WHITE★CANDY
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#390 [ぎぶそん]
「ん…。わ、真希っ!」

一時間後、眠りの王子が目を覚ました。
私の存在に気づくと、その場であわてふためく。

「あ、起きた?」

彼が寝ている間、読んでいた本を閉じる。

「ずっと居たの?起こしてくれて良かったのに。」

「気持ち良さそうに寝てたから。」

今日初めての、彼との会話。

彼と些細なやり取りが出来るだけで、今日一日があでやかなものになるよ。
それは、雨上がりの虹のように。

⏰:09/04/05 18:15 📱:SH705i 🆔:vgyn5LVM


#391 [ぎぶそん]
「今日、部活休みだったの?」

放課後、優平が学校に残ってることが珍しい。

「ああ、俺足痛めちゃったみたいでさ、明日も病院通い。」

情けないよな、と歯を見せて笑う。

「え…、それは心配。」

「大丈夫だって。たいしたことないから。」

⏰:09/04/05 21:00 📱:SH705i 🆔:vgyn5LVM


#392 [ぎぶそん]
「何か私に出来ることがあったら言ってね。」

「そうだなあ、じゃあ今日一緒に帰ろう。」

彼は立ち上がり、勉強道具をカバンにまとめ始めた。

「うん。」

彼からの意外な要求。
すぐに頷いたのは、嬉しさからくるものがあったから。

久しぶりの一緒の下校。
それだけなのに、胸がドキドキするよ。

⏰:09/04/05 21:08 📱:SH705i 🆔:vgyn5LVM


#393 [ぎぶそん]
私も教室に戻って、荷物をまとめる。
電車通学の彼に合わせて、帰り道のコースは駅まで一緒ということになった。

優平って、結構背が高いんだ。
真横に並ぶ彼を見て、改めて感じた。
異性だと意識し始めてから、様々な視点が変わる。

二人とも、歩幅が自然とゆっくりになる。
いつもの景色が、もっと好きになる。

⏰:09/04/06 17:43 📱:SH705i 🆔:bVwBHG7I


#394 [ぎぶそん]
「今度、サッカーの試合観に行きたいな。」

街中でこんな台詞を、さりげなく呟いてみた。

「マジ!?じゃあ、練習頑張らないといけないなぁ!」

「足、早く治るといいね。」

写真を撮られたかのように、最大限の笑顔をしてみる。
彼の制服の袖を、小さくつまむ。

こんな仕草や表情、きっとお父さんにも見せたことないだろう。
ううん、恥ずかしくて見せられないや。

⏰:09/04/06 17:46 📱:SH705i 🆔:bVwBHG7I


#395 [ぎぶそん]
次の週末が明けた月曜日、朝普段どうりに教室に入ってみると、またもやエリや男子たちが一つに集まっていた。

「真希…。」

エリが深刻そうにこちらを見てくる。

「どうしたの?」

いつもと違う雰囲気に、一目散に駆け寄る。

「転校生の村上が、D組の町田とホテルに行く所を、目撃した奴がいるんだよ。」

「えっ…。」

エリの代わりに、一人の男子が説明してくれた。

⏰:09/04/06 17:53 📱:SH705i 🆔:bVwBHG7I


#396 [ぎぶそん]
「まあ、悪いとは言わないけどさ、村上さんってああいうのがタイプなんだなーって。」

一人の男子が、投げやりな感じで話す。

「まだ転校して間もないのに。意外と遊んでるんだ。」

「俺、いいかもって思ってたのになー。清純そうに見えたのに。」

クラスの皆の弥生に対する印象が、一気に違うものとなった。

⏰:09/04/06 18:02 📱:SH705i 🆔:bVwBHG7I


#397 [ぎぶそん]
昼休み、一人屋上へと上がる。
