冷たい彼女〔続編〕

ぼんやりしながら厨房に戻るとマスターに心配された。

「江森、大丈夫？」

「あぁ～、はい。大丈夫っす～。ﾍﾍｯ。」

「熱でもあるか？」

結局、浮かれたままバイトを終えた俺。

「お先で～す。」

「おぅ、お疲れ。江森、体調悪いなら無理するなよ？」

「余裕っすよ～？」

「…そうかい？なら、いいけど。気をつけて帰れよ。」

「は～い、お疲れ様で～す。」

マスターに不思議がられた俺の足は、そのまま凜のマンションに向かった。

合い鍵を使い、部屋に入った。

「あ、やっぱり来た。」

「凜ちゃ～ん！」

いきなり抱き着いた俺に、凜はいつもみたく冷ややかな態度を取る。

「はいはい、わかったから。離してー。」

俺の腕の中で無抵抗の凜がいる。

「今日嬉しかったよ～。」

「何が？」

「俺オンリーなんだね。俺も凜ちゃんオンリーだから！」

「あぁ、別にそういう意味じゃ‥」

ないって言う前に俺は凜の言葉を遮った。

「照れない照れない。色んな奴に告白されたっつーのはムカつくけど、凜ちゃんの気持ちは俺だけなんだってわかって泣きそうなくらい嬉しかったよ。」

「あぁ、そりゃよかった。バイト中に泣かなかったのは成長した証拠だねー。」

「凜ちゃんがモテるのは百も承知なんだけどー、やっぱ告白とかされてるのは彼氏としては良い気しないね。」

「でしょ？だから言わなかったの。言った方がいいなら、これからはちゃんと報告するけど。」

二人でいる時ぐらいキャラ変えればいいのに…。

凜ちゃんはとことん凜ちゃんのまま。

「んー、どうだろ。てか凜ちゃん自信満々だね。まだ告白される気？」

「今日来てた友達も言ってたでしょ？私、モテるの。」

「そういう自信たっぷりなとこ好きー！」

「あー、はいはい。わかったからいい加減離して。」

やっと抵抗した凜ちゃんを俺の腕から逃がすと、ソファーの方に向かって行った。

だから慌てて俺も追う。

「凜ちゃん。」

「んー？」

「聞きたくないけど、隠し事は無しにしたいから、告白されたらちゃんと報告して？」

「あぁ、うん。わかった。」