もう二度と・・・
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#101 [林奈]
「俺も散々悪い事して、今もこんなんだけどよぉ、自分の嫁や子どもに手上げた事はない。俺がお母さんに言ってやるから」
「いいよ。オジサンが言ったあともどうせ殴られるんだし」
「我慢することないんだからな」
ヤクザの人は冷たい人ばかりだと思ってた。見た目はむちゃくちゃ怖くて、こんな事言ってくれるなんて思わなかった。
:07/04/20 13:33 :W43CA :☆☆☆
#102 [林奈]
大人への偏見が少し変わったような気がした。
母が帰ってきて、畑中さんを見て、逃げるように部屋に帰った。
そんな母に畑中さんは怒鳴った。
:07/04/20 13:39 :W43CA :☆☆☆
#103 [林奈]
「お前、この子に何した?」
「何って?」
「この子のアザ、お前がやったんだろうが?」
「私は知らないよ」
その言葉で畑中さんがキレた。
:07/04/20 13:44 :W43CA :☆☆☆
#104 [林奈]
「この子がお母さんにやられたって言ったんだぞ」
畑中さんの言葉で、うちをものすごい顔でニラむ母。
畑中さんの帰ったあとの事を想像したら、ゾッとした。
畑中さんはまた怒り始める。
「お前なぁ自分の子どもに手を上げるなんて最低だぞ」
:07/04/21 21:42 :W43CA :☆☆☆
#105 [林奈]
「あんたに関係ないでしょ!今月の分は渡すから帰って」
ものすごい形相でニラみつけ、母は家の中に帰ってった。
それはまるで鬼のようだった。
案の定、母はうちを殴る。
「あんたさえいなければこんなみじめな思いしなくてよかったのに」
母は目にうっすらの涙をためた。
あの時の涙は本物だった。
:07/04/21 21:59 :W43CA :☆☆☆
#106 [林奈]
あの時、何度も思った。
“何でうちは死ななかったんだろう”
うちさえいなければ母をこんな苦しまなくて済むんだ。
胸が痛くて痛くて仕方なかった・・・。あの時の痛み以上のモノはない。
:07/04/21 22:07 :W43CA :☆☆☆
#107 [林奈]
その日の夜、父から言われた一言。
「お父さん達離婚するから」
驚かなかった。いつかそうなるだろうって思ってたから。
そして次の日、母は家を出た。
:07/04/23 00:59 :W43CA :☆☆☆
#108 [林奈]
憎むべき母が家を出ていく姿はどこか悲しそうだった。
ほんとは喜んでいいはずなのに、何か心に引っかかるモノを感じていたんだ。
“もう会えないのかな?”
去ってく母に何回も聞いてみたかった。
けどできなかった。
:07/04/23 01:04 :W43CA :☆☆☆
#109 [林奈]
何か分からないわだかまりを抱えて、うちはその日から毎日家の事をした。
料理、洗濯、それまで家事なんて無縁だった分、めちゃくちゃ苦労した。
けど何よりも辛かったのは、祖父に毎日繰り返し言われる事。
「お前は母親そっくりだな」
複雑だった・・・。
:07/04/23 01:17 :W43CA :☆☆☆
#110 [林奈]
目つきや言い方が似てるらしい・・・。
娘は母親に顔が似ると幸せにはなれないと聞いた。
“やっぱりそうなのかな?”
