双子の秘密
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#501 [ゆーちん]
【う】で唇を突き出すと、先生は自分の唇を重ねた。
小技の効いたキスにやられた私は、脱衣所から去って行く先生を見送った。
頭を抱えながら照れていると、リビングから『アイス食べる?』と、先生の声が聞こえた。
「食べる!」
そう答えて、私は急いで服を着た。
:08/12/11 11:49 :SH901iC :uyR.lwfs
#502 [ゆーちん]
〔斗羽〕
夏休みが終わって数日が経った。
夏休み中、朝から夕方までだったバイトも、学校が始まったので勤務時間が短くなった。
園田さんに会える割合は減ったけど、前より全然大丈夫だった。
少し強くなれた?
愛の力かもね。
:08/12/11 11:50 :SH901iC :uyR.lwfs
#503 [ゆーちん]
「斗羽ちゃーん!」
「あ、恵。」
太一くんとは、まだ話ができていない。
園田さんと仲直りした日の夜、太一くんにやっぱり付き合えない事を告げた。
だけど納得してくれなくて…ちゃんと会って話そうって事になった。
:08/12/11 11:50 :SH901iC :uyR.lwfs
#504 [ゆーちん]
だけど全然時間が合わなくて、会えずにいた。
「夏休み中、斗羽ちゃんのバイト先に何回か遊びに行ったけど一度も会わなかったね。」
「そうだね。私結構入ってたのに。休憩中とか雑用させられてた時だったのかもね。」
「アハハ。タイミング悪かった系?」
「きっとそうだよ。」
:08/12/11 11:52 :SH901iC :uyR.lwfs
#505 [ゆーちん]
恵を見た瞬間、ゾッとしたけど…案外平気だった。
平然を装える自分に驚くばかり。
恵と話していた時だ。
太一くんからのメール。
《今日の夜、公園来れる?》
恵が目の前にいるのに…本当、タイミング悪い。
:08/12/11 11:53 :SH901iC :uyR.lwfs
#506 [ゆーちん]
「あれ、メール?誰からぁ?」
「友達だよ。」
「そうなんだ。つまんなーい。斗羽ちゃん彼氏いないの?」
「うん、いないよ。」
園田さんは彼氏として、友達なんかに紹介できない。
妻子持ちの彼氏がいるだなんて言って、祝福されるはずない。
:08/12/11 11:53 :SH901iC :uyR.lwfs
#507 [ゆーちん]
「たっくんに頼んで、誰か紹介してもらおっか?」
たっくんねぇ…。
そのたっくんとも付き合っちゃったんだよ、私。
恵、今目の前にいる私はたっくんの浮気相手だよ。
「仲良しだね。恵と彼氏。」
:08/12/11 11:54 :SH901iC :uyR.lwfs
#508 [ゆーちん]
「仲良しだよぉ!夏休み中はあんまり会えなかったんだけど、毎日連絡くれたし。」
「別れの危機とかなかったの?」
「危機?ぜ〜んぜんっ!超ラブラブだよ。」
ラブラブ。
その言葉に嫉妬した。
:08/12/11 12:18 :SH901iC :uyR.lwfs
#509 [ゆーちん]
「いいね、ラブラブ。」
「エヘッ。絶対結婚するからねー。」
恵とは別れるって、あの日言ってたのに。
別れる気なんか更々ないんじゃん。
「結婚式呼んでね!」
作り笑顔を残し、私は恵とバイバイした。
これ以上聞きたくない。
:08/12/11 12:19 :SH901iC :uyR.lwfs
#510 [ゆーちん]
《いいよ。》
太一くんに返事をして、そのままポケットに携帯電話を入れた。
9月の風はまだ温かい。
夜になれば涼しくなるだろうか。
夜になれば私の悩みは軽くなっているだろうか。
:08/12/11 12:20 :SH901iC :uyR.lwfs
#511 [ゆーちん]
太一くんときちんと終わらせている事を願いながら、バイトに向かった。
こんな日に限って園田さんは休み。
顔が見たかったのに…タイミングの悪魔にでも取り付かれてんじゃないかな、私。
「いらっしゃいませ。」
レジで笑顔を売るバイトが始まった。
:08/12/11 12:21 :SH901iC :uyR.lwfs
#512 [ゆーちん]
一生懸命笑顔を作った。
心が不安定なせいでミスが出てしまわないように仕事に集中した。
