双子の秘密
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#546 [ゆーちん]
翌日の私は放心状態だった。
淀江さんが果てた後、ずっと見ていた3人の中の1人が言った。
『援助交際を続けると約束しろ。』と。
『約束する。』と答えてしまった私。
そう言わないと、帰してもらえなかった。
:08/12/11 12:55 :SH901iC :uyR.lwfs
#547 [ゆーちん]
どうにかして淀江さん達を騙せないだろうか。
…いくら考えても私の頭では無理だった。
解決のしない問題。
今は騙せても、いつか私を風俗へ売る為にまた誘拐に来るんじゃないかと思うと溜め息が溢れた。
:08/12/11 12:55 :SH901iC :uyR.lwfs
#548 [ゆーちん]
何も解決しない。
学校を休んで一日中ベットの中で過ごした。
コンコン…
「斗美、学校は?」
ママがドアをノックしながら話しかけてくる。
「…行かない。」
「珍しいわね。斗美がサボるなんて。」
ママはそう言って部屋の前から離れて行った。
:08/12/11 12:56 :SH901iC :uyR.lwfs
#549 [ゆーちん]
本当、珍しい。
家でサボるのなんて。
毎日ちゃんと学校には行ってる。
だけど屋上でサボってばっか。
ていうかサボるために学校行ってる。
サボって、先生に会うために。
:08/12/11 12:57 :SH901iC :uyR.lwfs
#550 [ゆーちん]
《どした?》
学校にいたのなら1時間目が始まる時間。
先生からメールが来た。
《風邪ひいた。》
…嘘。
バカは風邪ひかないもん。
《大丈夫?》
《大丈夫じゃない。》
大丈夫なんかじゃない。
もう…ボロボロだよ。
:08/12/11 12:58 :SH901iC :uyR.lwfs
#551 [ゆーちん]
《絶対安静にしてろよ。じゃあ授業あるから行くわ!》
《ありがとう。頑張って。》
先生からのメールが嬉しかった。
眠りもせず、ただベットの中で過ごした。
終わらない問題の答えを探しながら。
:08/12/11 12:59 :SH901iC :uyR.lwfs
#552 [ゆーちん]
夕方、先生から電話が掛かって来た。
「…はい。」
「調子どうよ。」
「…悪い。」
「病院は?」
「行ってない。」
「連れてってあげようか?」
「いい、行かない。それより先生んちに連れてって欲しい。」
先生に会いたくない。
会っちゃいけない。
:08/12/11 13:00 :SH901iC :uyR.lwfs
#553 [ゆーちん]
淀江さんを受け入れてしまった、こんな汚い体で、先生に会えない。
だけど口から出た言葉は、本心だった。
会いたいんだ、先生に。
「ダメ。悪化するぞー。」
「先生に会えない方が悪化する。」
「ハハッ。何だそれ。」
:08/12/11 13:01 :SH901iC :uyR.lwfs
#554 [ゆーちん]
「ごめんなさい。ずる休みなの。」
「ずる休み?珍しいな。」
「だから悪化とかそういうの関係ないの。わがままだってわかってるけど、お願い。会いたいんだ。」
「…わかった。じゃあ迎え行くよ。家の前ついたら連絡するから待ってて。」
「ありがと。」
:08/12/11 13:02 :SH901iC :uyR.lwfs
#555 [ゆーちん]
何かを悟ってくれたのか、先生の声は優しかった。
化粧も髪も服装も、何も着飾らない。
ただ先生に会いたいだけ。
私はリビングで迎えが来るのを待った。
「斗美、晩ご飯は?」
「いらない。ちょっと出掛けてくる。」
「その格好で?」
:08/12/11 13:03 :SH901iC :uyR.lwfs
#556 [ゆーちん]
さすがのママも驚いていた。
それもそのはず。
今まですっぴんで出掛けた事はない。
その上、ジャージに髪はノーセット。
ママが驚いても仕方ない。
