闇の中の光
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#36 [ゆーちん]
ある日の夜、何がきっかけだったのかわからないが父が暴れ出した。


母は今日もいない。


もう3〜4日は顔を見ていない気がする。


「ふざけるな!」


別にふざけてない。


ふざけてんのはあんただよ。

⏰:08/12/29 15:43 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#37 [ゆーちん]
背中を殴る父。


体を丸めて小さくなる私。


自分を守る為に丸まったんじゃない。


丸まっていないと、挑発してしまい、父の行為がエスカレートして、殺されてしまうかもしれないから。


最期は自分で、と決めたんだから、今死ぬわけにはいないの。


痛くない死に方をするんだから。

⏰:08/12/29 15:44 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#38 [ゆーちん]
髪を引っ張られ、無理矢理立たされた。


お腹を蹴り上げ発狂する。


「お前さえ、萌子さえいなきゃ!俺らは幸せだったんだ!」


だから…幸せって何。


私がいらないなら施設に戻せばいいじゃない。


「何なんだその顔は!」

⏰:08/12/29 15:45 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#39 [ゆーちん]
何なんだって言われても。


私を生み逃げした両親が作った顔だよ。


憎いでしょ?


あんたの人生を変えちゃったんだからね。


私なんかいなければ、幸せだったかもしれないもんね。


「この野郎…殺す!」


とうとう父の手が私の首を締めた。

⏰:08/12/29 15:45 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#40 [ゆーちん]
やばい。


こいつに殺される訳にはいかないの!


「やめ…て…」


苦しい。


息が出来ない。


「うるさい!黙れ!」


父の手に力が入る。


あぁー…もうダメだ。


私このままこいつに殺されるんだ。

⏰:08/12/29 15:46 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#41 [ゆーちん]
「おと…さ…」

「殺すーっ!」


はぁ…。


どうぞ。


もういいや。


殺して。


さっさと殺してよ。


それで私を開放して。

⏰:08/12/29 15:47 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#42 [ゆーちん]
天国かな、地獄かな。


きっと地獄だろうな。


万引きとか援交とかしてたし。


ゆっくりと意識が薄れてきた。


バイバイ、上辺だけのみなさん。

⏰:08/12/29 15:47 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#43 [ゆーちん]
だけど次の瞬間には、なぜか私の咳の声が聞こえた。


「ゲホッ、ゲホッ…」


あれ、なんで私むせ返してんの。


まさか…まだ生きてる?


「出て行け!」


これはこれでラッキーなのかな。


自分で死に方選べるんだし。

⏰:08/12/29 15:48 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#44 [ゆーちん]
でもどうせなら殺してくれたほうがよかったな。


もう苦しかったり、痛い思いはいやだよ。


ガチャ…


私は家から飛び出した。


フラフラの足取り。


…っていうか真っ直ぐ歩けてないし。


宛もなく、とにかく前に進んでみた。


だって…

⏰:08/12/29 15:48 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#45 [ゆーちん]
だってどこかに死ぬ方法が転がってるかもしんないでしょ?


体中痛くて、どこが痛いのかわかんない。


とりあえず、倉庫がたくさん立ち並ぶ場所に到着した。


ドサッ…


力尽きたかも。


地面に倒れてしまった。

⏰:08/12/29 15:50 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#46 [ゆーちん]
ふと夜空を見上げる。


…うざっ。


こんな日に限って、むちゃくちゃ星が綺麗だった。


自然に流れていた涙。


何泣いてんの私。


その時、思った。

⏰:08/12/29 15:51 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#47 [ゆーちん]
もうさ、痛いのも苦しいのもやだ。


今日、死のう。


方法なんて、もう何でもいい。


痛くてもいいから、もう…死にたい。

⏰:08/12/29 15:51 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#48 [ゆーちん]
もう一度だけ力を振り絞り、私は立ち上がった。


何か、何か死ねるもの。


その時、目の前に見えたのがナイフだった。


神様がいるのなら、感謝する。


この時、目の前にナイフを置いてくれたんだね。


ありがとう。

⏰:08/12/29 15:55 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#49 [ゆーちん]
フラフラとナイフまでたどり着き、手に取った。


案外綺麗なナイフ。


サビてないし、汚れてもいない。


ピカピカなナイフ。


痛いだろうけど、まぁいいや。


綺麗なナイフだし。


この星が見えなくなって、太陽が空にのぼった時には綺麗に死ねてるかな?

⏰:08/12/29 15:56 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#50 [ゆーちん]
そんなことを考えながら、私はナイフを高く振りかざした。


心臓の辺りをひとつきすれば、いいよね?


迷いはなかった。


今度こそ、上辺だけのみなさんバイバイ。


…。

⏰:08/12/29 15:57 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#51 [ゆーちん]
と、次の瞬間には場面が変わっていた。


あれ、私死んだ?


