WHITE★CANDY
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#301 [ぎぶそん]
「…。」
彼女の一言で、二人の会話が一気に静まり返った。
妙な空気の流れの恥ずかしさから、お互いの顔を見れずにいる。
私たち、端から見たら恋人同士に見えるのかな…―
その状況について、隣に座る優平が困惑していないことを祈った。
:09/02/17 01:51
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#302 [ぎぶそん]
「お二人さん、着いたわよ。」
祥華さんに言われて、顔を上げる。
車が走ってる間は、ずっと俯き加減のままでいた。
彼女がエンジンを止めた後、三人で車を降りる。
「…。」
ただっ広い車庫には、高級外車がずらりと並んでいた。
その中に、テレビや写真でしか見たことのないベンツの姿もあった。
:09/02/17 05:38
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#303 [ぎぶそん]
祥華さんを先頭にして、校庭以上に広い庭を歩く。
歩く地面は、レンガが敷き詰められている。
庭はガーデニングの装飾が隅々まで行き届いていて、見事に美しい。
まるで中世のヨーロッパ時代にタイムスリップしたみたいだ。
歩く途中、丸い形をした噴水の横を通った。
大理石で造られたそれは、西洋風の庭にふさわしく洒落たものであった。
:09/02/17 05:50
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#304 [ぎぶそん]
噴水のせせらぎに気を取られていると、紳士服を着た初老の男性が、前方からせわしなくやって来た。
そして休む間もなく、優平に向かって深くお辞儀をした。
「優平坊ちゃま、お帰りなさいませ。」
「ジィ。紹介するよ、友達の雨宮真希さん。」
「初めまして。」
会話の流れで、初老の男性に一礼をした。
:09/02/17 06:00
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#305 [ぎぶそん]
「おぉ!貴女様が雨宮様でございますか。
坊ちゃまから、話はいつも聞いております。
想像以上にお美しい方で、誠に光栄でございまする。」
「ジィ!余計なこと言わなくていいから!」
優平に喋った内容を指摘され、焦る初老の男性。
その会話を聞いた祥華さんが、フフフッと口に手を当てながら笑う。
「あ、彼は使用人の沼木豊彦。
俺が小さい頃からここにいて、俺はずっとジィって呼んでるんだ。」
沼木さんが、もう一度私に頭を下げる。
大きく言えば、沼木さんも祥華さんと同じ役割の人間か。
桜井家に仕えてる使用人は、沢山いそうだ。
:09/02/17 06:15
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#306 [ぎぶそん]
「ささっ。お二人共、早く家に上がって、ゆっくりとくつろいで下さい。」
沼木さんが私の荷物を代わりに持つと、先導するように私たちの前を歩く。
「ごめんね。こんな格好で。
もう少しいい格好してくれば良かった。」
今日の服装は自分でも頑張った方だが、優雅な桜井家の前では、からっきしシンプル過ぎる。
東吾兄の大学を初めて訪れた時に着た、花柄のワンピースが浮かんだ。
あいにく、あれは今回我が家に置いてきた。
「そんなことないよ!