「彼氏だからいいの。」
「彼氏だからダメなんじゃないの?斗美、何か変わったね。」
うん、変わった。
:08/12/11 13:03 :SH901iC :uyR.lwfs
#557 [ゆーちん]
彼氏だから、こんな格好見られたくなかった。
彼氏じゃなくても、どんな人にでもダサい格好は見られたくない。
でもさ、先生は不思議とそんな恥じらいを感じさせない人なんだよね。
こんなダサい私も受け入れてくれてるし。
:08/12/11 13:04 :SH901iC :uyR.lwfs
#558 [ゆーちん]
「体調はよくなった?」
「うん、平気。明日から学校行くから。」
「そう。」
平気なわけない。
学校も行きたくない。
でも、いつまでもこのままじゃいられない。
《ついたよ。》
先生からのメール。
「いってくる。」
「いってらっしゃい。気をつけてね。」
:08/12/11 13:05 :SH901iC :uyR.lwfs
#559 [ゆーちん]
ママに見送られてリビングを出た。
玄関を開けて、外に飛び出す。
先生の車があった。
一気に顔が綻ぶ。
「先生!」
「ずる休み女子高生!」
「アハハ。何そのあだ名。」
「はい、乗って下さいな。」
:08/12/11 13:06 :SH901iC :uyR.lwfs
#560 [ゆーちん]
先生はいつもと変わらない笑顔だった。
ねぇ。
私の笑顔もいつもと同じ?
910号室に着いた。
「お風呂ためて。」
「はーい。」
シャワーで浴槽を軽く流してからスイッチを押す。
たまったら、先生と一緒にお風呂に入ろう。
着替えなら、確かストックがあったはず…。
:08/12/11 13:07 :SH901iC :uyR.lwfs
#561 [ゆーちん]
リビングに戻った。
「先生。」
「ん?」
返事はキッチンから聞こえた。
「何してんの?」
「鍋焼きうどん作ってる。」
「へぇ。」
「誰かさんが体調悪いとか言うから、わざわざうどん買って来たんだよー。」
:08/12/11 13:08 :SH901iC :uyR.lwfs
#562 [ゆーちん]
「だから迎えが遅かったのか!」
「失礼ね、今時の女子高生は。」
「ハハッ。何でおかま口調なの!」
笑いながら鍋焼きうどんの完成を待った。
何から伝えればいいかな。
こんな幸せで安らぐ事って他にないの。
:08/12/11 13:09 :SH901iC :uyR.lwfs
#563 [ゆーちん]
ありきたりな言葉だけど、私にとって先生は…必要な存在なんだよ。
涙が出るくらい、先生に恋してる。
「いただきます!」
「召し上がれ!」
温かいと言うより熱い。
そんな鍋焼きうどんをつつきながら食べた。
美味しかった、すごく。
:08/12/11 13:10 :SH901iC :uyR.lwfs
#564 [ゆーちん]
食べ終わり、片付けを済ませて、テレビをつけた。
「先生。」
「はい、桜井。」
「好きだよ。」
「…おいおいおいおい。いきなり照れる事言わないでよ。熱でもある?」
「本当だよ。私さ、昔はね隣に誰かいると眠れなかったの。」
:08/12/11 13:11 :SH901iC :uyR.lwfs
#565 [ゆーちん]
今までの彼氏と、一緒に眠った事のない私。
「あぁ、だから初めて会った時いきなり起きたんだ。」
初めて会った時。
…そうだ。
屋上で昼寝していた私の隣に先生が来たんだっけ。
:08/12/11 13:11 :SH901iC :uyR.lwfs
#566 [ゆーちん]
「寝顔見ようと思ったらパッて起きちゃってさ。普通、寝てたら気付かないよ。」
「うん。でもさ、先生の隣だと眠れるんだよね。不思議でしょ?」
先生は私の肩を抱いた。
もう一方の手で私の両手を包み込んでくれた。
「不思議だよー。俺がこんなガキに惚れるなんて、人生不思議な事だらけ。」
:08/12/11 13:12 :SH901iC :uyR.lwfs
#567 [ゆーちん]
ダメだ。
