冷たい彼女〔続編〕
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#100 [ゆーちん]
香奈と一緒だよ。


根はすごくいい奴。


昔から一緒だから俺は知ってる、佐奈のいいところ。


佐奈の言う通り、小さい頃は弟のように可愛がっててもらったし、いくらキツい事言われても本音じゃないのはわかってる。

⏰:09/01/31 21:13 📱:SH901iC 🆔:27oj1HQU


#101 [ゆーちん]
冗談っつーか、ノリだよな、西山姉妹特有の。


キツい事言ってるけど、本当はナイーブな姉妹なんだよ。

⏰:09/01/31 21:13 📱:SH901iC 🆔:27oj1HQU


#102 [ゆーちん]
「もちろん。私はいいけど…佐奈ちゃん大丈夫かな?」

「佐奈が?」

「彼氏が浮気したんでしょ?そりゃ荒れるよねー。」

「剛さんって言ったかな、彼氏の名前。」

「剛さんとまだ付き合ってたんだ。」

「まだって…そんなに長いの?」

⏰:09/01/31 21:15 📱:SH901iC 🆔:27oj1HQU


#103 [ゆーちん]
凜によると、佐奈と剛さんはもうかれこれ5年の付き合い。


佐奈が高校1年の時から付き合っていて、喧嘩をするたび別れ、でもまた付き合って…。


それの繰り返しだったらしい。


そんな長年過ごして来た剛さんに浮気をされちゃ…そりゃ荒れるな。

⏰:09/01/31 21:16 📱:SH901iC 🆔:27oj1HQU


#104 [ゆーちん]
「まぁ、とりあえず一晩寝たら落ち着くだろうから、今晩よろしくね。」

「うん。」

「ごめんね。」

「何で謝るの。誰も悪くないよ。それよりフェリーの時間大丈夫?」

⏰:09/01/31 21:16 📱:SH901iC 🆔:27oj1HQU


#105 [ゆーちん]
時計を見ると、時間が迫って来ていた。


「あぁー、やばい。んじゃ帰るね。」

「気をつけなよ。」


凜に玄関まで見送ってもらい、俺は島に帰る為にフェリー乗り場まで急いだ。

⏰:09/01/31 21:17 📱:SH901iC 🆔:27oj1HQU


#106 [ゆーちん]
翌日。


いつものようにフェリーに乗りながら登校していた時だった。


凜からの着信。


「おはよー。」

「おはよ。朝から元気だね。」


相変わらず、朝はテンションの低い凜。


「大輝のがテンション高いけどね。それより佐奈は?」

⏰:09/02/01 15:14 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#107 [ゆーちん]
「さっき帰った。やっぱりお酒飲んでたみたいで心に会ったの覚えてないって。」


凜は小さく笑った。


いやいや、笑い事じゃないっすよ。


大変だったんだよ、俺。


なのに佐奈ちゃん、覚えてないって…酷すぎ。

⏰:09/02/01 15:14 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#108 [ゆーちん]
「信じられないんですが。」

「ドンマイだね。佐奈ちゃん、起きた瞬間に叫んでたよ。ここどこーって。」

「そりゃ覚えてないなら、自分のいる場所わかんねぇわな。」

「昨日の事話したら、ラーメンなんか食べてないって言ってたけど?」

⏰:09/02/01 15:15 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#109 [ゆーちん]
いやいや。


食べてないとは言わせないよ。


3杯も食べといて、記憶にないと?


「でも剛さんが浮気したって騒いでたのは覚えてたみたいで、剛に会うって言って慌てて帰ってったよ。」

「そっか。まぁ何にせよ、ありがとうね。」

「いいえ。」

⏰:09/02/01 15:15 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#110 [ゆーちん]
凜との電話が終わる頃、本島に着いた。


本島のフェリー乗り場から学校まで、竜と大輝と歩きながら昨日の事を話した。


竜も大輝も大笑い。


「さすが西山佐奈。」

「そういうマシンガン的なとこ、変わってないねー佐奈。」

⏰:09/02/01 15:31 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#111 [ゆーちん]
「俺のとこ来てラーメン3杯食べたの覚えてないのは、ある意味バカでしょ?」

