冷たい彼女
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#332 [ゆーちん]
○●○●○●○
寂しさ
○●○●○●○
:08/12/12 23:05 :SH901iC :ufvbrGno
#333 [ゆーちん]
「島、出る事にした。」
海を見ながら凜が俺にそう言ったのは2月14日。
バレンタインデーのチョコをもらった直後だった。
「…そっか。」
「一人暮らしのマンションがC高に近いから、たぶんC高に行く。」
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#334 [ゆーちん]
「じゃあA高と近いから制服デートできるねぇ!」
俺は精一杯、応援の笑顔で振る舞った。
だけどその笑顔は、逆に凜を悲しませてしまった。
「…寂しいんだけど。」
「…。」
何も言えない。
「心は寂しくないの?私が島出てっても平気なの?」
:08/12/12 23:06 :SH901iC :ufvbrGno
#335 [ゆーちん]
寂しいに決まってんじゃん。
平気な訳ないじゃん。
本当の事言えば、凜の考えを鈍らせてしまいそうで恐かったんだ。
だからって上手い嘘をつけるほど、俺はひねくれて育ってない。
「…行くなって言ってくんないの?」
「…。」
チョコレートを握る手に力が入る。
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#336 [ゆーちん]
「嘘でもいいから、引き止めるような言葉、聞きたかったんだけどな。」
凜はそう言って、俺の前を横切って行った。
嘘なんかつけるわけないじゃん。
一人きりになった海は、泣けてくるほど寒かった。
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#337 [ゆーちん]
凜に置き去られて正解だ。
でも何かショックでさ。
可愛らしいピンクの紙袋に入れてラッピングされていたチョコレートを持ちながら、島中を歩いていた。
あてもない。
自分の家に帰る気になれず、竜か大輝の家に行こうと思ったけど…辞めた。
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#338 [ゆーちん]
だからブラブラしてた。
「心?」
呼び止められて振り向くと、美帆がいた。
「おぉ、美帆。」
「何してんの、こんなとこで。家と真逆の方向じゃん。」
「放浪中。」
「そんな可愛い袋持って?」
「あぁ…うん。」
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#339 [ゆーちん]
美帆は何か感づいたらしく、ニヤッと笑った。
「凜と何かあったんだ。」
「…。」
「バレンタインの夜にこんな場所で、そんな暗い顔してるなんて千夏が知ったら怒るよ?」
「…千夏?」
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#340 [ゆーちん]
「うん。今日はチョコ渡す相手がいないってピリピリしてた。恋人がいる奴は誰ふり構わず殴り倒してやるーって叫んでたもん。」
「ハハッ。何だそりゃ。」
千夏が暴れるところを想像すると、俺にも笑みが零れた。
「で?恋人のいる幸せな心さんは、なんで泣きそうな顔してんのさ。」
「んー…。」
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#341 [ゆーちん]
俺の濁る笑顔を見て、美帆は言った。
「うちおいで。」
俺を抜かして美帆は前をスタスタと歩き始めた。
俺は何も言わずに美帆の後ろをついてった。
「やべー、菊地家とか久しぶりだわ。」
「小学生のころは毎日来てたのにね。中学上がって、心に彼女ができて、それから全然来なくなった。」
:08/12/12 23:10 :SH901iC :ufvbrGno
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