双子の秘密
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#401 [ゆーちん]
別人になるほどの化粧をしてる間、先生は服装に悩んでいた。
自分の髪が巻き終わると、先生の毛先に自然なウェーブが出来るように熱を加える。
髪形1つで随分印象が変わるもんね。
変装大成功だよ。
仕上に眼鏡とハットを添える。
…完璧じゃん。
:08/12/10 21:27 :SH901iC :0Xqg4XG.
#402 [ゆーちん]
お昼前に家を出て、ショッピングストアに買い物に行った。
あんな楽しいデートは初めてだった。
時間はあっという間に流れ、さっき昼ご飯を食べたと思えば、もう晩ご飯の時間帯。
「お腹空いた?」
「んー、まだ空いてない。」
「俺も。家帰ってから食うか。」
「うん!」
:08/12/10 21:59 :SH901iC :0Xqg4XG.
#403 [ゆーちん]
ショッピングストアとおさらばして、私たちはマンションに戻った。
たくさんの買い物袋が部屋に並ぶ。
「かなり買ったねー。」
「また仕事頑張んなきゃだわ。斗美もバイト頑張れよ。」
「あ…うん。」
:08/12/10 21:59 :SH901iC :0Xqg4XG.
#404 [ゆーちん]
今の1番の悩みはバイト。
辞めないと。
本当に。
きっと後悔する時が来る。
先生を悲しませてしまう前に、辞めないと。
だけど、せっかく安定してきた客足がとか、金銭感覚だとか、今はもう大丈夫だけどもし溜まったとしたらストレスのはけ口は?とか。
:08/12/10 22:00 :SH901iC :0Xqg4XG.
#405 [ゆーちん]
悩む所がたくさんだった。
とりあえずしばらくは仕事を入れない。
ゆっくりしっかり考えよう。
援交は悪い事なんだから、諦める決意を付けないと。
「斗美、洗濯たたんで。」
「うん。」
:08/12/10 22:00 :SH901iC :0Xqg4XG.
#406 [ゆーちん]
先生が料理をしてくれている間、私は洗濯やお風呂掃除に励んだ。
お風呂のお湯を沸かすボタンを押した頃、先生お手製のオムライスが完成した。
「食べるぞ。」
いい感じに空腹になっていたお腹。
「いただきます!」
「召し上がれ。」
空腹は見事に満たされる。
:08/12/10 22:01 :SH901iC :0Xqg4XG.
#407 [ゆーちん]
「美味しい!」
「当たり前。誰が作ったと思ってんの。」
「…。」
「ノーコメントかよ。」
「フフッ。」
冗談ばっか言い合って、いつも笑顔があった。
本当に楽しくて、自分の家になんか帰りたくなかった。
:08/12/10 22:02 :SH901iC :0Xqg4XG.
#408 [ゆーちん]
食べ終わって、一緒に片付けして、ソファーに座りながらテレビを見て過ごす。
「もう一泊したい。」
「そんな家出娘みたいな事しちゃいけませんよ。」
テレビの向こうでは有名な歌手が新曲を次々に披露する。
穏やかなBGMになって、いいムードだった。
:08/12/10 22:02 :SH901iC :0Xqg4XG.
#409 [ゆーちん]
そのムードに酔いしれて、お互い何も言葉を交わさなくても欲しかったものを求め合った。
キスは、何度しても足りない。
欲望のままに唇を、舌を、絡み合わせた。
:08/12/10 22:03 :SH901iC :0Xqg4XG.
#410 [ゆーちん]
ソファーの上に寝かされ、先生が重なる。
人の温かみは夏だろうが、いつだろうが安心できる。
キスが降ってくる。
思い出が増えるたび、先生とのキスも増えて行く。
うねりを付けてあげた先生の髪が私の頬に触れる。
「可愛い。」
「ん?」
:08/12/10 22:04 :SH901iC :0Xqg4XG.
#411 [ゆーちん]
私の首にキスする先生の髪から、シャンプーの匂いがする。
甘くて、落ち着く。
「デートのたびに髪うねらそうね。」
「フフッ。似合う?」
柔らかな髪は、私の髪質によく似ている。
:08/12/10 22:04 :SH901iC :0Xqg4XG.
#412 [ゆーちん]
だけど先生の髪の方が細くて、手触りが気持ち良い。
いつも撫でられてばかりの私も、今は目の前にある髪を撫でずにはいられない。
「似合うよ。」
「惚れ直した?」
「…。」
「またノーコメント?」
「エヘヘッ。」
:08/12/10 22:05 :SH901iC :0Xqg4XG.
#413 [ゆーちん]
先生は体を起き上がらせ、私の体も起こした。
キスはもう終わり?