死んだら、こんな場所に来るんだ。


今から天国行きか地獄行きか決まるんのかな。


天国でも地獄でもどっちでもいいから、早く私を楽にさせて。

⏰:08/12/29 15:58 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#52 [ゆーちん]
死んだはずなのに、なぜか体が痛いよ。


「あ、起きた?」


えっ。


…誰。


…何。


…起きた?

⏰:08/12/29 15:58 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#53 [ゆーちん]
子鬼の声だろうか、天使の声だろうか。


だけど、どっちでもなかった。


なぜか私の目の前に映り込んだのは、金髪頭の人間だった。


「おい。大丈夫か?」


…は?


大丈夫じゃ困るんだけど。


私、死んだんだし。

⏰:08/12/29 15:59 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#54 [ゆーちん]
「医者に診てもらう?」


…医者?


死んだのに、まだ医者が必要なの?


「お前、名前は?」


ねぇ…。


もしかして私、死んでないの?

⏰:08/12/29 16:00 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#55 [ゆーちん]
思わず体が起き上がる。


ゴツンッ…


「いってぇー!」


うん、痛い。


頭と頭がごっつんこ。


何で私、生きてんの。


てか、ここどこ?

⏰:08/12/29 16:00 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#56 [ゆーちん]
「地獄?」

「は?」

「生きてんの?」

「何言って‥」

「私、生きてんの?」


金髪頭の男は私の質問に答えた。


「生きてるよ。」


その5文字を聞いた途端、泣きそうになった。

⏰:08/12/29 16:01 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#57 [ゆーちん]
死ねなかったんだ。


最悪。


心臓を狙ったはずなのに、まさか急所外れ…って、あれ?


どこにも傷がない。

⏰:08/12/29 16:01 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#58 [ゆーちん]
何がどうなっているのか、全く理解できない。


「名前は?」

「え?」

「名前。」

「てゆーか、あんた誰よ。」

「俺?俺は天下無敵の哲夫様。」


…哲夫?


聞いた事のない名前。

⏰:08/12/29 16:02 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#59 [ゆーちん]
「誰?」

「だから哲夫だってば!千早哲夫。」


そう言って哲夫は笑った。


「で、あんたは?」

「私、死んだはずなんだけど!何で生きてんの?」

「はぁ?」

「ナイフで心臓ひとつきにして、私は死んだの!」

「頭でも打った?」

「てゆーか、ここはどこ?」

⏰:08/12/29 16:03 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#60 [ゆーちん]
完全にパニック状態だった。


そんな私に、哲夫は教えてくれた。


「俺がお前を見付けた時、右手にナイフ握ってたけど普通に息してたぞ。」

「嘘だ…。」

「お前が握ってたナイフ、これだろ?」


そう言って哲夫が取り出したナイフ。

⏰:08/12/29 16:04 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#61 [ゆーちん]
あぁ、そうだ。


その綺麗なナイフで、綺麗な星空の元、綺麗に死ぬつもりだったんだ。


「このナイフ、俺の。」

「え?」

「護身用に持ってんの。それがどうした事か、なぜか倉庫前に落として来ちゃったみたいで。探しに行ったらナイフ握ったあんたが倒れてたってわけ。」

⏰:08/12/29 16:04 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#62 [ゆーちん]
えっ、それじゃ私…自殺する前にマジで力尽きて気を失ってた訳?


何それ信じられない。


最悪。


「呼び掛けても起きないから、とりあえず俺んち連れて来た。」

「ここ、あんたんちなの?」

「救急車呼ぶにも、携帯は家に忘れてたし。お前運んでここ到着したのはいいけど、かなり疲れてたから、そのまま俺も寝ちゃったんだわ。」

⏰:08/12/29 16:05 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#63 [ゆーちん]
哲夫は煙草に火をつけた。


「助けてくれたの?」

「まぁ、そんなとこかな。」


何それ。


益々信じらんない。


「余計な‥」


ガチャッ…

⏰:08/12/29 16:05 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#64 [ゆーちん]
いきなりドアが開き、私の声を遮った。


「テッちゃん腹減っ…たっ…て…誰?」


いきなり入って来た男が私を見て驚く。


「ノックしてよ、ヤッちゃん。」

「この女子高生、誰!何でこんなに汚いの?」


なんで私が女子高生ってわかんだろ、と思ったら…ばっちり制服姿だった私。

⏰:08/12/29 16:31 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#65 [ゆーちん]
着替える前に父親に殴られたんだっけ。


「千早哲夫。」

「んあ?」

「私、助けてくれなんて言ってない。わざわざここまで運んで、ベットに寝かせてくれたなんて余計なお世話だよ。」

⏰:08/12/29 16:31 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#66 [ゆーちん]
私がそう言うと、哲夫とヤッちゃんと呼ばれた男は固まった。


「人助けしたかと思ったかもしんないけど、こっちにしたら、ただの迷惑。」


するとヤッちゃんと呼ばれた男が言った。


「おい、やめとけ。哲夫に助けてもらってそんな言い方するな。」

⏰:08/12/29 16:32 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#67 [ゆーちん]
「だから助けてなんて頼んでない。」

「お前、生意気してると哲夫に殺されるぞ。こいつこう見えてでっけぇ集団仕切ってる人間だから。」


殺される?


