双子の秘密
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#451 [ゆーちん]
「ごめんね。」
謝るだけの園田さん。
「連絡もくれないし。もう私は、園田さんに捨てられたんだって思ってました。私なんかいらないんだって。」
「そんな事言わないで。俺には斗羽が必要だから。」
そんな嬉しい事、言わないで。
優しい嘘に聞こえてしまう。
:08/12/11 10:35 :SH901iC :uyR.lwfs
#452 [ゆーちん]
「嫌いになったんですか?バイト中、普通に接してよ。お願いですから…」
「嫌いになるわけないじゃん。俺、不器用だから…」
「私だって不器用だよ!もう…やだ…私、こんなに園田さんの事、好きになってるなんて思わなかった。」
:08/12/11 10:36 :SH901iC :uyR.lwfs
#453 [ゆーちん]
泣きじゃくる私は、園田さんの腕の中に包まれた。
「不器用だからさ、普通にできないの。きっと今まで通りに話したりしてると我慢できなくなる。」
「…何ですか、それ。」
「触れたいし、抱きしめたいし、キスしたくなるもん。こうやって車で会えたりもできるけど毎回って訳にはいかないし。」
:08/12/11 10:37 :SH901iC :uyR.lwfs
#454 [ゆーちん]
園田さんは続けた。
「ずっとこれからも斗羽と一緒にいたいから、わざと冷たくしてたの。俺の理性が保てるように。ごめんね。それが原因で悲しませちゃって。」
園田さんの言い訳は、涙が止まらなくなる程の言葉だった。
:08/12/11 10:38 :SH901iC :uyR.lwfs
#455 [ゆーちん]
「これからもきっと冷たくしちゃうと思う。連絡もなかなか取れないかも。だけどいつも斗羽の事、考えてるから。嫌いになんないで。」
私もバカじゃないんだ。
この沼にハマると、また涙を流す回数が増える事、わかってるんだ。
だけど、私はそれを望んだ。
:08/12/11 10:38 :SH901iC :uyR.lwfs
#456 [ゆーちん]
「園田さんも…私の事…嫌いにならないで。」
「ならない。好きだよ、ずっと。たまにしかデート出来ないけど、夏休みだからどっか出かけような。」
頷く私の髪にキスをする園田さん。
そのキスは、髪から唇へと移動して、私は悲しみを埋めるように園田さんに絡み付いた。
:08/12/11 10:39 :SH901iC :uyR.lwfs
#457 [ゆーちん]
涙が入ってしょっぱいキス。
自分で選んだこの道を、後悔しないようにしないと。
障害だらけの恋だってわかってて、私は園田さんを好きになったんだから。
:08/12/11 10:40 :SH901iC :uyR.lwfs
#458 [ゆーちん]
〔斗美〕
「ごめんね。」
「納得いかないな。」
今、私の目の前にいるのは特別な人だった。
淀江さんと言って、私にきっかけを作ってくれた人。
中1の春休み、私は街で淀江さんに出会った。
:08/12/11 10:41 :SH901iC :uyR.lwfs
#459 [ゆーちん]
コンビニの前の段差に座っていると、急に私の隣に座って来たんだ。
『誰?』とそっけない態度の私にニコニコと笑い続ける中年のおじさん。
見た目は不審者のカケラもないのに、中身はとんでもない変態だった。
だけど淀江さんに援助交際というアルバイトがあると教わったんだ。
:08/12/11 10:42 :SH901iC :uyR.lwfs
#460 [ゆーちん]
他の客なんか、『もう援交しない。』ってメールか電話で済ませられるけど、淀江さんはそういう訳にはいかないと思った。
だから、近くのカフェで待ち合わせて今に至る。
「淀江さんのおかげで、今まで良い思いもしてきたけど…もうお金いらないから。」
:08/12/11 10:43 :SH901iC :uyR.lwfs
#461 [ゆーちん]
「お金いらないから、って。僕が君にいくら注いだかわかってるのか?」
淀江さんが怒るのも訳ない。
SEX1回3万、フェラ1回1万とは別に、淀江さんはおこずかいを毎回くれた。
ブランド品だってプレゼントしてくれる。
:08/12/11 10:43 :SH901iC :uyR.lwfs
#462 [ゆーちん]
『いつもごめんね。』と謝ると、『構わないよ。ずっと僕の相手をしてくれるって約束するなら。』と淀江さんは言った。
『もちろん!一生淀江さんから離れないよ。』と、軽はずみで言った言葉。
淀江さんと出会って、2年と少しが経った。
:08/12/11 10:44 :SH901iC :uyR.lwfs