「帰る準備ね。」
「…んー。」
不機嫌な返事をしてから、自分の荷物をまとめた。
先生も手伝ってくれたので、すぐに片付いた。
「できた。」
「はい、よくできました。」
:08/12/10 22:05 :SH901iC :0Xqg4XG.
#414 [ゆーちん]
テレビを消して玄関に向かう。
帰りたくないのにな。
でも駄々をこねても先生は泊まらせてくんない。
大人しく帰るしかないのかな。
マンションを出て車に乗り込む。
エンジンがかかり、車は発車した。
ここで疑問に思った。
:08/12/10 22:06 :SH901iC :0Xqg4XG.
#415 [ゆーちん]
…SEXしてないじゃん。
今までの私が体験してきたデートは、絶対にSEX込み。
デートとSEXはイコールだった。
煙草を吸いながら運転する先生は、やっぱり今までの彼氏とは違うんだね。
まず車持ちの彼氏なんかいた事ないし。
それに…
:08/12/10 22:06 :SH901iC :0Xqg4XG.
#416 [ゆーちん]
SEXしないデートもある、って教えてくれた彼氏だよ。
何かさ、それってかなり嬉しいよ。
体目的だけで付き合ってんじゃないって思えるから。
SEXしなくても私はキスだけで充分なの。
先生もそうなのかな?
そうだと嬉しいな。
「明日も朝、来る?」
「行っちゃダメ?」
:08/12/10 22:07 :SH901iC :0Xqg4XG.
#417 [ゆーちん]
「ううん。じゃあまた明日ね。」
車は私の家の近くに停まった。
「うん。送ってくれてありがと。」
「どういたしましてー。おやすみ。」
「おやすみ。」
車を降りて、見えなくなるまで見送った。
寂しい瞬間だ。
:08/12/10 22:08 :SH901iC :0Xqg4XG.
#418 [ゆーちん]
〔斗羽〕
「斗羽ちゃん!」
「お待たせ。」
今日で4度目。
こうやって、夜な夜な公園で太一くんと会うのは。
太一くんもこの近くに住んでいるらしく、この公園で会うのがお決まりだった。
園田さんと会えない変わりに太一くんと会う。
:08/12/10 22:08 :SH901iC :0Xqg4XG.
#419 [ゆーちん]
そんなバカな私に、太一くんは惜しみもない笑顔をくれる。
園田さんと待ち合わせしたこの公園は、太一くんとの思い出の方が増えていった。
「宿題してる?」
「ううん。バイト忙しいから全然してない。」
:08/12/10 22:09 :SH901iC :0Xqg4XG.
#420 [ゆーちん]
太一くんはファミレスの厨房でバイトしている。
私と同じ飲食関係だから、よく共感し合ったり文句言ったりと話題が尽きない。
公園で話す事なんて他愛もない事。
だけど、そんな普通な事が楽しくて、こうやって暗黙のルールを破るような日々が続く。
恵にはもちろん内緒。
:08/12/10 22:10 :SH901iC :0Xqg4XG.
#421 [ゆーちん]
秘密がどんどん増えて行く自分に、少し情けなく思ってはいるものの、なかなか抜け出せないんだ。
「最近あの映画の宣伝、かなりしてるよな。」
「三部作だもんね。」
「俺、1つ目も2つ目も見てないんだよねー。斗羽ちゃん見た?」
:08/12/10 22:10 :SH901iC :0Xqg4XG.
#422 [ゆーちん]
「見たよ。うちにDVDあるよ?1も2も。」
「マジで?」
「うん。貸してあげるよ。」
「やったー!ありがとな。」
「…取りに行く?すぐそこだし。」
「いいの?」
「うん。」
2人で公園を出て、一緒に私の家まで歩く。
夜風が気持ち良くて、8月らしい気候だった。
:08/12/10 22:11 :SH901iC :0Xqg4XG.
#423 [ゆーちん]
家の前に到着すり直前、太一くんはとんでもない事を言い出した。
「斗羽ちゃん、脱走した事ある?」
「へ?脱走?」
「夜遊びするのに窓から抜け出したりさ。」
あるわけない。
でも…方法は知っていた。
:08/12/10 22:11 :SH901iC :0Xqg4XG.
#424 [ゆーちん]
2階の物置部屋の窓を使えば、上手く屋根をつたって抜け出せる。
斗美が脱走しているのを何度か見た事があるから。
「ある…かな。」
「本当?」
家の前に付き、私は2階を指差した。
「うん、あそこ。この壁を登って屋根をつたえば、あの部屋に入れるはず。」
:08/12/10 22:20 :SH901iC :0Xqg4XG.
