冷たい彼女〔続編〕
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#501 [ゆーちん]
「凜ちゃんはお父さん達に何て言ったの?」

「行きたくないって言ったよ。」

「だったら…」

「心。あの時とは違うんだよ。島から本島に行くのと、本島からアメリカに行くのは訳が違う。」

⏰:09/02/26 18:20 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#502 [ゆーちん]
凜は続けた。


「それに私まだ未成年だし。親のすねかじりながら生きてるんだから、お父さん達の言う事も聞かなきゃいけないんだよ。久しぶりにまた3人で暮らせるんだから、本当は喜ばなきゃいけないの…」

⏰:09/02/26 18:30 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#503 [ゆーちん]
まさにその通り。


俺は何も言えなかった。


「こんな事になるなら、最初から連れてって欲しかったよ。」

「何で?」

「心たちに会わずに済んだのに…離れたくないって、思わずに済んだのに…」

⏰:09/02/26 18:30 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#504 [ゆーちん]
凜の声が震えた。


「心、私どうしたらいいんだろ。」

「…凜ちゃん。」

「心や香奈たちと一緒にいたいよ。でも…お父さんとお母さんと一緒にいたい気もするの。」

「うん。」

「どうしよう。心と離れたくないよ。」

⏰:09/02/26 18:31 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#505 [ゆーちん]
そう言って抱き着いてきた凜は、泣いていた。


どうする事もできない。


「俺だって離れたくない。」


寂しい、行くな、離れたくない、って伝えても敵わない場合もあるんだ。

⏰:09/02/26 18:33 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#506 [ゆーちん]
「心も一緒に来てよ。」

「うん、行きたい。」

「香奈も澪も千夏も美穂も…みんな連れて行きたい。」

「佐奈ちゃんも、おじいちゃんおばあちゃんも、トメばあちゃんも、心の家族も…離れたくないよぉ。」

⏰:09/02/26 18:35 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#507 [ゆーちん]
弱った声でそう言った凜を抱きしめてあげる事しかできなくて、もらい泣きした。


「泣くな、バカ心。」

「凜ちゃんが泣くからじゃんかぁ。」

「誰のせいで泣いてると思ってんのよぉ。」

⏰:09/02/26 18:35 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#508 [ゆーちん]
誰のせいでもない。


これは神様が決めた運命なんだって思った。


泣きじゃくる俺と、綺麗な涙を流す凜。


結局、話は中途半端なまま凜のマンションを後にした。


夜空が腹立たしい程、明るかったのを今でも忘れられない。

⏰:09/02/26 18:37 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#509 [ゆーちん]
凜の事でへこんでる時に、さらに追い討ちをかけられる俺。


「江森、このままじゃマズイな。」


担任にマズイと叱られたので、俺はしばらくバイトを休み、テスト勉強に集中する事にした。


留年なんて洒落にならないからね。

⏰:09/02/26 20:15 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#510 [ゆーちん]
テスト勉強だと理由を作り、俺は凜のマンションに毎日通った。


バイトの時間まで、というタイムリミットのない夕暮れ時、俺は真面目に勉強を教わった。

⏰:09/02/26 20:19 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#511 [ゆーちん]
二人して泣いたあの日から、凜の両親の話には触れなかった。


まだ、どうなるか100%わかった事じゃないし、俺が口を開けばわがままばかり言ってしまうだろうから。

⏰:09/02/26 20:23 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#512 [ゆーちん]
行かないで、と言ってもまだわからない。


前の時と同じだけど、気持ちを伝える事で凜は安心してくれる。


だから正直に言った。


でも今回ばかりは…まだわからないんだ。


凜の未来にはアメリカが待っているのかもしれないんだ。

⏰:09/02/26 20:27 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#513 [ゆーちん]
テスト勉強と名付けた口実で、マンションに転がり込んだ4日目。


俺は寂しさや不安などが限界を迎え、凜を抱いた。


キスを求める俺に、勉強しろと怒った凜も、最後は受け入れてくれた。

⏰:09/02/26 20:28 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#514 [ゆーちん]
キスするたびに、不安になった。