泣けてきた。
好きな人に好きと言われて、嬉しいに決まってるじゃん。
「先生、私さ…」
もう…隠し事は嫌だった。
「援こ‥」
「援交なら知ってるから。」
:08/12/11 13:12 :SH901iC :uyR.lwfs
#568 [ゆーちん]
『え。』と小さな声を零した私に、先生は言った。
「ずっと知ってた。初めて会った時から、この子悪い事してるなって気付いてた。」
涙は勝手に零れて来た。
「何で…」
「いつか辞めるって信じてたから。だから言わなかった。」
:08/12/11 13:14 :SH901iC :uyR.lwfs
#569 [ゆーちん]
繋いだ手に力が入ったのがわかった。
「俺、昔やんちゃだったからそういう事してる女友達いっぱい見て来たんだ。だから斗美もすぐにわかった。」
「私…汚いのに、何で優しくしてくれんの…」
「好きになっちゃったもん、仕方ないじゃん。」
:08/12/11 13:14 :SH901iC :uyR.lwfs
#570 [ゆーちん]
こんなに私を想ってくれている人がいるのに、どうして早くに辞めてなかったんだろうと、後悔だけが私を支配していた。
「辞めてくれた時は嬉しかったよ。辛かったでしょ?ずっと頑張ってたもんね。」
何言ってんの。
先生だって辛かったくせに、こんな時も私をかばってくれる。
:08/12/11 13:15 :SH901iC :uyR.lwfs
#571 [ゆーちん]
援交してた事叱らないの?
叱ってくれない方がキツいな。
「辞めたはずなのに、今日会った斗美はまた悩み事ある顔してるしさ。もう隠し事なしにしてよ。俺の事信じてみない?」
:08/12/11 13:16 :SH901iC :uyR.lwfs
#572 [ゆーちん]
「ごめんなさい。」
昨日の夜の事を話した。
誘拐された。
淀江さんとの関係。
将来風俗に売られるかもしんない。
それと…
「私、汚いんだ。先生以外の人にも…」
泣いていた私の手をずっと繋いでくれていた。
:08/12/11 13:17 :SH901iC :uyR.lwfs
#573 [ゆーちん]
「淀江さんにも反応して…最低でしょ、私。ごめんな…さい。」
淀江さんのSEXに感じていた事が1番の汚点だった。
目が痛いくらい泣いた。
「ごめんなさい…。」
「ん、わかった。もういいよ。」
こんな時でも先生は優しかった。
:08/12/11 13:18 :SH901iC :uyR.lwfs
#574 [ゆーちん]
「その淀江って奴、殺してやるから。」
先生が言うと洒落にならない。
本当に殺しそうで怖かった。
「辞めて…そんな事しないで。」
「人の女をバカにしやがって…親父ごときが調子乗ってると痛い目に遭うって事教えてやんないと。」
:08/12/11 13:19 :SH901iC :uyR.lwfs
#575 [ゆーちん]
昔、不良だっただけあって何かしでかしそうで本当に怖い。
でもこれで私にも勝ち目はある。
先生にバレたくないから淀江さんに従っていたけど、もうこれで従う意味はなくなった。
「明日、警察行くから。」
:08/12/11 13:19 :SH901iC :uyR.lwfs
#576 [ゆーちん]
警察に行けば何とかなる。
ひとまず先生の怒りを沈めた。
「風呂行くぞ。」
「…うん。」
機嫌が悪い先生。
当たり前だ。
私のせいなんだから。
私が悪い。
「斗美。」
「ん?」
:08/12/11 13:21 :SH901iC :uyR.lwfs
#577 [ゆーちん]
湯舟につかり、正面に座る先生は言った。
「そんな自分を責めなくていいから。若気のいたりってやつだろ?反省してるならもういいから。斗美には怒ってないよ。俺は淀江に怒ってんだ。」
「でも…」
「おいで。」
手招きされ、私は先生の方に移動した。
:08/12/11 13:23 :SH901iC :uyR.lwfs
#578 [ゆーちん]
