冷たい彼女
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#130 [ゆーちん]
凜は何も言わなかったので、手を繋いだまま歩いた。
凜の手は小さかった。
今まで数少ないながら繋いだ女子の手の中でも、1番小さかった。
そんな小ささを、また好きになってしまう。
この波音が妙にロマンチックで、改めて波打つ海に感謝した。
「凜ちゃん。」
「何。」
:08/12/12 10:48 :SH901iC :ufvbrGno
#131 [ゆーちん]
「あっちの岩場にしない?」
遠くの方を指さした俺。
「何で。」
「もっと繋いでたいもん。」
そう言うと、凜はパッと手を離して、目の前の岩場に座った。
「香奈に殺されても知らないよ?」
:08/12/12 10:49 :SH901iC :ufvbrGno
#132 [ゆーちん]
シラッと言ったその言葉。
昨日の香奈の怖い顔を思い出してしまった。
「ごめん。明日も太陽が見たいから、ここでいいです。充分です。最高です。」
「香奈の名前聞いただけで焦りすぎでしょ。肝っ玉の小さい男は嫌いだからね。」
凜の隣に座ると、海が一望できた。
:08/12/12 10:50 :SH901iC :ufvbrGno
#133 [ゆーちん]
滅多に夜の海なんか来ないから、いつも遊んでる場所とは違う感じがした。
「今日は爆発頭じゃないんだね。」
「爆発頭?」
「うん。学校には毎日アフロみたいに爆発頭で来てるじゃん。」
凜ちゃん、そりゃないよ。
あれは爆発頭でもなけりゃアフロでもない。
:08/12/12 10:51 :SH901iC :ufvbrGno
#134 [ゆーちん]
「あれは、一応ワックスでセットしてんだけどぉ。」
「ふーん。そうだったの。」
わかってたくせに。
凜は俺を悲しませるのが得意みたいだ。
「シャワー浴びたから、もうワックスするの面倒でそのままにしたの。どっちのが似合う?」
:08/12/12 10:52 :SH901iC :ufvbrGno
#135 [ゆーちん]
俺は母ちゃん譲りの猫っ毛。
クセが付かないから毎朝ワックスで自分の髪と格闘している。
「どっちでも。あんたの頭なんか興味ない。」
ザブーンっと波音だけが虚しく響いた。
「ギャップにドキッとしたりとか‥」
「してないから安心して。」
:08/12/12 10:54 :SH901iC :ufvbrGno
#136 [ゆーちん]
最近、凜ちゃんに冷たくされるのにも慣れて来たかも。
でもさ、俺も男じゃん。
1つだけ慣れないっつーか、慣れちゃいけないとこがあるんだよね。
「あんたさぁ‥」
「凜ちゃん。」
「えっ、何?今から私が話そうとしてたのに。」
「凜ちゃん、俺の名前知ってる?」
:08/12/12 10:55 :SH901iC :ufvbrGno
#137 [ゆーちん]
凜は今まで一度も俺の名前を呼んだ事がない。
最初は気にならなかった。
でも『あんた。』って言われるたびに、溝は縮まらないなって寂しかった。
「何、いきなり。」
「俺の名前知らないなら教えるから、ちゃんと名前で呼んでよ。」
:08/12/12 10:56 :SH901iC :ufvbrGno
#138 [ゆーちん]
凜の大きな目はじっと俺を見ていた。
「もう、あんたって呼ばれんの嫌だ。」
「…。」
強い瞳。
俺も強い目で凜を見た。
「…知ってるよ。」
「え。」
「名前。江森心。」
竜くん。
僕いま泣きそうに嬉しいんですけど。
:08/12/12 10:57 :SH901iC :ufvbrGno
#139 [ゆーちん]
「名前呼んでよ。」
「…やだ。」
「何でさぁ。」
「あんたはあんただもん。呼び慣れた。」
「えぇー、そんなぁ。」
大輝くん。
嬉しいと悲しいが混ざった涙を流したいんですけど、いいですか?
:08/12/12 10:58 :SH901iC :ufvbrGno
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