#463 [ゆーちん]
私が淀江さんとSEXした価値より、プレゼントしてもらった価値の方が大きいのはわかってる。
あのプレゼント分の価値をSEXで返さないといけないとしたら、私はまだまだ淀江さんには頭が上がらない。
:08/12/11 10:45 :SH901iC :uyR.lwfs
#464 [ゆーちん]
「現金は返せないけど、バッグとか財布なら返せ‥」
「冗談じゃない!」
…だよね。
淀江さんからしてみれば、冗談じゃないって感じだもんね。
「ごめん。でも本当にもう援交したくないんだ。」
「…彼氏か?」
私は頷いた。
:08/12/11 10:46 :SH901iC :uyR.lwfs
#465 [ゆーちん]
「そんなちっぽけな男ごときで、大金の入る仕事を放棄するなんて。これからの人生、損するぞ?」
変態親父の意見は私の心を揺さぶるはずもなく、援交を辞めたいという気持ちは変わらなかった。
「損してもいい。彼氏が好きだから。お金なんかいらない。」
:08/12/11 10:47 :SH901iC :uyR.lwfs
#466 [ゆーちん]
淀江さんはひるまなかった。
「そんな一時の気の迷いで、今までの客もパァだ。僕だってそう。君は、頑張って来たじゃないか。」
頑張って来たよ。
また客に買ってもらえるように、笑顔だってサービスだって完璧にやりこなした。
:08/12/11 10:47 :SH901iC :uyR.lwfs
#467 [ゆーちん]
その努力が先生の存在で水の泡と、淀江さんは言いたいのだろう。
…上等だよ。
お金なんかより、大切なものを見つけたんだもん。
水の泡だろうが、宇宙のチリだろうが何にでもなればいい。
そんな哀れむな努力なんて。
:08/12/11 10:48 :SH901iC :uyR.lwfs
#468 [ゆーちん]
「今まで彼氏ができても援交辞めようなんて思わなかったけど、今の彼氏は初めて辞めたいって思えた人なの。」
「…本気なのか?」
「本気。だから援交なんかしてるってバレたら…彼氏が悲しむでしょ?悲しませたくないの。」
今すぐにでもここを飛び出して、携帯電話から淀江さんの連絡先を消す事だってできる。
:08/12/11 10:49 :SH901iC :uyR.lwfs
#469 [ゆーちん]
だけどそんな事したら、後々大変だってわかる。
この人は執念深い人。
2年付き合って、わかったの。
私をストーカーしたり、金を返せと言って来るかもしれない。
先生にも迷惑をかけるだろう。
:08/12/11 10:49 :SH901iC :uyR.lwfs
#470 [ゆーちん]
初めて話しかけて来てくれた、あの優しい淀江さんはもういない。
納得いかない顔で、私を睨む。
「どうして最近の若い子は、こうもわがままなんだ。」
「ごめんなさい。でも、もう決めたの。彼氏以外とはヤんないって。」
:08/12/11 10:50 :SH901iC :uyR.lwfs
#471 [ゆーちん]
「君みたいな子が辞めるなんて、勿体なくて頭が痛いよ。」
「私も頭が痛い。どうして援交なんて始めたんだろって、後悔してるよ。」
「…。」
それから淀江さんは何も言ってこなかった。
:08/12/11 10:51 :SH901iC :uyR.lwfs
#472 [ゆーちん]
「淀江さんには本当に感謝してる。淀江さんあっての私だったから。だけどもう決めたの。辞めるって。淀江さんにはちゃんと話したかったから。今日は忙しいのにわざわざありがと。」
「…もういい。わかった。君とは、これっきりだ。」
淀江さんは伝票を手に取り、レジで会計を済ませ、店から出て行った。
私を一度も見ずに。
:08/12/11 10:52 :SH901iC :uyR.lwfs
#473 [ゆーちん]
誰もいなくなった目の前の席を見た途端、急に嬉しさが込み上げた。
…終わった。
私の援交生活は終わったんだ。
とんでもない開放感に満ち溢れながら、私も店を出た。
:08/12/11 10:53 :SH901iC :uyR.lwfs
#474 [ゆーちん]
足は自然と910号室に向かっていた。
ブランド物のキーケースから合い鍵取り出し、中に入る。
このキーケースだって、淀江さんからもらった物だ。
捨てるべきか、返すべきか。
…どっちも嫌。
:08/12/11 10:54 :SH901iC :uyR.lwfs
#475 [ゆーちん]
辞めたと思った途端、急に焦りが出た事は隠せなかった。
もらったブランド物を捨てるなんて勿体なくてできない。
だからって使わないのは、この品物に対して悪いでしょ。
これを売ったらいくらになるかな、とか…そんな事を考えてしまう。
それも、先生の部屋の中で。