白い肌に指が触れるたびに、寂しくなった。


凜の声が零れるたびに、時間が止まれって願った。


このまま一緒にいたいだけなのに、神様はずるすぎる。

⏰:09/02/26 20:36 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#515 [ゆーちん]
そんなテスト期間が過ぎ、結果発表を迎えた。


「んー、何とかギリギリセーフってとこかな。」


担任の言葉に安心したのもつかの間。


油断するなと念を押された。

⏰:09/02/26 20:37 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#516 [ゆーちん]
「凜ちゃんのおかげだよ。ありがと!」

「あと一歩のところで誘惑に負けないで頑張れば、油断するなって叱られなかったのに。」


まぁ、そうだよね。


でも、欲望に勝てず、凜を抱いた事を除けば結構頑張ったよな、俺。

⏰:09/02/26 20:37 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#517 [ゆーちん]
バイトを休ませてもらったおかげも大いに関わっている。


いつもならバイトをしている時間に、俺は凜に勉強を教えてもらってたんだから。


【しょうゆ】や【とんこつ】じゃなく、【x】や【y】を書いていた自分がちょっと歯痒かった。

⏰:09/02/26 20:42 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#518 [ゆーちん]
周りのみんなのおかげで頑張れた。


だから次も頑張らないと。


ご褒美のキスは自分からねだった。


「私さ、最近心に甘いような気がするの。」

「気のせいだよ。」

⏰:09/02/26 20:44 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#519 [ゆーちん]
そう言って長く甘いキスをした。


気のせいなんかじゃないんだ。


凜は、確実に俺に優しくなってきている。


時々、甘えすぎる凜を見て思う。


凜ってこんな子だっけ?って。


複雑だけど、こればっかりはやっぱ嬉しいもんだよ。

⏰:09/02/26 20:45 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#520 [ゆーちん]
自分の好きな人がココロを開いて、性格まで穏やかになっていくってのは。


甘いキスは二人の息が乱れるまで交わし合った。

⏰:09/02/26 20:46 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#521 [ゆーちん]
●○●○●○●

>>2

●○●○●○●

⏰:09/02/26 20:46 📱:SH901iC 🆔:RwRUDo6M


#522 [ゆーちん]
○●○●○●○

キョウダイ

○●○●○●○

⏰:09/02/27 23:13 📱:SH901iC 🆔:EBwlc3dk


#523 [ゆーちん]
『アメリカに行く事にする。』と言ったのは冬休みに入る1日前だった。


「ハタチになったら帰って来る。それまでも夏と冬には帰って来る。」

「うん。」

「だから…」

⏰:09/02/27 23:16 📱:SH901iC 🆔:EBwlc3dk


#524 [ゆーちん]
どうやら江森家は遠恋家系らしいんだ。


父ちゃん達も遠恋だったけど、じいちゃん達も遠恋だったらしい。


最近知ったんだけどね。


「アメリカと日本。年に2回の帰国。3年後にはまた日本に戻って来る…んだよね?」

「…そ。」

⏰:09/02/27 23:18 📱:SH901iC 🆔:EBwlc3dk


#525 [ゆーちん]
切なげな顔をする凜に言った。


「待ってるから。」


凜の顔はパッと明るくなった。


俺の一言なんかで。


「…いいの?」

「うん。夏と冬に帰って来てくれんなら俺大丈夫だから。」

「…本当に?」

⏰:09/02/27 23:20 📱:SH901iC 🆔:EBwlc3dk


#526 [ゆーちん]
「俺には凜ちゃんしかいないから。」


今も不思議に思う。


凜みたいな美人で素敵な女の子が俺を好いていてくれてるって事。


嬉しいし自惚れちゃうし幸せだし…だけど疑問も多くて。


俺が彼氏でいいの?とかね。

⏰:09/02/27 23:21 📱:SH901iC 🆔:EBwlc3dk


#527 [ゆーちん]
「よかった。嬉しい。別れようって言われるかもって覚悟してたんだ。」

「何の覚悟だよ。別れようなんて死んでも言わないし。」

「…ん。」


笑ってた凜。


だけど目元は潤んでた。

⏰:09/02/27 23:22 📱:SH901iC 🆔:EBwlc3dk


#528 [ゆーちん]
俺は見て見ぬフリをして、凜にキスした。


目を閉じれば、泣いたってわかんないから。


凜は今、泣いてる?