充分、か、可愛いよ。」
優平が、首元をポリポリと掻く。
:09/02/17 06:29
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#307 [ぎぶそん]
私たちは、本館と呼ばれる建物に入った。
ここは主に優平や、彼の家族が生活空間を営む場所らしい。
本館以外には使用人が寝泊まりする別館、優平のお父さんが趣味の絵画を描く為のアトリエなどが設けられているとか。
本館は庭以上にまた、その広さと豪勢さに呆気に取られることとなった。
2階優平の祖父が描かれた大きな肖像画が飾っており、その階へと螺旋階段が続いていた。
「お帰りなさいませ、優平坊ちゃま。」
「ただいま。」
優平が、数人と使用人と挨拶を交わす。
:09/02/17 06:57
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#308 [ぎぶそん]
「あ、田辺さん。
シェフの宮島さんに、今日の夕飯はうんとご馳走を振る舞うように言っておいて。」
「分かりました。」
田辺さんと言う人が、そそくさとその場を離れる。
使用人、本館、別館、シェフ。
昔で言う所の貴族な生活を、同級生の優平はずっと送っていたのだ。
『優平は私たちと次元が違う』
一週間前の、エリの言葉を思い出した。
:09/02/17 07:03
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#309 [ぎぶそん]
「今日はこの部屋で寝ていいから。」
優平に、3階の"空き部屋"と呼ばれる所に案内された。
そうは言っても、私の部屋より広くて、立派な造りをしていた。
「あら。優くんの部屋で、一緒におねんねすればいいじゃない。」
「…祥華さん!!」
学校ではクールな優平が、今日は珍しく何度も取り乱す。
祥華さんの言う冗談にもだんだんと慣れてきた私は、二人のやり取りを笑いながら見ていた。
:09/02/17 07:18
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#310 [ぎぶそん]
「あっ、部屋に荷物置いたら、とりあえず噴水近くの庭で待ってて。」
それだけ言い残すと、優平は同じ階の自分の部屋へと駆けて行った。
「…真希ちゃん、だっけ?」
「はい。」
二人きりになった所で、祥華さんが私に話し掛けてきた。
:09/02/17 07:25
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#311 [ぎぶそん]
「優くんのこと、頼んだわ。」
「え?」
「彼ね、中学時代は外での出来事なんか一言も話してくれなかったのに、
高校であなたたちと出会ってから、とても生き生きしてるの。
今日もあんな風に張り切っちゃって。」
「…はい。」
初めて知った、物静かな優平の気持ち。
それはきっと、私たち3人と同じ気持ちだ。
:09/02/17 16:39
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#312 [ぎぶそん]
優平に言われたとおり、部屋に荷物を置いてから、庭の噴水近くに出向いた。
そのそばにテーブルとイスがあるのに気がついて、イスに腰掛けた。
「雨宮様、紅茶をどうぞ。」
使用人の男性が、気を利かせて飲み物を持って来てくれた。
白いティーカップに、熱い紅茶が注がれる。
「ありがとうございます。」
入れたばかりの紅茶は、高級感の漂う香りがした。
:09/02/17 22:12
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#313 [ぎぶそん]
「お待たせ。」
紅茶を一口飲んでみた所で、優平が現れた。
何やら黒いケースを抱えている。
「練習し始めたのは中学の時からだけど、同級生に披露するのは初めてかな。」
腰を下ろした彼がケースから取り出したのは、バイオリンだった。
:09/02/17 22:24
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#314 [ぎぶそん]
その場を立ち上がると、少し呼吸を整え、バイオリンを弾き始める優平。
彼が演奏した曲は、モーツァルトの「フィガロの結婚」だった。
巧みに弓を動かしながら、繊細なメロディーを奏でる。
学校では決して見せてはくれない、御曹司としての姿。
私はただ、彼の悠然な姿に見とれていた。
:09/02/17 22:37
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#315 [ぎぶそん]
5分くらい経った後、演奏が終わった。
「…最後ちょっと間違えちゃった。」
彼が照れ隠しのような笑みを浮かべる。
私はイスに座ったまま、大きな拍手をした。
「かっこよかったよ。」
彼が陰で"王子"と呼ばれる理由が、今は理解できるかも知れない。
:09/02/17 22:44
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#316 [ぎぶそん]
「優平はいつも、家で何をして時間を過ごしてるの?」
「えっ?課題済ませて、予習して、テレビ観て、風呂入って…普通だよ、普通。」
「そう。今日は家での優平の様子が知りたいな。」
「えぇっ!?何かそう言われると、無駄に緊張するなー。」
イスから垂らした両足をプラプラさせながら、彼のはにかんだ笑顔を眺めていた。
:09/02/18 00:37
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#317 [ぎぶそん]
また本館に戻ると、2階の洋室に案内された。
優平がリモコンで操作すると、ソファーの前に映画館で見るようなスクリーンが降りてきた。
「好きなの選んでいいよ!
