WHITE★CANDY
最新 最初 🆕
#711 [ぎぶそん]
男子と入れ替わりになるように、暗闇の中足音を立てずに足早にステージ上に移動する。
私が最初にいるべき場所は、前から二番目の列の左から二番目に位置するところだ。
体勢を低くし、息を呑んで待機する。

そして、真上にあるどきつい明かりが再びついた。
場内に聴き慣れた「フルメタル・ラブ」の曲が流れる。

最前列中央にいる村山弥生ちゃんが手に持ったマイクで歌い始める。
彼女は戦ガーで一番人気を誇り常にセンターを務める島田優奈の役だ。
弥生ちゃんは背丈や髪の長さ、何より顔のパーツのバランスが島田優奈と似ているということが決め手で役に抜擢された。
歌やダンスの飲み込みも他の人より早くて、練習でもいつも完璧に演じきっていた。
そんな彼女がいるから、私たち後ろ組も後に続きやすい。

⏰:12/04/15 22:52 📱:Android 🆔:qfyaBuEI


#712 [ぎぶそん]
この曲では私のパートは皆で一緒に歌うサビくらいしかない。
「フルメタル・ラブ」がリリースした頃梅原春佳はまだ新しく加入したばかりで、露出も特になくあまり目立っていなかった。
観客席からも今の私の存在はほとんど見えていないと思う。
それでも今までの練習の成果を発揮しようと必死に踊った。
もしかしたら…優平が私のことを見てくれているかも知れないし。

弥生ちゃんがラストのフレーズを歌い上げ、終わりのイントロが流れ、音に合わせて軽やかに踊る。
曲の終わりと同時に瞬時に全員が立ったまま手を広げ後ろを向く。
一曲目が終わった。少し息が切れそうだ。

⏰:12/04/15 23:07 📱:Android 🆔:qfyaBuEI


#713 [ぎぶそん]
次の「セミオートキス」が流れる。
この曲はクールな戦ガーには珍しく全体的にポップで可愛らしい曲となっている。
この曲のテーマはタイトルどおり「キス」で、歌詞の内容は言わずもがな、まずイントロ部分で一列に並び、左端の子から順番にリレー式で隣の子の頬にキスをする。
私は練習と同じく弥生ちゃんにキスをされ寺川さんにキスをした。

それから、この曲には終わりのサビで皆にそれぞれワンフレーズをソロパートで歌う役割がある。
まずは弥生ちゃん。「早く見つけて」と歌い右手で投げキスをする。
次に真鍋さん。「追いかけて」と歌い両手で投げキス。
その次に私。前列中央まで移動し「捕まえて!」と歌った後、身体を乗り出して目を閉じ、正面に向かってキスするポーズをする。
照れ臭さを隠せず、途中で顔が笑ってしまった。
客席に変な風に思われてないといいけど…。

⏰:12/04/15 23:43 📱:Android 🆔:qfyaBuEI


#714 [ぎぶそん]
最後に皆でエリを中心に囲って二曲目が終わった。
本来なら弥生ちゃんがエリのいる位置にいるはずなのだが、センター役をしたがってたエリに気をきかせ彼女が譲ってくれたのだった。

真っ暗な観客席から、女子生徒の「可愛いー」という声援がはっきりと聞こえた。
その声に続いてか男子生徒の勇ましい声で「頑張れー!」という声援も聞こえた。

最後の曲「恋はライフル」が流れ始める。
この曲は人気ナンバー3の三人にあたる、弥生ちゃんと真鍋さん、そして私がメインとなる。
ステージ上の邪魔にならないところに置いておいたライフルのモデルガンを手に取る。
弥生ちゃんと真鍋さんも同じものを手にしている。
それは私の部屋に飾っておいたもので、私が二人に貸したのだ。
まさかこんなところで役に立つとは。

この曲はイントロ部分が長い。
その間にモデルガンを使ったダンスパフォーマンスを行う。
それは練習で一番苦戦した箇所でもある。何かを持ちながら踊り続けるのは大変だ。その大変さを微塵も感じさせないプロの凄さを思い知らされた。

⏰:12/04/16 00:06 📱:Android 🆔:luIItkuA


#715 [ぎぶそん]
この曲のメインは三人といっても、梅原春佳メインの歌唱パートはほんの一部だけである。
彼女は歌唱力に乏しいことで有名で、それは彼女自身も自覚はしているみたいらしい。
今ほど有名になる前に、地方の公演でお客さんに「下手くそ!」とヤジを飛ばされた以来落ち込み、歌うことを極力避けているのではないかという噂があるのだ。
その出来事とは関係なくとも、彼女もよく歌うことより踊ることが好きと公言している。
まあ、今はファンからの熱い要望で彼女が歌う機会も少しずつ増えてるみたいだけど。

従って、この曲は弥生ちゃんと真鍋さんの二人で主に成り立ってると言ってもいい。
真鍋さんは二番人気の越谷まりもの役で、見た目が似てる部分はないけど、放課後ダンスレッスンに通ってるようでダンスが出来るという理由で役に選ばれた。
確か一年の頃から付き合ってる、今三年生の彼氏がいるんじゃなかったかな。