#425 [ゆーちん]
「じゃあその作戦な!」
「…え?」
「斗羽ちゃんの部屋、行きたいんだけど。無理?」
断れなかった私は、1人で玄関から入って行き、物置部屋に向かった。
鍵を外し、窓を開けて下を見ると太一くんが待ってくれていた。
:08/12/10 22:21 :SH901iC :0Xqg4XG.
#426 [ゆーちん]
OKサインを出すと、猿のように簡単に登ってみせた太一くんは窓から初来訪。
「どうぞ。私の部屋。」
部屋に入った太一くんは、カーペットの上に腰を降ろした。
「はい、これ。」
DVDを差し出すと太一くんは笑顔を咲かせて『ありがとう。』と言った。
:08/12/10 22:21 :SH901iC :0Xqg4XG.
#427 [ゆーちん]
これで、太一くんがこの部屋にいる理由はなくなった。
だけど帰る様子は無し。
そもそもDVDを渡すだけなら、こんな風にこっそり侵入して来なくても玄関前で済む事だ。
中に入ったと言う事はDVDを渡す以外にも用があるという事。
:08/12/10 22:22 :SH901iC :0Xqg4XG.
#428 [ゆーちん]
私は、わかってないフリをしながら、それはわかっていたんだ。
用はDVDだけじゃない、って。
もしかしたら…と薄々気付いてしまっている、これから起こる事を。
どこかで期待していたのかもしれない。
また、私に悪さが増えてしまうんだ。
:08/12/11 07:56 :SH901iC :uyR.lwfs
#429 [ゆーちん]
「恵とさ。」
太一くんは静かに話し始めた。
恵の話なんか今まで一度もしなかったのに。
:08/12/11 07:57 :SH901iC :uyR.lwfs
#430 [ゆーちん]
「恵?」
「うん。恵と俺、上手くいってないんだ。」
「…そうなの。」
なぜか心が撫でおりた。
だけど顔は作っている。
ちょっと悲しむ女。
どうしたの?
大丈夫?
気にかけている感じ。
偽善者。
:08/12/11 07:57 :SH901iC :uyR.lwfs
#431 [ゆーちん]
いつからこんなズルい技を覚えるようになってしまったんだろう。
自分でも不思議。
「もう別れようと思ってんだ。」
「そんな事言うと恵が悲しむんじゃ‥」
「斗羽ちゃん付き合おうよ。」
:08/12/11 07:58 :SH901iC :uyR.lwfs
#432 [ゆーちん]
太一くんの強い言葉で話を遮られ、強い瞳に心を奪われる。
「…え。」
「俺、斗羽ちゃんの事好きになっちゃったんだ。」
期待していた。
待ち望んでいた。
太一くんから好かれる事を。
:08/12/11 08:17 :SH901iC :uyR.lwfs
#433 [ゆーちん]
「斗羽ちゃんが好き。」
『私は園田さんが好き。』なんて、言える訳ない。
だけど太一くんからの告白は嬉しかった。
心が安らいだ。
このまま…甘えようと思った。
「付き合おう?」
頷いた私に、太一くんは優しい口づけをする。
:08/12/11 08:18 :SH901iC :uyR.lwfs
#434 [ゆーちん]
ほんの数秒触れた唇は物足りなさを感じながらも、彼女持ちの彼から離れた。
…浮気。
別れると言っても、まだ別れていない。
太一くんは恵という彼女がいる男。
そんな男とキスした私は、最低女。
不倫して浮気して、きっといつか罪を受ける。
:08/12/11 08:19 :SH901iC :uyR.lwfs
#435 [ゆーちん]
だけど止められない自分の気持ちは、再び太一くんの唇に重なる事だった。
太一くんとキスをすると、園田さんの事は頭に無かった。
あんなに好きな人なのに、目の前の心地いいキスがあれば忘れてしまう。
こんな最低な自分が嫌い。
だけど辞めるつもりはこれっぽっちも無かった。
:08/12/11 08:19 :SH901iC :uyR.lwfs
#436 [ゆーちん]
◇◆◇◆◇◆◇
また後ほど
>>2◇◆◇◆◇◆◇
:08/12/11 08:58 :SH901iC :uyR.lwfs
#437 [ゆーちん]
◆◇◆◇◆◇◆
逆らいの涙
◆◇◆◇◆◇◆
:08/12/11 10:22 :SH901iC :uyR.lwfs
#438 [ゆーちん]
園田さんと付き合って、太一くんとも付き合う。
この夏、私にとって一生忘れられない季節になるんだ。
『また連絡する。』と言って太一くんは窓から帰って行った。
園田さんが相手してくれないから、太一くんに傾く。
弱い人間なんだ、私は。
:08/12/11 10:23 :SH901iC :uyR.lwfs
