WHITE★CANDY
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#778 [ぎぶそん]
映画を観るということは、どちらかの部屋でってことだよね!?
優平と二人きりで密室の部屋で過ごすなんて……。
嬉しいけど、絶対緊張する。
キスシーンの時はどうやり場を過ごそうか……。

「雨宮、もしかして今エッチなこと考えたと!?『桜井君と二人きりになれる、嬉しい』って」
私の心の声が聞こえたのか、横山が疑うような目で聞いてきた。
「へっ!?そんな訳ないでしょ!じゃあ、優平ん家で祥華さんと三人で観よう」
「ショウカさん?」
横山がきょとんとする。
「優平ん家にいる使用人だよ。凄く美人なの」
祥華さん、元気してるかな。また会いたいな。

「美人がいると!?それなら俺も行くたい。……って違う違う、俺はあくまで二人のサポート係やけん。桜井君、最近雨宮はF組の女子に僻まれとるらしいったい」
横山が、私が優平に隠していたかったことを漏らした。
それを聞いた優平が、少し穏やかさを失う。
「そうなの?俺からあいつらに言ってやろうか?」
「そんなことしなくていいよ」
私は激しく首を振った。
優平を味方にして彼女たちを責めたりしたら、自分が卑怯な感じがする。

⏰:12/05/06 09:18 📱:Android 🆔:VESz4iG2


#779 [ぎぶそん]
ファストフード店を出て、その後の予定もなく立ち止まったままでいると横山が口を開いた。
「二人共、もし良かったら俺ん家来ん?」

彼の唐突な提案に、私と優平は「どうする?」といった様子で顔を見合わせた。
「俺ん家、ここのすぐ近くにあるとよ。部屋でゲームでもしようや」
横山が半ば強引に誘ってくるので、私と優平はその言葉に甘えることにした。

その場所から歩いて横山の家を目指す。
歩いてる最中に、私は二人に「パリの祝日」のイベントに当選したことを話した。
「写真が出来たら見せて」と、優平が期待した様子で言ってきた。
横山には「馬子にも衣装になるたい」と嫌味っぽく言われた。

十分ほどモールの裏にある住宅街を歩くと、横山が住むという小さなアパートに到着した。
二階に上がり「二○三号室」の前で立ち止まると、彼がポケットから鍵を開ける。

ドアを開け、玄関で靴を脱ぎながら横山が大声で「母さん、友達連れてきたけん」と口にした。
廊下を突き当たって右にある襖が開くと、横山のお母さんらしき人が出てきた。
お母さんは私と優平に向かってお辞儀し、「息子と仲良くしてくれて有難うございます。遠慮せずゆっくりしていって下さい」と物腰低く挨拶してきた。
お母さんは大柄な横山と対照的で、とても小さかった。
私と優平も彼女に会釈をした。

⏰:12/05/07 23:00 📱:Android 🆔:/I6qBmag


#780 [ぎぶそん]
靴を脱ぎ、居間を横切って横山の部屋に入った。
部屋の壁にはいたるところに映画スターのポスターが貼られていて、棚にはどの段にも映画のDVDがぎっしりと入っていた。

「俺、映画がばり好きなんよ。半年で二百近くは観るけんね」
つまり年間でおよそ四百、私以上に映画を鑑賞する人と初めて出会ったと思った。

「これ、今日の映画に出てた人のフィギュア?」
優平が棚の上に置いてあるものを指差す。
ニタ・クルス演じるサラ・モナハンのフィギュアが飾られていた。
「サラ」というキャラクターは日本でも人気が高く、グッズも良く売れると聞いたことがある。
長くて黒い髪をいつもポニーテールにしていて、その姿が男性を魅了するだとか。

「そうで。俺、ばりサラが好きやけん。それ、ばり高かったけどお小遣い貯めて買ったたい」
私は横山の購買欲に共感出来ると思った。好きになったものは不思議とグッズを収集したくなってしまうからだ。
でも、優平にはこういう”オタク心“が理解出来るのだろうかと少し心配になった。
そんな彼は「へえ」とだけぼやき、きょとんとした顔でいた。

それから横山の映画に関するうんちくを聞いていると、「ジュースとお菓子をどうぞ」と言って横山のお母さんが部屋に入って来た。
三人分のオレンジジュースとクッキーがテーブルに置かれた。
私と優平はお母さんに礼を言い、さっそくジュースに口をつけた。

