闇の中の光
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#617 [ゆーちん]
「ん。」

「ヒント3。シホの初めての料理。」


哲夫は覚えてくれているのだろうか。


私がここに来て、シホとしての初めての食事であった食べ物。


誰かのために料理をするなんて、面倒だから嫌いだった。


だけど、美味しいって言ってくれる人のために作る料理は、嫌いじゃなかった。

⏰:09/01/23 21:33 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


#618 [ゆーちん]
「わかった?」


少し考えた哲夫は、口の端を吊り上げて笑った。


「お好み焼きだ。」


嬉しかった。


覚えててくれたんだ。


照れるような、恥ずかしいような。


「正解。」

「さすが、俺。」


浴室には二人の笑い声が優しく響いた。

⏰:09/01/23 21:34 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


#619 [ゆーちん]
お風呂から上がり、そのお好み焼きを頬張った。


簡単な料理だけど、私にとっては特別な料理。


色違いのお箸で食べたお好み焼き。


自分で作った物を、初めて美味しいって思えた。


料理って味だけじゃなく、誰とどこでどんな風に食べるかも左右されるんだね。

⏰:09/01/23 21:35 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


#620 [ゆーちん]
食べ終わり、片付けが済めば、集会に行く支度をする。


着替えたり、髪をセットしたり、化粧したり。


今日もいつものように準備に取り掛かる。


そんな私を、ベットに腰掛けて煙草を吸う哲夫の目が、ずっと追い掛けていた。

⏰:09/01/23 21:36 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


#621 [ゆーちん]
「何見てんの?」

「んー?」

「あんま見ないでよ。恥ずかしいじゃん。」


照れ笑いした私に哲夫は小さく呟いた。


「明日の今頃には、もういねぇのかなって思って。」


私の顔から笑顔が消えた。


同時に、化粧をする手の動きも止まった。

⏰:09/01/23 21:45 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


#622 [ゆーちん]
「そんな寂しい事、言わないで。」

「…ん、悪い。」


ずっとずっと、はっきりさせたいって思っていた事があった。


この機会に、哲夫に聞いてもいいよね?


「聞いてもいいかな?」

「何?」

⏰:09/01/23 21:46 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


#623 [ゆーちん]
「ずっと私を守ってくれるって言ったよね。それって、どういう意味なの?」

「…味方っつう事。」

「私って、哲夫にとって…何?味方以外の言葉で教えて。」


【味方】って言葉だけで充分なのに、私は欲が出た。


自分が欲しい言葉が返って来なかったらヘコむくせに…バカでしょ?

⏰:09/01/23 21:47 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


#624 [ゆーちん]
せっかく恋愛感情を知れたのに、一気に砕け散るのが恐かった。


勇気のない女だ。


でも今なら少しだけ自信があった。


【彼女】とまではいかないが、【ペット】ではないだろうっていう自信。

⏰:09/01/23 22:56 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


#625 [ゆーちん]
「知りてぇの?」

「うん。」


哲夫の口が開いたシーンが、とてもスローモーションに目に映った。


次の瞬間、哲夫の口から出た言葉を聞き、私はまんまと泣かされた。

⏰:09/01/23 22:57 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


#626 [ゆーちん]
「愛してる人。」


ねぇ、今なら前言撤回していいよ?


でないと私、信じちゃうから。


私が欲しかった言葉以上だよ、それ。


「じゃあ聞くけど、シホにとって俺って何?」

「…二酸化炭素くれる人。」

「フフッ。何だそれ。」

「嘘、ごめん。」

⏰:09/01/23 22:58 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


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