闇の中の光
最新 最初 全
#137 [ゆーちん]
「はい、脱いで。入るよ。」
下着だけの私は簡単に裸になった。
哲夫もすぐに服を脱ぎ捨て、私と一緒に湯舟につかる。
「うーっ、気持ちいい。俺風呂好きなんだわ。」
「どうして夜入んないの?」
「疲れてそのまま寝ちゃうんだよ。だからいっつも起きたら入る。」
:09/01/01 10:58 :SH901iC :XAv2cR7M
#138 [ゆーちん]
「一日の始まりはお風呂からなんだね。」
「そゆ事〜。」
今日も、哲夫に後ろから抱きしめられながら体を温める。
背中やお腹をずっと撫でてくれるんだ。
理由はわからないけど、なぜか哲夫が触れた場所は、痛みが和らいだ。
:09/01/01 10:59 :SH901iC :XAv2cR7M
#139 [ゆーちん]
お風呂から出て、買って来た服を身にまとった。
「おぉー、似合う似合う。化粧もしろよ。化粧は女の身嗜みって言うからな。」
「…面倒だよ。」
「じゃあスッピンで行くのか?もしくはピザでも頼む?」
「…私が、作る。」
:09/01/01 11:00 :SH901iC :XAv2cR7M
#140 [ゆーちん]
キッチンに行き、冷蔵庫の中を見ると、何とかなりそうだと思った。
「えっ、お前料理できんの?」
「…うん。」
萌子の時は、毎日料理していたから。
作りたくもない料理を、毎日毎日我慢して作ってたから。
「お好み焼きでいい?」
:09/01/01 11:00 :SH901iC :XAv2cR7M
#141 [ゆーちん]
「お好み焼き作れんの?お前なかなかやるな!」
哲夫が笑った。
「作れるよ。」
「じゃあお好み焼き作って〜。俺、シホの荷物の片付け始めててやるわ。」
萌子が嫌々作ってた料理。
だけど私、シホが今から作る料理は嫌じゃない。
初めてワクワクする。
:09/01/01 11:01 :SH901iC :XAv2cR7M
#142 [ゆーちん]
だってさ、笑ってくれたから。
父は私が料理を作っても、1ミリ足りとも笑わなかった。
苦痛だった。
もう…忘れたい。
忘れよう。
だって萌子は死んだんだから。
友達や彼氏、家族はきっと萌子が死んだって悲しまない。
:09/01/01 11:02 :SH901iC :XAv2cR7M
#143 [ゆーちん]
「出来た。」
大きなお好み焼きをお皿に盛って、テーブルに置いた。
湯気が立ち上る。
いい匂い。
「美味そっ!まさかの才能だな。」
「哲夫のお箸ってどこにあるの?」
「そんなもんないよ。いつも割り箸。」
「そうなんだ。」
:09/01/01 15:26 :SH901iC :XAv2cR7M
#144 [ゆーちん]
哲夫がキッチンの棚から割り箸を2つ取り出した。
あそこが割り箸入れか。
覚えておかないと。
「はい、いただきます!」
「…いただきます。」
哲夫は大きく切り取ったお好み焼きを頬張った。
:09/01/01 15:27 :SH901iC :XAv2cR7M
#145 [ゆーちん]
「んー!うめぇ!」
素直に嬉しかった。
自分が作ったものを褒めてもらえるのは嬉しい事なんだ。
「よかった。」
「酢豚とかも作れんの?」
「うん。」
「グラタンも?カツ丼も?エビチリも?」
:09/01/01 15:28 :SH901iC :XAv2cR7M
#146 [ゆーちん]
「…たぶん、作れる。」
「すげぇ。和洋中パーフェクトなんだな。いいペット捕まえたわ〜。」
笑いながら哲夫はお好み焼きをどんどん食べて行く。
私も食べた。
うん、お好み焼きだ。
自分が作ったものはなぜか美味しいと思わない。
不思議。
:09/01/01 15:28 :SH901iC :XAv2cR7M
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194