母親に似るうちもこの家を出た方がいいのかもしれない。
:07/04/23 01:20 :W43CA :☆☆☆
#111 [林奈]
うちは、家を出る事だけを考えて生活するようになってた。中学を卒業したら絶対に家を出るんだ。
かすかな夢だった。
そんな小さな小さな夢を叶えるために見つけたバイト。
―援助交際―
援助交際をしようと思ったきっかけ。
それは本当に些細な事だった。
:07/04/23 01:34 :W43CA :☆☆☆
#112 [林奈]
テレビで援助交際を取り上げている特番がやってた。
「一回3万かなぁ。それ以下の値段だったら絶対ヤらない」
元援交をしてた女の子のインタビュー。
うちは高額なお金に目がくらんだんだ。
本当にバカだよ。
あの頃、自分の価値が分からなかった。
:07/04/23 01:40 :W43CA :☆☆☆
#113 [林奈]
うちは夜な夜な父達に隠れて、外に出るようになった。
駅前から少し奥に入ったとこにある公衆電話。
そこに貼ってあるチラシ。いわゆるピンクチラシだ。
うちはそこに電話してみた。
:07/04/23 01:46 :W43CA :☆☆☆
#114 [林奈]
「もしもし。私19歳だけど・・」
「若いねぇ。オジサンは32歳だよ。今から会う?」
「うん」
緊張した。いっぱいっぱいで電話を切ったあと、少し恐怖感が出てきた。
:07/04/23 02:05 :W43CA :☆☆☆
#115 [ちー]
:07/04/23 02:22 :SH902iS :☆☆☆
#116 [林奈]
“山の中でいきなり降ろされたどうしよう”
“複数で来て襲われたらどうしよう”
色々考えて広がる不安と恐怖。
でも後戻りはしたくなかった。
ただお金のためだけにうちはそのオジサンと会った。
:07/04/23 02:39 :W43CA :☆☆☆
#117 [林奈]
ちーさんこんな夜中に読んでくれてありがとうI
:07/04/23 02:40 :W43CA :☆☆☆
#118 [林奈]
高級車で現れた。
顔は若くてなかなかのイケメン。
うちは車に乗り込み、適当にあいさつしてみた。
「名前なんて言うのかな?」
「アユミだよ」
とっさに出た嘘。
何となく亜由美の名前を使わせてもらった・・・。
「アユミちゃんはこういうの何回目?」
「初めてだよ」
:07/04/23 02:43 :W43CA :☆☆☆
#119 [林奈]
「ほんとに初めて?かなり落ち着いてるから見えないね?」
「そんな事ないよ!めちゃくちゃ緊張してるんだから」
うちの言葉に笑った。それを見たうちも笑ってみた。
その人は、ノブヒロと言うらしい。
:07/04/23 02:46 :W43CA :☆☆☆
#120 [林奈]
これがノブヒロとの最初の出会い。
ノブヒロは初めてと言ううちの頬に軽くキスをした。
10歳以上も年が離れてる人からのキスなのに、何か嫌な感じがしなかった。
きっとあの時からもう気付いてたのかもしれない・・。
“運命”だって事を・・。
:07/04/23 02:50 :W43CA :☆☆☆
#121 [林奈]
少しドライブをしてから向かったホテル。
初めて行くラブホに心臓バクバクになってた。
そんなうちに気付いて、ノブヒロはうちの手を握る。
大きくて男らしい手。うちはすごく暖かく感じた。
“このドキドキなんなんだろう”
言葉では表せれない感覚。
うちは何かを感じ取ってたんだと思う。
:07/04/23 04:15 :W43CA :☆☆☆
#122 [林奈]
部屋に入って事を済まし、ベットでノブヒロはうちをギュッと抱きしめた。
「どうしたの?」
うちの問いかけにノブヒロは逆に聞いてきた。
:07/04/23 16:03 :W43CA :☆☆☆
#123 [林奈]
「何でこんな事しようと思ったの?」
「お金がほしいからだよ」
「それだけ?」
「うん」
ノブヒロは不思議な顔をしてきた。
「他にも理由あるんじゃないの?」
うちはすぐに答えられなかった。
:07/04/24 09:07 :W43CA :☆☆☆
#124 [林奈]
けどどうせ一度しか会わない人だから、話してもいいやって思った。
家族の事、前田くんとの事、イジメ、レイプ、母からの暴力。うちは包み隠さず話した。
