双子の秘密
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#101 [ゆーちん]
〔斗美〕
バカな私はバカなりのバカに合ったバカな高校に入学した。
斗羽はもちろん頭のいい高校。
別に羨ましくもない。
最近じゃ、比べられても…開き直っていた。
だけどやっぱりどこか意地があって、斗羽が私に少しでも近付こうとすれば私は離れていた。
:08/12/08 20:04 :SH901iC :xLeVnYmI
#102 [ゆーちん]
「斗美どこ行くの?」
「サボり。数学嫌い。」
学校にも慣れた5月のある日。
すっかりサボり癖のついた私は教室を抜け出した。
屋上への階段をコツコツと昇る。
扉を開けると太陽が出迎えてくれた。
…気持ちいい。
ひなたぼっこに最適な日。
こんな日に教室にいるなんて勿体ないよって勉強オタクに言ってやりたい。
:08/12/08 20:05 :SH901iC :xLeVnYmI
#103 [ゆーちん]
なんとなく迷路のようになっているこの屋上は、たまにサボりに来るので、最初は迷いまくったものの今じゃナビゲーションできるくらい詳しくなった。
たまにカップルがイチャついてたりもするから、気付かれないように逃げるルートだって知っている。
:08/12/08 20:05 :SH901iC :xLeVnYmI
#104 [ゆーちん]
私はお気に入りのひなたぼっこスポットに足を運んだ。
ラッキー。
もしかして、今日は屋上貸し切りかも?
イチャつくカップルもいなければ、煙草を吸う不良もいない。
のんびり昼寝が出来る。
:08/12/08 20:06 :SH901iC :xLeVnYmI
#105 [ゆーちん]
見事に貸し切りだった屋上で私は昼寝をした。
昼寝って言ってもまだ3時間目だけどね。
30分くらい寝ただろうか。
急に寝苦しくなった。
夢から意識が戻って来る。
…ん?
隣に人の存在を感じる。
:08/12/08 20:09 :SH901iC :xLeVnYmI
#106 [ゆーちん]
ゆっくり目を開けると、面倒臭い人物が座っていた。
「…何か用ですか。」
「あ、起きた?」
私を見下ろしながら笑ってるのは由良(ユラ)先生。
「昼寝の邪魔ですー。」
「こんな短いスカートで寝てると風さんにパンチラさせられんぞ。」
「セクハラー。」
:08/12/08 20:09 :SH901iC :xLeVnYmI
#107 [ゆーちん]
どうして隣に人がいると寝苦しくなるんだろう。
普通は人肌に安心して眠くなったりするんだろうけど、私は違う。
彼氏であろうが援交の客であろうが隣に誰かいると、グッスリ眠れない。
:08/12/08 20:11 :SH901iC :xLeVnYmI
#108 [ゆーちん]
体を起こし、先生に聞いた。
「おさぼりですか?」
「うん。チクったら屋上から落とすからなー。」
「シャレになんないよ。」
私が笑うと先生も笑った。
:08/12/08 20:12 :SH901iC :xLeVnYmI
#109 [ゆーちん]
由良先生に授業は教わっていないけど、校内の誰もが由良先生を知ってると思う。
教員の中で1番若くて、顔もまぁまぁ?
クラスの女子がギャーギャー騒ぐから、嫌でも覚える。
:08/12/08 20:44 :SH901iC :xLeVnYmI
#110 [ゆーちん]
「先生、知ってた?」
「知らない。」
「まだ言ってないんだけど。」
「僕、超能力でお前の言う事、先にわかるんですよ。」
「あっそ。」
「…ごめん、うそ。ふざけました。何?」
わたあめみたいな優しい風が私と先生の間を吹き抜けた。
:08/12/08 20:45 :SH901iC :xLeVnYmI
#111 [ゆーちん]
「校内禁煙なんだよー。」
「へぇー知らなかったー。」
明らかに知ってるでしょって感じの言い草。
知らないはずない。
教師なんだからさ。
こうやってふざけながら話しをする人って気楽でいいかも。
:08/12/08 20:46 :SH901iC :xLeVnYmI
#112 [ゆーちん]
「煙草吸ってサボってた、って校長にチクられたくなかったら100万円よこせ!」
「…お前の孫まで呪うからな。」
「アハハッ。」
先生の口元がキュッと上がり、笑いながら煙草のけむりを空へと吐き出した。
:08/12/08 20:46 :SH901iC :xLeVnYmI
#113 [ゆーちん]
「斗美は?」
「へ?」
「煙草、吸わないの?」
「吸わない。肌に悪いし。」
