○最後の四季○
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#170 [ゆり]
「なんも言わなくていいけど…
ちょっと横にいさせてね」
少し笑って
そう言った。
切ない声だった。
全部わかってる様な
そんな声だった。
:06/09/03 15:43
:V703SH
:IasJY6xo
#171 [ゆり]
静かな空間で
時間がゆっくり流れる。
「お茶飲む…?」
「…いい…」
三上くんは
なんとなく少しだけ
隼人に似てる。
「ゆりちゃん…」
隼人に呼ばれた様な
感じがした。
:06/09/03 15:52
:V703SH
:IasJY6xo
#172 [ゆり]
頭を少し傾けて
天井から三上くんの方を見た。
「…そんなに頑張らなくていいよ。」
呼吸が乱れる。
涙が溢れる。
好きとか
愛してるとかより
ずっと欲しかった。
:06/09/03 15:58
:V703SH
:IasJY6xo
#173 [ゆり]
なんにも言えなくて
ただ赤ちゃんみたいに
泣いてた。
恥ずかしいくらい泣いてた。
三上くんは
そんなあたしに驚きもしないで
「よしよし」って
手を握ってくれた。
:06/09/03 16:01
:V703SH
:IasJY6xo
#174 [ゆり]
全てが
壊れた訳じゃない。
今までの自分が
無意味だった訳じゃない。
隼人に似た手は
そう言った。
倒れた体に
染み込む
熱いくらいの体温。
「彼氏に電話しなさーい♪」
悲し気に笑いながら
三上くんは休憩室に置いてあった
あたしの携帯を渡してくれた。
:06/09/03 16:06
:V703SH
:IasJY6xo
#175 [ゆり]
あたしはそれを泣きながら
無言で受け取った。
三上くんは
笑って
「いっぱい泣くのはいい事だ♪」って
言って
部屋を出て行った。
あたしは横向きに転がったまま
携帯を見つめた。
:06/09/04 12:20
:V703SH
:CRozBxLc
#176 [ゆり]
もうすぐ21時か…
隼人…
何してるかなぁ。
ピッ…
プルルル…プルルル…
なかなか出ない。
留守電に繋がっちゃった。
もう一回。
ピッ…
プルルル…プルルル…
「…はぁ-い♪もしもおし?」
:06/09/04 12:25
:V703SH
:CRozBxLc
#177 [ゆり]
…あれ?
携帯を耳から離して
画面を確認。
ちゃんと隼人の携帯に
かけてるよなぁ。
「もしもお-し?
誰え??」
後ろはガヤガヤしてる。
クラブって感じじゃないし
多分居酒屋?
なんで女の人が出てるの???
:06/09/04 12:31
:V703SH
:CRozBxLc
#178 [ゆり]
電話の相手は
かなり酔っ払ってる様子。
ろれつが回ってない。
あたしは頭が回ってない。
「間違えましたー」
そう言って
電話を切った。
呼吸は落ち着いてる。
でも心臓は
確実に早くなってた。
:06/09/04 12:34
:V703SH
:CRozBxLc
#179 [ゆり]
「ん〜…」
あたしはゆっくり体を起こして
お茶を飲んで
更衣室に向かった。
「帰ろ-…」
ふらふらする。
霞む視界のまま
着替えて鏡を見た。
:06/09/04 12:37
:V703SH
:CRozBxLc
#180 [ゆり]
「ひど…笑」
髪を軽く整えて
軽くメイク直しをした。
事務所に行って
社員さんに帰る事を告げ様と思ったら
誰もいない。
仕方なく店内へ行った。
:06/09/04 12:41
:V703SH
:CRozBxLc
#181 [ゆり]
爆音の中で
ぼけ-っと社員さんを捜す。
「頭に響くよ…」
そんなあたしを見つけてくれたのは三上くん。
「何しとんのッ寝てなきゃダメじゃん!!」
「帰る〜…」
「ん?何?!」
:06/09/04 12:46
:V703SH
:CRozBxLc
#182 [ゆり]
音に声が消される。
三上くんは顔を近付けて聞いてくれた。
「ああ!帰るのね!わかった!インカムで社員さんに言っとくから」
「ありがとう…」
何から何まで
ほんますいません。
「ちょっと待ってて!!」
三上くんはインカムで話してた。
:06/09/04 12:50
:V703SH
:CRozBxLc
#183 [ゆり]
あまり瞬きしない瞳
相変わらず働かない思考回路
あたしは向きを変えて
裏から帰ろうとした。
「ちょっと待ってて!!」
肩を叩いて三上くんは更衣室に走って行った。
「後ろ姿も
隼人に似てるなぁ…」
:06/09/04 12:54
:V703SH
:CRozBxLc
#184 [ゆり]
あたしはただ
ぼーっと
してた。
数秒?数分で着替えた三上くんが息を切らしながら来た。
「送ってくからおいで」
心配そうな顔。
あたしは大丈夫だよ。
「でも仕事…」
「いーから♪社員さんにも送ってあげてって言われたし!」
:06/09/04 13:00
:V703SH
:CRozBxLc
#185 [ゆり]
「…ありがとう」
「素直でよろしい!」
子供みたいに
笑って
裏のドアを開けてくれた。
ザアアアア-…ッ
「うわッまぢ!?」
目が覚める様な
雨の音。
:06/09/04 13:03
:V703SH
:CRozBxLc
#186 [ゆり]
「す-ごいね…」
「ね〜!