泣く事もしない、冷静なうちにノブヒロはまた強く抱きしめてきた。
:07/04/24 09:11 :W43CA :☆☆☆
#125 [林奈]
「辛かったなぁ。だからこんなアザがあるんだな。聞かないつもりだったけど気になって。ごめんな。話させてまって」
ノブヒロの目に涙がたまってた。
うちの話で自分以外の人が泣くなんて思いもよらなかった。
:07/04/24 09:14 :W43CA :☆☆☆
#126 [林奈]
「こんな事してる俺が言うのは説得力ないけど、もうこんな事するなよ。俺ももうやめる。だから約束しよう?同情じゃなくてアユミちゃん自身に惹かれた」
うちはノブヒロはおかしい人かと思った。だって10歳以上も離れてる子に、たった一回の出会いでそんな事を言うから。
:07/04/24 09:17 :W43CA :☆☆☆
#127 [なな]
読んでて
すごく惹き付けられる
ものがあります
読んでるので
頑張ってください
:07/04/24 09:59 :D902iS :☆☆☆
#128 [林奈]
ななさんありがとI
続き↓↓
ノブヒロはうちに携帯番号を書いた紙を渡してきた。
「もし何かあったら電話して」
「うちが悪用したりするかもしれないんだよ?」
「アユミちゃんはしないよ」
まっすぐなノブヒロの目に偽りはなかった・・・。
:07/04/24 12:02 :W43CA :☆☆☆
#129 [林奈]
うちはノブヒロに二つの嘘ついた。
名前が林奈だという事。
ほんとの年齢は14歳だという事。
今ここで話すべき事なのか迷った。
だからうちは最後まで隠し通したんだ。
:07/04/24 22:33 :W43CA :☆☆☆
#130 [林奈]
うちはノブヒロに二つの嘘をついた。
名前が林奈だという事。
ほんとの年齢は14歳だという事。
今ここで話すべき事なのか迷った。
だからうちは最後まで隠し通したんだ。
:07/04/24 22:34 :W43CA :☆☆☆
#131 [林奈]
↑↑連続しちゃいました。ごめんなさい
続き↓↓
帰り際、ノブヒロはうちに10万という大金をくれた。
“こんなに?”
驚くうちにノブヒロは言う。
「少ないけどもうこれでこんな事やめてね」
うちはただお礼だけを言った。
:07/04/24 22:37 :W43CA :☆☆☆
#132 [林奈]
“電話なんてするわけないよ”
うちは帰り際思ってた。
でも初対面のノブヒロに、何かを感じていた。けどそれが何かは、あの時は分からなかった。
:07/04/25 10:17 :W43CA :☆☆☆
#133 [林奈]
10万なんて大金をどうすればいいか分からず、家に帰りとりあえず部屋の中に隠した。
しばらくうちは援助交際をやめた。
そして新学期になり、イジメも何故か分からないけどなくなった。
ノブヒロに電話をすることなく時が過ぎて、あっという間に卒業。
:07/04/25 10:47 :W43CA :☆☆☆
#134 [林奈]
中学最後の年はほんとにあっという間だった。
家事をして祖父に嫌みを言われ、しかも友達もいない。
何かあったとしてもうちはそれに気づきもしないくらい、時間が早く過ぎた。
父に言われるがままに入った私立の高校。行く気はなかったんだ。
:07/04/25 10:51 :W43CA :☆☆☆
#135 [林奈]
義務教育から解放され、やっと自立ができる。それを夢見て過ごしてた分、高校なんてバカみたいに感じてた。
行きたくなくなったら辞めればいいや。
軽く考えてた。
:07/04/25 10:53 :W43CA :☆☆☆
#136 [林奈]
高校へ入学。
友達なんて作らない。ほんとにどうでもよくて、いつ辞めよう。そればっかり考えてた。
入学式。
うちは見た目も茶髪で春休みにピアスも空けてた。けど中身は全然子どもで、見た目ばかり気張ってたんだ。
そんなうちに近付いてきたのは、サオリとマサ。
二人は明らかに浮いてる。
男女で近付いてきた二人に警戒心丸出しだった。
:07/04/25 22:01 :W43CA :☆☆☆
#137 [林奈]
「アンタ名前は?」
「最初に自分の名前言うのが常識でしょ!」
自分の名前より先にうちの名前を聞いてきたサオリに腹が立った。
そんなうちの答えにサオリとマサは爆笑。
“は?”