抱きしめられたこの体は汚い体なのに、惜しみなく力強いハグだった。
「汚くないから。でもこれからは俺だけの体だからな。他のとこ行っちゃダメだぞー。」
「…うん。」
「はい、泣かなーい!もう16歳でしょ〜?」
:08/12/11 13:24 :SH901iC :uyR.lwfs
#579 [ゆーちん]
先生に抱き着いて、止まった涙をまた流した。
この人のために私は変わらないと。
私でも、幸せになれるんだ。
幸せになりたいんだよ。
:08/12/11 13:25 :SH901iC :uyR.lwfs
#580 [ゆーちん]
翌日、朝から警察に行った。
最初は相手にされなかったけど親切な警察官が対応してくれて、真剣に話を聞いてくれた。
その日の午後、淀江さんと他の3人は逮捕された。
未成年に売春行為をさせた事が理由。
もちろんママにもバレた。
:08/12/11 13:27 :SH901iC :uyR.lwfs
#581 [ゆーちん]
事情聴取で、ママは…泣いていた。
私のために泣いてくれるなんて思ってなかったから、嬉しくて私も泣いた。
帰りはママと歩いて帰った。
叱られなかった。
逆に謝られてしまった。
:08/12/11 13:27 :SH901iC :uyR.lwfs
#582 [ゆーちん]
「もっと斗美にも甘やかせてあげればよかったね。ママが悪かったよ。」
「そうだね、って言いたいけど…さすがにこれはママが原因じゃないもん。私が悪いの。悪いってわかっててあんな事したんだから。」
ママを困らせたくて援交をしていた。
:08/12/11 13:28 :SH901iC :uyR.lwfs
#583 [ゆーちん]
その結果、本当にただ悲しませるだけのものとなってしまっていた。
「斗美は社交的だからあまり気にしてなかったの。お姉ちゃんだし、大丈夫かなって。斗羽ばっか構ってたから…ごめんね。」
泣きそうなのを我慢して『私もごめん。』と言った。
:08/12/11 13:29 :SH901iC :uyR.lwfs
#584 [ゆーちん]
「私このまま彼氏んち行くから。」
「彼氏はこの事知ってるの?」
「うん。彼氏のおかげで自分ら警察行けたの。」
「そう。彼氏に感謝しないとね。今度連れて来なさい。」
「んー…考えとく。禁断の恋だからさ。」
「禁断?」
「彼氏、私の学校の先生なの。」
:08/12/11 13:30 :SH901iC :uyR.lwfs
#585 [ゆーちん]
友達にも言った事ない言葉をママに言うって不思議な感じだった。
「そう。もうそんな事ぐらいじゃママ驚かないわ。」
ママは笑った。
「ごめんね。でも私さ、先生に出会って変われたの。」
優しい笑顔で笑ってくれた。
:08/12/11 13:31 :SH901iC :uyR.lwfs
#586 [ゆーちん]
すっかり暗くなった夜道でママと別れ、私は910号室に帰った。
…ピンポーン。
「はい。」
「ずる休み2日目女子高生です。」
「入室拒否だな。」
そう言って笑った先生。
中から鍵を開けてくれた。
「お疲れさん。」
:08/12/11 13:31 :SH901iC :uyR.lwfs
#587 [ゆーちん]
「うん。これからも事情聴取で警察行かなきゃだけど、もうこれで開放されたのかと思うと…泣けてきた。」
先生の胸に飛び込んで、私は声を出して泣いた。
泣かないって決めてたのに。
「先生ごめんね。ごめんなさい。」
:08/12/11 13:32 :SH901iC :uyR.lwfs
#588 [ゆーちん]
逮捕されたとは言え、いつかはまた太陽の浴びる世界に出てくるであろう淀江さん。
また誘拐に来るかもしれない。
でももう逃げ隠れする必要はない。
だってさ…
「俺がずっと守ってあげるからねぇ。」
たくましい彼氏がいるんだもん。
:08/12/11 13:33 :SH901iC :uyR.lwfs
#589 [ゆーちん]
ブランド物は売りに行こう。
捨てるのは可哀相でしょ?