ごめん、俺ん家、恋愛物はないんだ。」
優平が、棚からDVDボックスを取り出してきた。
色んなジャンルのDVDが入ってる。
「これがいい。」
その中から、1枚を抜き取った。
「『バトル・シアター』?また過激なのにしたな!」
:09/02/18 00:51
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#318 [ぎぶそん]
「坊ちゃま、雨宮様、お菓子をここに置いておきます。」
またもや使用人の男性が、ハーブティーと焼きたてのクッキーを持って来てくれた。
ソファーの前のテーブルに、2人分にして並べる。
そして退室する前に、部屋の電気を暗くしてくれた。
「これ、コーラとポップコーンの代わりだね。」
「アハハ。面白いこと言うなぁ。」
無料の映画鑑賞は、いたせりつくせりであった。
:09/02/18 01:04
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#319 [ぎぶそん]
「…。」
目を開けた時、エンドロールが流れていた。
確か、主人公が生き残りの戦士として目覚めて…。
その後はすっかり、眠りに就いてしまったようだ。
部屋が暗かったことと、桜井家に着いてからやっと緊張感から少し解放されたことから、安心しきって一眠りしてしまった。
:09/02/18 09:13
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#320 [ぎぶそん]
「あ、起きた?」
隣に座る優平が、顔をこちら側に向けた。
「ごめん。途中ですっかり寝ちゃったみたい。」
「アハハ。気持ち良さそうに寝てたから、無理に起こさなかった。
続きが気になるんだったら、またいつでも同じDVD観ていいから。」
:09/02/18 09:19
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#321 [ぎぶそん]
夕方―
「優平坊ちゃま、食事のご用意が出来ました。」
「お、もうそんな時間?」
新人の使用人の男性を交えてTVゲームをしていると、沼木さんが報告しに来た。
「よーし、続きはまた今度。」
熱中していたゲームを中断する。
:09/02/18 09:26
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#322 [ぎぶそん]
それまでいた洋室を出て、1階の食堂に足を運んだ。
白いテーブルクロスが掛けられた長机に、豪勢な食事が無数に並んでいる。
「遠慮せず好きなの食べていいよ。」
二十人は同席できる食事の席に着いてるのは、私と優平だけであった。
高級レストランに出向いたようなパスタ、伊勢海老の姿焼き、ローストチキン。
何から手をつけていいのだろうと、頭を悩ます私。
:09/02/18 09:42
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#323 [ぎぶそん]
「雨宮様、お口に合わなかったら何なりと申して下さい。」
料理を作ったシェフの宮島さんという人が、私に一言話し掛けてきた。
「全然そんなことないです。どれも美味し過ぎるほど美味しいです。」
一先ず、普段食べられそうにないものから積極的に食べた。
一気に舌が肥えそうだ。
隣では、慣れた手つきでナイフとフォークを扱う優平。
テーブルマナーは、自然に完璧にこなしている。
:09/02/18 09:50
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#324 [ぎぶそん]
「…優平って、カップ麺とか食べたことある?」
ご馳走に囲まれた食卓の中で、こんな質問をしてみた。
「元基ん家に泊まった次の日に出されたから、その時初めて食べたよ。」
「あはは。あいつももっと、気の利いたものを出せばいいのに。」
まあ、らしいと言えばそうであるかな。
「ううん。なかなか美味しかった。また食べたいと思ってる。」
:09/02/18 09:56
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#325 [ぎぶそん]
「だったら今度、うちの近所にある『保ラーメン』に連れて行ってあげるよ。
美味しいって凄く評判なんだ。」
「本当に?楽しみ。」
「うん。今日招待してくれたお礼。」
"真希ちゃん、遂にボーイフレンドが出来たのかい?"と屈託のない保おじさんの笑顔が浮かぶ。
:09/02/18 10:03
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#326 [ぎぶそん]