ドアを開けてみると、弥生が一人で屋上からの景色を見下ろしていた。

こちらの気配に気がつき、瞬時に振り向く。

「噂、もう広まってるみたいね。」

クラスメートの私だと解った瞬間、やんわりと微笑む。
彼女の赤みがかかった髪と制服のスカートが、秋風になびく。

「町田くんね、評判は悪いみたいだけど、あれでも優しいトコあるのよ。」

現在周りが自分の交友関係のことで話題になっていることを、だいたい把握しているようである。

⏰:09/04/09 23:46 📱:SH705i 🆔:zwtBDWqQ


#398 [ぎぶそん]
「私は弥生ちゃんが好きになった人なら否定したりはしないよ。
でも、悪いことには巻き込まれないで欲しい。」

町田は日常茶飯事に人に暴力を振るう。
それによって彼女の身に何か降りかかることが、何よりの心配。

彼女は余裕の表情で「そう。」と言うと、それ以上は何も言わずその場を立ち去った。

⏰:09/04/09 23:48 📱:SH705i 🆔:zwtBDWqQ


#399 [ぎぶそん]
その日の晩、夕飯の席で父が珍しく深刻そうに口を開いた。

「今朝南区の商店街で、自殺があったらしい。
父さんの会社の同僚の人が第一発見者だったみたいでな、警察の人から色々事情聴取を受けて出勤時刻に遅れたそうだ。」

「あそこ、自殺の名所ですもんねぇ。」

東吾兄が理解できるような面持ちでいる。

「日本は年間で約3万人の自殺者がいるらしいぞ。」
持っている箸で、私たちを指す父。

「そんなに…?!」

あまりのその数の多さに、私は驚愕した。

⏰:09/04/10 13:09 📱:SH705i 🆔:j.4ME3cQ


#400 [ぎぶそん]
「人間はな、どんなに苦しいことがあっても、たった一つの希望さえあれば、生き続けたいと願うもんなんだ。

でも、自ら命を絶とうという人には、全くそれがない状況ということになる。

生きるというそのものが100パーセント絶望にしか感じられなくなった時、人は死ぬんだろうなぁ。」

父は今日あった出来事を通して、何か感じるものがあったようだ。

今日の食卓の空気は、いつものおふざけモードとは一変した。
社会に通じる問題も、こうして家族間でも日々話し合っていきたい。

⏰:09/04/10 13:21 📱:SH705i 🆔:j.4ME3cQ


#401 [ぎぶそん]
風呂上がりに、パジャマ姿のままでリビングのベランダに出てみた。
見上げて見るお月様は、満月に近い形をしていた。

瞬く満天の星に、人はそれぞれどんなことを思うのだろう。

私は明日も明後日も夜を迎える度、こうして星たちを眺めていたいよ。

辛い時も、楽しい時も。
何事もなく終えた日でも。

自分の命が瞬き続ける限り、目の前にあるものを受け止めていく。

私はそう、生き続けたいんだ。

⏰:09/04/10 13:34 📱:SH705i 🆔:j.4ME3cQ


#402 [ぎぶそん]
弥生と町田の噂はたちまち他のクラスにも広まり、それ以降彼女に親しく声を掛ける者は少なくなっていった。

以前、町田と付き合っていた子に言い寄ってしまった男子が、その後町田に一発殴られたという。

その一件もあって、下手に彼女を近づいたり傷つけたりして、町田に因縁をつけられることを、皆は恐れているのだ。

そんな中、エリは変わらず転校してきた頃のように、積極的に彼女に話し掛けたりしていた。

町田との交際が噂された当初は驚いていたようだったが、少し経つとそのことにも気にも止めなくなったみたいだ。

移動教室の時は彼女も誘ったり、休み時間に勉強を教えてもらったりするエリは、楽しそうだった。