バッグや財布に罪はない。
売れたお金は受け取らない。
もう、お金なんていらない。
秘密もいらない。
先生だけいればいい。
:08/12/11 13:34 :SH901iC :uyR.lwfs
#590 [ゆーちん]
〔斗羽〕
冬が来た。
ラブホテルで園田さんとSEXをした。
「斗羽ちゃんって日に日にエッチになってくよね。」
「誰のせいですか?」
「アハハッ。俺?」
「そうですよ?」
そんな事を言って、園田さんと楽しい時間を過ごした。
だけどSEXは気持ち良くなんかなかった。
:08/12/11 13:35 :SH901iC :uyR.lwfs
#591 [ゆーちん]
翌日、太一くんとSEXをした。
「アッ…ンンッ…」
「斗羽…ちゃ…」
二股の何が悪いの。
不倫や浮気の何がいけない?
好きになったんだから仕方ないじゃない。
「たい…ち…アァッ…ンン、ンッ…」
:08/12/11 13:35 :SH901iC :uyR.lwfs
#592 [ゆーちん]
初めてSEXが気持ち良いものだって知った。
太一くんは初めて私をイかせてくれた。
これが本当のSEXなんだと思った。
園田さんより、太一くんに会う事が増える。
太一くんとのSEXも増える。
どんどんと大胆に体を重ね合わせていた。
:08/12/11 13:36 :SH901iC :uyR.lwfs
#593 [ゆーちん]
冬休みが近付く12月は、人肌が心地よかった。
何度だってキスをしたい。
何度だって抱きしめられたい。
何度だってSEXしたい。
私は完全に狂い始めていた。
恵と別れない太一くんにももう悲しんだりしない。
私は2番目なんだから。
:08/12/11 13:37 :SH901iC :uyR.lwfs
#594 [ゆーちん]
「明日から冬休みだっけ?」
ママは私と斗美に問い掛けた。
「そうだよ。」
斗美が答えた。
不思議。
今まで、ママの質問には私が必ず答えていたのに。
斗美が答える事なんかほとんどなかった。
:08/12/11 13:38 :SH901iC :uyR.lwfs
#595 [ゆーちん]
最近、斗美に近づきたいという意識はめっきり消え、私から離れて行ってるような気がする。
斗美とあまり関わらない内に、姉はまた綺麗になっていた。
雰囲気もどこか落ち着いている。
少し前まではピリピリと機嫌が悪い事が多くて、よく気を使ったっけ。
:08/12/11 13:38 :SH901iC :uyR.lwfs
#596 [ゆーちん]
「しあさって、クリスマスイヴじゃない?二人共どうするの?」
そうだ。
明日は12月22日。
しあさっては12月24日。
どうしようかな…。
「私は彼氏んち行くよ。」
ママの質問に、斗美は迷い1つ見せずに答えた。
斗美、彼氏いるんだ。
:08/12/11 13:39 :SH901iC :uyR.lwfs
#597 [ゆーちん]
前に言ってたよね。
私の彼氏は体目的だけで付き合ってる、って。
今の彼氏もそうなのかな?
あの時、斗美の言ってる意味なんかわからなかった。
だけど今なら、今の私なら、理解できるかもしれない。
:08/12/11 13:40 :SH901iC :uyR.lwfs
#598 [ゆーちん]
園田さんも太一くんも、結局は私のこと体目的なのかもしれないよ。
「斗羽は?」
「まだ未定。」
園田さんはきっと仕事。
太一くんも恵と過ごすんだろうな。
クリスマスイヴなんか、いらないや。
「じゃあママと2人でパーティーでもする?」
「パパは?」
:08/12/11 13:42 :SH901iC :uyR.lwfs
#599 [ゆーちん]
「どうせ帰って来るの遅いんだもん。」
「ママとパーティーかぁ。考えとくよ。」
部屋に戻って、さっそく考えた。
友達と過ごそうか。
今から誘うのも面倒だしな。
やっぱりママと過ごそうか。
いや、でも…
:08/12/11 13:43 :SH901iC :uyR.lwfs
#600 [ゆーちん]
《クリスマスイヴは仕事ですか?》
送信。
《クリスマスイヴは恵と過ごすの?》
送信。
一応ね、一応。
やっぱりクリスマスイヴくらい、好きな人と過ごしたいもの。
好きな人…?
