冷たい彼女
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#376 [ゆーちん]
一緒に過ごした1年間。
離ればなれになる友達。
後輩たちとの別れ。
やっぱそれなりに俺は寂しくて、泣けたんだ。
「そうじゃないよ。」
「…ん?」
「ココロの中では泣いてた。表面で泣かなかったのは、ちゃんと目に焼き付けたかったから。」
:08/12/13 16:42 :SH901iC :1vm0Oe8g
#377 [ゆーちん]
凜の冷たかった手が、俺の温もりを受け継いで、どんどん暖まって来た。
「この中学校の事ほとんど何にも知らないまま卒業もやだなって思って、せめて卒業式って行事だけでもココロに焼き付けないと、って。こういう考えって変?」
:08/12/13 16:42 :SH901iC :1vm0Oe8g
#378 [ゆーちん]
ちっとも変じゃない。
凜ちゃんらしい考えだと思う。
やっぱりカッコイイよ。
「俺はいい彼女を捕まえたなぁ〜。」
「…フフッ。何だそれ。」
「いい男にはいい女。」
「いい男?どこよ、それ。」
「…泣いちゃうぞぉ。」
:08/12/13 16:43 :SH901iC :1vm0Oe8g
#379 [ゆーちん]
「まだ泣く気?式であんなに泣いてたくせに。」
「香奈や大輝よりマシだっつーの!」
笑い声を響かせながら最後の下校が終わった。
後でまた会えるし、一緒に手を繋いで歩く事もできる。
でも制服を着て【下校】するのは、これが最後なんだ。
寂しい。
:08/12/13 16:45 :SH901iC :1vm0Oe8g
#380 [ゆーちん]
杉浦家を後にし、のんびり歩いて江森家に到着。
「ただいま〜。」
玄関のドアを開けた直後だった。
「心!」
振り向くと、息の上がった凜がいた。
「えっ、どうしたの。」
「忘れてた!」
「え?」
:08/12/13 16:48 :SH901iC :1vm0Oe8g
#381 [ゆーちん]
「…写真。」
凜の手にはカメラが握られていた。
小さく笑った凜の息は、もう元に戻っている。
「写真?」
「制服着るの最後だよ。記念に撮ろう?二人でなんか滅多に撮らないし。」
凜の嬉しい誘いは、断るという選択肢なんてない。
:08/12/13 16:49 :SH901iC :1vm0Oe8g
#382 [ゆーちん]
開いたままのドアから、家の中に向かって俺は叫んだ。
「母ちゃーん!ちょっと来て!」
「えー、何?」
卒業式後の母ちゃんは、まだ着替えもせずに、ちょっと着飾ったままの格好だった。
「写真撮って。」
「写真?」
:08/12/13 16:49 :SH901iC :1vm0Oe8g
#383 [ゆーちん]
外に出てくると、母ちゃんに気付いた凜は笑顔で頭を下げた。
「あぁ、凜ちゃん!」
「こんにちは。」
「写真って凜ちゃんと?」
母ちゃんの質問に俺は低い声で答えた。
「こういう写真は普通、校門前で撮るんだけどなぁ。」
:08/12/13 16:50 :SH901iC :1vm0Oe8g
#384 [ゆーちん]
母ちゃんは場所に文句があるらしく、なかなかシャッターを押してくれなかった。
「海をバックにしようよ。」
凜の提案に母ちゃんは食いつき、ほんの数歩だけ歩いて、俺らの背景を海と決めた。
「うん。今日は天気いいから海も良い感じだわ。」
「んじゃ撮って。」
「…はい、ポーズ。」
:08/12/13 16:51 :SH901iC :1vm0Oe8g
#385 [ゆーちん]
カメラが光る。
ボタン一つで何十年も先まで思い出が作られるのは、本当すげぇ話だよな。
「もう一枚ね。」
ポーズを変えて、もう一枚。
「はい、OK!」
「ありがとうございます。」
2枚を撮り終えた母ちゃんは言った。
:08/12/13 16:52 :SH901iC :1vm0Oe8g
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