⏰:09/04/12 17:23 📱:SH705i 🆔:UwxDzFUk


#403 [ぎぶそん]
数日後の昼休み、私は優平と屋上に来ていた。

弥生が何か訳がありそうな雰囲気あり、それを私に伝えようとしていることを、優平に話してみることにした。

「きっと、村上さんは誰かに自分のことを理解して欲しいんじゃないかな。」

「理解?」

「うん。ずっと、寂しかったんだと思うよ。」

ああ、そうか。
彼女を初めて見た時、その瞳は孤独で淋しそうに見えたんだ。

⏰:09/04/12 17:31 📱:SH705i 🆔:UwxDzFUk


#404 [ぎぶそん]
放課後、トイレを済ませ教室に戻ろうとした時だった。

「真ー希ちゃんっ。」

弥生に後ろから肩を軽く叩かれた。

「F組の桜井くんだっけ?彼、奥手そうだね。
そういう男と付き合うと、後々じれったくて面倒になるわよ。
他の男に乗り換えたら?」

腕組みをしながら、私の隣を歩く。
身長はクラス内で低い方だが、どこか威圧感がある。

私と二人きりになると、彼女は少々毒舌になるようだ。
彼女自身が言う、『本性』といった所か。

⏰:09/04/12 17:46 📱:SH705i 🆔:UwxDzFUk


#405 [ぎぶそん]
「…弥生ちゃんは、町田くんのどんな所が良かったの!?」

「え?」

「私、知りたいな。弥生ちゃんのこと、色々と。」

嘘じゃない、全くの本心。

彼女が意表をつかれたという顔をしていると、教室から出て来たエリが「真希ー、遅い!帰るよー!」といいながらこっちに来たので、会話は中断した。

⏰:09/04/12 17:53 📱:SH705i 🆔:UwxDzFUk


#406 [ぎぶそん]
その後、いつものようにエリと一緒に帰る。

「ねえ真希、弥生ちゃんってどう思う?」

西洋を意識した通りに差し掛かった所で、エリが口を開いた。

「んー、正直、どこか陰のある子だなって。」

「私も思った!だからその分、色々と気になっちゃうんだよね。」

その後、無言で下を向くエリ。

⏰:09/04/12 18:04 📱:SH705i 🆔:UwxDzFUk


#407 [ぎぶそん]
「…真希たちには言ってなかったけどね、私中学の時にハブられてた時期があってね。
ほら私、気がついたらついついうるさくなるでしょ?
それで一部の子たちから、『調子乗ってる』って言われだして。」

突然、エリが辛かった過去を告げてきた。
私が黙ったままでいると、彼女は話を続ける。

「やっぱり、その時は全然楽しくなかったよ。学校に行きたくないって思った時もなかったし。
だから、一人ぼっちにしてる子とか、気になっちゃうんだよね。
『独りは寂しいでしょ?』って。」

⏰:09/04/12 18:14 📱:SH705i 🆔:UwxDzFUk


#408 [我輩は匿名である]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500

⏰:09/04/15 07:49 📱:SH903i 🆔:geEztBOA


#409 [ぎぶそん]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

>匿名さん

アンカーありがとうございます!(*^-^*)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

⏰:09/04/16 08:15 📱:SH705i 🆔:KQHVNB.U


#410 [ぎぶそん]
「エリには言ってなかったけどね、前元基が言ってたの。
"エリは優しくて可愛い子だ"って。
私もそう思う。エリの気持ちは、皆に届いてるよ。」