集団?


あぁ、乱暴な不良グループの頭みたいな事?


だったら調度いいや。

⏰:08/12/29 16:32 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#68 [ゆーちん]
「だから何。有難迷惑なんだよ、こんな事されちゃ。」

「お前いい加減にしとけよ。哲夫怒らすとマジで殺され‥」

「殺してよ。」


ヤッちゃんという男の言葉を遮ってやった。


哲夫と男の顔が、また変わる。

⏰:08/12/29 16:33 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#69 [ゆーちん]
「哲夫を怒らせれば殺してくれんの?だったら早く怒ってよ。そんで私を殺して。」


哲夫にそう言うと、なぜか視線を反らされた。


「ねぇ、殺して。」

「…。」

「聞こえない?殺してって言ってんの。」

「…。」

「ねぇってば。殺してよ。」

⏰:08/12/29 16:34 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#70 [ゆーちん]
何度も言い寄る私を、いきなりベットに押し倒した哲夫。


…痛い。


ベットが弾んだだけなのに背中の傷に響いた。


「殺して殺して、うるさい。」

「怒った?だったら早く殺して。」

「康。お前ちょっと出てって。」


ヤッちゃん並びに康と呼ばれた男は何も言わずに部屋から出て行った。

⏰:08/12/29 16:34 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#71 [ゆーちん]
二人きりになった部屋。


哲夫はさっきのナイフを取り出して、私の喉に近づけた。


「いいの?殺すよ?」

「うん、殺して。」

「お前、怖くないの?」

「何で?」

⏰:08/12/29 16:35 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#72 [ゆーちん]
私を見下ろす哲夫の目は力強かった。


「康孝に聞いただろ?俺怒らせたら、あんた殺されんだよ?」

「だから何。怒らせた方が私にとっては好都合。」

「何で、死にたいの?」

⏰:08/12/29 16:36 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#73 [ゆーちん]
「あんたに関係ないじゃん。さっさと殺して。あ、殺してもらったのにあんたが捕まるのは可哀相だから自殺したように勝手に工作していいよ。自殺扱いになれば、あんたは捕まんないでしょ?」

「本当に殺すよ?」

「うん。」


ナイフを持つ手に力が入ったのがわかった。


やっと…死ねる。

⏰:08/12/29 16:37 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#74 [ゆーちん]
「フッ…」


私が目を閉じた途端、哲夫が笑った。


何、笑ってんの。


早く刺せよ、と思い目を開くとナイフを床に落とした音がした。


次の瞬間には、哲夫の唇が私の喉に触れていた。

⏰:08/12/29 16:37 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#75 [ゆーちん]
「あんたじゃなくてナイフを刺して。」

「…お前、何あったか知らないけど死ぬなんて考えんな。」


哲夫の舌が喉やうなじをなめ回す。


気持ち悪い。


「やめて。」

「何で死にたいの?」

⏰:08/12/29 16:38 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#76 [ゆーちん]
「関係ない。」

「まぁいいや。いつか教えてね。」


いつか?


いつかなんてないよ。


私は死ぬんだから。

⏰:08/12/29 16:38 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#77 [ゆーちん]
「殺してくんないの?」

「お前は死んだ。」

「は?」

「今さっき死んだ。」

「意味わかんない…」

「今から俺のペットとして、お前飼うから。死のうとしてたんだから、別にどうなってもいいんだろ?」

⏰:08/12/29 16:39 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#78 [ゆーちん]
「何言ってんの。私は死にたいの。」

「お前に飽きたその時は、ちゃんと殺してやるから。それまで俺のペットになれ。」


私の首筋から上がって来た顔は、また下りて来て、私の唇を塞いだ。


まだ体中痛い。


頭も痛い。

⏰:08/12/29 16:39 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#79 [ゆーちん]
何で生きてんのか、何で殺されなかったのか、何でキスされてるのか。


頭が痛くて考えられない。


唇が離れると、哲夫は言った。


「名前は?」

「…萌子。」

「萌子、お前は今日からシホだ。」

「シホ?」

⏰:08/12/29 16:40 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#80 [ゆーちん]
「萌子は死んだ。だからお前はシホだ。」

「シホ…」

「理由知りたい?」


私は頷いた。


「俺、星好きなんだ。星の反対はシホだろ?だからシホ。」

⏰:08/12/29 16:40 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#81 [ゆーちん]
そう言って笑った哲夫。


バカらしい。


こんなバカがでっかい集団をまとめている頭なら、その集団も長くないね。

⏰:08/12/29 16:41 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


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