俺車回してくるから
ゆりチャンここで待っててね」
「あ、はい」
傘も指さずに
駐車場に走って行った。
なんか皆優しいなぁ。
恵まれてるよ
あたしは。
:06/09/04 13:07
:V703SH
:CRozBxLc
#187 [ゆり]
ザアア…
タイヤが水溜まりを蹴って
あたしの前に静かに止まった。
ガチヤ
「お邪魔します…」
「どーぞどーぞ♪」
うあ-やばい。
「三上くんって香水クロ-ム?」
:06/09/04 13:15
:V703SH
:CRozBxLc
#188 [ゆり]
「お-!よくわかったね!最近ずっとクロ-ムだよ」
あたしは匂いに敏感。
音楽でも思い出したりするけど
匂いは特に思い出す。
クロ-ムは
隼人が付けてる香水。
:06/09/04 13:18
:V703SH
:CRozBxLc
#189 [ゆり]
「ゆりチャン気分大丈夫?」
「…うん」
目を閉じたら
隼人と居るみたいで
ちょっと幸せ。
なんて
三上くんに失礼な事
考えてた。
「よかった♪
彼氏とは大丈夫だった?」
「…彼氏…今誰といるんだろ…」
「え??」
:06/09/04 13:21
:V703SH
:CRozBxLc
#190 [ゆり]
「さっき電話したらね〜
女の人が出たんだー」
笑いながら言った。
なんでかわからないけど
笑うしかなかった。
こんなあたし
ますます惨めに
見えるかな。
「まじか…」
片手でハンドルを握り
前を向いたまま三上くんは苦い顔をした。
:06/09/04 13:25
:V703SH
:CRozBxLc
#191 [ゆり]
バックから携帯を出してみたけど
隼人から連絡はない。
「なんか…こんな事ってほんとにあるんだね!
ドラマの中みたい」
笑うあたしに
何も言わず
悲しそうに微笑んだ。
「この夏は
踏んだり蹴ったりだよ」
溜め息が出る。
もうほんとに終わりなのかな
あたし達。
:06/09/04 13:31
:V703SH
:CRozBxLc
#192 [我輩は匿名である]
:06/09/04 13:43
:D902iS
:.DL1ha5E
#193 [ゆり]
匿名さん☆
ふつ-にA型です(笑)
:06/09/04 14:15
:V703SH
:CRozBxLc
#194 [ゆり]
「よし
彼氏んとこ行こ-か」
「うん………
ん???」
思わず顔を上げた。
「いや、会わないと
ほんとの事わかんないっしょ」
「…」
全くその通りです。
「…でもどこいるか
わかんない」
「もっかい電話出来る?」
:06/09/04 14:20
:V703SH
:CRozBxLc
#195 [ゆり]
さっきの事が蘇る。
今度またあの人が出たら
完全に終わりな気がした。
さっきのは間違いだって
思えなくなる。
でももう
涙は出ない。
やけくそで行こう。
携帯画面に隼人の名前を出して
手を伸ばした。
:06/09/04 14:24
:V703SH
:CRozBxLc
#196 [ゆり]
「高原ゆり!行きまーすッ!!」
「いってらっしゃ〜いッ!!笑」
三上くんは
ビストロの中居くん並の声で
あたしの背中を押してくれた。
親指で
通話ボタンを押す。
ピッ…
…プルルル-…プルルル…
:06/09/04 14:27
:V703SH
:CRozBxLc
#197 [ゆり]
これ以上
きっと傷付く事は
ない。
もう怖くも
なんともない。
相手が電話に出た。
「もしもお-し!こちらわかなあ♪」
チーン。
やられたぜ。
:06/09/04 14:29
:V703SH
:CRozBxLc
#198 [ゆり]
なんかもう
怒りも悲しみもないし
ショックも通り越して
めっちゃ笑えてきた。
人間っておもしろい。
「アハハ!若菜チャン?あたしーゆりチャン!!隼人いるー??」
相手側がガヤガヤうるさいから
あたしも大声で答えた。