「あぁー、確かに。」

「バカっつーか、佐奈はやる事が昔から極端なんだよな。」

「だよな。やけ食いにも限度があるっつーの。」

⏰:09/02/01 15:32 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#112 [ゆーちん]
竜と大輝で佐奈の事を話しながら盛り上がった。


佐奈がいない時は呼び捨てにしている俺らだけど、実際、本人がいたら絶対呼び捨てなんかしない。


つーか、できない。

⏰:09/02/01 15:32 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#113 [ゆーちん]
島の男はみんな佐奈にビビってたんだ、小さい時から。


昔から怖くって逆らうと絶対泣かされてた。


女王様って感じ。


だから逆らう気は更々ない。


そんな女王様の暴走っぷりも、なんだか愛着があるっつーか…憎めないんだよね。

⏰:09/02/01 15:33 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#114 [ゆーちん]
いつも通り学校を終え、放課後はバイトだった。


そして昨日と同じ時間、また佐奈が来た。


「おっすー、心、久しぶり!」

「いらっしゃいませ、佐奈ちゃん。久しぶりじゃないよ、昨日会ったんだから。」

⏰:09/02/01 15:34 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#115 [ゆーちん]
佐奈の元に水を運んだ。


「らしいね。でも私、覚えてないんだわ。」


いきなり水を飲み干して、お変わりを要求。


俺はコップに水を注いだ。

⏰:09/02/01 15:34 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#116 [ゆーちん]
「今日も酔ってんの?」

「バカ心。酔ってないよ。しょうゆラーメン1つ。」

「…はい。」

⏰:09/02/01 15:35 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#117 [ゆーちん]
厨房にオーダーを通してから、佐奈が座るカウンターの近くで無理矢理仕事を作った。


何か働いてないと、ただ喋ってるだけじゃマスターに叱られるからね。


「起きたら知らない部屋だからマジびびったわ。凜ちゃんの部屋行った事ないからさ。」

⏰:09/02/01 15:36 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#118 [ゆーちん]
「頑張って運んだんだよー、酔い潰れた佐奈ちゃんを。」

「いやー、悪かったね。今日は詫び入れるついでにラーメン食べに来たの。」

「…それより剛さんと仲直りした?」


その質問に、佐奈の態度は急変した。

⏰:09/02/01 15:36 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#119 [ゆーちん]
「…してないよ、あんな奴。今度こそもう本当に終わりだね。」


不機嫌になった佐奈。


「そっか。」


何も言えない俺。


「浮気される為に、5年も一緒にいた訳じゃないっつーの。」

⏰:09/02/01 16:14 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#120 [ゆーちん]
そう呟いた佐奈は俺が初めて見た、弱った佐奈だった。


こんな悲しんでいる佐奈は生まれて15年、一度たりとも見た事はなかったから…俺まで弱ってしまう。


「浮気疑惑は過去にもあったの。でも勘違いだった。だけど今回は…正真正銘の浮気だよ。腹立つって言うより、情けない。今まで気付かなかったんだもん、私。」

⏰:09/02/01 16:15 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#121 [ゆーちん]
昨日の佐奈と今日の佐奈。


同じ人なのに、全くの別人のように思えた。


出来上がったラーメンを佐奈に出すと、またまた態度は急変。


元気な顔してラーメンを食べ始めた。

⏰:09/02/01 16:17 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#122 [ゆーちん]
「超美味い!」

「そりゃよかった。」

「つか今日何時上がり?」

「あー、あと30分ぐらいかな。」

「じゃあ上がりまで待つ。フェリー乗り場まで送ってってやるよ。」

「マジ?ありがと。」

⏰:09/02/01 16:17 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#123 [ゆーちん]
ほらね、根は優しいんだ。


なんだかんだ言って、俺は佐奈が好きなんだよ。


同じ島の、本当の姉ちゃんみたいな存在として。

⏰:09/02/01 16:17 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#124 [ゆーちん]
2杯目を食べ終えたところで、俺のバイトが終わり、佐奈と一緒に店を出た。


昨日と合わせて計5杯。


なぜ太らないんだ、西山佐奈。


そんな大食い女の車に乗って、フェリー乗り場まで送ってもらった。

⏰:09/02/01 16:18 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#125 [ゆーちん]
「ありがとね、佐奈ちゃん。」

