わたしは、

 孝が、

⏰:23/01/06 18:45 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#806 [わをん◇◇]
満天の星空の下、わたしはこころの奥底に秘めた気持ちを隠した。暗い暗いこころの奥に。二度と上がってこないように。気付いてしまった以上は、仕方がない。わたしは死んだのだ。わたしにはもう、道は残されていない。希望はないのだ。失望することがわかっている以上、封印してしまおう。

⏰:23/01/06 18:45 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#807 [わをん◇◇]
それが良い……そうしよう。その日、わたしはベンチで夜を明かした。



 月曜日の朝になった。

 退屈とは拷問に近い。

⏰:23/01/06 18:46 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#808 [わをん◇◇]
孝がいるから学校に行く気もしないし、家に帰る気もしない。わたしはいつか消えるのだろうか。その時は、昨日の気持ちも消えていくのだろう。その先には、天国か地獄があるのかな。その時は、昨日の気持ちも一緒に持って行くのだろう。

⏰:23/01/06 18:46 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#809 [わをん◇◇]
そこで、初めて自分が女々しいことに気付いた。こうした考えを巡らすのは、隠したはずの気持ちが漏れだしている証拠ではないか。振り出しに戻った気がして。こころが空っぽになった気もした。膝をぱんっ、と叩いて立ち上がる。

⏰:23/01/06 18:46 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#810 [わをん◇◇]
「わたし、これからどうしようかな」

気が重いが、とりあえず家に帰ろうか。ふらふらと家の方角に歩き出した。家の前に着いた。玄関先には父と母の姿があった。

「じゃあ、行ってくる」

⏰:23/01/06 18:46 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#811 [わをん◇◇]
スーツ姿の父が、鞄を下げて手を上げる。

「行ってらっしゃい」
「今日は早めに帰るよ」

父がそう言うと母は笑った。

「早く帰りたい、でしょ?」
「まぁ、そうだな。じゃ、そろそろ行ってくる」

⏰:23/01/06 18:46 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#812 [わをん◇◇]
「はいはい。私もこのまま出ますよ」
「良枝。これから、頑張ろうな」

微笑む父に母はまた笑った。その様子に何故か違和感を覚えたが、父に「いってらっしゃい。頑張ってね」と、届かない声を掛けると玄関に向かう。リビングに上がると違和感が一気に増した。

⏰:23/01/06 18:47 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


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