そう思いうちは睨みつけた。
:07/04/26 09:39 :W43CA :☆☆☆
#138 [のり]
:07/04/26 15:24 :N702iD :☆☆☆
#139 [林奈]
のりさんありがとI今から少し書くねメ
続き↓↓
うちが睨んだのにも関わらず二人は、笑いながら言う。
「ごめんごめん。そうだよね。うちはサオリ。こっちはマサ。うちら同中でさぁ。あんたと友達になりたいなと思って」
満面の笑みが何かうちの心も明るくさせた。
「うちは林奈だよ」
「仲良くしよう」
マサも笑顔で言ってくれた。
:07/04/26 16:03 :W43CA :☆☆☆
#140 [林奈]
見た目とは違って、笑顔が似合う二人。
この二人となら長く続くような気がした。
何か二人の笑顔に吸い込まれそうになった・・・。
:07/04/26 16:14 :W43CA :☆☆☆
#141 [林奈]
友達なんて作らない。いらない。
けど表面上ならいいと思った。
どうせ辞めるから。
うちはサオリとマサと帰りにファミレスに行った。
:07/04/26 22:43 :W43CA :☆☆☆
#142 [林奈]
好きな歌手や俳優、好きなタイプ、たわいもない話で笑った。
だから不思議な感じがしてた。
それでもうちはこの二人を信じる事はないだろう。
あの時強くそう思った。
:07/04/26 22:55 :W43CA :☆☆☆
#143 [林奈]
次の日、学校に行くなり笑顔で駆け寄ってくる二人。
この二人とは毎日一緒に過ごすようになった。
けど、家族の事、過去の事は話すことはできない・・・。
きっとこの二人に話したら引くんだろうな。
心の境界線・・・
すごく寂しい感じがしてた頃でもあった。
:07/04/27 21:18 :W43CA :☆☆☆
#144 [林奈]
相変わらず家の雰囲気は悪かった。
兄はまだ引きこもりで、父や祖父達はもう諦めてた。
うちが高校入学してから一週間くらいしてから、母から父への手紙を見つけてしまった。
見てはいけないって思ったけど、興味半分で見た。
うちがもっともショックだった事実。
:07/04/27 21:42 :W43CA :☆☆☆
#145 [林奈]
母の手紙にはこう書かれてた。
うちを今まで一度も可愛いと思った事がない事、その理由がアイツの子どもだからだという事だった。
“アイツって誰?”
うちは父と母の子どもじゃないの?
どういう事なの?
頭が真っ白になった・・・。
:07/04/27 21:45 :W43CA :☆☆☆
#146 [林奈]
うちはまず祖父に聞いた。
けど知らないの一点張りだった。
帰ってきた父にも問い詰めた。
気まずそうな顔。
一瞬で分かった。
あの手紙が事実だという事が・・・。
:07/04/27 21:53 :W43CA :☆☆☆
#147 [林奈]
「座りなさい」
いつも以上に真面目な顔の父は、話を切り出した。
兄が生まれてすぐ、母は前の恋人と駆け落ち。そして何年かして戻って来た時に、うちが母のお腹の中にいたらしい。恋人は無職。そんな母を置いて出て行き、仕方ない母は家に戻りうちを産んだ。
そんな母を、祖父達は許すはずがない。けど父は、兄のためにと離婚はしず、母をまた家に入れる事にした。
それから15年。
うちがだんだん母みたいになると同時に、父も知らない恋人と言う男にも似てきた事に、戸惑いを隠せなかったそうだ。
:07/04/28 00:46 :W43CA :☆☆☆
#148 [林奈]
逃げた恋人を恨み、そしてその人と血を分けたうちの事も憎い母。
だからうちは可愛がってもらえなかったんだ。
この時今まで母や祖父達にされてきた事が全てつながった。
ただただショックだった・・・。
うちは望まれなかったんだね・・。
:07/04/28 00:50 :W43CA :☆☆☆
#149 [林奈]
うちは父に聞いた。
「ねぇ、じゃあお父さんもうちの事可愛く思わなかったんだよね?」
「そんなことない」
言葉とは逆に、しっかり可愛くないと顔に書いてある。
父のあの表情は今も目に焼き付いてしまってる・・・。
:07/04/28 11:17 :W43CA :☆☆☆
#150 [林奈]
この複雑な気持ち。うちはどこにぶつけたらいい?
気づいたらノブヒロの携帯番号が書かれてる紙を握りしめてた。
“もう忘れてるよね?一年も経つし”
うちはそう思いながら誰かに聞いてもらいたくて電話した。
:07/04/28 11:32 :W43CA :☆☆☆
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