「ふーん。真面目だな。吸ってそうなイメージなのに。」
「よく言われる。」
携帯灰皿に煙草の吸い殻を入れ、煙草とライターと灰皿をポケットに直している先生。
:08/12/08 20:48 :SH901iC :xLeVnYmI
#114 [ゆーちん]
私は聞いてみた。
「私、先生に授業教わってない。」
「うん、そうねー。」
「何で私の名前知ってんの?」
「教師だもん。」
「ふーん。私のクラス全員の名前わかるの?」
「わかんねぇよ?斗美だけしか知らない。」
「だから何で私だけの名前知ってんの?」
:08/12/08 20:48 :SH901iC :xLeVnYmI
#115 [ゆーちん]
呆れ笑い混じりの質問に先生は笑顔で答えた。
「男だもん。」
「…意味、わかんない。」
「んー、わかんない?斗美の名前だけ、ちゃんと知ってるんだよ、俺。」
「どうして?」
「言ってんじゃん。俺だって男だもん。」
見つめ合いながら無言の会話をした。
:08/12/08 20:49 :SH901iC :xLeVnYmI
#116 [ゆーちん]
自惚れても、いいのかな。
いつもなら私に好意がある男が現れても動揺なんてしないけど…先生のような20代の人と付き合った事がない私は、戸惑うばかりだった。
:08/12/08 20:49 :SH901iC :xLeVnYmI
#117 [ゆーちん]
「え…あの…」
「ブッ。テンパりすぎ。」
「だって意味が…」
「バカだから意味もわかんないのか〜。残念だな。」
先生はニコッと笑い、私の肩に手を乗せ、グッと立ち上がった。
「バカだけどバカじゃないし。」
「そういう発言がバカっぽいんだよ。」
「…うるさいな、もう。」
:08/12/08 20:50 :SH901iC :xLeVnYmI
#118 [ゆーちん]
怒ったフリをすると先生は声を出して笑った。
「ハハッ。んじゃ俺は戻るねー。」
「さっさとどっか行っちゃえ。」
「可愛くねーの。バイバイ。」
「…バイバイ。」
:08/12/08 20:51 :SH901iC :xLeVnYmI
#119 [ゆーちん]
煙草臭い中に甘い香水の匂いがした。
ほんの少しの甘い匂いを残し、先生は屋上から降りて行く。
再び一人ぼっちになった屋上で、運動場を見下ろしながら考えた。
さっきの先生が言った意味、やっぱそういう意味なのかな。
自意識過剰になってもいいのかな。
先生、私に好意持ってくれてるのかな。
だとしたら、どうすればいい?
付き合うの?
:08/12/08 20:52 :SH901iC :xLeVnYmI
#120 [ゆーちん]
いつもの私なら告白されれば大体OK。
来る者拒まず。
誰にでも足開いててさ。
でもね、最近はちょっと違うんだ。
上辺だけの恋人とかSEXとか…面倒なんだよね。
もし先生に告白されても、今の私なら断ると思う。
って、自惚れすぎか。
:08/12/08 20:54 :SH901iC :xLeVnYmI
#121 [ゆーちん]
ファンの子に屋上から突き落とされかねないね。
変な妄想をストップさせ、私も屋上を降りた。
ちょうどチャイムが校内に鳴り響いた時だった。
:08/12/08 20:55 :SH901iC :xLeVnYmI
#122 [ゆーちん]
その2日後。
また屋上で、私の隣で美味しそうに煙草を吸う由良先生の姿があった。
「先生さぁ。」
「ん?」
「いつから煙草吸ってんの?」
「斗美ぐらいの時から。」
「ふーん。」
:08/12/08 20:55 :SH901iC :xLeVnYmI
#123 [ゆーちん]
最初は、先生が隣にいるから昼寝できないじゃんって思ったけど、話をしてるうちに睡魔なんか飛んでっちゃった。
他愛もない話をしながら空を見上げる二人に、今日も優しい風が吹く。
:08/12/08 20:56 :SH901iC :xLeVnYmI
#124 [ゆーちん]
「何で教師になったの?」
「さぁ?自分でもわかんなーい。」
「アハハ。変なの。」
「昔の俺はさ、両親や担任や警察に迷惑かけまくりな少年だったの。」
「不良?」
「俺は不良だと思ってないんだけど、周りはそう呼ぶ。」
:08/12/08 20:57 :SH901iC :xLeVnYmI
#125 [ゆーちん]
「アハハ。自覚なかったんだ。バカじゃん。」
「斗美よりバカはいないって。」
「はぁ?」
私の顔を見てクスッと笑ってから先生は言った。
:08/12/08 20:58 :SH901iC :xLeVnYmI
#126 [ゆーちん]
