○最後の四季○
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#151 [ゆり]
「ゆーりー!!」

「隼人〜声でかいって」

隼人も同じ学校。
彼はまぁアホだったけど
「ライバルはゆり!!」
とか言って
下の成績から
中くらいまで上がった。
すごい奴だ。

「帰ろ♪」

「うん!」
 

⏰:06/09/03 13:20 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#152 [ゆり]
隼人のチャリの後ろに立って
夏の風を受ける。

「就職どーしよう…」

あたしがそう漏らすと
隼人は言った。

「ゆりならどこでも行けるって!頑張れよ!」

「…あたしもう頑張りたくないわ」

「何言っとんの!!
お前が頑張らんでどーすんだよ」
 

⏰:06/09/03 13:25 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#153 [ゆり]
どうもしないよ。


だって
なんも残らなかったよ。

家族も壊れたし
信頼も壊れたし

神様は
乗り越えられる奴にしか試練を与えないって
言うけど

あたし乗り越えられるかな。

こんな不安で
たまらない毎日。
 

⏰:06/09/03 13:32 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#154 [ゆり]
夜は泣いた。

訳なく
壁を叩いたりした。

リスカはしなかった。

けど確実に
あたしは何かに
押し潰されてた。
 

⏰:06/09/03 13:36 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#155 [ゆり]
学校の授業はどんどんハードになる。

実習も増えて
朝から夕方までが毎日。

あまりご飯も食べれなくなって


バイト中に倒れた。
 

⏰:06/09/03 13:39 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#156 [ゆり]
頭が真っ白で
体中の血液がなくなった様な
感覚。

一人でカウンタ-を回してたから
気付いてくれたのはお客さんだった。

でも声が聞こえない。
声も出ない。

真っ白な世界に

自分独りだった。
 

⏰:06/09/03 13:42 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#157 [ゆり]
あー
あたし死ぬのかな。

隼人をたくさん
傷付けた罰かな。

まぁいいか。

ちょうど疲れてたところだし。


でも最後に

やっぱ隼人に
会いたい。
 

⏰:06/09/03 13:45 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#158 [ゆり]
そんな事
考えてたら

だんだん周りの声が
聞こえてきた。

ああ
常連のおじさんだ。
大橋くんだ。
三上くんだ。
社員さんだ。

あれ
隼人がいないじゃん。

「はやと…」

ハッキリ覚えてる。
最初に出た言葉がこれだった。
 

⏰:06/09/03 13:48 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#159 [ゆり]
でもここはパチ屋。
呟いた声なんて聞こえない。

あたしはそれに
涙が出てきた。

隼人に声が届かない。

隼人がどっか行っちゃう。

いない。
いない。

隼人がいない。
 

⏰:06/09/03 13:50 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#160 [ゆり]
「高原さん!!」

「ゆりちゃん!?」

みんなの声だ。

でも隼人の声で呼んで欲しいよ。

「救急車!」

その言葉に
あたしは首を横に振った。

「大丈夫です…」

意識と共に
真っ白な世界から
日常に戻った。
 

⏰:06/09/03 13:54 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#161 [ゆり]
あたしはフラフラする身体を

両脇から抱えられて
事務所の奥の部屋に
寝かせてもらった。


「大丈夫?!」

「すいません、ちょっとクラッとしただけです…大丈夫だから戻って下さい☆」

笑ってそう言うと
心配そうに冷たいお茶を持ってきてくれた。
 

⏰:06/09/03 13:57 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#162 [ゆり]
「なんかあったらすぐインカム(皆が付けてるマイク。内線みたいなもの)で呼ぶんだよ?」

「はーい☆ありがとうございます」

パタン

ドアが閉まった。
あたしは天井を見上げた。
 

⏰:06/09/03 14:00 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#163 [ゆり]
白い天井。
そこに
あいつの顔が浮かぶ。

