闇の中の光
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#273 [ゆーちん]
必死に探した。


頭痛薬、腹痛の薬、胃薬、花粉症の薬…


手に取るたびに欲しい薬以外のものが現れる。


「あ、あった!」


風邪薬は1番底にあった。


「ちょうだい…」

「うん。あ、待って!」

「え?」

「…どうしよ。使用期限過ぎてる。」

⏰:09/01/04 23:28 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#274 [ゆーちん]
2年以上も前の薬。


どうして点検してくんなかったんだろう、と少し前までこの部屋の掃除などをしていた新人に腹が立った。


そんなの私のせいでもあるのにね。


「無いよりマシだ…ちょうだい…」

「でも、余計に悪化するといけないし。」

⏰:09/01/04 23:28 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#275 [ゆーちん]
迷う暇なんかなかった。


「待ってて。」


哲夫の財布を握り、私は家を飛び出した。


シホになって初めての事。


一人だけで家の外に出た事なんかない。


一人だと、妙に恐かったから。


だけどそんなのビビってる訳にいかない。

⏰:09/01/04 23:30 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#276 [ゆーちん]
哲夫が苦しんでいるんだ。


私はコンビニまで走った。


息が上がる。


久しぶりに体を動かした。


なまらないように気をつけていたはずなのに、やっぱり運動不足だ。


息が苦しい。


「すみません、風邪薬どこですか?」

⏰:09/01/04 23:30 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#277 [ゆーちん]
だけど私より、哲夫の方が苦しいんだ。


店員に教えてもらい、即購入。


来た道を走りながら戻る。


「テツ!」


家に帰ると、『脱走すんな、バカ。』と汗だくの哲夫が笑った。


無理に笑わなくていいよ。


苦しいくせに。

⏰:09/01/04 23:31 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#278 [ゆーちん]
水をコップに汲み、薬を哲夫に飲ませた。


「初めての…おつかい…偉かったな…」


バカ。


無理に笑わないでよ。


何だか泣けてくる。


「シホが…買ってくれた薬だ。すぐに…治るよ。」


辞めて。


自分が苦しいのに、私に気を使わないで。

⏰:09/01/04 23:32 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#279 [ゆーちん]
「ありがとな…」


頭なんか撫でないで。


自分が撫でられる立場なんだよ。


私に優しくしないで…。


「哲夫、着替えた方がいいよ。」

⏰:09/01/04 23:32 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#280 [ゆーちん]
人を介抱するなんて初めてだから、服を着替えさすのは私にとって大仕事。


やっと着替えが終わった頃には、薬が効いてきたらしく哲夫は眠ってしまった。


このまま私も寝るってわけにはいかない。


哲夫の、看病しなくちゃ。

⏰:09/01/04 23:33 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#281 [ゆーちん]
テレビや漫画の見よう見真似。


冷たいタオルをおでこに乗せて、部屋を温かくする。


哲夫を起こさないように体温計で熱を計ると、38.9度もあった。


もっと汗をかかせなきゃ。


でも、もし風邪じゃなかったら…


もし、この看病の方法が間違ってたら…

⏰:09/01/04 23:34 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#282 [ゆーちん]
哲夫、死なないで。


そんな事ばかり願っていた。


「テツ…」


とりあえず、私にできる事をしよう。


こまめに冷たいタオルに変えて、温かい格好をさせれば大丈夫だよ。


萌子は、そうしてきた。


体調を崩したら、自分で自分を看病した。

⏰:09/01/04 23:35 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


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