闇の中の光
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#127 [ゆーちん]
目が覚めると、人の温もりを感じた。
誰かに包まれている。
初めての感覚だった。
人の温もりに包まれてるなんて…。
少し、体を動かしてみた。
左肩が痛かったから。
:09/01/01 10:31 :SH901iC :XAv2cR7M
#128 [ゆーちん]
すると、私を包んでくれていた哲夫は低く唸った。
「んんーっ。」
「…。」
起こしちゃいけないと思い、また目を閉じてじっとしていた。
どうやらまた眠ってしまい、再び目を開けると、なぜか哲夫が私を見ていた。
:09/01/01 10:31 :SH901iC :XAv2cR7M
#129 [ゆーちん]
「あ、起きた。」
「…。」
「なぁシホ。片付けるって意味わかるか?」
哲夫が笑った。
「…あ。」
服も靴も何もかも、全く片付けないで眠ってしまった事を思い出した。
「やっぱ、しつけ本買うべきかなー?」
「…ごめん。」
「一緒に片付けっか。」
:09/01/01 10:33 :SH901iC :XAv2cR7M
#130 [ゆーちん]
哲夫が起き上がると、温もりが薄れた。
それもそのはず。
下着だけしか身につけていないんだ、私。
「パジャマ買っただろ?何で下着姿なわけ。もう初冬だぞ?」
煙草に火をつけた哲夫。
「シホは煙草吸わないの?」
「吸わない。」
「そ。」
:09/01/01 10:33 :SH901iC :XAv2cR7M
#131 [ゆーちん]
「哲夫。」
「はいよ。」
「いつ帰って来たの?」
「2時ぐらい。」
「今日も集会あるの?」
「あるよ。行きたい?」
「ううん。」
「そ。なら留守番ね。」
「うん。」
:09/01/01 10:35 :SH901iC :XAv2cR7M
#132 [ゆーちん]
時計を見ると12時を迎えようとしていた。
どうりでお腹が空くわけだ。
「シホ。お腹空かない?」
「空いた。」
「昨日の昼から何も食べてないんだわ、俺。」
私は、いつから食べてないんだろう。
一昨日の昼からだから…丸2日かな。
:09/01/01 10:35 :SH901iC :XAv2cR7M
#133 [ゆーちん]
最後の食事はサンドイッチだった。
萌子として、友達と昼ご飯を食べた。
そして、昨日、萌子は死んだ。
私はシホになった。
シホになってから、まだ水一滴たりとも口にしていない。
今、やっと空腹感に襲われた。
あぁ、生きてるんだって思えた。
:09/01/01 10:36 :SH901iC :XAv2cR7M
#134 [ゆーちん]
「飯食い行くか。シホ昨日風呂入った?」
「入ってない。」
「俺も入ってないし、一緒に入るか。」
「…やだ。」
「お前に拒否権はない。」
ニッと笑い、私の頭を優しく叩いた哲夫は立ち上がり、浴室に向かった。
:09/01/01 10:37 :SH901iC :XAv2cR7M
#135 [ゆーちん]
私も立ち上がり、哲夫のあとを追った。
「ねぇ。」
「ん?」
「何でお湯、溜まってんの?」
「え?」
「いつ入れたの、お湯。」
「あぁ、機械が入れてくれんだよ。タイマーにして。俺毎日風呂入るの昼間だからさ、このくらいの時間になったら自動で溜まるように設定してあんの。」
:09/01/01 10:40 :SH901iC :XAv2cR7M
#136 [ゆーちん]
驚いた。
世の中そんな素敵な機能のついたお風呂があるんだ。
信じらんない。
「楽チンだね。」
「便利な世の中だよな。」
哲夫はポケットから携帯灰皿を取り出し、煙草の火を消した。
:09/01/01 10:41 :SH901iC :XAv2cR7M
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