WHITE★CANDY
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#741 [ぎぶそん]
「そんな悠長なこと言って、七瀬玲央奈に優平を取られても知らないよ」
「ナナセレオナ?」
聞き覚えのない名前を、私はエリに聞き返した。
「桜子を演じてた子よ。あの子、グループの子たちと一緒になってよく優平にまとわりついてるから」
七瀬玲央奈。あの子、そんな名前だったんだ。
文化祭一日目も私の存在を無視して優平を誘ってたし、そう考えると彼のことが好きなのかな。
悔しいけど、演劇を見ると彼女は彼の隣が似合ってたな。
細身で顔も整っているし、ライバルになるには避けたい人物である。
その日の放課後、職員室で数学の先生に今日の授業の質問を終えると後ろから誰かに肩を叩かれた。
「文化祭、お疲れ」
優平だった。
:12/04/27 01:54
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#742 [ぎぶそん]
昨日までパーマだった彼の髪が、普段の真っ直ぐなヘアスタイルに戻っていた。
「良かったら今から屋上で話さない?」
珍しく彼が私を誘ってきた。
「いいよ」
考える間もなく私は即答した。
「俺、先にちょっと吉川先生に用事あるから。悪いけど先に屋上行って待ってて」
プリントを片手に、彼がせわしそうな顔をする。
私は「分かった」と言って頷いた。
数学のノートを持ったまま最上階まで上がり、古びた屋上のドアを開けた。
顔を見上げると、一面どんよりとした曇り空が視界を覆った。
一昨日の文化祭一日目は晴天に恵まれて良かったなと、ほっとした思いが巡る。
二日間の文化祭をぼんやりと思い返していると、途中で「お待たせ」と一声掛けて優平がやって来た。
「ステージ発表優勝おめでとう」
第一声に私は昨日の彼の雄姿を褒めた。
:12/04/27 02:14
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:Mg0JTWgc
#743 [ぎぶそん]
彼が照れ臭そうにする。
「ギターは難しかった?」
一番気になっていることを彼に質問してみた。
「なかなか苦戦した。家に帰ってからも毎日ずっと練習してたし。まあ、バイオリニンに比べたら上達は早かったかな」
夏休み彼の家に遊びに行った時、彼が私の前でバイオリニンを弾いてくれたことを思い出した。
ギターもバイオリニンも、私だったらすぐ挫折してるだろうな。
「七瀬玲央奈さんだっけ。桜子役の子。すごく可愛かったね」
私は本心でありつつも彼に賛同を求めたくない言葉を言ってしまった。
「そうかな?俺、そんなこと一度も思ったことない。
……真希が桜子役だったら良かったのにな―」
「え……?」
惜しむ表情を見せる彼に、どうしていいか戸惑う私。
だけど心の中で彼の言葉の全てが嬉しいと思ってしまう自分は、嫌な人間なのかな。
:12/04/27 02:38
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#744 [ぎぶそん]
【※743 正しくはバイオリンです。大変失礼致しました】
彼が手に持っていた漫画をぱらぱらと捲り始めた。
「ほら見てみて。雰囲気とか性格とか、真希と似てるんだよな」
桜子が載っているページを探し、私の前に差し出した。
真っ直ぐで長い黒い髪に、切れ長の目。原作の桜子は七瀬玲央奈が演じて感じたイメージと違い、飾り気のない落ち着きのある女の子として描かれていた。
「ま、まあ桜子より真希の方が、か、可愛い……けどな!」
彼が急にしどろもどろしだした。そして少し息を落ち着けて、
「昨日の梅原春佳の役、凄く良かったよ。何だっけ?『捕まえて!』って奴、やってみてよ」
と意味ありげな薄笑いを浮かべて指図してきた。
「嫌だ!恥ずかしい!」
私は大きく首を横に振った。
目の前の彼に目を瞑って唇を強調するなんて、顔から火が出る勢いだ。
「残念だなあ。じゃあ俺、そろそろ部活の練習に行くわ」
彼がその場を立ち去りながら手を振る。
私も手を振り返して彼を見送った。
:12/04/27 22:49
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:Mg0JTWgc
#745 [ぎぶそん]
その日の晩。優平に「可愛い」と言われた喜ばしさを心の中で何度も噛み締めながらも、夕食の席で気丈に振る舞っていた。
「準優勝おめでとう!」
父は生ビール、私と東吾兄はオレンジジュースで乾杯をする。
父が駅前で買ってきてくれた唐揚げを皆で頂く。
「父さんも真希の踊り観たかったなあ」
酔いが回ったのか、顔を真っ赤にした父がいつも以上に饒舌になる。
「東吾兄は『星くずロック』読んだことある?」
呂律の回らない父の話を無視し、テレビ番組を観ている東吾兄に話し掛けた。
「あるよ。部室に全巻あるし」
