闇の中の光
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#492 [ゆーちん]
どうして生きているんだろうと、自分を恥じたっけ。
「でさ、またまた目の前にいた、いかつい顔の金髪男がいたから、調度いい、殺してもらおうと思った。そしたら…萌子はあっという間に殺されて、シホっていうペットになってた。」
:09/01/15 18:35 :SH901iC :Jfqqe8Pw
#493 [ゆーちん]
「不思議な話だな。」
哲夫が笑った。
「不思議だよ。あんなに死にたいって思ってた萌子が、シホに生まれ変わった途端…死にたいなんて全く思わなくなった。むしろ生きたいとか、人間って楽しいって思うようになっちゃったの。本当…不思議だよ。」
:09/01/15 18:36 :SH901iC :Jfqqe8Pw
#494 [ゆーちん]
哲夫が私を抱きしめる力が強くなったのがわかった。
「私はシホなのに、死んだはずの萌子がまだどっか心の奥に潜んでるみたい。だから…喧嘩の声が、父の暴力する声と重なって、苦しくなっちゃった。」
:09/01/15 18:37 :SH901iC :Jfqqe8Pw
#495 [ゆーちん]
「なぁ、萌子。」
久しぶりに哲夫がその名前を呼んだ。
「萌子は死んだよ?」
「死んだ萌子に話し掛けてんの。」
「…ふーん。」
:09/01/15 18:39 :SH901iC :Jfqqe8Pw
#496 [ゆーちん]
「萌子さ、辛かったな。頑張ったよ。お前の辛さなんか、俺全然わかんないけど…殴られたりするのって痛いよな。俺も喧嘩して殴られた経験あるから痛いのわかる。でもな、殴る方も痛いんだよ。手と心が痛いんだ。」
今度は私が哲夫を抱きしめる力が強くなった。
「暴力はもちろん、いけねぇ事。萌子を苦しめたんだから。親が憎いよな。わかるよ、俺もそうだったから。」
:09/01/15 18:40 :SH901iC :Jfqqe8Pw
#497 [ゆーちん]
哲夫の小さな声が、耳元で響く。
「手は上げられてなくても、俺は言葉の暴力っつうの?それ体験してるんだ。でもさ、萌子の辛さに比べりゃ俺なんて屁だよ。萌子は女の子なのに…痛かったな。」
本当に、優しい声だった。
:09/01/15 18:41 :SH901iC :Jfqqe8Pw
#498 [ゆーちん]
我慢してたのに…。
あまりにも優しい声だから、涙が溢れた。
だけど泣いてるなんてバレたくないから、ただただ哲夫の腕の中に顔を埋めて、声を押し殺して泣いた。
「憎くて憎くて、殺してやりたいって思ったかもしんねぇ。でも…いくらムカつく奴でも、親には勝てないんだよ。」
:09/01/15 18:42 :SH901iC :Jfqqe8Pw
#499 [ゆーちん]
…勝てない?
「萌子の親は、四六時中お前に暴力振るったか?一時でも優しくしてくれた事はねぇの?」
…あるよ。
激しい暴力を振るわれたあと、なんだか優しかった。
父も母も、謝りはしなかったけど…萌子に対して一瞬だけど優しくしてくれた気がする。
:09/01/15 18:42 :SH901iC :Jfqqe8Pw
#500 [ゆーちん]
哲夫は、萌子の答えを聞いたかのように話を続けた。
「あるだろ?だったら、その親にまだ望みはある。諦めないで戦え。死んだら負けだ。親を殺せば、もっと負け。もし勝てなくても、引き分けならいい。」
:09/01/15 18:44 :SH901iC :Jfqqe8Pw
#501 [ゆーちん]
哲夫の声が、弱くなった気がした。
「俺はもう戦う相手がいないんだ。相手にしてくんねぇから、戦いたくても戦えねぇ。だから余計、萌子には戦って欲しい。俺の独りよがりだけど、わかってくれたら嬉しい。」
:09/01/15 18:48 :SH901iC :Jfqqe8Pw
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