冷たい彼女〔続編〕

一件落着。

昨日もしたけど、今日もしたい。

そんな願いを目を閉じながら訴えると、凜は黙って叶えてくれた。

昨日みたいに甘い味はしないけど、幸せなキスだった。

そんな春が過ぎて、とうとう付き合って１年が経った。

プレゼントなんてものはなかったけど、デートして、笑って、手繋いで、キスをして…。

そんな柔らかな記念日だった。

梅雨が明けて夏が来る。

その夏と一緒にちょっとした事件も来てしまった。

「剛が浮気した！」

「…。」

「どうにかしてよ、心！」

「どうにかって言われても…。」

「何、私のこと見捨てる気？ひっどい男になっちまったな！」

「えー、何キャラ。」

正直、げんなり。

この派手派手している女子大生。

西山佐奈。

見た目からもわかる通り…香奈の姉ちゃん。

香奈と佐奈は仲が良くて、香奈の彼氏も佐奈の友達なんだってさ。

どうりで香奈が大人びてる訳だ。

いや、大人びてるっつーか…ただの狂暴な女だけど。

「佐奈じゃないと俺は生きてけねぇんだって泣き付いて来たのは、どこの誰？てめぇだっつーの、バカハゲ剛ぃ～！」

姉妹揃って狂暴。

同じ血だよ、間違いなく。

「佐奈ちゃんさ、お願いだからもうちょっと声抑えて。」

「抑えてるよ！」

「できればもう少し…」

「チッ。しけたラーメン屋だね。」

舌打ちして、うちのラーメン屋の悪口を零す佐奈。

勘弁してくださーい。

マスターに聞かれたら、俺たまったもんじゃないからね？

「つか、ラーメンまだ？」

「え、まだ食べるの？」

「当たり前でしょ！やけ食いせずにいられないっしょ？久しぶりに心に会いに来て、実の弟のように可愛がってあげていた心にも冷たくされて…食わずにいられないっつーの！」

あぁー、やめて。

怖いから、普通に。

３杯目のラーメンを佐奈の元に運ぶと、まるでお腹がペコペコだったかのように勢いよく食べ始めた。

信じらんない。

こんなガリガリな体なのにどこ入ってんだよ、１杯目と２杯目のラーメンは。