闇の中の光
最新 最初 全
#401 [ゆーちん]
「シホちゃん。また明日ね。」
「うん。また明日。」
のんちゃん達も帰って行くので、私は哲夫のところに向かった。
:09/01/11 21:47 :SH901iC :/n8N/9j.
#402 [ゆーちん]
「哲夫。」
康孝達と話をしていた哲夫は、私に気付くと、小さく笑った。
「おっ、帰るか?」
コクリと頷く私を手招きする哲夫。
:09/01/11 21:47 :SH901iC :/n8N/9j.
#403 [ゆーちん]
近寄ると、肩を抱かれた。
「んじゃ、また明日。」
哲夫が立ち去ると、後ろから声がした。
「お疲れっす!」
「お疲れ様です!」
本当、疲れたよ。
笑い疲れた。
:09/01/11 21:48 :SH901iC :/n8N/9j.
#404 [ゆーちん]
「テッちゃん。」
「ん?」
「ツリー綺麗だったね。」
「毎年グレードアップしてんだぜ、あれ。」
「そうなの?」
「来年はあのツリーに負けないくらいのをウチにも飾ろっか。」
「…うんっ!」
:09/01/11 21:49 :SH901iC :/n8N/9j.
#405 [ゆーちん]
知らない人が私たちを見て、私と哲夫をどんな関係だと思うだろう。
そりゃやっぱ恋人同士って思うだろうね。
クリスマスイヴの夜に、肩を抱かれて歩いてるんだから、私。
でも違うんだ。
:09/01/11 21:49 :SH901iC :/n8N/9j.
#406 [ゆーちん]
私と哲夫は、ペットと飼い主って関係なの。
恋人同士なんて、夢のまた夢の関係。
そんな夢を夢みちゃいけない。
わかってるんだけど、哲夫があまりに近くにいすぎて…勘違いしそうになる。
哲夫の甘ったるい香水は、私の脳を痺れさすのかな。
:09/01/11 21:50 :SH901iC :/n8N/9j.
#407 [ゆーちん]
▽▲▽▲▽▲▽
ではまた
>>2▽▲▽▲▽▲▽
:09/01/11 21:50 :SH901iC :/n8N/9j.
#408 [ゆーちん]
▲▽▲▽▲▽▲
襲撃
▲▽▲▽▲▽▲
:09/01/12 20:58 :SH901iC :4O9J1hkU
#409 [ゆーちん]
翌25日。
クリスマスパーティーは【楽しい】以外の言葉があったら教えてもらいたい程のものだった。
ずっと笑ってた。
昨日より笑ってた。
本当、楽しい。
パーティーから帰ってくると、ほろ酔いだった哲夫はビンゴゲームで当たったおもちゃで大笑いしながら遊んでいた。
:09/01/12 20:59 :SH901iC :4O9J1hkU
#410 [ゆーちん]
遊ぶのに飽きると私をベットに誘い、強く抱きしめて眠りについた。
こんな心トキめくクリスマスは初めてで、何か罰が当たりそうな気さえする。
このままでいたいな。
でも、人生そう上手くいかないんだよ。
わかってる。
楽あれば苦あり。
:09/01/12 21:01 :SH901iC :4O9J1hkU
#411 [ゆーちん]
人生ってうまい具合にプラスマイナスゼロになってるんだ。
過去がマイナスすぎて、現在がプラスなら、未来はゼロでいいじゃない。
なのに、どうしてだろう。
私の未来はプラスでもゼロでも無い気がする。
:09/01/12 21:04 :SH901iC :4O9J1hkU
#412 [ゆーちん]
そう思わずにいられないぐらいな現在だった。
…なんでだろう。
良い予感は当たらないのに、悪い予感だけが的中する。
その悪い予感が当たったのは4日後だった。
:09/01/12 21:05 :SH901iC :4O9J1hkU
#413 [ゆーちん]
それは、本当に突然だった。
12月29日の夜、いつものように集会に来ていて、私はのんちゃん達と話をしていた。
のんちゃんがお笑い芸人の話をして、みんなが大笑いしていた。
「おいっ!」
「抑えろ!」
哲夫達がいる所が急に騒がしくなった。
:09/01/12 21:06 :SH901iC :4O9J1hkU
#414 [ゆーちん]
何事だと、みんなの視線が動く。
人が多くてよく見えない。
「ふざけんなっ!」
「やめろ!」
…喧嘩?