「更正しなきゃなーと思って、頑張って勉強とかしたの。そん時、担任に助けられたから俺も教師になるかぁと思って…今に至る。でも教師なんか俺には向いてなかったのかも。性に合わなくて毎日息が詰まるよ。」
誰にでも、悩みはあるんだと思った。
当たり前の事だけど、誰しもが悩み事を抱えてるんだと思い知った。
:08/12/08 20:59 :SH901iC :xLeVnYmI
#127 [ゆーちん]
「で、ここで息抜きですか。」
「ここは俺の場所だったのに、誰かさんが昼寝場所に使い出すから迷惑極まりないないね。」
「エヘッ、ごめん。」
:08/12/08 20:59 :SH901iC :xLeVnYmI
#128 [ゆーちん]
「お前が初めてだわ。入学して1ヵ月なのに堂々と屋上でサボって昼寝してるやつ。」
「先生も昼寝すれば?すっごい気持ち良いんだよー。」
「いいよ。起きれなかったらヤバいし。」
:08/12/08 21:01 :SH901iC :xLeVnYmI
#129 [ゆーちん]
「アラームかけて寝ればいいんじゃない?」
「また今度な。斗美が昼寝してる隙に隣で添い寝しといてやるよ。」
「何で私が寝てる隙なの。」
「目が覚めたら王子様が隣で寝てるってロマンチックだろ〜、このこの〜。」
「アハハ。キモいし、王子様って誰だよー!バ〜カ。」
:08/12/08 21:01 :SH901iC :xLeVnYmI
#130 [ゆーちん]
こうして見つけたおさぼり友達。
次にサボった時には先生は来なかった。
その次も来なかった。
だけどその次は来た。
:08/12/08 21:02 :SH901iC :xLeVnYmI
#131 [ゆーちん]
いつも一緒にサボれるって訳じゃない。
先生だって授業があるんだから、いつもいつもサボってられないもんね。
だけど一緒にサボるとなれば、なぜか楽しくなれた。
昼寝せずに、くだらない話をする。
たったそれだけなのに、楽しくて安らげる時間だった。
:08/12/08 21:03 :SH901iC :xLeVnYmI
#132 [ゆーちん]
梅雨入りをした6月は屋上ではサボれない。
他にサボれる場所を探さないと。
先生はいつもどこでサボってんだろ。
屋上で話ている時に聞いておけばよかった。
学校内で先生とすれ違ってもお互い無視するし、連絡先ももちろん知らない。
:08/12/08 21:04 :SH901iC :xLeVnYmI
#133 [ゆーちん]
しばらくは先生とおさぼり出来ないのかなー、なんて思っていたら梅雨明けが訪れた。
驚く事に梅雨中、私は一度もサボらなかった。
迷っているうちに終わった梅雨期間。
授業に出ているのに、ちっとも賢くならない私。
太陽が暑く輝きだした。
:08/12/08 21:04 :SH901iC :xLeVnYmI
#134 [ゆーちん]
せみが鳴く。
うるさい。
屋上に上る。
暑い。
「久しぶりー。」
「やっぱり居た。居るような気がしてた。」
太陽より眩しい笑顔が煙草を手に持って、私を待ってくれていた。
:08/12/08 21:05 :SH901iC :xLeVnYmI
#135 [ゆーちん]
「しばらく見ない内に太ったんじゃない?」
「うるさい!」
「アハハ。嘘うそ。梅雨の間ずーっとサボらないで授業受けてたのー?」
「うん。屋上以外サボる場所知らないし。」
「俺も知らない。だから授業がない時はずーっと職員室で引きこもってた。」
:08/12/08 21:06 :SH901iC :xLeVnYmI
#136 [ゆーちん]
乾き過ぎて暑いくらいの屋上の床に座って、こう聞いた。
「私に会えなくて寂しかったでしょー?」
期待していたふざけた答えが返って来る事はなく、先生の笑顔がスッと消えた。
:08/12/08 21:06 :SH901iC :xLeVnYmI
#137 [ゆーちん]
「何でわかんのー。」
こうやって語尾を少し伸ばして喋る癖のある先生。
私はその口調が心地よくて安心できるの。
「何で俺が寂しかったって知ってんの?斗美も寂しかったの?」
「え?あ…いや、そうじゃなくて…えっと…」
:08/12/08 21:07 :SH901iC :xLeVnYmI
#138 [ゆーちん]
先生は煙草を携帯灰皿に捨てた。
「前にも言ったよね。」
「え?」
「俺も男なの。」
頭の後ろに先生の手が回ったと思ったら、次の瞬間には目の前に先生がいた。
:08/12/08 21:08 :SH901iC :xLeVnYmI
#139 [ゆーちん]
