WHITE★CANDY
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#235 [Gibson]
男性陣が、一番隅の部屋に入る。
部屋の風景が視界いっぱいに広がった時、ドラムセットがどっしりと構えていた。
床には黒いコードが何本も敷かれており、機材のようなものが幾つも置かれている。
音楽サークル…―
一目見て分かるこの雰囲気。
東吾兄がバンドか。
しっくりくると言えば、そうとも言える。
彼のイメージは、いつも頭の中でメロディーが流れてる感じだったから。
:09/01/29 18:13
:SH705i
:ejtZkG3Y
#236 [Gibson]
東吾兄が、ドラムセットの椅子に悠長に座った。
彼の担当はドラムか。
続いて、一番背の高い藤野さんという人が、部屋にケースからベースを取り出す。
帽子の被っている坂田さんと、明るい茶髪の佐々木さんという人は、それぞれギターを肩にかけた。
各パートが、取り留めのないが如く形をつくる。
:09/01/29 18:21
:SH705i
:ejtZkG3Y
#237 [Gibson]
「ああ、俺ら練習し始めたばっかで、全然上手くないからね!」
佐々木さんが顔をクシャッとさせて、謙遜の言葉を述べる。
その言葉の後、4人が息を揃えるように静まる。
アイコンタクトだけで、それぞれ会話をする。
「…行くよ!ワン・ツー・1・2・3!」
東吾兄が、ドラムスティックを叩いて拍子を取った。
その合図と同時に、彼らの演奏が始まった。
:09/01/29 18:33
:SH705i
:ejtZkG3Y
#238 [Gibson]
街中やテレビで、よく耳にするイントロが流れる。
中高生を中心に人気の火が着いた、若手ロックバンドの曲だ。
佐々木さんがギターを弾きながら、ボーカルを同時にこなす。
本来のボーカリストと、声の質が似てる気がした。
部屋の奥の東吾兄が、軽快にドラムを叩き続ける。
いつもより、3割増しでかっこよく見える。
:09/01/29 18:46
:SH705i
:ejtZkG3Y
#239 [Gibson]
藤野さんが落ち着いた様子でベースを弾き、坂田さんが全身でリズムを取りながらギターを弾く。
佐々木さんが歌う歌詞の意味を理解しながら、彼らの演奏を聴く。
演奏が下手だとか幼稚だとかは、微塵にも感じなかった。
彼らはまだ全員一年生。
バンドを組んで間もないだろう。
しかし、チームワークの良さと熱い気迫が、奏でる旋律と共に、こちらにも伝わってくる。
:09/01/29 18:55
:SH705i
:ejtZkG3Y
#240 [Gibson]
一曲目が終わると、音を立てずに拍手をする私。
「ワリー、最後のサビの所、ちょいリズムがズレてた。」
「はーっ、ムズイな!」
落ち着く暇もなく、メンバーがそれぞれ、自分たちの反省点や課題となる部分をこぼす。
自由気ままなサークルとはいえ、皆技術の向上を目指している。
途中で、東吾兄と目が合った。
「…なぁ、ちょっとマキロンにボーカルやらせてみないか!?」
彼が名案を思いついたかのような顔をして、突然こんなことを口にした。
:09/01/29 22:19
:SH705i
:ejtZkG3Y
#241 [Gibson]
「えっ…。」
私は焦った。
カラオケには全く行ったことがないし、人前で歌った経験もない。
「おっ、いいね!やってみる?」
「曲何にする?有名所が無難よね?」
「雨宮ちゃん、スパイラルの『カタツムリ』分かる?」
私の気持ちとは反対に、どんどんと話が進められていく。
さっき、東吾兄が少しでもかっこよく見えたこと、直ちに撤回。
:09/01/29 22:33
:SH705i
:ejtZkG3Y
#242 [Gibson]
「2番が少し曖昧…。」
皆の勢いに釣られて、正直に答える私。
全然分からないと、嘘をつけば良かったと思った所で遅かった。
「はい、これ見ながら歌ってみて!」
佐々木さんが、私に歌詞カードのコピーを渡す。
その次に、彼の代わりにスタンドマイクの前に立たされ、彼が室内にある脚立イスに座った。
もう歌うしかないのか…―
トホホと嘆く気持ちと、一曲約5分、300秒を取りあえず耐えればいいだけかと、軽い気持ちで取り組むことにした。
:09/01/29 22:43
:SH705i
:ejtZkG3Y
#243 [Gibson]
東吾兄の激しく叩くドラムの音と共に、演奏が始まった。
『与えられた仕事は、大小問わずに真剣に取り掛かる』のが、父の教訓。
投げやりな態度は見せずに、出来る限り一生懸命やってみよう。
今の私は、遊びであろうとも、バンドのボーカルを担当している。
感情を込めて歌うとか、歌い方強弱をつけるとか、専門的なことは全く分からない。
とにかく、無我夢中で歌った。
:09/01/29 22:54
:SH705i
:ejtZkG3Y
#244 [Gibson]
「…雨宮ちゃん、なかなか上手だね!」
「うん、声がしっかりしてる感じが良かった!」
一曲歌い終えてみると、メンバーからは誉め言葉を貰った。
父は歌には自信があると言っていた。
その遺伝を少しは、娘の私も受け継いでいたようだ。
:09/01/30 01:55
:SH705i
:K6vCV/uk
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