心臓が痛くなる。
喧嘩なんか、もう見たくないし聞きたくない。
私の体が強張った。
:09/01/12 21:06 :SH901iC :4O9J1hkU
#415 [ゆーちん]
「ウチら、様子見て来るよ。」
「あ、じゃあ私シホちゃんとここで待ってる。」
「うん。」
強張る私の手を、そっと握ってくれたのはのんちゃんだった。
のんちゃんと私を残し、みんなが様子を見に向かった。
:09/01/12 21:08 :SH901iC :4O9J1hkU
#416 [ゆーちん]
「のんちゃん…ありがと。ごめんね。」
「気にするなぁ〜!」
のんちゃんのえくぼが、少しだけ私の心を落ち着かせてくれた。
あの喧嘩事件以来、大声が苦手なんだと知ってもらえたらしく、少しでも怒鳴り声が聞こえるとみんな心配してくれる。
本当、ありがたい仲間達。
:09/01/12 21:09 :SH901iC :4O9J1hkU
#417 [ゆーちん]
「てゆーか聞いてくれる?私この前、服買ったのね。で、いつものサイズ買ってぇ、いざ着てみたら…入らないの!太っちゃったよ〜マジでショックでかい。」
少しでも気を紛らわそうとしてくれるのんちゃん。
感謝しても感謝しきれないね。
:09/01/12 22:14 :SH901iC :4O9J1hkU
#418 [ゆーちん]
「…太ったようには見えないけど。」
「嬉しい事言ってくれんねー。でも太っちゃったんだよぉ。シホちゃん何かいいダイエット方法知らない?」
「んー…」
「あぁ、シホちゃんみたいな華奢っ子はダイエット経験ないか!私のこの肉、シホちゃんにあげたいよ〜。」
:09/01/12 22:14 :SH901iC :4O9J1hkU
#419 [ゆーちん]
「…いらないよぉ。」
「何で?クリスマスプレゼントって事で。」
「やだー。」
「アハハ。」
えくぼが可愛いのんちゃん。
手を握ってくれたのんちゃん。
おかげで、ちょっと落ち着いた。
:09/01/12 22:15 :SH901iC :4O9J1hkU
#420 [ゆーちん]
…と、思ったのはつかの間だった。
「キャーッ!」
その悲鳴と共に、急に騒がしくなり、みんなが慌ただしく動き出した。
「えっ、何?」
のんちゃんの手に力が入る。
私も思わず強く握り返してしまった。
:09/01/12 22:16 :SH901iC :4O9J1hkU
#421 [さき]
超気になります(>_<)
がんばってくださいイ
:09/01/13 00:48 :W61SH :W9CWv442
#422 [ゆーちん]
▲▽▲▽▲▽▲
コメントありがとうございますm(__)m
更新します
▲▽▲▽▲▽▲
:09/01/13 15:13 :SH901iC :4gcR8RAo
#423 [ゆーちん]
状況が読めない。
今、何が起こってる?
たくさんの怒鳴り声、たくさんの悲鳴、たくさんの笑い声、たくさんの…哲夫の声。
「お前ら逃げろ!」
顔は見えなくても、今の声は哲夫だ。
:09/01/13 15:14 :SH901iC :4gcR8RAo
#424 [ゆーちん]
逃げろって?
何から逃げなくちゃいけないの?