:08/12/11 10:55 :SH901iC :uyR.lwfs
#476 [ゆーちん]
先生はまだ帰って来ていなかった。
午前中に掃除と洗濯を済ませてから、淀江さんに会いに行ったので、夕方のこの時間、する事がなくて暇だった。
よく考えれば、ほとんど毎日のように援交して、こんな赤い太陽をこの部屋から見るなんて事は滅多になかった。
:08/12/11 10:56 :SH901iC :uyR.lwfs
#477 [ゆーちん]
だけどこれからは毎日見れるんだという事実が、私の心を弾ませてくれた。
今まで稼いだお金は、ちゃんと通帳に入っている。
プレゼントされたブランド物だって、たくさんある。
:08/12/11 10:56 :SH901iC :uyR.lwfs
#478 [ゆーちん]
今の財布が壊れたら、クローゼットの中にあるたくさんの財布の中から好きなものを使えばいい。
キーケースも、ストールも、時計も、アクセサリーも。
よく考えると、私は本気に頑張ったと思う。
:08/12/11 10:57 :SH901iC :uyR.lwfs
#479 [ゆーちん]
そこら辺の高校生が、あんなたくさんのブランド物をプレゼントされるなんて、早々ない事だよ。
キャバクラじゃないんだし。
淀江さん以外にも、みんな私には良くしてくれた。
SEXは嫌いじゃない。
親父たちも嫌いじゃないけど、好きでもない。
:08/12/11 10:57 :SH901iC :uyR.lwfs
#480 [ゆーちん]
都合のいい世の中だな、っていつも思ってた。
お金が欲しい私。
SEXがしたい客。
SEXぐらいいくらでもしてあげるよ。
お金ぐらいいくらでも払ってやる。
互いの需要と供給が見事なくらいバランスが取れているバイトだった。
:08/12/11 10:58 :SH901iC :uyR.lwfs
#481 [ゆーちん]
やっぱり淀江さんの言う通りだよ。
辞めるのは惜しかったのかも。
だけど、その金欲や物欲に勝るものが、この部屋の中に詰め込まれてんの。
淀江さんにはわかって欲しい。
初めての大恋愛なんだよ。
:08/12/11 11:00 :SH901iC :uyR.lwfs
#482 [ゆーちん]
ガチャ…
この大恋愛だけは大切にしたいと思った。
「あら、いたの。珍しいね。」
この笑顔の為なら、全て捨てていいと思えたんだ。
「バイト辞めたの。」
だから後悔はもうしない。
ふっ切るんだ。
:08/12/11 11:02 :SH901iC :uyR.lwfs
#483 [ゆーちん]
「じゃあ俺が養ってやるよ。」
「…無理だってば。私、金のかかる女だもん。」
「くっそ。何でこんな金のかかる女に、俺は引っ掛かったんだろ。」
「フフッ。引っ掛けて来たのはそっちじゃん。」
「あ、バカなのにそんな事は覚えてんだ。」
「うるさい!」
私はこの人の為に生きるよ。
:08/12/11 11:02 :SH901iC :uyR.lwfs
#484 [ゆーちん]
先生とほとんど毎日顔を会わせられる夏休みは、あっという間に過ぎて行こうとしていた。
泊まったのはほんの数回。
SEXだって、数える程しかしていない。
今までの付き合い方が少しおかしかったのかな?
先生との過ごし方が新鮮だし、新発見だし、魅力的だった。
:08/12/11 11:04 :SH901iC :uyR.lwfs
#485 [ゆーちん]
「亮治!」
「…え?」
「返事は、はい!」
「はい…」
「何、その気の抜けるような返事。」
「だって…斗美が下の名前で呼ぶから。」
「悪い?」
「悪くないけど…その呼び方、お袋に叱られる時の呼び方に似てたからビビった。」
:08/12/11 11:05 :SH901iC :uyR.lwfs
#486 [ゆーちん]
普段は【先生】って呼んでいるので、滅多に【亮治】なんて呼ばない。
甘える時か…怒った時だけ。
「お袋だと思ってビビっただ?こんの…へたれ野郎!」
「何、何よ。ごめんって。何怒ってんの。生理?」
「今日は何月何日!?」
「8月31日。」
:08/12/11 11:06 :SH901iC :uyR.lwfs
#487 [ゆーちん]
「明日から9月だね!」
「そうですね。新学期ですね。宿題終わりましたか?」
「終わってる訳ないでしょ。明日から新学期ってわかってて、この有様はわざと?」
時刻は夜の8時。
お風呂上がりの先生は、パンツ1枚でソファーでくつろいでいた。
:08/12/11 11:08 :SH901iC :uyR.lwfs
#488 [ゆーちん]
「何?宿題見て欲しいの?」
怯えた顔が妙に可愛かったけど、そんなんじゃ怒りは静まらないよ。