おかげで上がりの時間までものすごく早かった。
「お疲れ様でした。」
毎日歩き慣れた暗い夜道を少し急ぎ足で歩く。
:08/12/11 12:21 :SH901iC :uyR.lwfs
#513 [ゆーちん]
《着いたよ。》
そんなメールが10分前に受信してあったから。
小走りで公園に向かうと、ベンチに座りながら携帯電話を触っている太一くんがいた。
「…お待たせ。」
「あ、斗羽ちゃん。」
私に気付いた太一くんは携帯電話をポケットに入れた。
:08/12/11 12:22 :SH901iC :uyR.lwfs
#514 [ゆーちん]
隣に座った途端、太一くんは口を開いた。
「久しぶり。」
「うん、久しぶり。」
「元気だった?」
「元気だよ。太一くんは?」
こんな話をしてる場合じゃない。
ちゃんと話を切り出さないと。
「元気じゃない。」
「え?どうかしたの?」
:08/12/11 12:23 :SH901iC :uyR.lwfs
#515 [ゆーちん]
「斗羽ちゃんに別れようって言われた。」
ありがたい事に太一くんから話を切り出してくれた。
「その事なんだけど、好きな人がいるんだ。だから太一くんとは付き合えない。」
「…。」
太一くんは何も言わずに私を見ていた。
:08/12/11 12:27 :SH901iC :uyR.lwfs
#516 [ゆーちん]
「前に言ったでしょ?複雑なの、この恋は。太一くんが絡むと余計に複雑なる。」
少しキツい言い方だった。
これで私が嫌われればいいのに。
なのに太一くんは引かなかった。
「2番目でもいいから…別れるなんて言わないで。」
:08/12/11 12:28 :SH901iC :uyR.lwfs
#517 [ゆーちん]
何でそんな事言うのかがわからない。
「私は太一くんの2番目なんて嫌だよ。」
「何言ってんの。斗羽ちゃんは1番だから。」
「嘘つかなくていいよ。恵と今日話したの。毎日たっくんはメールくれるって。結婚するんだって。」
:08/12/11 12:29 :SH901iC :uyR.lwfs
#518 [ゆーちん]
太一くんの目が一瞬それた。
「恵にはバレてない。だから今のうちに別れて、もう終わらそう。」
「恵とは…別れるから。」
「その言葉、前にも聞いた。」
太一くんは苦い顔を浮かべた。
恵と別れる気なんかないんなら、私に手を出さないで欲しかった。
:08/12/11 12:30 :SH901iC :uyR.lwfs
#519 [ゆーちん]
その手を握りしめた私も悪かったけど…嘘の優しさはもういらない。
「太一くんの事、好きだったよ。今までありがとうね。バイバイ。」
私はベンチから立ち上がった。
何も言わない太一くんを残して公園から出た。
:08/12/11 12:31 :SH901iC :uyR.lwfs
#520 [ゆーちん]
その時だった。
走り寄る音がして、腕を掴まれて、振り返った時には太一くんの顔が目の前にあった。
…辞めて。
そんなキスなんかいらない。
:08/12/11 12:33 :SH901iC :uyR.lwfs
#521 [ゆーちん]
首を振って、逃げようとすればするほど、太一くんが私の頭を押さえる力が強くなる。
痛い。
心が痛い。
嘘もいらないしキスもいらない。
2番目なんてもっといらない。
:08/12/11 12:33 :SH901iC :uyR.lwfs
#522 [ゆーちん]
そう決めたんだから…そんな優しいキスしないで。
涙が出た。
太一くんの勝手さに?
いきなりキスをされたから?
違う。
自分の弱さに泣けて来たんだ。
:08/12/11 12:34 :SH901iC :uyR.lwfs
#523 [ゆーちん]
あれだけ恵にラブラブ話を聞かされて、別れを決意したのに。
あれほど私には園田さんしかいないって、特別な恋を覚悟したのに。
もう、2番目の女って役割は園田さんだけで充分だよ。
なのに…太一くんのキスを受け入れた私は、彼の体を抱きしめていた。
:08/12/11 12:35 :SH901iC :uyR.lwfs
#524 [ゆーちん]
頭と体の意見が噛み合ってない自分の弱さに涙が止まらなかった。
きっと、どこかに悪が潜んでいるんだ。
園田さんが好き。
だけど私は園田さんにとって2番目でしょ?
