もう二度と・・・
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#401 [林奈]
私と父の姿を見かねた祖父と兄が、私をご飯に誘ってくれた。
外での食事は久しぶり。たわいのない話から、父の話を祖父がしだした。
:07/05/12 15:33 :W43CA :☆☆☆
#402 [林奈]
「林奈が家を出た時な、お父さん泣いたんだぞ。自分のせいだからって。それに電話の前でお前にかけるかどうか迷ってた。お前の親父はそういうやつなんだよ。もう分かってるよな?お前にとってあいつがどれだけ大事な親かってこと」
私は知らない父の姿を知って、嬉しい反面申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
:07/05/12 15:41 :W43CA :☆☆☆
#403 [林奈]
「謝ったほうがいいんじゃないのか?」
兄もまた言う。
私は次の日、居間にいた父に久しぶりに声をかけた。
「お父さん、この前はごめん。あれ本心じゃないからね」
「分かってる。お父さんも悪かった」
久しぶりに笑顔が戻った。
:07/05/13 07:48 :W43CA :☆☆☆
#404 [林奈]
この時誓ったんだ。
“お父さんを傷付けることはしないよ”って・・・。
そして私はユウくんの借金が原因で別れた事を話した。
父は安心した顔して言った。
「そうか。お前が好きになったやつを悪くは言わない。けどきちんと見極める目も大事だからな」
父らしい精一杯の慰めなんだと思う。
:07/05/13 07:54 :W43CA :☆☆☆
#405 [我輩は匿名である]
林奈さん、この小説読みながら泣いてます(:_;)今までこの掲示板に書き込みした事とかないんですが、どうしても伝えたくて…これからも読み続けたいので、更新して下さいね(>_<)
応援してますo(><)o
:07/05/13 14:57 :SH901iC :☆☆☆
#406 [林奈]
我輩さん、ありがとう!これからも頑張るからね☆
:07/05/13 18:33 :W43CA :☆☆☆
#407 [林奈]
「わかった」
この一言で父は笑った。
もう一度とやりたいことを探したくて、サオリに電話した。
:07/05/13 20:36 :W43CA :☆☆☆
#408 [林奈]
ユウくんとのことは時々サオリに話してたから、サオリは私の話を真剣に聞いてくれた。
そして私は聞いた。
「サオリの仕事は大変?」
「大変だけど楽しいよ。スタッフもいい人ばっかだし。急にどうした?」
「ん、何かさ何年か前にサオリに言われたことを思い出してさ」
:07/05/13 20:40 :W43CA :☆☆☆
#409 [林奈]
「そっか。やる気になった?」
「う―ん。私にできるかな?」
「できるできないじゃなくて、やってみたいって思う気持ちが本気なら大丈夫じゃない?その代わり、中途半端な気持ちでできる仕事じゃないからね?」
サオリの言葉がガツンと来たんだ・・。
:07/05/13 20:43 :W43CA :☆☆☆
#410 [林奈]
今まで全て中途半端だった私。
今更何ができるのかなんて分からない。でも・・・。
今度こそ何か見つかると思ったんだ。
:07/05/13 20:46 :W43CA :☆☆☆
#411 [林奈]
もう二十歳になる。大人になるために、私はまた歩き出したんだ。
サオリの会社に誘われたけど、コネとかなんて嫌だから、違う会社に面接に行った。
:07/05/13 20:49 :W43CA :☆☆☆
#412 [林奈]
そこはわりと大きな施設。求人募集のチラシを見た。
全く経験も資格もない私を雇ってくれるか心配だった。
事務長は、私の年齢の若さを見て、採用してくれた。
:07/05/14 09:14 :W43CA :☆☆☆
#413 [林奈]
家に帰り、父達に報告。
大変そうな仕事を本当にできるのか心配したけど、最後は、「頑張れ」って言ってくれた。
私にもう迷いはない。やる以上、どんなことがあっても頑張ろうと思ったんだ。
:07/05/14 09:19 :W43CA :☆☆☆
#414 [林奈]
一週間後、私は初出勤した。
心臓バクバクの中、ミィーティング前のあいさつ。
「島田林奈です。全く経験がありませんが、頑張るのでお願いします」
拍手で迎えられた。スタッフさん達は笑顔だった。
ミィーティングの後、一人一人紹介され、私に専属で教えてくれるという佐々木さん。