真鍋さんは全身汗だくになっていて、ステージ上で彼女の光る汗が飛ぶ。

⏰:12/04/16 00:32 📱:Android 🆔:luIItkuA


#716 [ぎぶそん]
一番が終わり、二番に入る。
二番のAメロは私の最後の出番であり一番の出番だ。
三歩で一番前の中央まで歩く。

正面から右の方へ視線を逸らし、左手で髪をかきあげる。
「どうかお願い あなたの銃で私を撃ち抜いて」と歌った後左手を下ろし、「色っぽさ」を意識しながらもう一度観客席を見つめた。
そして、次に正面で歌う弥生ちゃんと変わりばんこで三歩後ろに下がる。

曲の終わりと合わせて身体をしゃがませ、三曲目が終了した。
パフォーマンスを全て終え、最後に女子皆で一列になって観客席に一礼をした。
客席のあたたかい拍手と共にゆっくりと幕が下りる。
終わった…やる前は少し抵抗があったけど、大勢の人に見られながら舞台で踊るのは気持ちのいいものだった。

⏰:12/04/16 21:20 📱:Android 🆔:luIItkuA


#717 [ぎぶそん]
「雨宮さん!なかなか良かったよ!」
ステージ隅まで戻ると、その場で女子の踊りを見ていたらしきますちゃんに労いの言葉をもらう。

「有難う。男子こそ凄いパフォーマンスだったじゃん」
ますちゃんと一緒にそのまま準備室まで歩く。
「いや、僕は後ろの方だったし。
…さっきの踊りで、思わず桜井君もドキッとしたかもね!」
「えっ…!?」
そう言い残して、ますちゃんは着替えの為に準備室に入ってしまった。

男子が着替え終わった後女子が準備室に入り、皆でさきほどの感想を言い合いながら制服に着替えた。
再び観客席に戻ると、既に四番目に発表のH組の出し物が行われていた。
シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の演劇で、ジュリエット役に美人で評判の香山さんという女子が熱演していた。

⏰:12/04/16 21:59 📱:Android 🆔:luIItkuA


#718 [ぎぶそん]
H組の演劇が終わって少しの休憩を挟んだ後、次は元基のいるC組の発表となった。
C組はアメリカのホームコメディドラマをモチーフとした演劇で、ステージのセットも洋風のリビングみたいに施されていた。
父親役らしき元基が、コミカルな言動で客席の笑いを誘う。
私も隣に座るエリも、人目も気にせず大声で笑う。

最後にクラス全員でミュージカル風味のダンスを踊り、最初から最後までにぎやかなままC組の発表は終了した。
舞台で笑いを取ることは涙を誘うことより難しいと聞いたことがある。
それをこんな大人数の中いとも簡単にやってのけた元基に一つの才能を感じた。
将来はお笑い芸人っていうのも良さそう。

⏰:12/04/18 22:56 📱:Android 🆔:cCLZ7M/U


#719 [ぎぶそん]
六番目に発表のA組の時代劇も真面目に鑑賞し、いよいよ優平のいるF組の発表となった。
私が密かにこの日で一番楽しみにしていたもの。

「優平たち何やるの?」
休憩の間、エリが鞄から取り出した飴を舐めながら私に尋ねる。
「『星くずロック』っていう漫画の劇だって」
「あ!だから昨日本屋で表紙を見てたのねー!」
エリが瞬時ににやつく。続けて、
「私その漫画ちょっと読んだことあるけど、主人公って不良っぽいし優平とは正反対の性格だよ。あのお坊っちゃんがどんな演技するか見物ね。」
と言い足した。

そうなんだ、と彼女に返したところで観客席の明かりが消され、幕が上がり始める。

⏰:12/04/18 23:22 📱:Android 🆔:cCLZ7M/U


#720 [ぎぶそん]
教室をシチュエーションとしたセットの中央で一人、主人公役の優平が頬杖をついて気だるそうに席に座っている。
この学校の制服ではない学ランを着ていて、いくつかボタンが空いていた。
右手に持つ鉛筆を小刻みなリズムで動かしながら、机の上を小突く。

「星井!補習のプリントは全部やったのか!?」
教師役と思われる男子が上手から颯爽と現れた。
丸い眼鏡に少しだぼついた黄土色のスーツが、F組のクラスの吉川先生を彷彿とさせる。

「……まだっす。もう帰っていいっすか?観たいテレビあるんで」
優平が鞄を持って席を立ち上がった。

「ダメだ!全部終わるまで学校はおろか一歩も教室から出ちゃいかんからな!」
教師役の男子が怒り狂う様子で彼を取り押さえる。
舌打ちをし、観念した感じで彼が再び座った。

まだ数分しか経っていないのに優平のいつもと全然違う雰囲気、態度、言葉遣いに演技と分かりつつ私は混乱する。

⏰:12/04/18 23:51 📱:Android 🆔:cCLZ7M/U


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194