俺は今、泣いてるよ。


キスが終わって目を開けると、きっと凜にまた泣いてる、って笑われるんだろうな。

⏰:09/02/27 23:23 📱:SH901iC 🆔:EBwlc3dk


#529 [ゆーちん]
嬉しさとか寂しさとか不安、疑問、誓い、愛しさ…そんな全てが入り混ざったキスだった。


一生のさよならじゃないし、遠距離恋愛する自信だってある。


それなのに、なんでこんなに泣けて来るんだろう。

⏰:09/02/27 23:24 📱:SH901iC 🆔:EBwlc3dk


#530 [ゆーちん]
数日後。


「いらっしゃ…あ、剛さん。佐奈ちゃんも。」


バイト先に愛しの剛さんと腐れ縁の佐奈が来てくれた。


「心くん久しぶり〜。俺、塩ラーメンね。」

「はい、佐奈ちゃんは何にする?」

⏰:09/02/27 23:37 📱:SH901iC 🆔:EBwlc3dk


#531 [ゆーちん]
「心の本音。」


佐奈の声は俺の心臓に突き刺さった。


「へ?」

「あんたの本音を注文します。だから早く聞かせてくださーい。」


凜の事だろうか…


うん、きっとそうだ。

⏰:09/02/27 23:37 📱:SH901iC 🆔:EBwlc3dk


#532 [ゆーちん]
「バイト終わりに電話するよ。」

「…そ、わかった。じゃあ変わりに味噌ラーメンね、私。」

「…了解。」


上手く笑えない俺に、剛さんは優しく微笑んでくれた。

⏰:09/02/27 23:43 📱:SH901iC 🆔:EBwlc3dk


#533 [ゆーちん]
剛さんも知ってるんだ、凜の事。


俺の本音なんて聞かれても…別にない。


凜がアメリカで両親と暮らせる事はいい事なんだし、たまに会えるんだし、いずれ戻って来るんだし…


だから…

⏰:09/02/27 23:44 📱:SH901iC 🆔:EBwlc3dk


#534 [ゆーちん]
バイト終わりに電話すると言っときながら、結局佐奈から連絡をもらった。


「バイト終わった?」

「うん、さっきは食べ来てくれてありがとね。」

「あんた今から剛んち来て…って場所知らないか。迎え行くからラーメン屋で待ってて。」

⏰:09/02/27 23:46 📱:SH901iC 🆔:EBwlc3dk


#535 [ゆーちん]
と、いうわけでなぜか佐奈に迎えに来てもらい、剛さんの家に到着。


「お邪魔します。」

「あっ、おかえり〜。さっきはごちそうさま。」

「いえ、ありがとうございました。」


久しぶりの剛さんの家。

⏰:09/02/27 23:46 📱:SH901iC 🆔:EBwlc3dk


#536 [ゆーちん]
適当に座れと佐奈に指示され、腰を降ろさせてもらうと、さっそく佐奈から質問が振り掛けられた。


「あんた本当は嫌なんでしょ?」

「…凜ちゃんのこと?」

「他に何があるのっ。」

⏰:09/02/27 23:47 📱:SH901iC 🆔:EBwlc3dk


#537 [ゆーちん]
剛さんは黙って煙草を吸っていた。


「嫌じゃないよ。両親と暮らせるんだからイイ事だよ。」

「遠恋できんの?」

「できるよ。自信あるもん。メールや電話だってマメに取れば寂しくない。」

⏰:09/02/27 23:47 📱:SH901iC 🆔:EBwlc3dk


#538 [ゆーちん]
「他に好きな女できたらどうすんの?」

「それはありえないから。」

「凜ちゃんが向こうで違う男に惚れたら?」

「俺に魅力がなかったんだよ。でももし本当にそうなったら絶対諦めない。俺、凜ちゃんしかいないもん。」

⏰:09/02/27 23:48 📱:SH901iC 🆔:EBwlc3dk


#539 [ゆーちん]
照れも恥じらいもなかった。


ただ本音を答えるだけ。


なのになぜ苦しいのかな。


佐奈に質問され、答えるたびに泣きそうになる。


何が引っ掛かってんだろ。

⏰:09/02/27 23:48 📱:SH901iC 🆔:EBwlc3dk


#540 [ゆーちん]
「あのさ、心くん。」


ずっと黙ってた剛さんが口を開いた。


「余計なお世話かもしんないけどパーティーしない?凜ちゃんの送別会。場所なら俺が用意するから。」

⏰:09/02/28 12:14 📱:SH901iC 🆔:ZoVblPx.


