闇の中の光
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#715 [ゆーちん]
見覚えの、あるような…ないような。
そんな倉庫前。
康孝は車のエンジンを切ったけど、私の耳の中は余韻だらけ。
そんなうざったい余韻でさえ、今では心地よかった。
「シホちゃん。」
運転席から、体をひねって後部座席の方を向く康孝。
:09/01/25 11:17 :SH901iC :PIdEEYAI
#716 [ゆーちん]
「俺にとってシホちゃんは妹みたいな奴だったよ。」
最高の笑顔。
やけに幼く見えてしまう、その笑顔が私は大好きだ。
「私も。ヤッちゃんはお兄ちゃんみたいな存在だった。いっつも運転してくれて、本当ありがとう。」
:09/01/25 11:18 :SH901iC :PIdEEYAI
#717 [ゆーちん]
康孝にはどう見えたかわかんないけど、私なりの最高の笑顔だったと思う。
「お安いご用じゃ!」
髪の毛をグシャグシャに掻き回された。
その手の温もりは、哲夫の温もりとはまた違う暖かさ。
:09/01/25 11:19 :SH901iC :PIdEEYAI
#718 [ゆーちん]
しおらしくなるのは嫌。
だから笑って車を降りた。
哲夫も後に続く。
康孝は降りて来なかった。
「シホ。」
哲夫に肩を抱かれ、私達は歩く。
ずっと無言のまま歩いた。
3度、角を曲がった時、哲夫は口を開いた。
:09/01/25 11:19 :SH901iC :PIdEEYAI
#719 [ゆーちん]
「ここで俺は女子高生を拾った。」
哲夫の視線は、冷たそうな地面だけを捕えていた。
「最初は死んでんだと思った。俺のナイフ握ってたから、すげぇびっくりした。」
「うん。」
「あまりにも汚い女で、何か笑えた。」
:09/01/25 11:20 :SH901iC :PIdEEYAI
#720 [ゆーちん]
哲夫の笑顔。
不思議なことに、それを見れば自然と勇気も沸く。
自分から、哲夫の腕から抜け出した。
「じゃあ、行くね。」
「道わかんのか?」
「何となく思い出せると思う。わかんなかったら誰かに聞くよ。」
:09/01/25 11:20 :SH901iC :PIdEEYAI
#721 [ゆーちん]
「そ。」
「ありがとう。」
【バイバイ】は言わない。
【バイバイ】したくないから。
また、会いたいから。
「シホ。」
「何?」
「いってらっしゃい。」
哲夫は右手をヒラヒラ動かし、私に手を振った。
:09/01/25 11:21 :SH901iC :PIdEEYAI
#722 [ゆーちん]
私も手を振り返す。
「行ってきます。」
【いってらっしゃい】だなんて、哲夫に初めて言われた。
【行ってきます】だって、哲夫に初めて言った。
ちょっと、くすぐったい。
:09/01/25 11:21 :SH901iC :PIdEEYAI
#723 [ゆーちん]
哲夫に背を向け、歩き出した時。
「だぁー!待って!」
拍子抜けしちゃうような、哲夫の声。
足を止め、哲夫の方を向くと何か投げられた。
「落とすな!」
「えっ?」
:09/01/25 11:31 :SH901iC :PIdEEYAI
#724 [ゆーちん]
落とすまいと慌てて掴んだもの。
携帯電話だった。
「…これ。」
「服とか化粧品は置いといてやる。あと箸も。でも携帯電話は携帯って言うぐらいだから、携帯しねぇといけないもんじゃん?」
:09/01/25 11:31 :SH901iC :PIdEEYAI
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