「宿題なんかどーでもいい。」
「じゃあ何に怒ってるんですかー?」
「私だってビックリだよ。亮治さんが、この夏休み中、1回しか、デートに、連れてって、くんなかったんだからっ!」
:08/12/11 11:09 :SH901iC :uyR.lwfs
#489 [ゆーちん]
一言一言、リアクションを付けながら訴えた。
「…エヘッ。」
なのに先生はとぼけた顔をしただけ。
「笑って済ませないで下さーい!今からでも遅くないよ。デート行こっ。夜景連れてってもらってないもん!」
:08/12/11 11:10 :SH901iC :uyR.lwfs
#490 [ゆーちん]
「あー…夜景。」
先生は曖昧な返事をした。
「覚えてないの?夏休み前、私が海連れってって言ったら山ならいいって。夜景連れてってやるって言ったじゃんかー!今日で夏休み終わるんですけどー!」
「こういうとこだけ記憶力いいんだな。」
:08/12/11 11:12 :SH901iC :uyR.lwfs
#491 [ゆーちん]
「忘れてたの?最悪!先生なんか嫌い!」
すねた私はリビングから逃げ出した。
脱衣所で服を脱ぎ捨て、湯舟に飛び込む。
「と〜みちゃん。」
扉の向こうで先生が私を呼んだ。
「そんな子いないよ!」
「ごめんねー。どっこも連れてってやれなくて。」
:08/12/11 11:12 :SH901iC :uyR.lwfs
#492 [ゆーちん]
仕事が忙しかったのはわかってるんだ。
お盆休みも少なくて、実家に帰るか私と遊ぶか真剣に悩んでくれてた事も知ってる。
今年のお正月も帰省していないって言ってたから、『実家帰った方がいいよ。』って勧めたのも私。
「ねぇ。」
「ん?」
:08/12/11 11:13 :SH901iC :uyR.lwfs
#493 [ゆーちん]
「私ってわがままなのかな。」
「うーん。どうだろ。」
「デート出来ないから毎日この部屋に転がり込んで、好き勝手させてもらって…なのにデートしたいって。わがままだよね。」
「それはわがままじゃないよ、別に。」
:08/12/11 11:14 :SH901iC :uyR.lwfs
#494 [ゆーちん]
先生はそう言ってくれたけど、わがままだってわかってた。
でもね、わがままだって言いたくなるんだよ。
援交辞めて、これから先生漬けになれるって楽しみだったのに…ちょっと寂しかったんだよ。
「ごめんなさい。夜景はまた今度でいいや。」
:08/12/11 11:15 :SH901iC :uyR.lwfs
#495 [ゆーちん]
冷静になって考えると、私が悪かった。
お風呂に入ってよかった。
湯舟が私を落ち着かせてくれた。
「謝らなくていいよ。俺が悪かったんだもん。三連休にでもデートしような。」
「うん。」
「よし、仲直り。さっさと出て来いよ。」
:08/12/11 11:16 :SH901iC :uyR.lwfs
#496 [ゆーちん]
ドアをコツンと叩いてから先生はリビングに戻って行った。
湯舟から出て、髪や体を洗って、先生の言う通りさっさとお風呂から出た。
「出たー?」
リビングから先生の声。
「…うん、出たよ。」
何でそんな事聞くんだろ。
先生もう入ったじゃん。
:08/12/11 11:17 :SH901iC :uyR.lwfs
#497 [ゆーちん]
不思議に思いながらバスタオルを戸棚から降ろしていると、先生は現れた。
「…何?」
「タオル貸してみ。」
私の手から、先生の手にバスタオルが渡った。
「私まだ体拭いてな‥」
:08/12/11 11:17 :SH901iC :uyR.lwfs
#498 [ゆーちん]
一気に白い世界に包まれた。
「え、先生?」
「拭いたげるわー。」
「へ?」
髪をグシャグシャとタオルで拭いて、体の雫も拭き取って行く。
「お詫び。」
「何の?」
「約束守れなかったお詫び。」
「…もういいって。」
「ばんざーい!」
:08/12/11 11:47 :SH901iC :uyR.lwfs
#499 [ゆーちん]
子供を操るような口調に、つい笑ってしまった。
逆らわずに両手を上げる自分がちょっと好き。
素直に恋してる感じだから。
拭き終わると体にバスタオル巻いた先生。
:08/12/11 11:47 :SH901iC :uyR.lwfs
#500 [ゆーちん]
「あー。」
「あ?」
いきなり何?
先生壊れた?
「いー。」
「えっ、い?」
「うー。」
「う?」
なるほど。
オウム返しが狙いだったんだ。
:08/12/11 11:48 :SH901iC :uyR.lwfs
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