冷たい彼女
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#135 [ゆーちん]
俺は母ちゃん譲りの猫っ毛。


クセが付かないから毎朝ワックスで自分の髪と格闘している。


「どっちでも。あんたの頭なんか興味ない。」


ザブーンっと波音だけが虚しく響いた。


「ギャップにドキッとしたりとか‥」

「してないから安心して。」

⏰:08/12/12 10:54 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#136 [ゆーちん]
最近、凜ちゃんに冷たくされるのにも慣れて来たかも。


でもさ、俺も男じゃん。


1つだけ慣れないっつーか、慣れちゃいけないとこがあるんだよね。


「あんたさぁ‥」

「凜ちゃん。」

「えっ、何?今から私が話そうとしてたのに。」

「凜ちゃん、俺の名前知ってる?」

⏰:08/12/12 10:55 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#137 [ゆーちん]
凜は今まで一度も俺の名前を呼んだ事がない。


最初は気にならなかった。


でも『あんた。』って言われるたびに、溝は縮まらないなって寂しかった。


「何、いきなり。」

「俺の名前知らないなら教えるから、ちゃんと名前で呼んでよ。」

⏰:08/12/12 10:56 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#138 [ゆーちん]
凜の大きな目はじっと俺を見ていた。


「もう、あんたって呼ばれんの嫌だ。」

「…。」


強い瞳。


俺も強い目で凜を見た。


「…知ってるよ。」

「え。」

「名前。江森心。」


竜くん。


僕いま泣きそうに嬉しいんですけど。

⏰:08/12/12 10:57 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#139 [ゆーちん]
「名前呼んでよ。」

「…やだ。」

「何でさぁ。」

「あんたはあんただもん。呼び慣れた。」

「えぇー、そんなぁ。」


大輝くん。


嬉しいと悲しいが混ざった涙を流したいんですけど、いいですか?

⏰:08/12/12 10:58 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#140 [ゆーちん]
しばらくすると凜は話し始めた。


「私さぁ、前の街ではこんな風にのんびり過ごした事なかった。」

「のんびり?」

「うん。毎日毎日携帯触って誰かとアポ取って、用もないのに外に出掛けてさ。」

「あ…さっき言ってた携帯依存症とかって、その事?」

⏰:08/12/12 10:59 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#141 [ゆーちん]
月明かりが凜を照らしていた。


こんな明るい夜は滅多にないよ。


「うん。寝ても覚めても携帯触ってた。誰かと連絡取ってないと不安だったの。でもさ、それって結構疲れんの。そんな時ちょうどこの島に来てさ、かなり驚いた。」

⏰:08/12/12 11:00 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#142 [ゆーちん]
「何が?」

「みんな時間にルーズで、おじいちゃんもおばあちゃんも優しくて、島のみんなが笑ってる。私、前は隣の人に挨拶した事もなかったのに…この島の人はみんな家族みたいに優しくしてくれる。」


俺はこの島のことしか知らない。

⏰:08/12/12 11:01 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#143 [ゆーちん]
都会でどんな近所付き合いをしてるかなんか、もっと知らない。


最近、物騒な世の中だってよくニュースで見るけど、同じ日本だとは思えない。


殺人とか誘拐とか、この島には無縁だ。


「友達と離れるのは寂しかったけど、そんなの最初だけ。」

⏰:08/12/12 11:02 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#144 [ゆーちん]
「そうなの?」

「みんな上辺だけの付き合いしかしないの。でも、この島の人は違った。毎日メールや電話なんかしなくても、次の日も普通に接してくれる。あんたや香奈がいい例だよ。」


確かにね。

⏰:08/12/12 11:03 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


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