人生の案内板
最新 最初 🆕
#810 [わをん◇◇]
「わたし、これからどうしようかな」

気が重いが、とりあえず家に帰ろうか。ふらふらと家の方角に歩き出した。家の前に着いた。玄関先には父と母の姿があった。

「じゃあ、行ってくる」

⏰:23/01/06 18:46 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#811 [わをん◇◇]
スーツ姿の父が、鞄を下げて手を上げる。

「行ってらっしゃい」
「今日は早めに帰るよ」

父がそう言うと母は笑った。

「早く帰りたい、でしょ?」
「まぁ、そうだな。じゃ、そろそろ行ってくる」

⏰:23/01/06 18:46 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#812 [わをん◇◇]
「はいはい。私もこのまま出ますよ」
「良枝。これから、頑張ろうな」

微笑む父に母はまた笑った。その様子に何故か違和感を覚えたが、父に「いってらっしゃい。頑張ってね」と、届かない声を掛けると玄関に向かう。リビングに上がると違和感が一気に増した。

⏰:23/01/06 18:47 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#813 [わをん◇◇]
あれ。違う。何かが違う。仏壇にわたしの写真がない?母の笑顔があたまにちらつく。父の言葉があたまを過ぎる。


「頑張ろうな」


頑張ろうな?

⏰:23/01/06 18:47 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#814 [わをん◇◇]
昨日から何かが変だ。前向きだが、何かが違う。わたしは母が家に入って来ないことに気付いた。母の声が再生される。


「私もこのまま出ます」

 出る?

⏰:23/01/06 18:47 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#815 [わをん◇◇]
何処へ?何故、一昨日帰ってこなかった?何故、一昨日普段着だった?

 何かに弾かれたように家を出る。キョロキョロと辺りを見渡せば、彼方に母の後ろ姿が見えた。わたしは走って後を追う。おかしい。人間のあたまで考えるのも変だが、どうもおかしい。わたしは死んだ。それならば。消滅するのはいつだ?

⏰:23/01/06 18:47 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#816 [わをん◇◇]
三途の川はどこ?そこにはいつ行くの?それに、まだ見ていない。わたしという死者が存在しているのに、わたし以外の死者の姿を。


 わたしは何だ?

⏰:23/01/06 18:47 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#817 [わをん◇◇]
ひとつの希望があたまに浮かんだ。希望を断たれた時に傷付くのは嫌だが、往生際が悪いのはわたしの性格だ。だが、それに賭けてみたかった。わたしは死んでしまった。だけど、夢くらいは見ても罰は当たらないだろう。希望くらいは持っても、神様は許してくれるだろう。

⏰:23/01/06 18:48 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#818 [わをん◇◇]
母の隣を歩き、やがてある建物に着いた。ここは、


「病院?」

 白に統一された建物を見て、気持ちは高鳴った。落ち着け、わたし。まだ早い。答えは母について行けばわかるだろう。

⏰:23/01/06 18:48 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#819 [わをん◇◇]
施設に入ると、内部を一瞥(いちべつ)してから母は受付を済ました。エレベーターで三階に上がると、廊下を通り抜け、ある病室の前で立ち止まる。母がドアを開ければ、中は個室になっていた。室内を見て、目を丸くした。

⏰:23/01/06 18:48 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194