「おうよ。んじゃまたね。」


俺を降ろすと軽快に走り去った佐奈の車。


これから佐奈、どうなるんだろ。


彼氏と上手くいけばいいな…なんて、ちゃっかり願いながら俺は島へと帰る。

⏰:09/02/01 16:19 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#126 [ゆーちん]
それからしばらくは佐奈がラーメン屋に現れる事もなければ、連絡もなかった。


台風みたいな人だ。


凜にも連絡はなし。


どうしてんだろ、大丈夫だったかな。


…なーんて、心配なんかしなければよかったと今更後悔。

⏰:09/02/01 17:25 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#127 [ゆーちん]
佐奈台風が再び俺らの元に上陸したのは、夏休みを2日後に控えた、とても暑苦しい日だった。


「もっしー、心?」

「久しぶりだね、佐奈ちゃん。」


電話の向こうからは明るい佐奈の声。


「今から剛ぶっ殺しに行くけど、一緒に行くぅー?」

⏰:09/02/01 17:26 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#128 [ゆーちん]
おいおいおいおい…西山さんが『ぶっ殺す』とか言わないでよ。


洒落になんないから!


「ちょっ、ちょっと佐奈ちゃん、落ち着いて!」

「落ち着いてるよー。」


まぁ確かに、落ち着いてはいる。

⏰:09/02/01 17:28 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#129 [ゆーちん]
でも落ち着きすぎて恐い。


「とりあえず深呼吸して。」

「は?私に命令?」

「あぁー、ごめん。深呼吸して下さい。」

「何でしなきゃなんないのよ。もぉ…ハァ〜。」

⏰:09/02/01 17:28 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#130 [ゆーちん]
大きく息を吐く音がしたので、どうやら深呼吸はしてくれたみたい。


「今どこ?」

「心はどこなのよ。迎え行くから場所言って。」

⏰:09/02/01 17:29 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#131 [ゆーちん]
バイト後の幸せである、凜ちゃんのマンションだった俺。


素直に場所を言うべきか、それとも島にいると嘘をつくか。


「えーっと…」

「さっさと答えてよ!」

「…凜ちゃんのマンションです。」

⏰:09/02/01 17:55 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#132 [ゆーちん]
「10分後に外で待ってて。」


それだけ言うと、佐奈の電話は切れた。


何、正直に言ってんだよ俺。


嘘つけば、今から凜ちゃんが作ってくれたカレーライスが食えたのに…。

⏰:09/02/01 17:55 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#133 [ゆーちん]
「凜ちゃあ〜ん。」

「…何で半ベソかいてんの。」

「俺が殺人者になっても彼女でいてくれる?」

「…話が見えないよ。」

⏰:09/02/01 17:56 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#134 [ゆーちん]
シレッとする凜の態度。


余計に泣けてくるよ。


「佐奈ちゃんから電話があって、今から剛ぶっ殺すとか言ってんの。で、俺のこと迎えに来るってー。もうやだよ、あの人…。」

⏰:09/02/01 17:57 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#135 [ゆーちん]
げんなりしていると凜の表情が変わった。


「私も行く!」


マジでー。


もう、何か、やだ。


「凜ちゃんは来なくていいよ。」

⏰:09/02/01 17:58 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#136 [ゆーちん]
「何でよ。私だって佐奈ちゃん心配だもん。」

「僕、カレーライスが食べたい。」

「一晩寝かせたほうが美味しいの!ほら、出掛ける仕度して。」

⏰:09/02/01 17:58 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#137 [ゆーちん]
電気やガスや戸締まりのチェックを済ませ、凜と一緒にマンションの外で佐奈の迎えを待つ。


「あ、来た。」


やたらうるさい車が、俺たちの真横に停車した。


窓から佐奈ちゃんが覗き出す。

⏰:09/02/01 17:59 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#138 [ゆーちん]
「凜ちゃん!こないだの朝ぶり〜。あの日はごめんね。お世話になりました。」