認めたくなかった。

だけどあたしは
完全に隼人に依存していたんだ。
 

⏰:06/09/03 14:21 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#164 [ゆり]
小さい頃から
幸せではあったけど

当たり前にあるはずの

両親の愛を
あたしは見た事がなかった。

過去の恋愛も
純愛ってのは
見た事がなかった。

そんな中で
作り上げられた

あたしという人格。
 

⏰:06/09/03 14:23 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#165 [ゆり]
サバサバしてて
男っぽい性格。

頑固で
負けず嫌いで
プライド高くて
妥協しない。

上手く人に甘えられない。
弱音を吐かない。
止まる事は許さない。

そんなあたしだから
そりゃ強いって
思われる。
 

⏰:06/09/03 14:26 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#166 [ゆり]
あたしも自分は強いって
思ってた。

強い自分が好きだった。

何もしないで
文句、弱音ばかり吐いてる奴は嫌いだったから。

でももう認めるしかない。

本当はめっちゃ
弱いって事。

隼人に支えられて
生きてるって事。
 

⏰:06/09/03 14:29 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#167 [ゆり]
自分で思ってた以上に
傷は深かった。


隼人の
ほんの些細な裏切りだけで。

たいした事じゃない。

でも理屈じゃない。

こんなに不安定になってしまった。

ねぇ隼人


どこにも行かないで。
 

⏰:06/09/03 14:33 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#168 [ゆり]
次から次へ
涙が落ちてゆく。

こんな気持ち
何ていうんだろう。


コンコンッ
ガチャ

ドアがいきなり開いた。


「あ〜ら〜…
泣いてるじゃーん」


三上くんだった。
 

⏰:06/09/03 14:37 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#169 [ゆり]
涙でぼんやりした視界の中
三上くんが隣に来たのがわかった。

「…大丈夫なりかー?」

瞬きもしないあたしの瞳。
涙は止まらない。

三上くんが指で拭った。

 

⏰:06/09/03 15:39 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#170 [ゆり]
「なんも言わなくていいけど…
ちょっと横にいさせてね」

少し笑って
そう言った。

切ない声だった。

全部わかってる様な
そんな声だった。
 

⏰:06/09/03 15:43 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#171 [ゆり]
静かな空間で
時間がゆっくり流れる。

「お茶飲む…?」

「…いい…」

三上くんは
なんとなく少しだけ
隼人に似てる。


「ゆりちゃん…」

隼人に呼ばれた様な
感じがした。
 

⏰:06/09/03 15:52 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#172 [ゆり]
頭を少し傾けて
天井から三上くんの方を見た。

「…そんなに頑張らなくていいよ。」



呼吸が乱れる。
涙が溢れる。

好きとか
愛してるとかより

ずっと欲しかった。
 

⏰:06/09/03 15:58 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#173 [ゆり]
なんにも言えなくて
ただ赤ちゃんみたいに
泣いてた。

恥ずかしいくらい泣いてた。

三上くんは
そんなあたしに驚きもしないで

「よしよし」って

手を握ってくれた。
 

⏰:06/09/03 16:01 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#174 [ゆり]
全てが
壊れた訳じゃない。

今までの自分が
無意味だった訳じゃない。


隼人に似た手は
そう言った。

倒れた体に
染み込む
熱いくらいの体温。


「彼氏に電話しなさーい♪」

悲し気に笑いながら
三上くんは休憩室に置いてあった
あたしの携帯を渡してくれた。

⏰:06/09/03 16:06 📱:V703SH 🆔:IasJY6xo


#175 [ゆり]
あたしはそれを泣きながら
無言で受け取った。


三上くんは
笑って

「いっぱい泣くのはいい事だ♪」って
言って

部屋を出て行った。

あたしは横向きに転がったまま
携帯を見つめた。
 

⏰:06/09/04 12:20 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#176 [ゆり]
もうすぐ21時か…

隼人…
何してるかなぁ。


ピッ…

プルルル…プルルル…

なかなか出ない。

留守電に繋がっちゃった。

もう一回。

ピッ…

プルルル…プルルル…

「…はぁ-い♪もしもおし?」
 

⏰:06/09/04 12:25 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#177 [ゆり]
…あれ?