:07/05/14 13:10 :W43CA :☆☆☆
#415 [林奈]
佐々木さんは、主任をしていて、小柄な人。緊張している私に笑顔で接してくれた。
私は安心した。
午前は、トイレ誘導、10時のコーヒータイム、シーツ交換、バイタルの記入。午後は、入浴する人のお風呂の準備に、ナースさんと処置がある方の情報交換、その他にもいっぱいあった・・・。
他のスタッフさんとまともに会話することなく終わった初日は、クタクタだったんだ。
:07/05/14 13:15 :W43CA :☆☆☆
#416 [林奈]
1日終わって、着替えてる時、佐々木さんは私に聞いてきてくれた。
「どうだった?」
「いっぱいやることあって大変ですね」
「最初は大変だよね。でも島田さん元気いいから大丈夫だと思うよ。ゆっくり覚えてけばいいから」
優しい言葉。
“佐々木さんの下でなら頑張れる”
そう思った。
:07/05/14 13:18 :W43CA :☆☆☆
#417 [林奈]
しばらく一週間は、日勤の仕事。私も段々余裕ができて、入所者の方達の名前や顔も覚えれた。
お昼になれば、スタッフさん達と会話するようにもなった。みんな優しい人ばっかで、緊張ばかりしていた私を、和ませてくれたんだ。
:07/05/14 13:39 :W43CA :☆☆☆
#418 [林奈]
色んな仕事を覚えるうちに、段々楽しくなって、仕事に行くのがほんとに嬉しくなっていった。
お年寄りと話すのも嫌じゃなくて、何か落ち着く。
そんな私を、佐々木さんはご飯に誘ってくれた。
:07/05/14 14:04 :W43CA :☆☆☆
#419 [林奈]
たわいもない話や佐々木さんの彼氏の話、私が介護職をしようと思った理由。
佐々木さんはお姉さんって感じで、職場でも親しまれてて、頼りにされてる。
すごく尊敬できる人だ。
:07/05/14 14:22 :W43CA :☆☆☆
#420 [林奈]
佐々木さんのおかげで、怖いイメージしかなかった人と打ち解けたり、ほんとにお世話になりっぱなしだった。
順調に半年が過ぎ、トモミやヒロコと会う時間が減ったけど、お互いの変化を電話やメールで報告しあってた・・。
:07/05/14 23:30 :W43CA :☆☆☆
#421 [林奈]
父も兄も祖父も、なんら変わりない生活。けど、私にとって大切な人との出会い・・。
運命なんて醜いモノだと思ってた。
もう恋なんてしない・・。
そう思ってた私に訪れた変化。
:07/05/14 23:34 :W43CA :☆☆☆
#422 [林奈]
佐々木さんにまたご飯に誘われた。今度は二人じゃなくて他にもいる。
佐々木さんの彼氏とその後輩らしい。
何の期待もしずに行った飲み会。
私はこの飲み会で、本当の“運命”を知る。
:07/05/15 01:46 :W43CA :☆☆☆
#423 [林奈]
佐々木さんは私を二人に紹介してくれた。佐々木さんの彼氏は、“コウジくん”佐々木さんの二つ上の、32歳。そしてコウジくんの後輩。“アキヤ”。
私のいっこ上の21歳。
コウジくんは真面目そうな人。アキヤは明らかに元ヤンって感じがした。
:07/05/15 01:51 :W43CA :☆☆☆
#424 [林奈]
コウジくんは私にも気を使いながら話かけてくれてた。なのにアキヤは、無愛想で、あいさつ以外、ほとんど会話なんてしなかった。
:07/05/15 01:54 :W43CA :☆☆☆
#425 [林奈]
二時間飲んで、私と佐々木さんは電車で帰った。
電車を降りて、佐々木さんと別れたあとすぐに、佐々木さんが叫びながら戻ってきたんだ。
「島田さん!ちょっといい?」
「え?」
私は不思議に思ったんだ。
:07/05/15 01:57 :W43CA :☆☆☆
#426 [林奈]
「あのね、アキヤくんが島田さんとまた会いたいって!」
「え?なんで?」
「気に入ったらしいよ」
「え?でもろくに話してないし」
「あの子いつもそうなんだ。メールとかでもいいからさ」
:07/05/15 02:00 :W43CA :☆☆☆
#427 [林奈]
迷った。
気軽な気持ちでいいのかもしれない。
けど、ユウくんとの事があってから、男の子とまともに付き合う自信がなかったんだ・・・。
:07/05/15 02:02 :W43CA :☆☆☆
#428 [林奈]
佐々木さんに押されて結局教えた。
次の日も次の日も、待ってもアキヤからのメールは来なかった。
“何あの人!”