#439 [ゆーちん]
さ迷う気持ちは留まる事を知らない。
園田さん。
太一くん。
いけない恋ばかりしてしまう自分に嫌気がさす一方、幸せを奪えと邪悪に考える自分もいる。
どうして自ら辛い恋ばかり選ぶんだろう…。
自分がわからないよ。
:08/12/11 10:23 :SH901iC :uyR.lwfs
#440 [ゆーちん]
翌日のバイトは苦痛だった。
園田さんとすれ違う事ですら、心臓が飛び出しそう。
園田さんに遊ばれているだけの付き合いかもしれない、って覚悟はしている。
だから素っ気ない態度を取られても文句は言えない。
:08/12/11 10:25 :SH901iC :uyR.lwfs
#441 [ゆーちん]
でも、ここまで悲しむ為に園田さんと付き合っているんじゃない。
運良く休憩時間が同じになり思い切って話しかけてみた。
「園田さん、私彼氏できました。」
園田さんの動きは止まり、私に大きな目を向けた。
悲しんで。
ダメだって言って。
叱って。
:08/12/11 10:25 :SH901iC :uyR.lwfs
#442 [ゆーちん]
そんな試すような事をしても、辛くなるのは自分なのに…。
「そうなんだ。」
「…え。」
「良かったね。」
私に向けられた目は手元の携帯電話に戻った。
きっとゲームをしているんだと思う。
鼻の奥が痛い。
:08/12/11 10:26 :SH901iC :uyR.lwfs
#443 [ゆーちん]
私は休憩室を飛び出して、トイレに駆け込んだ。
静かに、静かに泣いた。
良かったね、って何。
やっぱり所詮は不倫なんだ。
泣くな、私。
こんなの予想できた事でしょ?
この辛さを含めて、不倫する事を決めたんじゃない。
泣くな。
泣くな。
:08/12/11 10:27 :SH901iC :uyR.lwfs
#444 [ゆーちん]
その時だった。
にぎりしめていた携帯電話が慌ただしく震えたのは。
メールだ。
画面が涙でかすむ。
目を疑った。
だけど事実だった。
メールの送り主は園田さん。
《俺を悲しませないで。俺だけの斗羽でいてよ。好きだから。》
:08/12/11 10:29 :SH901iC :uyR.lwfs
#445 [ゆーちん]
余計に涙が出たのは言うまでもない。
何なの、それ。
ゲームしてたんじゃないの?
私に、このメール打ってくれてたの?
好きだなんて、簡単に言わないでよ。
あんなに悲しかった涙が、急に嬉しい涙に変わっちゃったじゃない。
:08/12/11 10:30 :SH901iC :uyR.lwfs
#446 [ゆーちん]
《会いたい。》
素直な気持ちだった。
私も悲しかったよとか、私も好きだよとか、そんな事を伝える前に1番の望みをねだっていた。
《いいよ。休憩、あと30分しかないから急いで俺の車に来て。》
メールを確認した後、涙を拭いて、トイレを飛び出した。
:08/12/11 10:31 :SH901iC :uyR.lwfs
#447 [ゆーちん]
駐車場まで走った。
暑い風が私の頬を撫でた。
園田さんの車に到着した時、私の息は上がっていた。
久しぶりの運動と、緊張。
窓を覗くと、笑顔の園田さんがいた。
おいで、と手招きをしてくれている。
:08/12/11 10:32 :SH901iC :uyR.lwfs
#448 [ゆーちん]
ドアを開けて、中に飛び乗った。
「園田さ‥」
いきなりのキスは、涙が出るほど嬉しかった。
この優しさと、このキスが欲しかった。
目から、ゆっくりと温かい涙が流れる。
上がっていた息は、さらに上がっていく。
:08/12/11 10:33 :SH901iC :uyR.lwfs
#449 [ゆーちん]
社員駐車場はお蔭さまで人目に付かない場所にある。
誰にも気付かれずに、車内で何度も何度もキスを交わした。
やっと離れた唇からは、私の不満が一気に溢れた。
「園田さんのバカ。私だって悲しかった。私だって好き。全然相手にされなくて…すごく…辛かった。」
:08/12/11 10:33 :SH901iC :uyR.lwfs
#450 [ゆーちん]
「ごめんね。」
優しい声だった。
「言い訳しないんですか?」
「しないよ。」
「…辛かった。ずっと無視されて、こんなに好きにさせといて、もう相手にされないのかなって。」
園田さんは私の涙を拭き取ってくれる。
:08/12/11 10:35 :SH901iC :uyR.lwfs
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