闇の中の光
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#702 [ゆーちん]
これには驚いた。


そんなに近かったなんて。


外出なんて滅多になかったから、よその景色を知らない。


家族で出掛ける訳もなく、買い物は近くのスーパー。


援交も学校も付き合ってた彼氏達も、地元か隣街程度。

⏰:09/01/24 21:51 📱:SH901iC 🆔:JFMqBZYE


#703 [ゆーちん]
「そんな…近かったんだ。」

「シホちゃん、いつでも連絡しろ。俺が地元以外の景色いっぱい見せてやっから。」


世間を知らない可哀相な子への同情としての優しさだったとしても、康孝の気遣いは嬉しいものだった。


「うん、ありがとう。」

⏰:09/01/24 21:52 📱:SH901iC 🆔:JFMqBZYE


#704 [ゆーちん]
しばらく走ると康孝が哲夫に声をかけた。


「テッちゃーん、あの倉庫ここら辺だっけ?」

「んー…もう少し先じゃねぇの?」

「わかんねぇし。シホちゃん覚えてる?」

「え?」

「自分がナイフ拾った場所。」

⏰:09/01/24 21:53 📱:SH901iC 🆔:JFMqBZYE


#705 [ゆーちん]
神様が置いてくれた、あのナイフを拾ったのは…どこだったっけ。


もう覚えてないよ。


そもそも、どうやって歩いてったのかもわからない。


「…ごめん。覚えてない。」

「そっか。仕方ねぇ、勘だ!」


そもそも、どうして哲夫はあの場所にナイフを落としたのだろう。

⏰:09/01/24 21:53 📱:SH901iC 🆔:JFMqBZYE


#706 [ゆーちん]
そっと哲夫に聞いてみた。


一応、哲夫だけに聞こえるように声を出したつもりが、車内がうるさいため声を上げなくてはいけない。


自然と康孝の耳にも、声が聞こえてしまったらしい。


「えっ、テッちゃん話してなかったんだ。」

⏰:09/01/24 21:54 📱:SH901iC 🆔:JFMqBZYE


#707 [ゆーちん]
康孝が笑った。


別にそんな複雑な理由がある訳じゃなさそうだ。


だったら聞いてもいいよね?


「そういえば話してなかったな。教えて欲しいか?」


私は頷いた。

⏰:09/01/24 21:55 📱:SH901iC 🆔:JFMqBZYE


#708 [ゆーちん]
「あの日の集会は早く抜けて、康とラーメン食いに行ってたんだよ。」

「ラーメン?」

「そ。美味いラーメン屋ができたって噂聞いて。」

「味はイマイチだったけどな。」

「…それで?」

⏰:09/01/24 21:55 📱:SH901iC 🆔:JFMqBZYE


#709 [ゆーちん]
「その帰りに康がションベンしたくなってさぁ。」

「はぁ?ションベンしたいって騒いだのは哲夫だろ?」

「バーカ。お前だっての。」

「いんや、哲夫だ。」

「どっちだっていいよ。それで?」

「倉庫の近くに草むらがあったから、そこでするかって事で結局2人でションベンした。」

⏰:09/01/24 21:56 📱:SH901iC 🆔:JFMqBZYE


#710 [ゆーちん]
下品な話かもしれないが、私にとっては興味の沸く話だった。


続きを要求する。


「世の中物騒だから、康が護身用に持ってろってナイフくれたんだ。そのナイフは普段持ち歩かないんだけど、あの日はたまたま。それで案の定、倉庫前で落としちまった訳だ。家に帰ってから気付いて、康孝も帰っちまったから俺1人で探しに行ってさ。」

⏰:09/01/24 21:56 📱:SH901iC 🆔:JFMqBZYE


#711 [ゆーちん]
普段は持ち歩かない。


たまたま持っていた。


倉庫前で落とした。


都合のいい解釈をしちゃうと、全て神様からのご褒美だったのかもって思ってしまう。


だって、こんなに私にとって都合のいい事が重なると、そう思っちゃうのも無理ないと思わない?

⏰:09/01/24 21:57 📱:SH901iC 🆔:JFMqBZYE


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