私の唇は先生の唇と重なっていて…教師と生徒の壁を越えてしまった瞬間だった。
驚いて開いたままだった目を、ゆっくり閉じて、キスに答えた私。
甘く長いキスだった。
:08/12/08 21:08 :SH901iC :xLeVnYmI
#140 [ゆーちん]
〔斗羽〕
高校生になってバイトを始めた。
駅前のカフェ。
人見知りをするというコンプレックスがあるからこそ、あえて接客業を選んだ。
どんな時でも笑顔を作ってなきゃいけないという役割。
:08/12/08 21:09 :SH901iC :xLeVnYmI
#141 [ゆーちん]
最初は恥ずかしかったものの、1ヵ月もすれば自然に笑顔を浮かべる事ができていた。
「斗羽ちゃん!」
「あ、いらっしゃいませ。来てくれたんだ。」
このバイトのおかげで人見知りが少しは治ったのか、中学時代なんかと比べられないくらい友達が増えた。
:08/12/08 21:10 :SH901iC :xLeVnYmI
#142 [ゆーちん]
「カフェオレ1つね。たっくんは?」
友達の恵は彼氏と来てくれた。
「俺アイスカプチーノ。」
「カフェオレ1つとアイスカプチーノ1つですね。合計720円になります。」
「はいよ〜ん。」
「あ、俺出すわ。」
たっくんと呼ばれる彼氏がお金を払うと、恵は甘えた声で『ありがとう。』と何度もお礼を言っていた。
:08/12/08 21:10 :SH901iC :xLeVnYmI
#143 [ゆーちん]
彼氏ねー…。
聡志以来、彼氏はいない。
欲しいと思うけど、今度付き合うならHなんかしない人がいいなー、なんて。
そんな性欲ゼロの人なんていないか。
:08/12/08 21:11 :SH901iC :xLeVnYmI
#144 [ゆーちん]
「ごゆっくりどうぞ。」
「ありがとね、斗羽。」
商品を受け取ると恵たちは奥のテーブルに向かった。
その後、店はなかなか忙しくて恵たちが、いつ帰ったのか気付かなかった。
いつの間にか上がる時間になっていて、店長から『上がっていいよ。』と言われたので、店の制服から学校の制服に着替え、家へと歩き出す。
:08/12/08 21:11 :SH901iC :xLeVnYmI
#145 [ゆーちん]
駅前は明るく賑わっているので怖くない。
だけど駅前から少し離れると急に暗くて不気味な道があり、いつもビクビクしながら帰ってた。
こんな時、送り届けてくれる彼氏とかいたらなー…。
:08/12/08 21:12 :SH901iC :xLeVnYmI
#146 [ゆーちん]
梅雨が明けると夏が来る。
店内は涼しくて、お客さんは涼みついでに来店してくるので毎日忙しかった。
「桜井さん、申し訳ないんだけど1時間延長してもらえる?」
店長に頭を下げられちゃ断るにも断れないよ…。
夜道が怖いから、出来るだけ早く帰りたいけど…仕方ないよね。
「はい、わかりました。」
:08/12/08 21:13 :SH901iC :xLeVnYmI
#147 [ゆーちん]
いつも21時に上がるけど、今日は22時上がり。
「お疲れ様でした。」
店を出ると、ムッとした暑さが私を待ち構えていた。
明るい駅前を歩き、嫌いな暗い道を歩く。
一人ぼっちだと怖い。
だけど誰かいても怖い。
どっちにしろ、この道は怖い。
:08/12/08 21:13 :SH901iC :xLeVnYmI
#148 [ゆーちん]
やだ、やだ。
早く帰ろ…。
と、その時だった。
「桜井さん。」
心臓が跳ね上がった。
誰もいないと思っていたのに後ろから声をかけられ、私は慌てて振り返った。
:08/12/08 21:14 :SH901iC :xLeVnYmI
#149 [ゆーちん]
「あ…園田さん。」
後ろにいたのは園田さんだった。
バイト先の正社員の人。
確か25歳って言ったかな。
「ごめん、驚かしちゃった?」
無邪気に笑う園田さんと、10も歳が離れてるなんて思えない。
:08/12/08 21:15 :SH901iC :xLeVnYmI
#150 [ゆーちん]
「あの、何してるんですか?こんな道で…」
「さて問題。園田さんは何をしてるんでしょーか?」
園田さんは歩き出した。
私は園田さんの隣を歩く。
「まだ勤務中ですよね。あ、わかった!買い出しだ。」
「お〜、さすが頭のいい高校行ってるだけあるね。正解。」
:08/12/08 21:15 :SH901iC :xLeVnYmI
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