私はずっと、人付き合いとやらが苦手だった。

父親以外の人と接するのが億劫で、こんなことが一生続くのかと思ってた。

だからずっと、友達と呼べる人がいなかったんだ。

⏰:09/04/16 08:21 📱:SH705i 🆔:KQHVNB.U


#411 [ぎぶそん]
中2の時の担任の先生が、クラス初めてホームルームで、こんな言葉を贈ってくれたっけ。

『親と先生は裏切っても、友達は絶対に裏切るなよ。
孤独で寂しい人生になるから。』

正直、その時はイマイチ意味が分からなかったんだ。
トモダチという価値を見いだせなかった。

どんなに仲が良い者同士でも、女子は平気で相手の陰口を叩くし。

"友情は一生物"だなんて話を耳にすると、迷信を聞いた時の感覚に陥ってた。

⏰:09/04/16 08:32 📱:SH705i 🆔:KQHVNB.U


#412 [ぎぶそん]
でも、エリと出会って、自分の中で何かが変わったんだ。

私には分かる。
彼女はどんな時も、決して友達を見放したりはしないだろう。

彼女から話し掛けてくれた時、本当は嬉しかったんだ。
心の中ではずっと、孤独を感じていたのかも知れない。
"一人の方が好き"なんて、無意識に意地を張っていたんだ。

もし自分が将来学校の教員になり、教壇に立ったその時は、あの時の先生の言葉をそっくりそのまま引用させてもらうだろう。

⏰:09/04/16 08:41 📱:SH705i 🆔:KQHVNB.U


#413 [ぎぶそん]
そして、エリと出会っていなければ、私は優平のことをその存在も知らぬまま、高校生活が終わっていただろう。

そんなことをふと考えると、ぞっとしてしまう自分がいるんだ。

エリも、元基も、優平も、自分にとって、父親と同じ位なくてはならない存在。

そう、友達がいるだけで、友達を大切に思うだけで、こんなにも日常は幸せで溢れているんだ。

⏰:09/04/16 08:48 📱:SH705i 🆔:KQHVNB.U


#414 [ぎぶそん]
数日後の日曜日、父の提案で我が家で焼肉パーティーが開かれることになった。

転校生も是非連れて来なさいと言うことで、エリたちに加え、弥生も予め誘った。

彼女は嫌がる様子もなく、すんなりと承諾してくれた。

夕方の4時頃、エリたち参加メンバーが我が家にやって来た。

東吾兄もこの日はどこにも出掛けず、転校生見たさにパーティーの手伝いを積極的にやっていた。

⏰:09/04/20 12:31 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#415 [ぎぶそん]
子供たちで、リビングのテーブルに囲む。
父が台所で準備をしている間、皆で団欒をしていた。

「へぇ、エリちゃんと元基くんは付き合ってるんだ!
となると残りは…。」

東吾兄が私と優平の顔を、ニヤニヤとした表情で交互に見回す。

「真希ー、いつもの特製のタレも出来たぞー。」

反論をしようとしたら、大皿などを持った父が、ニヤニヤとした表情でこちらにやって来た。

⏰:09/04/20 12:46 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#416 [ぎぶそん]
「おじ様、特製のタレって?」

エリが興味津々に尋ねる。

「真希は辛口7:甘口3の配合で作るタレが好きなんだ。
でも自分で作ろうとすると失敗するから、おじさんがいつも作ってやってるんだ。」

「アハハ。雨宮さんもまだまだ子供だね。」

キャップを被ったままのますちゃんが笑う。

「うー、ますちゃんには言われたくない。」

私はそのキャップを取ってやった。

⏰:09/04/20 13:06 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#417 [ぎぶそん]
ホットプレートの上で焼かれる肉が、じゅうじゅうと香ばしい音を出す。

「さあ皆、遠慮せずどんどん焼いて食べて!
桜井くんもしっかり食べて栄養をつけて!」

父が優平の皿に、ピーマンばかりを次々放り込む。
優平は緑一色になった皿を見て、少し困っていた。

「ちょっとお父さん、こんなにピーマンばっかり食べられないでしょ?」

私は優平に変わって注意した。

「ああすまん、桜井くんが『緑マントのピーマンマン』に似てたもんで、つい。」

「意味不明!」

⏰:09/04/20 13:18 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#418 [ぎぶそん]
「城さん、桜田くんを『要注意人物』として見ているらしい。」

隣に座ってた東吾兄が、小声で話し掛けてきた。

「何それ?因みに桜井だから。早く覚えて。」

「マキロンに近づく男どもは、一刀両断だって。」

「何それ、呆れた…。」

それでこんな嫌がらせを?
『幸せになれ』って言ったのは、一体何処のどいつよ…―

⏰:09/04/20 13:24 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#419 [ぎぶそん]
「お父さん、お父さんにタレ作ってあげたよ。」

顔に笑みを浮かばせながら、父に新しく皿を渡す。

「おお!ありがたやありがたや。
真希が作ってくれたのなら、ご飯が何杯でも食えそうだ。」

父は早速焼いた肉を取り、そのタレに浸けて食べた。

「って、辛〜っ!!」

そのリアクションに、私は笑った。
父に渡したのは、辛口のタレに唐辛子を沢山投入したものだった。

優平のこといじめたら許さないんだから。

⏰:09/04/20 13:33 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#420 [ぎぶそん]
「弥生さん、新しい学校にはもう慣れたかな?」

コップの水を飲み干した後で、父が隣の弥生に質問をしてきた。
今日集まったのは、彼女との親睦をより深める為でもある。

「はい、おかげさまで。」
弥生が気品漂う感じで返事をする。

「そうかぁ、そりゃ良かった。何かあったら、皆を頼っていいからね。」

「はい。ありがとうございます。」

弥生がニッコリと微笑む。
彼女は食事にほとんど口をつけていなかった。

⏰:09/04/20 13:41 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


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