⏰:12/05/07 23:32 📱:Android 🆔:/I6qBmag


#781 [ぎぶそん]
テーブルの上にあった写真立てに目をやると、横山と一緒に恰幅のいい外国人が映っていた。
「この人、向こうの俳優か何か?」
私は横山に聞いてみた。
「ああ、それ俺のじいちゃん。アメリカ人。やけん俺、クォーターなんよ」
横山の言葉に、優平が声を出して驚く。
私は彼の体格が日本人離れしていることに納得を覚えた。
彼の特徴的な天然パーマも、彼と全く同じ髪型をしているお祖父さんゆずりなのかも知れない。

それから私たち三人は、日が暮れるまで話をしていた。
最初は口数が少なかった優平も横山に打ち解けてきたのか、彼にどんどん質問をするようになっていた。

夕方になると私の提案で、保おじさんが経営しているラーメン屋に三人で行くことになった。
前から優平を連れて行きたいと思ってたし、丁度いい機会だと思った。

⏰:12/05/10 21:35 📱:Android 🆔:QBswtVdI


#782 [ぎぶそん]
二十分ほど街を歩いてラーメン屋に着き、小さな赤い暖簾をくぐる。

「おう真希ちゃん!あれ、彼氏が二人も出来たんかい!?」
店内に入ると、保おじさんがお得意の冗談で早速声を掛けてきた。
「おっちゃん、違うったい。雨宮の彼氏はこっち」
横山が優平を指し示す。
私は大慌てで否定したけど、保おじさんは「そう恥ずかしがりなさんな」と言い、へらへらと笑っていた。

そのまま三人で横並びにカウンターに座り、それぞれ食べたいラーメンを注文する。
ラーメンが出来るのを待つ間、文化祭での出来事や今日三人で映画を観てきたことを保おじさんに話した。

十分ほどして、三人分のラーメンが運ばれてきた。
湯気が濃霧みたいに私の顔面を立ち込めてくる。私はまずスープを一口飲んだ。濃厚な味噌の味が喉に広がる。

「ばりうまかー!九州の田舎を思い出すたい」
とんこつラーメンを頼んだ横山が、私の右隣で勢いよく麺を啜る。
スープをごくごく飲む音もはっきりとこちらまで聞こえてきた。
「おっ、兄ちゃん。生まれは福岡なのかい?」
保おじさんが横山の言動に反応した。
横山が頷くと、そこから保おじさんが福岡でラーメンの修業をしていた時のことを話し始め、二人は完全に意気投合していた。

二人の会話が店内中に聞こえている中、左隣にいる優平は黙々と自分のラーメンを食べていた。
私も両隣にいる異性を意識してか、一部始終行儀よく食べた。

⏰:12/05/10 22:12 📱:Android 🆔:QBswtVdI


#783 [ぎぶそん]
二人より遅く私が食べ終えたところで、ラーメン屋を出た。
「じゃあ八時から観たいテレビもあるし、俺は今日はこの辺で帰るたい。お二人さん、後はごゆっくり」
横山が疾風の如く帰っていった。

優平も付き人の祥華さんに迎えに来てもらおうと携帯電話を取り出し、彼女に電話を掛けた。
祥華さんが車で来る間、そこで二人で立ち話をした。

「横山君って面白い人だよな。真希が仲良くなってなかったら、今日みたいに遊ぶこともなかったのかも」
「友達になれて良かったよね」
そこで会話が途切れ、彼が何か物言いたげな顔をする。
「後……俺のクラスの女子に何かされた時は迷わず言えよ?」
昼横山から聞いていたことが、気になっていたようだ。
私はF組の女子を思い出す憂鬱さを感じながらも、静かに首を縦に振った。

二十分後、古びた街並みに不似合いの高級感漂う赤いスポーツカーが現れた。
優平が私に「それじゃあ」と別れを告げながら、助手席ドアに手を伸ばす。
「そうだ、祥華さんにDVD一緒に観ようって誘っておいてね」
私は彼に念を押し、手を振った。