「ねぇシホちゃん。何か様子おかしくない?」
「…。」
怖い。
苦しい。
どうしよう。
:09/01/13 15:14 :SH901iC :4gcR8RAo
#425 [ゆーちん]
「あいつら…誰?」
のんちゃんが言う【あいつら】が目の前に現れた時、何となくわかってきた。
バットや鉄パイプ持ってる人って今時いるんだ…。
恐かったくせに頭の中は妙に冷静だった。
:09/01/13 15:15 :SH901iC :4gcR8RAo
#426 [ゆーちん]
知らない男たちが私たちの方に近付いてくる。
「おい!女は逃げろ!」
そんな声が聞こえた。
康孝の声だったような気がしたけど…もう、無理だった。
私とのんちゃんは、知らない男たちに囲まれていた。
:09/01/13 15:16 :SH901iC :4gcR8RAo
#427 [ゆーちん]
「てめぇら誰?」
のんちゃんが聞いた。
「あぁ?」
「何の用?」
きっと、大声あげて、威嚇したいに決まってる。
だけどのんちゃんは冷静を保ちながら、男たちを睨んでいた。
「喧嘩、売りにきた。」
すると男がいきなり殴り掛かって来た。
:09/01/13 15:16 :SH901iC :4gcR8RAo
#428 [ゆーちん]
何とかかわしたが、男達が本気だって事が伝わったせいで急に恐さが増した。
「辞めて!」
「やだね。女だろうが俺たちは手加減しねぇぞ?」
そう言った瞬間、バットを持った男がのんちゃんのお腹を殴った。
「うっ…」
:09/01/13 15:17 :SH901iC :4gcR8RAo
#429 [ゆーちん]
倒れ込んだのんちゃんを見て、男たちは笑ってる。
「のんちゃん!」
「はい、雑魚一匹片付いた。弱いな〜、女は。次はお前だよ?おちびちゃん。」
鉄パイプが私の右腕に飛んで来た。
少ししか当たらなかったけど、たまらなく痛かった。
:09/01/13 15:18 :SH901iC :4gcR8RAo
#430 [ゆーちん]
痛い。
痛い。
痛い。
「ギャハハハ!さすが雑魚だな。弱すぎだろ。」
「こいつら拉致ろうぜ。」
「あ、そうだな。」
気を失っているのんちゃんを、男が連れて行こうとした。
:09/01/13 15:18 :SH901iC :4gcR8RAo
#431 [ゆーちん]
「やだ!ダメ、やめて!」
痛い腕を押さえ、必死に抵抗したら太ももを蹴られて、うずくまってしまった私。
その間にも、のんちゃんが連れて行かれそうになる。
「やだー!助けてー!」
大声を出したが、辺りがうるさすぎて響かない。
「ガキは黙ってろ!」
:09/01/13 15:19 :SH901iC :4gcR8RAo
#432 [ゆーちん]
お腹を蹴られた。
久しぶりだった。
びっくりした。
自分を守る方法を、まだ体が覚えていたなんて。
体を丸めて、身を守る私。
「ギャハハハハ。ますます小さくなりやがった!」
楽しそうに私を蹴る男。
:09/01/13 15:20 :SH901iC :4gcR8RAo
#433 [ゆーちん]
痛い。
体中痛いのなんて、久しぶりだ。
「おい、ガキはいらねぇ。この女一人でいい。行くぞ。」
その声で、私に蹴る足が止まった。
苦しい。
力を振り絞り起き上がると、本当にのんちゃんが連れて行かれていた。
ヤバイ。
助けなきゃ。
:09/01/13 15:20 :SH901iC :4gcR8RAo
#434 [ゆーちん]
起き上がり、私は辺りを見渡した。
すると…
「シホちゃん!」
そう呼びながら康孝が私の方に走ってきてくれた。
「康!助けて!」
「やられたの?お前、何で逃げなかったんだよ!」
:09/01/13 15:21 :SH901iC :4gcR8RAo
#435 [ゆーちん]
「そんなことより、のんちゃんが連れてかれた!」
「のんちゃん…望実?」
「あっち!」
遠くの方で、かすかに見えるのんちゃんをさらった男達。
「お願い!のんちゃん助けて!私なら大丈夫だから。」
「本当か?安全なとこに逃げろよ?」
「わかった。康、早く行って!」
:09/01/13 15:22 :SH901iC :4gcR8RAo
#436 [ゆーちん]
康孝はのんちゃんをさらった奴らの方に向かって、走って行った。
お願い。
のんちゃんを助けて。
そう願いながら、私自身も逃げようと思い、立ち上がった。
:09/01/13 15:23 :SH901iC :4gcR8RAo
#437 [ゆーちん]
やばい、足が痛くて上手く歩けない。
でも早く逃げないと、またやられる。
