漆黒の夜に君と。[BL]
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#538 [ちか]
「優里は辛いとか寂しいなんて一言も言った事ないけど、小さい頃、隅っこで泣いてるのをよく見たよ。
だから、僕は決めてるんだ。滅多に会えない分、会った時はどんな優里でも、誰よりも理解して守ってあげようって。
それが兄として、優里にしてやれる精一杯の事だと思うから…」
兄として精一杯してやれる事‥‥―――
恭弥はいつからそれを決めてたんだろう。
子供の頃からそんな事を思えるのは、きっと…――
:09/03/10 18:55 :P906i :iBV6D6kI
#539 [ちか]
「だからこんな血の気の多い場所、いつ発作が起こるか分からないのに連れていけないよ。
大切な‥‥弟だから。」
呟く声がやけにか弱くて。
「恭弥は優しいね。」
俺はそう言って手を握った。
:09/03/10 19:40 :P906i :iBV6D6kI
#540 [ちか]
「ありがとう。」
あぁ。
良かった‥――
やっと笑ってくれた。
俺もその笑顔に安心して、笑顔を溢した。
やがて静かに車は停まり、俺はそこから降りた。
:09/03/10 19:57 :P906i :iBV6D6kI
#541 [ちか]
「じゃ、また後で迎えに来るね。」
「うん、じゃあね。」
俺は車を視界から消えるまで見送ったあと、店のドアノブに手をかけた。
しかしなかなか回す事が出来ない。
いきなりなんの挨拶もお礼も無し辞めちゃって、半ば勢いでここまで来たけど、店長達に合わせる顔が…
:09/03/10 20:05 :P906i :iBV6D6kI
#542 [ちか]
「あれ、日下?!」
後ろから急に名前を呼ばれ、俺の身体はビクリと跳ねた。
振り返るとそこには、
「崎田さん…」
一緒に働いていた先輩が居た。
:09/03/10 20:08 :P906i :iBV6D6kI
#543 [ちか]
「久しぶりだなっ!!」
崎田さんは俺より7つ年上でよく面倒みてもらっていた。
なおさら合わせる顔が無い。
「急に辞めたから驚いたわ!!!」
「すいません…」
:09/03/10 20:11 :P906i :iBV6D6kI
#544 [ちか]
「ま、立ち話もなんだし、入れよ!」
「あ…っ」
カランコロンと小さく鈴の音が鳴って、崎田さんに背中を押された俺は店内に入った。
「いらっしゃ…――冥!!」
入って早々、目に飛び込んだのは店長の顔だった
:09/03/10 20:21 :P906i :iBV6D6kI
#545 [ちか]
「お、お久しぶりです…」
目もまともに見れない‥
だけど店長の声は優しかった。
「元気だったか?」
俯いていた顔をあげると、優しい笑顔。
「はい‥、あの…急に辞めちゃって、なんのお礼も言えなくて…すいませんでした!!!」
俺は深く頭を下げた
:09/03/10 20:33 :P906i :iBV6D6kI
#546 [ちか]
「頭あげろよ、お前らしくない。」
頭上で、あははっと笑い声をあげる店長。
「お前が急に居なくなったのにはほんとに驚いたけど、後から黒羽さんに話聞いたから。」
恭弥?
いつの間に…
:09/03/10 20:41 :P906i :iBV6D6kI
#547 [ちか]
「気にしすぎだっつーの!
頭あげろって。」
崎田さんはそう言って俺の頭を軽く叩いた。
俺ってつくづく幸せだよな…
こうやって温かく迎えてくれる人が居て…
:09/03/10 20:46 :P906i :iBV6D6kI
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