私には2人も好きな人がいるんだ。
贅沢者。
:08/12/11 13:44 :SH901iC :uyR.lwfs
#601 [ゆーちん]
いつかバチが当たるとはわかっていた。
そのバチが、もうすぐ私に降り懸かるなんて、この時の私はこれっぽっちも思ってなかった。
《ごめんね。仕事だ。》
園田さんだ。
珍しく返事が早い。
やっぱり、仕事か。
残念。
:08/12/11 13:45 :SH901iC :uyR.lwfs
#602 [ゆーちん]
《そうですか。私は21時に上がりだから、会えたら会いたいです。》
《俺は22時上がりかな。でもたぶん会う時間ないと思う。ごめんね。また埋め合わせするから。》
断られちゃった…。
失恋にも近いような気分になる。
ベットで落ち込んでいると、また携帯が鳴った。
太一くんからの返事だ。
:08/12/11 13:45 :SH901iC :uyR.lwfs
#603 [ゆーちん]
《ごめんね。別の日にクリスマスパーティーしような!》
結局は私が2番目だから、この有様なんだ。
わかりきっていた結果じゃない。
落ち込む事ないのに…どうして泣きそうに辛いんだろう。
:08/12/11 13:46 :SH901iC :uyR.lwfs
#604 [ゆーちん]
翌日は終業式だった。
明日から冬休み。
みんな自然と浮かれていた。
「斗羽ちゃーん。」
恵が話し掛けて来た。
「冬休み遊ぼうね!」
「うん…。」
:08/12/11 13:47 :SH901iC :uyR.lwfs
#605 [ゆーちん]
私なんかと遊びたい?
私はあなたの彼氏の浮気相手だよ。
…なんて、恵は知るはずないよね。
「明日、彼氏と過ごすの?」
「うん!たっくんの家に泊まり行くんだ。」
胸がチクリと痛んだ。
泊まり…かぁ。
彼氏の家に泊まるなんて、私には未知の世界だ。
:08/12/11 13:47 :SH901iC :uyR.lwfs
#606 [ゆーちん]
そして迎えたクリスマスイヴ。
この日は、私の運命の日だと思う。
そんな事、まだ知らない私はバイト先で笑顔を振りまいていた。
「桜井さん、休憩入って。」
店長からそう言われた私は休憩室へと向かった。
:08/12/11 13:48 :SH901iC :uyR.lwfs
#607 [ゆーちん]
「お疲れ様です。」
パートのおばさん達が帰って行く。
一気に静かになった休憩室の奥には…彼がいた。
目が合うと、園田さんはニコッと笑ってくれた。
「メリークリスマスイヴ。」
「アハハ。」
:08/12/11 13:49 :SH901iC :uyR.lwfs
#608 [ゆーちん]
夜、一緒に過ごせなくても、今こうやって少しでも話をする事ができて幸せだと感じた。
「今日、ごめんね。」
私は首を横に振った。
「今度、映画でも行こうね。」
気分が晴れた。
「…はい!」
笑顔が零れた。
その後、他の人も休憩室に入ってきたので二人っきりは終わり。
:08/12/11 13:51 :SH901iC :uyR.lwfs
#609 [ゆーちん]
残念だったけど、みんなで楽しく話せたからよかった。
「それじゃあ俺、休憩終わりなんで!」
そう言って園田さんは言ってしまった。
私は基本レジだし、園田さんは裏で作業をしているので仕事中、なかなか会えない。
今日、またもう一度会えればいいな。
会えるかな…。
:08/12/11 13:51 :SH901iC :uyR.lwfs
#610 [ゆーちん]
クリスマスイヴだけあって、今日のお客さんはカップルが多かった。
恵と太一くんが来ないか心配だったけど、お蔭さまで来なかったみたい。
よかった。
二人が一緒にいるところは見たくないもの。
21時、店長は申し訳なさそうに言った。
:08/12/11 13:52 :SH901iC :uyR.lwfs
#611 [ゆーちん]