携帯を耳から離して
画面を確認。

ちゃんと隼人の携帯に
かけてるよなぁ。

「もしもお-し?
誰え??」

後ろはガヤガヤしてる。
クラブって感じじゃないし
多分居酒屋?

なんで女の人が出てるの???

⏰:06/09/04 12:31 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#178 [ゆり]
電話の相手は
かなり酔っ払ってる様子。

ろれつが回ってない。

あたしは頭が回ってない。

「間違えましたー」

そう言って
電話を切った。


呼吸は落ち着いてる。

でも心臓は
確実に早くなってた。
 

⏰:06/09/04 12:34 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#179 [ゆり]
「ん〜…」

あたしはゆっくり体を起こして
お茶を飲んで

更衣室に向かった。

「帰ろ-…」

ふらふらする。
霞む視界のまま
着替えて鏡を見た。
 

⏰:06/09/04 12:37 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#180 [ゆり]
「ひど…笑」

髪を軽く整えて
軽くメイク直しをした。

事務所に行って
社員さんに帰る事を告げ様と思ったら
誰もいない。

仕方なく店内へ行った。
 

⏰:06/09/04 12:41 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#181 [ゆり]
爆音の中で
ぼけ-っと社員さんを捜す。

「頭に響くよ…」

そんなあたしを見つけてくれたのは三上くん。

「何しとんのッ寝てなきゃダメじゃん!!」

「帰る〜…」

「ん?何?!」
 

⏰:06/09/04 12:46 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#182 [ゆり]
音に声が消される。

三上くんは顔を近付けて聞いてくれた。

「ああ!帰るのね!わかった!インカムで社員さんに言っとくから」

「ありがとう…」

何から何まで
ほんますいません。

「ちょっと待ってて!!」

三上くんはインカムで話してた。
 

⏰:06/09/04 12:50 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#183 [ゆり]
あまり瞬きしない瞳
相変わらず働かない思考回路

あたしは向きを変えて
裏から帰ろうとした。

「ちょっと待ってて!!」

肩を叩いて三上くんは更衣室に走って行った。

「後ろ姿も
隼人に似てるなぁ…」
 

⏰:06/09/04 12:54 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#184 [ゆり]
あたしはただ
ぼーっと
してた。


数秒?数分で着替えた三上くんが息を切らしながら来た。

「送ってくからおいで」

心配そうな顔。
あたしは大丈夫だよ。

「でも仕事…」

「いーから♪社員さんにも送ってあげてって言われたし!」

⏰:06/09/04 13:00 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#185 [ゆり]
「…ありがとう」

「素直でよろしい!」

子供みたいに
笑って
裏のドアを開けてくれた。

ザアアアア-…ッ

「うわッまぢ!?」

目が覚める様な
雨の音。
 

⏰:06/09/04 13:03 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#186 [ゆり]
「す-ごいね…」

「ね〜!
俺車回してくるから
ゆりチャンここで待っててね」

「あ、はい」

傘も指さずに
駐車場に走って行った。

なんか皆優しいなぁ。
恵まれてるよ
あたしは。
 

⏰:06/09/04 13:07 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#187 [ゆり]
ザアア…

タイヤが水溜まりを蹴って
あたしの前に静かに止まった。

ガチヤ

「お邪魔します…」

「どーぞどーぞ♪」

うあ-やばい。

「三上くんって香水クロ-ム?」
 

⏰:06/09/04 13:15 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#188 [ゆり]
「お-!よくわかったね!最近ずっとクロ-ムだよ」