テレビに視線を向けたまま、私の質問に答える東吾兄。
「何だっけ。サクラ……サクラ……」
私は演劇中に優平が歌っていた曲のタイトルを失念した。
「サクラプソディーのこと?実写化でCDリリースされた時、音楽ランキングで初登場三位だったな。俺は原作のイメージと違うと思ったからあんまり好きじゃないけど」
東吾兄がご飯を口に含みながらもごもごと喋る。
サクラプソディー。私にとってはいい曲だったな。
:12/04/27 23:19
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#746 [ぎぶそん]
夕飯を食べ終え部屋に上がると、私はすかさず机に座りノートパソコンを立ち上げた。
「サクラプソディー」で検索をかけるとトップに公式サイトがあり視聴再生可能の文字が見えたのでアクセスして聴いてみた。
プロモーションビデオの映像の中で、テレビでよく見る若手俳優がギターボーカルの役で歌い上げていた。
意中の彼への贔屓目か、優平の歌声の方が好きだなと感じた。
この歌を聴いてると、もう一度文化祭二日目の情景が甦ってきた。
結果的には二番であっても、エリ以外のクラスメートの女子たちと親しくなれたし私には何にも変えがたい最高の思い出となった。
そして、一度も聴いたことのない優平の歌声も聴くことが出来た。
「この世界が桜色に染まる頃には 僕のところへおいでよ
僕のところへおいでよ」
私は大切な皆のことを思い浮かべながら、文化祭の思い出の曲となるサクラプソディーのサビを口ずさんだ。
Chapter08 END.―
:12/04/27 23:54
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#747 [ぎぶそん]
Chapter09
「映画オタク」
:12/04/28 00:21
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#748 [ぎぶそん]
文化祭の余韻もまだ残る頃。朝、枯れ葉が舞落ち少し乾燥した秋の風を受けながら学校へ通う。
「まただ……」
玄関に着き下駄箱を空けると、その中に手紙や手作りお菓子などがいくつも入っていた。
ここ数日、毎日のように目にする光景である。
しかもその差出人は、どれもこれも下級生の女の子たちからなのである。
手紙にある内容は大体、「先輩の文化祭での梅原春佳役、素敵でした!」「梅原春佳に似ている先輩が好きです!」などである。
後輩に好かれて嬉しい気持ちはあるのだが、文化祭では出番もそんなになかったのに何故こんなに評判になっているのか疑問を抱く。
昼休み、一人購買でお菓子を選んでいる時だった。
「あ、あまき様だ!」
数人でいる女の子の内の一人が、私の方を指差した。
:12/04/28 00:41
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:t4h2WC2g
#749 [ぎぶそん]
「あ、あまき……?」
私は彼女の言葉にきょとんとした。
「雨宮真希。略してあまき、ですわ。一年の間ではそう呼ばれているんです!」
清楚で気品漂う彼女が、両手を握り目を輝かせて私を見つめる。
あまき、密かにそんな名称までつけられていたんだ……。
芸能人じゃないんだし、あまり騒ぎが大きくならないようにと私は祈った。
「あまき様って、やっぱり桜井優平先輩とお付き合いをしているのですか?」
小柄な彼女が私の顔を見上げて尋ねてきた。周りの女の子たちも興味津々そうな顔をしてこちらを見てくる。優平の存在も下級生の間で知れ渡っているようだ。
「違うよ。ただの友達」
私は両手を振って否定した。
「そうなんですか。すごくお似合いなのにあ」
彼女が残念そうな顔をする。その言葉と表情に悪い気はしなかった。
その後彼女たちが私に「失礼します」と一言告げ、購買を後にした。
私も適当にお菓子を選び会計を済ませ、教室に戻ることにした。
:12/04/28 01:05
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#750 [ぎぶそん]
のんびりと教室までの廊下を歩いていると、廊下で集まって話をしている女子たちからの冷たい視線を強く感じた。
「B組の雨宮真希ってさ、文化祭以来調子乗ってるよね」
「ブスのくせに梅原春佳なんて演じちゃってさ、勘違いも甚だしいわよ」
目の前を通りすぎる私に聞こえるようにはっきりと、私への批難の言葉を彼女たちが言ってくる。
その心ない言葉に胸が痛む。
「ちょっとあなた、もう桜井君に近づかないでくれる?」
その中にいた一人が私の目の前に飛び出して来て、私の行く手を阻んた。
それは、文化祭でF組の演劇のヒロインを演じた七瀬玲央奈だった。
:12/04/28 01:26
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