「桜井さん、悪いんだけど1時間延長してもらえないかな?」
明日、バイトは休みだし別にいっか。
どうせ何も用はない。
「いいですよ!」
「助かるよ。ごめんね。」
そういう訳で1時間延長。
夜だと言うのに客足はなかなか減らなかった。
:08/12/11 13:53 :SH901iC :uyR.lwfs
#612 [ゆーちん]
残りの1時間。
矢のように過ぎて行った。
「桜井さん、上がっていいよ。」
店長にそう言われて時計を見ると短い針が10を指していて驚いた。
さっき見た時は9だったじゃない。
60分が5分に感じるよ。
「お疲れ様でした。」
:08/12/11 14:04 :SH901iC :uyR.lwfs
#613 [ゆーちん]
着替えを済ませ、裏口から外に出た。
…店長のバカ。
1時間、延長なんかしてなかったら、こんな辛い思いしなくてよかったのに。
その場から動けなかった。
見たくなかった。
21時上がりだと見なくて済んだのに。
園田さんが…キスをしているところを。
:08/12/11 14:05 :SH901iC :uyR.lwfs
#614 [ゆーちん]
見た事のない女性。
でも誰かはわかるよ。
園田さんの右手に握られていた左手の薬指には指輪が輝いていた。
…奥さんだ。
きっと、いや、絶対。
何ヶ月も奥さんとSEXしていないって理由もわかった。
:08/12/11 14:14 :SH901iC :uyR.lwfs
#615 [ゆーちん]
奥さんは、妊娠中だった。
お腹が大きい。
2人目を授かってるんだ。
今まで見た事のないような優しい顔で、園田さんは奥さんに笑いかけていた。
繋がれた手が、妙に目について、私の中で何かが崩れた。
二人は歩きだした。
園田さん、今日は車じゃないんだ…。
:08/12/11 14:15 :SH901iC :uyR.lwfs
#616 [ゆーちん]
ふと気付いた。
園田さんの繋がれていない方の手に、指輪があった。
嘘でしょ?って叫びたくなった。
いつもつけてないじゃない。
奥さんの前ではつけるの?
そんなの…ズルい。
いつもポケットに入れてたりしてたのかな。
:08/12/11 14:16 :SH901iC :uyR.lwfs
#617 [ゆーちん]
いつもどこかに奥さんとの愛を潜めて、私に笑ったりキスしたり抱きしめたりしてたのかな。
…涙は出なかった。
出たのは溜め息だけ。
もう、終わりだ。
キリがついた。
あんな姿見せられて、これ以上付き合えないよ。
:08/12/11 14:17 :SH901iC :uyR.lwfs
#618 [ゆーちん]
《映画には行かないです。もう会うのも辞めましょう。奥さんと仲良くしてください。元気な赤ちゃんが生まれますように。》
最後の文は嫌味だった。
二人の姿を見たよ、っていう皮肉たっぷりの言葉。
もう園田さんに愛を囁かれる事はない。
:08/12/11 14:18 :SH901iC :uyR.lwfs
#619 [ゆーちん]
前のように優しくされても、丸め込まれたりなんかしない。
ちゃんと断れる。
最初から不毛な恋だったんだ。
クリスマスイヴに終わった恋。
何もこんなイベントに終わらなくても…。
でも、こんな恋にはピッタリの終わり方だったのかもね。
:08/12/11 14:19 :SH901iC :uyR.lwfs
#620 [ゆーちん]
嫌な事は重なる物で、私にはもう一つ辛い事が降りかかってきた。
コンビニに寄ったのがいけなかったんだ。
「斗羽ちゃんっ!」
恵の笑顔の後ろには、目を反らす太一くんがいた。
「バイト帰り?」
「あ、うん…」
:08/12/11 14:21 :SH901iC :uyR.lwfs
#621 [ゆーちん]
「私は今からたっくんち。お菓子買いに来たんだぁ。」
「そうなんだ。」
私の笑顔は引きつっていなかった?