だったら私も他の人と付き合ってもいいんじゃないかな、って。
:08/12/11 12:36 :SH901iC :uyR.lwfs
#525 [ゆーちん]
太一くんにも恵がいる。
どうせ私は2番目だから。
2番目。
普通の恋がしたいだけだったのに。
こんな不毛な恋をしてるって聡志が知ったら、笑われちゃうかな。
「…別れるなんて嘘だよな?」
:08/12/11 12:37 :SH901iC :uyR.lwfs
#526 [ゆーちん]
太一くんのその質問に、特に返事などはせず、ただ彼の唇に自分から重ねに行った。
もう…どうにでもなれって思った。
園田さんも太一くんもどっちも好きなの。
叶わない恋だけど、私はそれでいいって決めたから…だから、このキスをもう少しだけ楽しませて。
:08/12/11 12:37 :SH901iC :uyR.lwfs
#527 [ゆーちん]
〔斗美〕
「やだ!辞めて!辞めろってば!やだー!」
最悪。
これだから暗い夜道は嫌い。
もうすぐで家だったのに。
「静かにしろ!」
「離して!辞めて!」
:08/12/11 12:38 :SH901iC :uyR.lwfs
#528 [ゆーちん]
いくら抵抗しても敵わない。
悔しい。
女である事、力がない事、そして…援交をしていた事を後悔した。
「淀江さんに言われたんでしょ?離して!こんな事して何になんのよ!」
変態親父の繋がりってのはわからない物で、今、私を車に無理矢理乗せようとしている男3人は以前の客。
:08/12/11 12:39 :SH901iC :uyR.lwfs
#529 [ゆーちん]
よりによってこの3人は他の親父よりも、やや若め。
力がある男をわざわざ選んで、私を誘拐ですか。
車に乗せられ、どこかに向かって走りだした。
「どこ行くのよ。」
「大人しく座ってて。」
縛られたり目隠しなどはされていない。
なので怖くはなかった。
:08/12/11 12:40 :SH901iC :uyR.lwfs
#530 [ゆーちん]
ただ、怒りだけが沸き上がっているだけ。
今ドアを開けて無理矢理車から脱出してやろうか。
だけどそんな事をしても、またこいつらは誘拐しに来るんだろうな。
無駄な抵抗はよせ、ってか。
:08/12/11 12:41 :SH901iC :uyR.lwfs
#531 [ゆーちん]
着いた先は事務所のようなビルだった。
何ここ。
私、何されるの。
ドアを開けて中に入れられると、やっぱり予感的中。
淀江さんがいた。
「…何の用?」
「ここは僕の事務所だから楽にしてくれていいよ。」
「事務所?てゆーかこの人達と何で知り合いなわけ?」
:08/12/11 12:42 :SH901iC :uyR.lwfs
#532 [ゆーちん]
私を誘拐した3人を指差した。
「知り合いも何も、僕の部下だ。」
「部下?」
男は言った。
「淀江さんはここの社長なんだよ。」
あー。
なるほど。
全て繋がった。
:08/12/11 12:43 :SH901iC :uyR.lwfs
#533 [ゆーちん]
お金の羽振りがいい事や、高級なプレゼントを惜しみなく与えてくれる事。
ここの3人が文句も言わずに、一致団結してる事。
「で、その社長さんは私に何の用ですか?もう淀江さんと私は何の関係もないでしょ?」
「そんな寂しい事言わないでくれよ。」
淀江さんは笑った。
:08/12/11 12:44 :SH901iC :uyR.lwfs
#534 [ゆーちん]
「帰して。いくら淀江さんだからって誘拐はダメでしょ。警察にチクるよ?」
「そんな事したら家族にも彼氏にも、今までのバイトの事がバレるんだぞ?」
「…彼氏にも?」
それはダメ。
親にバレてもどうって事ない。
:08/12/11 12:44 :SH901iC :uyR.lwfs
#535 [ゆーちん]
だけど先生にバレる訳にはいかない。
「私にどうして欲しいの。」
「こうして欲しいんだよ。」
そう言った淀江さんに、押し倒された。
先生の家よりフカフカのソファーが憎い。
「やだ!」
:08/12/11 12:46 :SH901iC :uyR.lwfs
#536 [ゆーちん]
「君は抜け出せないんだよ。SEXのプロだ。いつかはそういう道に進めばいいと僕は計画を立てている。」
「は?計画?私を風俗にでも売るつもり?」
「そうだ。君は人気者になれるよ。」
誰だ、こいつ。
私が知ってる淀江さんじゃない。
:08/12/11 12:46 :SH901iC :uyR.lwfs
#537 [ゆーちん]
私の知ってる淀江さんは、いつも私に優しいんだ。
信用できる人だったの。
こんなふざけた事をする人じゃない。
「信じてたのに…淀江さんの事。」
「信じてた?僕を?」
スカートから伸びている私の足を撫でる淀江さんの手は乱暴だった。
