もう二度と・・・

「俺の事覚えてないよね？」

「は？」

ない頭で色々考えてみた。

“援交相手だった？” “ナンパしてきた人？”

けどどう考えても分からない。

「ごめんなさい。分からないです」

「俺、アキヤと君の写真見て思い出したんだ。何年か前の冬、君、川に入らなかった？」

「入りました。何で知ってるの？」

「助けたのは俺だから」

ビックリした。
まさかと思った。

けどこれが現実。

ヨウヘイはあれから私が気になっていたらしい。
アキヤの彼女だと知り、またあんなバカな事をするんじゃないかと思い、お母さんに頼んだみたい。

驚く以外ない。
あの時、街頭にチラチラ見えてた横顔。

思い出した。
きちんとお礼を言えなかった・・・。

ヨウヘイは笑った。

「元気そうでよかった」

“何この人？無神経じゃない？”

そう思った時、アキヤのお母さんが口を開いた。

「ヨウヘイね、アキヤの彼女が林奈ちゃんだって分かって、また川に入ってしまうんじゃないかって心配してたんだよ。あまりにも強く言うから、私も心配で心配で・・・。でも、元気そうでよかったよ」

目にいっぱいの涙をためて言ってた。

「私よりもお母さんの方が何倍も辛いですから」

そう言うと、お母さんは聞いてきた。

「いつか聞きたいと思ってたんだ。林奈ちゃんといる時のアキヤは幸せだったのかな？」

「はい。いつも笑ってくれてました。どんな時も私を大事に考えてくれる。ほんとにほんとに、アキヤは優しい人です」

私の答えに、お母さんが声を上げて泣いた・・・。

辛かった。

平然を装っていたけど、自分の息子の死は言葉が出ないほど辛いんだと思う。

親より先に逝くってことは、不自然すぎる・・・。

改めて“命”の重さを知った。

あれから２年・・。

アキヤ、聞こえていますか？
この思いは届きましたか？

私は今まだ、介護士をしています。
自己満足かもしれない。
でも、誰かの役に立てるならって今でも強く思っています。

ヨウヘイとはいい友達です。

あなたが残したたくさんの思い。

今も左手の薬指に託してあります。

いつかあなた以上に、愛する人が現れたら、ちゃんと背中押してくれるのかな？

もうあなたの声は聞こえない・・・。

でもこれからも私はあなたに声を届けるから。