太一くんの笑顔は、引きつってたよ。
「斗羽ちゃんは明日どうするの?バイト?」
「バイトは休み。」
「じゃあ誰かと出掛けるの?」
:08/12/11 14:21 :SH901iC :uyR.lwfs
#622 [ゆーちん]
太一くんは私を見ない。
何でよ。
こっち見てよ。
せっかく会えたのに。
「彼氏と過ごすの。」
小声になった私。
だって嘘だもん。
彼氏なんかいない。
「彼氏いたんだぁ!今度紹介してね?」
「…うん。」
「じゃあまた遊ぼうね!」
:08/12/11 14:22 :SH901iC :uyR.lwfs
#623 [ゆーちん]
支払いを済ませていた二人はコンビニから出て行く。
その瞬間、私は見逃さなかった。
太一くんから恵の手を繋ぎに行った事。
そんな連続で繋いだ手は見たくないよ。
:08/12/11 14:23 :SH901iC :uyR.lwfs
#624 [ゆーちん]
もう太一くんとも終わりだって思った。
私から別れを切り出さなくても、太一くんはわかってくれたはず。
彼氏いるって嘘ついて、自分以外にもそういう相手がいるんだって思えばいい。
あれが私の精一杯の反抗。
最後の意地悪だよ。
…もう何もいらない。
:08/12/11 14:23 :SH901iC :uyR.lwfs
#625 [ゆーちん]
夜道を歩いていると、やっぱり携帯電話が鳴った。
《彼氏できたの?》
太一くんから。
やっぱりそこに食いついて来たか。
恵に隠れて送って来たんだ。
《太一くんに関係ない。恵と仲良くね。もう終わりにしよう。バイバイ。》
:08/12/11 14:24 :SH901iC :uyR.lwfs
#626 [ゆーちん]
それだけ送るともう返事は来なかった。
園田さんからも返事なし。
本当に終わったんだ。
もう期待はしない。
もう2番目は辞めよう。
「ただいま。」
玄関に入るとちょうど斗美がブーツを履いているところだった。
:08/12/11 14:26 :SH901iC :uyR.lwfs
#627 [ゆーちん]
「あー、おかえり。」
「ただいま。今から出掛けるの?」
「ううん。忘れ物取りに来ただけ。」
「そう。」
靴を脱いで私は中に入った。
すると後ろから斗美が言った。
「いいこと教えてあげよっか?」
「何?」
振り返るとブーツを履き終えた斗美が笑ってた。
:08/12/11 14:26 :SH901iC :uyR.lwfs
#628 [ゆーちん]
「30分ぐらい前かな。私が戻ってきた時、外に聡志来てたよ。」
「…聡志?」
「10分ぐらい待ってたけど帰った。」
「何しに来たんだろ。」
「さぁ?今日クリスマスイヴだし、意味ありげだね。」
斗美の笑顔はいつものように怪しい。
何か企んでいるような、そんな笑顔。
:08/12/11 14:27 :SH901iC :uyR.lwfs
#629 [ゆーちん]
「…連絡してみるよ。」
「いい事あるといいね。そんじゃ、よいクリスマスを!」
そう言って短いスカートから伸びる足を弾ませ、外に飛び出そうとした。
「あ、ねぇ斗美!」
ピタッと足を止め、『何?』と言う姉。
:08/12/11 14:28 :SH901iC :uyR.lwfs
#630 [ゆーちん]
「今の彼氏と上手くいってる?」
「は?何いきなり。」
「体目的だけの彼氏?」
「あー、そういうのはもう卒業した。今の彼氏はSEXしなくても愛が伝わってくるような人。」
そっか。
斗美は、幸せな恋愛をしているんだね。
よかったよ。
:08/12/11 14:29 :SH901iC :uyR.lwfs
#631 [ゆーちん]
「いいね。私もそんな恋したい。」
「案外近くに待ってるかもよ。クリスマスイヴに家まで来てくれるなんて、私はただならぬ愛を感じたけど?じゃあね。」
怪しい笑顔だけ残し、斗美は出掛けて行った。
ブーツの音が遠退いていく。
斗美は幸せへと向かって行ったんだ。
:08/12/11 14:29 :SH901iC :uyR.lwfs
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