人生の案内板

#890 [わをん◇◇]

インカレにも入ってないし、バイト先も年近い人はいないらしいし‥ナンパされるような派手さもない。自然が彼女を縛り付けてるようだ。

「４年かー‥すげぇな。
沙耶乃ちゃん、いいお嫁さんになりそうだな。料理もできるし、しっかりしてるし、一途そうだし」

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#891 [わをん◇◇]

沈んだレモンをぼんやり見つめて無心で潰す。うっすらと濁り出す。

「そうかなー。嫁とか‥気が早くない？」

早くも、哲は３杯目。なんか今日ペース早いな‥大丈夫か？

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#892 [わをん◇◇]

「いやいやいや。もうここまで来たらさ、今後自分にそこまで尽くしてくれる人は現れないと思うよ？いい女なんて‥そうはいないし」

ふと、哲のグラスを持つ左手に目がいく。何だか以前より、さっぱりしたように見える。全体的に細いから関節の出っ張りが目立つ。

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#893 [わをん◇◇]

女の子の好きそうな手。

「あれ？‥指輪は？」

薬指についていたシルバーの指輪。ひとつ上の彼女とのペアリングだと聞いた。

「あぁ‥」

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#894 [わをん◇◇]

そう言うと、哲はどこか寂しげに笑って頭を掻いた。そして"フラれた"と、さらっと口にした。やってしまった、と、はっとしても……最早手遅れ。なんて言葉をかけるべきか。イケメンが振られる世の中。こんな俺に彼女がいていいのか？

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#895 [わをん◇◇]

「あぁ‥そっか。まぁ、哲はイケメンだしモテるし‥もっと‥」

恐る恐る顔をのぞくと、目が虚ろ‥違う。酒が回ってるのか。哲は眠くなるタイプなんだー‥ありがたい

「哲ー‥？」