#541 [ゆーちん]
「送別会?」

「うん。せっかくだから派手に騒いで笑顔で送り出してやった方がいいんじゃねぇ?」

「笑顔で…」

「俺が今、勝手に思い付いた案だから、迷惑なら遠慮せずに断ってくれていいよ。」

⏰:09/02/28 12:15 📱:SH901iC 🆔:ZoVblPx.


#542 [ゆーちん]
「いいじゃん。やろうよ。で、そのパーティーで心、誓え。」

「誓えって何を?」

「みんなの前で宣言すんだよ。凜ちゃん以外の女は興味ないって。凜ちゃん嬉しいだろうし、あんただってたぶんケジメ付けれんでしょ。」

⏰:09/02/28 12:18 📱:SH901iC 🆔:ZoVblPx.


#543 [ゆーちん]
それだ、って叫びたくなった。


ずっと引っ掛かってた何かが取れる気がした。


笑って凜を送り出してあげれそうな気がした。


「喜んでくれるかな?」


ウジウジしていた俺に、きっと佐奈はイライラしていたんだと思う。

⏰:09/02/28 12:19 📱:SH901iC 🆔:ZoVblPx.


#544 [ゆーちん]
そんな俺に一問一答してくれて、自分の気持ちと向き合わせてくれた。


納得したのかしてないのかはわかんないけど佐奈の表情は、さっきより晴れていた。


「当たり前じゃん。ね、やろうよ。」

⏰:09/02/28 12:21 📱:SH901iC 🆔:ZoVblPx.


#545 [ゆーちん]
そんなこんなでパーティー決定。


ちょっと落ち込みぎみだった気分も、少しはマシかも。


パーティーに向けての準備も楽しかったし、剛さんと会話するのも刺激的で気分も上がる。

⏰:09/02/28 12:21 📱:SH901iC 🆔:ZoVblPx.


#546 [ゆーちん]
日時は凜がアメリカに経つ2日前の夕方に決まり、地元の奴らに声をかけて準備も手伝ってもらった。


竜や大輝はもちろん、島の同級生は全員に声かけた。


凜の高校の友達は千夏や澪に頼んで声をかけてもらう。

⏰:09/02/28 12:23 📱:SH901iC 🆔:ZoVblPx.


#547 [ゆーちん]
当然、凜の耳に入らないわけがない。


私も準備するとかって騒いでたけど主役が準備しちゃ意味ないでしょ?


だから全力で拒否しておいた。


準備はしなくていい!って。


つまらなさそうに、でも嬉しそうに笑う凜が可愛かった。

⏰:09/02/28 12:24 📱:SH901iC 🆔:ZoVblPx.


#548 [ゆーちん]
準備期間中、いろんな奴に心配された。


でも本当に大丈夫だから。


引っ掛かってるモヤモヤも送別会で解決するから、ちゃんと。


誓うから、本気で。

⏰:09/02/28 12:24 📱:SH901iC 🆔:ZoVblPx.


#549 [ゆーちん]
バイトのシフトも減らそうと思ったけど、そればっかりはどうにもいかなかった。


何しろ寒い夜はラーメンが食べたくなるのが人間だからね。


店が忙しいので休んでる暇がなかったんだ。

⏰:09/02/28 12:27 📱:SH901iC 🆔:ZoVblPx.


#550 [ゆーちん]
俺がバイトの時は、佐奈が陣切って頑張ってくれた。


大輝は彼女のデートより準備を優先してくれた。


理解ある彼女で感謝しないと。

⏰:09/02/28 12:27 📱:SH901iC 🆔:ZoVblPx.


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