闇の中の光
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#283 [ゆーちん]
大丈夫。


私は萌子じゃなくて、シホだけど、きっと大丈夫。


哲夫の看病、できる。


「哲夫、頑張ってね。」


主人の回復を祈るペットは、その夜、一睡もせずに哲夫の看病をした。

⏰:09/01/04 23:35 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#284 [ゆーちん]
タオルを変えて、汗だくの服も着替えさせて、体温を計る。


鳥が鳴く頃、37.5度まで下がった時には嬉しくて一気に緊張の糸がほどけた。


「よかったー。」


思わず哲夫の頭を撫でた。


綺麗な金色頭。


怖い顔して、寝顔は子供みたいな顔。

⏰:09/01/04 23:36 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#285 [ゆーちん]
昼前。


普段の起床時間。


哲夫は自然に目を覚ました。


私が作ったお粥を完食し、薬を飲み、もう一度眠ると言った。


「お前、寝た?」


『寝たよ。』と嘘をついた。


一睡もしないで看病してたの、なんて恩着せがましい事は言わない。

⏰:09/01/04 23:37 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#286 [ゆーちん]
眠る前、熱を計ると37.2度だった。


もう心配はない。


哲夫の回復力に感謝。


「俺、今日の集会は顔出すだけにするわ。」

「うん。」

「シホは居てもいいんだぞ?」

「ううん。私も哲夫と一緒に帰る。」

「そ。」

⏰:09/01/04 23:39 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#287 [ゆーちん]
再び眠りについた哲夫を見て、一気に安心した。


いつの間にか私はカーペットが敷いてある床で眠っていた。


起こされた時、集会に行く時間の30分前だった。


「哲夫、大丈夫なの?」

「ん。熱下がった。」


体温計をみせてもらうと、36.5度。

⏰:09/01/04 23:41 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#288 [ゆーちん]
「超〜平熱。」


ピースをして煙草の煙を私にかけた。


「よかった。でも無理しないでね。」

「うん。看病の得意なペットのおかげだな〜。」

「いつから体調悪かったの?」

「…3日前。」


恥ずかしそうに笑った哲夫。


全然、気付かなかったよ。

⏰:09/01/04 23:42 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#289 [ゆーちん]
「何か体ダルいなーと思っててさ。で、昨日の集会の途中で急に限界迎えて、こりゃダメだって訳でシホ呼びに行って…実はそこから記憶ない。」

「えぇ?重症だよ、それ。」

「所々に記憶はあんだ。俺の財布持って家飛び出したと思ったら、薬持って帰って来たとか。後はタオル変えたり、体温計を脇に突っ込んで来たり。」

⏰:09/01/04 23:43 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#290 [ゆーちん]
哲夫は煙草を消し、コップの水を飲み干した。


「一晩中寝ずに起きててくれたんだろ?」


…知ってたんだ。


「ありがとな。」


お礼を言われると、嬉しい気持ちになる。


そんな、子供みたいな事をゆっくりと学び始めたんだ。


萌子じゃ学べなかった、人間くさい気持ち。

⏰:09/01/04 23:43 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#291 [ゆーちん]
「気付いてあげられなくてごめん。」

「何が?」

「3日も前から体調悪かったなんて…」

「気にすんな。最近一気に寒くなったから体調崩しただけだし。迷惑かけてごめんな。」


迷惑なんて思わない。


私は首を振った。

⏰:09/01/04 23:44 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#292 [ゆーちん]
だけど、体調の変化に気付けなかった事は気にするよ。


私の事はなんでも気付いているのに、私は哲夫の事、何にも感じ取ってあげらんない。


あぁ…何となく人間らしくなって来たのかな、ってこの時思った。


悔しさとか嬉しさとか…そういう感情があるのは人間くさいでしょ。

⏰:09/01/04 23:45 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


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