最後に口直しにデザートの特製杏仁豆腐を食べ、片付けられた席の前で、二人でゆっくりと雑談を始めた。
「今日はこんな豪華なフルコースを振る舞ってくれて有り難うね。
お父さんや東吾兄にも食べさせたら、喜んだだろうな。」
今日来るはずだったエリと元基も、今頃一緒にいればきっと舌が唸っていただろうな。
「宮島さんが心を込めてくれて作ってるから、その分美味しいんだろうね。」
「うん、そうだね。
…優平は、お母さんの手料理は食べたことないの?」
:09/02/18 10:15
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#327 [ぎぶそん]
「うーん、数え切れるほどしかないかなぁ。
運動会の時に、お昼に弁当を作ってくれたのが最後かな?」
「…そうなんだ。」
「なかなか忙しいみたいだから。親父の右腕としてさ。」
「…。」
そう晴れやかに笑う優平の姿を、直視できなかった。
:09/02/18 10:22
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#328 [ぎぶそん]
夜、敷地内に設置された露天風呂を、祥華さんと一緒に入ることになった。
祥華さんが全身を包み隠さずさらけ出すので、その抜群プロポーションに、同性ながら少しドキドキする。
「どうかしら?初めて訪れた桜井家は。」
「お陰さまで、楽しいです。」
「優くんのような人と一緒にいたら、毎日がお姫様気分ね。」
:09/02/18 10:47
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#329 [ぎぶそん]
「…優平がどう思ってるかは分からないけど、私は少なくとも彼を一人の男性として見ています。」
「それで?」
祥華さんがにこやかに、理解しているような目つきを私に送る。
「でも、今日ここに来て、正直少し距離を感じてしまいました…。
住んでる世界があまりにも違いすぎて…。」
今日の私は優平のファンの子たちから見れば、この上ない幸せの中にいるのだろうか。
:09/02/18 10:57
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#330 [ぎぶそん]
「ウフフ。それでいいと思うわよ。心から優平のことを見ているからこそ、そうやって悩むと思うわ。」
「え?」
「でも、これからも見る目を変えてあげないでいてね。
彼、こんな必要以上の贅沢に囲まれた環境の中、あんなに健気に真っすぐと育ったのよ。」
「はい。」
優平は大切な友達であり、一人の大切な人に変わりはない。
祥華さんに打ち明けてみて、改めて気づかされた大事なこと。
「ありがとうございます、祥華さん。」
:09/02/18 11:07
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#331 [ぎぶそん]
風呂上がり、優平の部屋を訪ねてみた。
30畳の広々した洋室に、堂々と置いてあるピアノ。
ダブルベッドより大きなベッドは、どんなに寝返っても落ちたりしなさそうだ。
ワックスで綺麗にコーティングされた、ピカピカの白い床を歩く。
:09/02/18 17:31
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#332 [ぎぶそん]
二人でベランダに出て、少し欠けた月を眺める。
夏の夜風が、風呂上がりのポカポカとした体に気持ちよく当たる。
「…真希はさ、どういう時自分の幸せを感じる?」
「え?うーん…。
色々あるよ。推理小説のトリックが何となく解った時。東吾兄にTVゲームで勝った時。数学の難しい問題が解けた時。」
「あはは。真希らしいな。」
:09/02/18 17:41
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#333 [ぎぶそん]
「俺ね、正直毎日の生活の中で、何かに困ったり不自由したことはない。」
「うん。」
そうだろうな、と思う。
「でも、いつも何かがしっくり来ないんだ。
俺って、相当な我が儘だよな。
皆こんなに良くしてくれるのに。」
「…。」
:09/02/18 17:49
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#334 [ぎぶそん]
「俺、幼稚園から中学まで、私立のエスカレーター式の学校に行ってたんだ。
でも、どこか周りと馴染めなくてさ、高校は親父に無理言って、公立の学校に通わせてもらうことにしてもらった。」
