人生の案内板
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#804 [わをん◇◇]
変わっていない。九年前と。あの頃は子供だった、なんて、笑ってしまう……わたしは、いまも子供だ。変わっていない。九年前と。九年前に、気持ちを置いてきてしまったのかもしれない。だけど、気付いてしまった。
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#805 [わをん◇◇]
九年もの間、全く気付かなかったことに、わたしは、気付いてしまった。じわりじわりと熱が蘇ってくる。
わたしは、
孝が、
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#806 [わをん◇◇]
満天の星空の下、わたしはこころの奥底に秘めた気持ちを隠した。暗い暗いこころの奥に。二度と上がってこないように。気付いてしまった以上は、仕方がない。わたしは死んだのだ。わたしにはもう、道は残されていない。希望はないのだ。失望することがわかっている以上、封印してしまおう。
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#807 [わをん◇◇]
それが良い……そうしよう。その日、わたしはベンチで夜を明かした。
月曜日の朝になった。
退屈とは拷問に近い。
:23/01/06 18:46 :Android :pRdUKMH2
#808 [わをん◇◇]
孝がいるから学校に行く気もしないし、家に帰る気もしない。わたしはいつか消えるのだろうか。その時は、昨日の気持ちも消えていくのだろう。その先には、天国か地獄があるのかな。その時は、昨日の気持ちも一緒に持って行くのだろう。
:23/01/06 18:46 :Android :pRdUKMH2
#809 [わをん◇◇]
そこで、初めて自分が女々しいことに気付いた。こうした考えを巡らすのは、隠したはずの気持ちが漏れだしている証拠ではないか。振り出しに戻った気がして。こころが空っぽになった気もした。膝をぱんっ、と叩いて立ち上がる。
:23/01/06 18:46 :Android :pRdUKMH2
#810 [わをん◇◇]
「わたし、これからどうしようかな」
気が重いが、とりあえず家に帰ろうか。ふらふらと家の方角に歩き出した。家の前に着いた。玄関先には父と母の姿があった。
「じゃあ、行ってくる」
:23/01/06 18:46 :Android :pRdUKMH2
#811 [わをん◇◇]
スーツ姿の父が、鞄を下げて手を上げる。
「行ってらっしゃい」
「今日は早めに帰るよ」
父がそう言うと母は笑った。
「早く帰りたい、でしょ?」
「まぁ、そうだな。じゃ、そろそろ行ってくる」
:23/01/06 18:46 :Android :pRdUKMH2
#812 [わをん◇◇]
「はいはい。私もこのまま出ますよ」
「良枝。これから、頑張ろうな」
微笑む父に母はまた笑った。その様子に何故か違和感を覚えたが、父に「いってらっしゃい。頑張ってね」と、届かない声を掛けると玄関に向かう。リビングに上がると違和感が一気に増した。
:23/01/06 18:47 :Android :pRdUKMH2
#813 [わをん◇◇]
あれ。違う。何かが違う。仏壇にわたしの写真がない?母の笑顔があたまにちらつく。父の言葉があたまを過ぎる。
「頑張ろうな」
頑張ろうな?
:23/01/06 18:47 :Android :pRdUKMH2
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