:06/09/04 14:33
:V703SH
:CRozBxLc
#199 [ゆり]
「おいおい大丈夫かよ…笑」
とりあえず駅の方に走りながら
三上くんは苦笑いしてる。
でもあたしはめっちゃ楽しい。
頭おかしくなったかなぁ。
「隼人っちー!!ゆりちあんから電話よー!!」
「アハハ!!」
:06/09/04 14:36
:V703SH
:CRozBxLc
#200 [ゆり]
ベロベロに酔ってるのに
ちゃんと電話に出てくれる若菜ちゃんに
なんか笑えた。
「今どーなってんの!?」
横から小声で三上くんが聞く。
「今彼氏呼んでもらってる!笑
電話出たの元カノちゃんだった!」
「はぁー!??」
:06/09/04 14:40
:V703SH
:CRozBxLc
#201 [ゆり]
あたしはもう驚かないよーだ。
なんでも来いだし。
横で三上くんがパニくってる。
電話ではまだ雑音混じった居酒屋の音が聞こえる。
時間は22時。
しばらくして
聞き慣れた声がした。
:06/09/04 14:43
:V703SH
:CRozBxLc
#202 [ゆり]
「…もしもし…」
隼人だ。
暗い声だなぁ-
しかも小さいし
聞こえないよ。
「ちょっとー
あんた今どこにおるのー!?笑」
「ぇ…あ、地元の…焼鳥屋」
「ああ!あそこか-!
わかった!笑」
ピッ
電話を切った。
:06/09/04 14:48
:V703SH
:CRozBxLc
#203 [ゆり]
「だ、大丈夫??」
電話を切って
携帯を握り締めて
俯いた。
三上くんの声。
やっぱり隼人に似てないな。
隼人の方が
安心する。
なんで涙って
勝手に出てくるんだろ。
:06/09/04 14:51
:V703SH
:CRozBxLc
#204 [ゆり]
「あーッッ悔しい!!笑」
「ゆりチャン泣いてるじゃん…」
「泣いてないッすよ」
「小力〜?
まじ似てないよ」
「三上くんの中居くんは似てたよ(笑」
もう隼人の事には触れないで。
もう何も言わないで。
わかってるから。
:06/09/04 14:55
:V703SH
:CRozBxLc
#205 [かけぽん]
:06/09/04 19:07
:F902i
:tW95xv.Y
#206 [桜]
:06/09/04 21:39
:P902iS
:WZfbG4Hg
#207 [ゆり]
かけぽんチャン☆
いぇいぇッ全然気にしないで下さい(○′3`*○)もっとあんた最低-とか言われると思ったけど読んでくれてる人優しくて(*´`*)
応援ありがと-♪(^-^)ノ
桜サン☆
アンカ-ありがとうございます(*≧m≦*)☆
:06/09/05 01:08
:V703SH
:ZkqtQ5ZY
#208 [ゆり]
「どこにいるって…?」
あたしの様子を伺いながら
真剣な声で三上くんは聞いた。
隼人のいる焼鳥屋を教えた。
あたしと隼人は家が遠いから
車で40分以上かかる。
「遠いから悪い…
やっぱ今日はいいや!」
:06/09/05 01:31
:V703SH
:ZkqtQ5ZY
#209 [ゆり]
「いや俺は全然いいよ!
てか今日帰ったとしてもゆりチャン寝れないっしょ?」
「…そうっすね」
泣いたら鼻水出てきた。
「だろ?笑
だから俺にまかせるだっちゃ♪」
「…ありがとだっちゃ」
鼻をかんで
外を見る。
雨…やまないなぁ。
:06/09/05 01:43
:V703SH
:ZkqtQ5ZY
#210 [ゆり]
窓を叩く雨音。
こんな夜は
切なくて
夜中何度も
泣いたっけ。
寂しいのかも
よく解らなかった。
ただ
自分でも解るくらい
不安定で。
未来がとても
恐かったんだ。
:06/09/05 01:49
:V703SH
:ZkqtQ5ZY
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