闇の中の光
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#692 [ゆーちん]
「懐かしいな。」
康孝も『あぁ。』と私を見ながら懐かしんでいた。
「つい昨日の事みたい。制服着た女が俺のナイフ握って眠ってたんだよな。」
「哲夫の部屋に知らない女子高生がいて、俺すっげぇビックリした。」
:09/01/24 21:40 :SH901iC :JFMqBZYE
#693 [ゆーちん]
「髪も服も化粧もぐちゃぐちゃで汚かったよな。」
「いきなり殺せって要求するし?」
「哲夫に何言われたのか知んねぇけど、次会った時はケロッとした顔だった。」
二人は私を見ながら懐かしそうに昔話を続けた。
:09/01/24 21:42 :SH901iC :JFMqBZYE
#694 [ゆーちん]
色んな感情が混ざりあう。
嬉しいけど、寂しい。
恥ずかしいような、緊張するような。
二人の視線を気にしながらも鏡の前に座り、化粧をし始めた私。
化粧は、哲夫に教えてもらった【シホのメイク】を施した。
:09/01/24 21:42 :SH901iC :JFMqBZYE
#695 [ゆーちん]
髪形だってシホのまま。
この髪形には、この化粧が合うっていうのもあるけど…私は萌子でもあるしシホでもある、って事を示したい意思の現れだったんだと思う。
:09/01/24 21:43 :SH901iC :JFMqBZYE
#696 [ゆーちん]
「できた。」
私の支度ができたのは、目が覚めて2時間程経ってからだった。
「じゃあ行くか。」
哲夫の問いに、私は頷く。
『車で待ってっから。』と言い、康孝が出て行った。
:09/01/24 21:44 :SH901iC :JFMqBZYE
#697 [ゆーちん]
最後に部屋を見渡した。
「ここはシホの部屋だ。お前の居場所はここにもある。」
哲夫にそう言われ、誇らしい気持ちでいっぱいだった。
「うん。」
:09/01/24 21:44 :SH901iC :JFMqBZYE
#698 [ゆーちん]
荷物は何もない。
萌子は手ぶらでここに来たのだから。
何も持たないその手を、哲夫に握ってもらい、家を飛び出した。
今日は冬らしくない気候だった。
暖かい風が私の背を押す。
:09/01/24 21:45 :SH901iC :JFMqBZYE
#699 [ゆーちん]
康孝の車に乗り込み、後部座席へと座る。
隣には哲夫。
車内は相変わらずうるさくて、首に巻く方でない車のマフラーが低く唸る。
窓の外は、シホのよく知る町並み。
だけど萌子には全く知らない町並み。
この街はシホの生まれた場所だから。
:09/01/24 21:46 :SH901iC :JFMqBZYE
#700 [ゆーちん]
10分もすれば、シホでも萌子でも知らない景色が広がった。
「なぁシホちゃん、こんな事聞いて機嫌悪くしたらごめん。」
「何?」
「どこに住んでたの?」
康孝の質問に、私はひるむ事なく答えた。
すると車内の空気が一転。
:09/01/24 21:50 :SH901iC :JFMqBZYE
#701 [ゆーちん]
何か変な事でも言っただろうか。
哲夫と目が合い、どうしたのかと聞くと苦笑しながら言った。
「駅5つ。」
「え?」
「シホの住んでた場所と、萌子の住んでた場所は、駅5つ隣だって事。」
:09/01/24 21:51 :SH901iC :JFMqBZYE
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