:08/12/11 12:48 :SH901iC :uyR.lwfs
#538 [ゆーちん]
「誰よりも私に優しかったし、私に援交を教えてくれたから。」
「フフッ。たかが男が喜ぶSEXと金の稼ぎ方を教えただけで信用?」
「私に良くしてくれた。プレゼントもくれた。」
右手は足を、左手は胸を、楽しそうに散歩していた。
:08/12/11 12:49 :SH901iC :uyR.lwfs
#539 [ゆーちん]
「そんなの、君に好かれたいからに決まってるじゃんか。困ったな。好意じゃなくて信頼を得てしまったよ。」
淀江さんが笑うと、部下の3人も笑った。
「好意?」
「好かれると、油断してくれるじゃないか。」
「意味わかんない。何の油断?私をSEXのプロにさせて、風俗に売るつもりだった?まさかね。」
:08/12/11 12:50 :SH901iC :uyR.lwfs
#540 [ゆーちん]
「何だ、わかってるじゃないか。だったら文句言わずに、風俗かポルノ女優にでもなれるようにこれからも頑張りなさい。」
怒り、憎しみ、後悔。
全てが混ざって、吐きそうなくらい複雑な気分になった。
:08/12/11 12:50 :SH901iC :uyR.lwfs
#541 [ゆーちん]
最初から、私を商品としてしか見ていなかったって事か。
バカみたい。
淀江さんに騙されて、私は勝手に舞い上がっちゃってて…本当バカだよ、私。
先生の言う通り。
私はバカだ。
「泣いても無駄だ。君はこれからも援交をしてスキルアップするんだ。辞めるなんて許さない。」
:08/12/11 12:51 :SH901iC :uyR.lwfs
#542 [ゆーちん]
私、何か淀江さんと契約でもした?
してないよね?
だから私にそんな事を命令する権利なんて淀江さんにはない。
「こんな事バレると捕まるのは淀江さんだよ。もう辞めて…」
:08/12/11 12:52 :SH901iC :uyR.lwfs
#543 [ゆーちん]
抵抗する体力がどんどん弱くなる。
「だから言ってるじゃん。彼氏にバレるよ、って。」
やだ。
先生にバレるわけにいかない。
だからって援交続けるわけにもいかない。
どうすればいい。
「自業自得だ、私。」
泣きながら目を閉じた。
何も見たくない。
:08/12/11 12:53 :SH901iC :uyR.lwfs
#544 [ゆーちん]
「嫌がってるわりに、体は素直だ。」
淀江さんのその言葉に、また涙した。
私、最低。
この体は先生にしか反応しちゃいけないんだよ。
なのに、何なの。
この有様は。
SEX独特の快楽に顔を歪める私を殴り殺してやりたいとまで思った。
:08/12/11 12:53 :SH901iC :uyR.lwfs
#545 [ゆーちん]
◇◆◇◆◇◆◇
繋いだ手
◇◆◇◆◇◆◇
:08/12/11 12:54 :SH901iC :uyR.lwfs
#546 [ゆーちん]
翌日の私は放心状態だった。
淀江さんが果てた後、ずっと見ていた3人の中の1人が言った。
『援助交際を続けると約束しろ。』と。
『約束する。』と答えてしまった私。
そう言わないと、帰してもらえなかった。
:08/12/11 12:55 :SH901iC :uyR.lwfs
#547 [ゆーちん]
どうにかして淀江さん達を騙せないだろうか。
…いくら考えても私の頭では無理だった。
解決のしない問題。
今は騙せても、いつか私を風俗へ売る為にまた誘拐に来るんじゃないかと思うと溜め息が溢れた。
:08/12/11 12:55 :SH901iC :uyR.lwfs
#548 [ゆーちん]
何も解決しない。
学校を休んで一日中ベットの中で過ごした。
コンコン…
「斗美、学校は?」
ママがドアをノックしながら話しかけてくる。
「…行かない。」
「珍しいわね。斗美がサボるなんて。」
ママはそう言って部屋の前から離れて行った。
:08/12/11 12:56 :SH901iC :uyR.lwfs
#549 [ゆーちん]
本当、珍しい。
家でサボるのなんて。
毎日ちゃんと学校には行ってる。
だけど屋上でサボってばっか。
ていうかサボるために学校行ってる。
サボって、先生に会うために。
:08/12/11 12:57 :SH901iC :uyR.lwfs
#550 [ゆーちん]
《どした?》
学校にいたのなら1時間目が始まる時間。
先生からメールが来た。
《風邪ひいた。》
…嘘。
バカは風邪ひかないもん。
《大丈夫?》
《大丈夫じゃない。》
大丈夫なんかじゃない。
もう…ボロボロだよ。
:08/12/11 12:58 :SH901iC :uyR.lwfs
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