「ううん、気にしないで。今から剛さんのとこに行くんでしょ?」

「うん。息の根止めてくるー。」

⏰:09/02/01 18:00 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#139 [ゆーちん]
笑顔で言うセリフじゃないでしょ、佐奈ちゃん。


「私も行っていい?心だけじゃ頼りないだろうし。」

「あっ、そうだね。じゃあ凜ちゃんも乗って。」

⏰:09/02/01 18:00 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#140 [ゆーちん]
そうだね、って…頼りないと思うなら最初から呼ばないでよ。


助手席に乗り込んだ凜。


後部座席に乗り込んだ俺。


何か、女って怖いよねー。


「浮気は誤解だって剛がずっと言って来てて、信じてやろうかなって思ってた矢先なの。知らない女が剛の部屋入ってくの見たって情報入ってさ。今から殴り込みよ。」

⏰:09/02/01 18:02 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#141 [ゆーちん]
素で怖い。


女の情報網の凄さはあなどってはいけないんだって竜たちにも教えてあげないと。


「前も聞いたけど本当に浮気かな?」


その凜の質問に佐奈は小さく呟きながら答えた。

⏰:09/02/01 18:02 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#142 [ゆーちん]
「…浮気じゃなきゃ女を家に連れ込まない。」


佐奈はアクセルを強く踏み、車は剛さんの家へと走って行った。


15分もすれば剛さんの住むアパートに到着した。


車を降りると、佐奈は力強い足で歩く。

⏰:09/02/01 18:35 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#143 [ゆーちん]
俺と凜は佐奈の後ろをついて歩く。


ドアに手をかけ、キーケースの中から鍵を出し、簡単にドアを開けた。


きっと合い鍵なんだろう。

⏰:09/02/01 18:36 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#144 [ゆーちん]
「…チッ。逃げられた。」


玄関を見て佐奈は呟いた。


靴は男性物のスニーカーしかない。


この部屋に女性はいないようだ。

⏰:09/02/01 18:36 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#145 [ゆーちん]
意を決し、鋭い目で部屋の中に入って行く佐奈。


俺達も後に続いた。


「剛!」


佐奈が扉を開けると、タンクトップにパンツ一枚姿の男がいた。


どうやら、この人が剛さんらしい。

⏰:09/02/01 18:37 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#146 [ゆーちん]
「えっ、佐奈…。」


剛さんは相当驚いているらしく、微動だにせず、佐奈を見上げていた。


固まって座っている剛さんの目の前にしゃがみ、タンクトップの首元を掴みながら声を荒げた。


「ヤリ終われば女は用無しか?」

⏰:09/02/01 18:39 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#147 [ゆーちん]
「えっ…何の事。」

「ふざけんな。女がこの部屋入って行くの目撃されてんだよ。」


剛さんの目が泳ぐ。



どうやら図星のようだ。



「それは…」

「何、来てないの?私の勘違い?だったら弁解しなよ。言い訳しなよ!」


女の人が、この部屋に来ていたのは間違いないんだろう。

⏰:09/02/01 18:40 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#148 [ゆーちん]
佐奈に怒鳴られた剛さんは何も言わず、ただ目の前にいる人だけを見ていた。


「その女も一緒に殴り殺してやろうかと思ったけど、どうやら帰った後みたいだし。今日はお前だけ先に殴り殺すわ。」

「ちょっと待って佐奈!勘違いなんだってば。俺は浮気なんかしてない。」

⏰:09/02/01 18:41 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#149 [ゆーちん]
眉を下げて、佐奈に訴える剛さん。


「この期に及んでまだ言い訳する気?その言葉は聞き飽きたよ。」

「今日ここに来たのは俺の兄貴の奥さんだよ。」

「はぁ?義理の姉と不倫かよ!」


佐奈は大きな声で剛さんに怒鳴った。

⏰:09/02/01 18:42 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#150 [ゆーちん]
「違うってば…浮気でも不倫でもない。」

「証拠は?」

「本人に直接聞けばいいよ。」

「聞いたとしても本当の事なんて言う訳ないじゃん。義理の弟とヤリましたって。」

「だからヤッてないってば…。隠れて会ってただけだよ。」

「何で隠れる必要があんのさ。訳わかんない!」

⏰:09/02/01 18:42 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


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