闇の中の光
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#178 [ゆーちん]
「うん、完璧。俺って天才?」

「…。」

「よかったなシホ。お前は顔ちいせぇからこの髪形のが似合うぞ。」

「…。」

「何だよ。文句あるか?」

「ない。」

「よし。明日美容院行ってその明るい金髪をもう少し上品にしてもらおうな。」


脱色しすぎた私の髪を見て言った哲夫。


「テツだって、金髪。」

⏰:09/01/01 18:09 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#179 [ゆーちん]
「俺は目立たないと。でもシホは目立っちゃダメ。また野良犬と喧嘩でもされちゃ困るから。」

「美容院に行くなら、何でテツが髪切ったの?」

「シホの初披露なんだぞ?あんなボサボサ頭じゃ飼い主の俺のプライドが許さない。」


哲夫はそう言って笑った。

⏰:09/01/01 18:10 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#180 [ゆーちん]
「プライド…」


私にはそんなもの、ない。


「毛先傷みすぎでしょ。」


切り落とした私の髪を見て、哲夫が呟いた。


「バッサリ切ったから、綺麗な髪になったぞ。」


哲夫に褒められると、なぜか心が痛かった。

⏰:09/01/01 18:11 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#181 [ゆーちん]
名前も見た目も生まれ変わった私。


このメイクが、この髪がシホなんだ。


なんだか少し、自分が好きになった。


「歩いて行くか、バイクで行くか、車で行くか、お迎えに来てもらうか。さぁ、どれにする?」


哲夫に質問に『歩く。』と答えた。

⏰:09/01/01 18:11 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#182 [ゆーちん]
「元気だな。」

「体なまるの嫌だもん。」

「そここだわるんだね。」


笑って頭を撫でた哲夫。


今日は私も一緒に家を出るんだ。


哲夫の背中を見送らずに済む。


肩を抱かれて、暗くなった道を歩く。


どこに向かってるのかは、わからない。

⏰:09/01/01 18:12 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#183 [ゆーちん]
しばらく歩くと雑音が耳に入った。


昨日乗った康孝の車のように騒々しい音。


「…うるさいのが聞こえてきた。」

「アハハ。そのうるさい集まりのボスは俺だからね。」


大きい音が苦手。


怒鳴り声も怖い。


心臓が痛くなる。

⏰:09/01/01 18:24 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#184 [ゆーちん]
萌子の時に受けた傷のトラウマなんだ。


早くこの心の傷も癒し切って、シホに生まれ変わりたいよ…。


角を曲がると、そこには今までの街とは別の世界が広がっていた。


明るい。


賑やか。


うるさい。


ついつい目を背けたくなるような世界だった。

⏰:09/01/01 18:25 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#185 [ゆーちん]
「哲夫さん、お疲れ様です!」

「テツさん、お疲れ様でーす!」

「テッちゃん、お疲れ。」


たくさんの声が哲夫にかかる。


たくさんの呼び名を持つ千早哲夫は、『お疲れ。』と返事した。


「シホちゃん?」


見覚えのある顔が近付いて来た。


康孝だ。

⏰:09/01/01 20:29 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#186 [ゆーちん]
「康、みんなにシホ紹介してやって。」

「おぉ、わかった。」


そう言って康孝は、哲夫の隣に立ち、みんなの方を向いた。


「はぁーい、ちゅうもぉーくっ!」

⏰:09/01/01 20:30 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#187 [ゆーちん]
大きな声。


静かになった集団。


小刻みに震える車やバイクのエンジン音だけが、響いていた。


たった一言で全員を黙らせる康孝。


さすが管理職。


「こちら、シホちゃん。テッちゃんの女だ。」

⏰:09/01/01 20:30 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


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