あたしは匂いに敏感。

音楽でも思い出したりするけど
匂いは特に思い出す。

クロ-ムは
隼人が付けてる香水。
 

⏰:06/09/04 13:18 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#189 [ゆり]
「ゆりチャン気分大丈夫?」

「…うん」

目を閉じたら
隼人と居るみたいで
ちょっと幸せ。
なんて
三上くんに失礼な事
考えてた。

「よかった♪
彼氏とは大丈夫だった?」

「…彼氏…今誰といるんだろ…」

「え??」
 

⏰:06/09/04 13:21 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#190 [ゆり]
「さっき電話したらね〜
女の人が出たんだー」

笑いながら言った。

なんでかわからないけど
笑うしかなかった。

こんなあたし
ますます惨めに
見えるかな。

「まじか…」

片手でハンドルを握り
前を向いたまま三上くんは苦い顔をした。
 

⏰:06/09/04 13:25 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#191 [ゆり]
バックから携帯を出してみたけど
隼人から連絡はない。

「なんか…こんな事ってほんとにあるんだね!
ドラマの中みたい」

笑うあたしに
何も言わず
悲しそうに微笑んだ。

「この夏は
踏んだり蹴ったりだよ」

溜め息が出る。

もうほんとに終わりなのかな

あたし達。

⏰:06/09/04 13:31 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#192 [我輩は匿名である]
ゆりさん血液型何ですかぁ

⏰:06/09/04 13:43 📱:D902iS 🆔:.DL1ha5E


#193 [ゆり]
匿名さん☆
ふつ-にA型です(笑)

⏰:06/09/04 14:15 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#194 [ゆり]
「よし
彼氏んとこ行こ-か」

「うん………
ん???」

思わず顔を上げた。

「いや、会わないと
ほんとの事わかんないっしょ」

「…」

全くその通りです。

「…でもどこいるか
わかんない」

「もっかい電話出来る?」
 

⏰:06/09/04 14:20 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#195 [ゆり]
さっきの事が蘇る。

今度またあの人が出たら
完全に終わりな気がした。

さっきのは間違いだって
思えなくなる。

でももう
涙は出ない。

やけくそで行こう。


携帯画面に隼人の名前を出して
手を伸ばした。
 

⏰:06/09/04 14:24 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#196 [ゆり]
「高原ゆり!行きまーすッ!!」

「いってらっしゃ〜いッ!!笑」

三上くんは
ビストロの中居くん並の声で
あたしの背中を押してくれた。

親指で
通話ボタンを押す。

ピッ…

…プルルル-…プルルル…
 

⏰:06/09/04 14:27 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#197 [ゆり]
これ以上
きっと傷付く事は
ない。

もう怖くも
なんともない。


相手が電話に出た。

「もしもお-し!こちらわかなあ♪」

チーン。

やられたぜ。
 

⏰:06/09/04 14:29 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#198 [ゆり]
なんかもう
怒りも悲しみもないし

ショックも通り越して

めっちゃ笑えてきた。

人間っておもしろい。

「アハハ!若菜チャン?あたしーゆりチャン!!隼人いるー??」

相手側がガヤガヤうるさいから
あたしも大声で答えた。
 

⏰:06/09/04 14:33 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#199 [ゆり]
「おいおい大丈夫かよ…笑」

とりあえず駅の方に走りながら
三上くんは苦笑いしてる。

でもあたしはめっちゃ楽しい。

頭おかしくなったかなぁ。

「隼人っちー!!ゆりちあんから電話よー!!」

「アハハ!!」
 

⏰:06/09/04 14:36 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


#200 [ゆり]
ベロベロに酔ってるのに
ちゃんと電話に出てくれる若菜ちゃんに
なんか笑えた。

「今どーなってんの!?」
横から小声で三上くんが聞く。

「今彼氏呼んでもらってる!笑
電話出たの元カノちゃんだった!」

「はぁー!??」
 

⏰:06/09/04 14:40 📱:V703SH 🆔:CRozBxLc


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