足を引きずりながら必死に歩いた。
すると、後ろから哲夫の声がした。
「シホ!」
「哲夫!」
哲夫の顔中、傷だらけだった。
:09/01/13 15:23 :SH901iC :4gcR8RAo
#438 [ゆーちん]
「シホ、殴られたの?」
「私は大丈夫。それより哲夫は…」
「俺は無傷。お前、誰にやられたか覚えてるか?」
:09/01/13 15:24 :SH901iC :4gcR8RAo
#439 [ゆーちん]
それのどこが無傷なのよ。
「覚えてない。」
「くっそ。マジごめんな。てこずってなかなかシホのとこ行けなくて。」
「それより、のんちゃんがさらわれちゃったの…今、康孝が助けに行ってくれた。哲夫ものんちゃん助けに行って来て。」
:09/01/13 15:24 :SH901iC :4gcR8RAo
#440 [ゆーちん]
「望実が?」
「うん。お腹をバットで殴られて気絶しちゃったの、のんちゃん。」
「バット?あいつら人間腐ってんな!」
哲夫が怒っていた。
「私なら大丈夫だから、のんちゃん助けに‥」
「大丈夫じゃねぇだろ?つか、康孝が助けに行ったんなら絶対大丈夫だ。」
:09/01/13 15:25 :SH901iC :4gcR8RAo
#441 [ゆーちん]
「でも…」
「ったくよぉ、どうなってんだよコレ。いきなりで俺も訳わかんねぇ。」
哲夫に抱っこされ、私たちは少し離れたところに移動し始めた。
と、その時だった。
:09/01/13 15:26 :SH901iC :4gcR8RAo
#442 [ゆーちん]
「萌子?」
久しぶりに聞く名前。
私と哲夫は、思わず声の主の方に振り返った。
そこにいたのは、
「…宗太郎。」
萌子の元カレだった。
:09/01/13 15:26 :SH901iC :4gcR8RAo
#443 [ゆーちん]
やめて。
来ないで。
話し掛けないで。
「萌子、何してんの?」
宗太郎が近付いて来ると、哲夫が言った。
:09/01/13 15:27 :SH901iC :4gcR8RAo
#444 [ゆーちん]
「萌子って誰?つか、お前が誰?近寄んじゃねぇぞガキが。」
哲夫の威嚇に、宗太郎が怒鳴った。
「うるせぇ!お前には関係ねぇんだよ。俺は萌子に用があるんだ。」
いつの間にか、私の目から涙が溢れていた。
:09/01/13 15:27 :SH901iC :4gcR8RAo
#445 [ゆーちん]
「だから萌子って誰?こいつは萌子じゃねぇよ。失せろ。」
哲夫がそう言ったはずなのに、宗太郎は構わず私に話し掛けて来た。
:09/01/13 15:28 :SH901iC :4gcR8RAo
#446 [ゆーちん]
「なぁ、萌子!お前こんなとこで何してんの?地元じゃお前がいなくなったって、みんな騒いでるぞ!」
…みんなって、誰。
…騒ぐって、何。
どうせ…上辺だけなくせに。
:09/01/13 15:28 :SH901iC :4gcR8RAo
#447 [ゆーちん]
「俺だって心配したんだ。連絡つかないし…でも良かった。ちゃんと生きてて!」
…生きてて?
「死んだよ!」
「え?」
「萌子は死んだよ。私、萌子じゃない。」
「何言ってんの?」
「どっか行って!私は萌子じゃないんだから!」
泣き叫ぶ私に、哲夫が『シホ。』と優しく名前を呼んでくれた。
:09/01/13 15:29 :SH901iC :4gcR8RAo
#448 [ゆーちん]
どうしよう。
また苦しい。
「行くぞ?」
小さな声で私に問う哲夫。
「うん。」
哲夫が歩き出す。
すると宗太郎が走ってくる足音が聞こえた。
「おいっ!」
:09/01/13 15:29 :SH901iC :4gcR8RAo
#449 [ゆーちん]
宗太郎が哲夫の肩に手をかけて、私は振り落とされた。
次の瞬間、違う温もりが私を包んでいた。
「会いたかった、萌子。」
離して。
宗太郎になんか抱きしめられたくない。
私は萌子じゃない。
宗太郎じゃなくて、哲夫に抱きしめられたいの。
「やだ…」
:09/01/13 15:30 :SH901iC :4gcR8RAo
#450 [ゆーちん]
「おいっ!」
今度は哲夫が宗太郎の肩に手をかけた。
私は宗太郎の腕から開放され、すぐにま哲夫に抱っこされた。
「ふざけんな!失せろ。」
哲夫が走りだす。
もう宗太郎は追い掛けてこなかった。
:09/01/13 15:30 :SH901iC :4gcR8RAo
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194