「少しだけエリから聞いたことある。」
「元基と初めて話した時のこと、今でも覚えてる。
高校入りたての時、部活見学で隣にあいつがいてさ。
"美味しい棒の味を知らないなんて、お前人生損してるぞ!"って豪語されて、俺そんな時代遅れの中にいたのかー、って。」
「元基ってば、そんなこと言ったの?本当ウケるね。」
:09/02/18 18:04
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#335 [ぎぶそん]
「それでその後、コンビニに行って、2人で美味しい棒を買ったんだ。
1本10円なんて思えないほどうまかった。」
「"美味しい棒"、だしね。」
「それから、元基といると楽しいなって思うようになって、あいつの後に着いていくようになったかな。
あいつは俺が知らない沢山の面白いことを、まるで手品の種を明かすかのようにもったいぶらず教えてくれるんだ。」
「ちっちゃい頃はがき大将だったみたいだしね。」
:09/02/18 18:11
:SH705i
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#336 [ぎぶそん]
「それである日、あいつ数人の女子に、"桜井くんはお金持ちのお坊ちゃんなんだから、下品なこと吹き込んだらダメよ"って言われたことがあって。
そしたらあいつ、"家柄とか関係なく付き合うのが男同士の付き合いだー"って言い返してさ。
ああ、友達ってこういうもんなんだ、ってその時思った。」
「うん、うん。」
"少し馬鹿な所があるけど、絶対にいい奴です"
元基のことを誰かに説明するならば、私はきっとこう言うだろう。
:09/02/18 18:20
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#337 [ぎぶそん]
「次第にあいつがエリと付き合うようになって、"また自分に似た、活発な子を好きになったなぁ"って、あの時は思ったなぁ。」
「本当、あの二人は似た者同士だ。」
今頃、仲良くやってるのかな。
「それで、エリが真希を連れてきて…、正直、初めて接した時の第一印象は"何かすげーバリアはってそう"だった気がする。」
「よく言われるから平気。」
自分では、あまり意識はないのだけど。
:09/02/18 18:30
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#338 [ぎぶそん]
「…真希さ、確か従姉妹の幼稚園生がいるよな?」
「うん。お母さんの妹さんの子供のこと?」
「俺、いつかの夕方、真希がその子と手を繋いで歩いてるのをたまたま見たんだ。」
「そうだね、叔母さんが急用になった時なんかは、代わりに幼稚園まで迎えに行ってたりしたことがあるよ。」
:09/02/18 18:46
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#339 [ぎぶそん]
「歩く道の途中で、真希がその子にアイスを買ってやっててさ。
その時ちらっと見えた横顔が…どう表現していいのかは分からないけど、凄く綺麗だった。」
「えぇっ!?錯覚かなんかじゃないの?」
彼があんまり真面目な顔でそんなことをいうので、私は笑ってみせた。
「…その数日後、今度は放課後事務員さんと花壇の手入れしてるのを目撃したんだ。
"何だ、普通にいい子じゃん"って。
さすが元基が好きになった子の友達ではあるなって。」
「…。」
そんな所まで見られてたんだ。
:09/02/18 19:08
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#340 [ぎぶそん]
「真希のお母さんが、真希が物心つく前に亡くなったって聞いた時、俺が何かその分の心の溝を埋められたら…って思った。」
「優平…。」
「何だろう。元基やエリの笑った顔も大好きだけど、その中で真希が笑ってくれた時が、俺にとって何よりも嬉しい瞬間なんだ。」
「…ありがとう。」
少しばかり、涙ぐみそうになった。
:09/02/18 19:18
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#341 [ぎぶそん]
「…私ね、この間初めて恋愛小説を借りたの。」
今度は、私から話を持ち掛けた。
「その中にね、主人公の女の人が、好きになった男性と初めて出会った時のことを、まるで四つ葉のクローバーを見つけた時と同じような気持ちだ、って表現してた部分があった。」
「うん。」
:09/02/18 19:23