⏰:12/05/10 22:42 📱:Android 🆔:QBswtVdI


#784 [ぎぶそん]
そして、翌週の土曜日。「パリの祝日」のイベント当日となった。
父と二人朝六時には目が覚め、九時前にビルに到着した。

第三会議室に入り、他の参加者と共にプロデューサーの森部さんの指示を受ける。
森部さんは昨夜徹夜をしたのか目の下にはクマが出来ていて、今日も相変わらずシャツがよれていた。
今日もアイウエオ順で準備をすることになっていて、「雨宮」の私と「遠藤」の名字である三十代くらいの主婦の方が衣装に着替える為隣の部屋に移動させられた。
父と遠藤さんのお父さんが、私たちのまた隣の部屋に移動する。
「真希、また後でな」と、父が別れ際声を掛けてきた。

部屋に入ると、真新しいドレスが飾られてあるのが目に入った。
水色の生地で腰回りに大きな白いリボンがあるのが特徴的な、とても可愛らしいドレスだ。
それは「パリの祝日」で、エマ王女が最初パリの城にいるシーンで着ていたドレスと全く同じデザインだった。
私は再現率の高さに驚いた。

⏰:12/05/15 22:38 📱:Android 🆔:TQsedy8c


#785 [ぎぶそん]
先週寸法を計ってもらった女性の指示で服を脱ぎ、スタッフの女性の二人がかりでゆっくりとそのドレスを着させてもらう。
一人の女性に背中にあるファスナーを閉めてもらい、難なくドレスが着れた。
ドレスはオーダーメイドにあたるので、腕回りや腰回り、身体じゅうのすべてに心地よいフィット感を覚えた。

「次はメイクをしますので、こちらにどうぞ」
細身の女性スタッフに、部屋の左端にある鏡の前の椅子に座るよう誘導される。
ドレスに気を遣いながら椅子に座ると、鏡に華やかなドレスに不相応な素顔のままのみすぼらしい自分の顔が映る。
私は思わず自分の姿を直視するのを止めた。

「はーい、では、最初にファンデーションを塗っていきますねー」
”今時“な身なりをした若い女性が語尾を伸ばした喋りをしつつ、手の甲でファンデーションを延ばす。

⏰:12/05/15 23:02 📱:Android 🆔:TQsedy8c


#786 [ぎぶそん]
その若い女性スタッフが、私の顔に指先で優しくファンデーションを塗り広げてくる。
それからファンデーションだけでも三種類は着けていて、ファンデーションを塗るだけで十五分は費やしたように思える。
私はファンデーションをパタパタとただ粉をはたくだけの作業だとずっと思っていて、メイクの基盤だけに凄く重要な役割だと知り、女性としてその考えを改めることにした。

次に女性がペンシルで眉毛を丁寧に塗り、左右対称になるよう何度も確認しながら仕上げる。
いつもより濃い眉に可笑しさを感じながらも、顔がはっきり見えることに気がついた。
眉が終わるとビューラーで睫毛を上げ、マスカラを淡々と塗ってくる。
マスカラが乾くと、つけまつげとなるものを睫毛のやや上につけられた。
瞼の上に、違和感のある重みをひたすら感じる。
つけまつげをすることによってより目が大きく見えるのは間違いないが、それに伴う窮屈さに私は慣れそうもなくて、自発的にはつけないだろうなと思えた。

⏰:12/05/15 23:24 📱:Android 🆔:TQsedy8c


#787 [ぎぶそん]
つけまつげが瞼に馴染むと、今度は女性がアイシャドウを塗る作業にかかる。
ドレスの色に合った水色をベースとしたシャドウを、女性が薄い色から順番に黙々と塗っていく。
完成して女性に「どうですかあ?」と聞かれ、鏡に目をやる。
淡いグラデーションに光沢する瞼を見て自信が持てるようになったのか、次第に鏡の中の自分に笑みがこぼれる。

そして頬に軽くチークを塗り、口紅を丁寧に塗ってメイクが完成した。
こんなに大々的に化粧をしたのは生まれて初めてだったので、かなり大人びた気持ちになった。

「じゃあ次は、髪をセットしていきますね!」
メイクをしてもらった女性とは対照的な、今度ははきはきとした喋りの女性がやって来た。
女性が後ろで私の髪をいじり始めたが、どんな仕上がりになるのかも知らぬままただ彼女に身を委ねる。

⏰:12/05/16 23:45 📱:Android 🆔:UM2q/uW6


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