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#342 [ぎぶそん]
「私にとって、優平がそう。最近じゃ、ただこうして一緒に過ごしてるだけで、私にとって幸福な時間が流れてる。
お父さんや東吾兄、エリや元基たちといる時とはまた違う温かい感情を、優平は私に与えてくれるんだ。」
ねぇ、お母さん…。
お母さんは私を目の前のこの人と出会わせる為に、私を産んでくれたの?―
少なくとも今は、そう思うよ。
:09/02/18 19:39
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#343 [ぎぶそん]
数日後、私は桜井家から帰って来た。
祥華さんや沼木さんを始めとした使用人の方たちに、何度も感謝の気持ちを述べた。
夢のような時間をありがとうと、優平をここまで立派に世話してくれてありがとうと。
数日の間、普段の日常では到底成し得ないような、セレブリティな生活を送った。
でも、優平とただ二人で佇んでた時が、一番心が満たされていた。
:09/02/18 19:47
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#344 [ぎぶそん]
日曜日の昼下がり、エリとファミリーレストランで一緒に食事を取ることになった。
「どうだったー、初めての桜井家は?二人きりの方がいいと思って、私たち敢えて行かないことににしたの。
まあ、結果騙す形になっちゃったのは謝るね。」
エリが、"申し訳ない"のポーズを取る。
「ううん。そのお陰で、何か優平に近づけた感じ。」
二人の優しさを、私は汲み取った。
:09/02/18 19:56
:SH705i
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#345 [ぎぶそん]
「ねぇ、エリはさ、どういう時自分の幸せを感じる?」
優平に尋ねられたことを、今度はエリに聞いてみた。
「えぇー?
そうねぇ、元基が珍しく何か奢ってくれた時とか、頭髪検査を上手くくぐり抜けられた時とか、新しく買ったマスカラが、思った以上にボリュームがあった時とか。」
「あはは。エリらしいね。」
:09/02/18 20:03
:SH705i
:fL1Gvzv6
#346 [ぎぶそん]
「じゃあ、真希は?」
「…私はね、幸せを感じる瞬間って生きてる内で数え切れないほどあるけど、最近特に一番それを感じたのは…。」
そう。
自分が好きである人に、自分の気持ちが届いた時。
その上、相手も自分と全く同じ気持ちであった時。
私と優平はあの晩、あれから手を繋いだままずっと、一晩中語り明かしてたんだ。
エリも元基と付き合うようになった時、こんな気持ちだったのかな?
あの日、私たちの心の距離は、限りなくゼロに近づいていた。
Chapter04 END.―
:09/02/18 20:12
:SH705i
:fL1Gvzv6
#347 [ぎぶそん]
Chapter05
「生きるということ」
:09/02/25 22:37
:SH705i
:r/GN9WtE
#348 [ぎぶそん]
蝉たちの鳴き声が消えかかる頃、夏休みも終了し、二学期が始まった。
久しぶりに対面するクラスの皆。
少し日焼けした肌の色以外は、皆の様子はあまり変わっていない。
「それ本当?松田。」
「ああ間違いない!てっしーが見たこともない生徒と一緒に居たんだ。きっと転校生だよ!」
夏休みボケも覚めてきた数週間後、朝教室に入るや否や、何やらエリたちが集まって騒いでいるのが見えた。
:09/02/25 22:46
:SH705i
:r/GN9WtE
#349 [ぎぶそん]
「どうしたの?何かあった?」
自分の席にカバンを置くより先に、まずエリたちに声を掛けてみた。
「ああ、真希。
もしかしたら今日、うちのクラスに転校生がやって来るかも知れないって。」
「え?」
エリの話によると、担任の手島先生が、うちのクラスにいない子と職員室から出て来るのを、クラスメートの男子が目撃したらしい。
その子は女子生徒だったという。
:09/02/25 22:53
:SH705i
:r/GN9WtE
#350 [ぎぶそん]
「おい松田、その子どんな感じだった?」
「さあ、俺が見たのは後ろ姿だったから、よく分かんなかった…。」
「俺、どうせだったら可愛い子がいいなぁ。」
「やめとけやめとけ。昔から転校生ってもんは、期待ハズレが関目の山さ。」
「ま、それもそうだよなぁ。」
色々と言葉を交わす男子たち。
:09/02/25 22:59
:SH705i
:r/GN9WtE
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