私は腹が立ってた。
:07/05/15 02:08 :W43CA :☆☆☆
#429 [林奈]
そして一週間くらい経ってから来たメール。
《久しぶりです。島田さんにどんなメールを送るか迷ってたら、こんなにも経ってました。ごめんなさい》
不器用ながらも、絵文字も顔文字もないメール。
あまりの素っ気なさに笑えた。
:07/05/15 02:11 :W43CA :☆☆☆
#430 [林奈]
その日から、アキヤとのメールのやり取りが始まった。
些細な毎日の出来事や、お互いの趣味。久しぶりに味わう感覚だった・・。
そしてアキヤから誘われた映画。
ドキドキでアキヤの迎えを待ってた。
:07/05/15 02:16 :W43CA :☆☆☆
#431 [林奈]
車に乗り、私は笑顔であいさつしてるのに、無愛想のアキヤ。
私も自然に会話しにくかった。
お互い無言のまま映画館に着いた。
“何かつまんない”
映画を見る前からそんな事を思った私。
:07/05/16 09:54 :W43CA :☆☆☆
#432 [林奈]
当時流行ってた、感動する映画を見ようって決めた私達。
エスカレーターに乗ろうとした時、私が足を踏み外した。
その時、アキヤが私の体を支えてくれたんだ・・。
とっさの行動。
「大丈夫?ケガしてない?」
心配そうに聞いてきた。
:07/05/16 10:13 :W43CA :☆☆☆
#433 [林奈]
「大丈夫。ごめんね、ありがと」
「よかった」
笑顔になったアキヤに、私はドキッとした。
:07/05/16 10:15 :W43CA :☆☆☆
#434 [林奈]
さり気ない優しさ。
“男らしい人だな”
私はアキヤの隣で一人ドキドキしてしまった。
:07/05/16 10:17 :W43CA :☆☆☆
#435 [林奈]
映画を見て、私は号泣。
明かりが付いた時、アキヤも泣いてた。
目が合った時、私とアキヤは爆笑。
「マスカラ落ちてるよ」
「アキヤくんこそ鼻水垂れてるよ」
「男が泣くなんて恥ずかしいな?」
照れくさそうに笑うアキヤ。
「いいじゃん。我慢してるよりいいよ」
私はアキヤに言った。
:07/05/16 10:22 :W43CA :☆☆☆
#436 [林奈]
アキヤは車に乗ってから一言つぶやいた。
「大好きな人が死ぬって辛すぎるよな」
アキヤの何気ない一言で私は確信した。
“私この人の事きっと好きになる”
アキヤは見た目と違って、純粋な人だった。
:07/05/16 10:25 :W43CA :☆☆☆
#437 [林奈]
ご飯を食べてる時、最初とは違った雰囲気で話せた。
無愛想だと思ってた人が、笑顔になってる姿が、こんなに嬉しいもんなんだ。
私は、何か不思議な気持ちになってたんだ・・。
:07/05/16 10:28 :W43CA :☆☆☆
#438 [林奈]
家に送ってもらって、部屋に帰ってから、急に寂しくなる。
“なんだろう?”
私はこの時もうアキヤを、大切な人だと分かってたんだと思う。
:07/05/16 10:30 :W43CA :☆☆☆
#439 [林奈]
寂しい気持ちと一緒に蘇る記憶・・・。
前田くん、ジュン、ユウくん。
私の過去は汚い。
こんな簡単に好きになっていいの?
私は戸惑ってた。
:07/05/16 10:33 :W43CA :☆☆☆
#440 [林奈]
映画を見に行ってから、私とアキヤの仲は深まった。
メールだけじゃなくて、電話。
次第に夜中に会ったり。
私の不規則な勤務に、心配して栄養ドリンクを持ってきてくれたり・・・。
段々大きくなる気持ち。
:07/05/16 10:37 :W43CA :☆☆☆
#441 [林奈]
どうすればいいか分からなくなってた。
優しいアキヤに、私なんてふさわしくない。
私はそう思うようになってた。
:07/05/16 10:39 :W43CA :☆☆☆
#442 [林奈]
私は自分の過去を本気で憎んだ。
“罰が当たった”
私はそう思う事が多くなり、アキヤを避けるようになってしまった。
メールや電話もシカト。
最低だと思いながらも、アキヤにはもっと他の人がいる。
私はアキヤを、傷つけようとしてたんだ・・。
:07/05/16 10:42 :W43CA :☆☆☆
#443 [林奈]
そんな日を一週間続けてた時、アキヤが家に来た。
「林奈さんいますか?」
父に聞いてる声が聞こえた。
私はハッキリ伝えなきゃいけない。
そう思った。
:07/05/16 10:45 :W43CA :☆☆☆
#444 [林奈]
家の前で私とアキヤは話した。
「俺何かした?」
「何も。ただ忙しいから」
「それだけ?」
アキヤを目の前にして伝えたい言葉が出てこなかった。
:07/05/16 13:07 :W43CA :☆☆☆
#445 [林奈]
「気になる人できたし、アキヤのメールとかウザいんだ」
アキヤが下を向いた。
「わかった。もうメールも電話もしない。今までありがと」
怒りもしないで車に乗って帰った。
アキヤの悲しい顔。ウザいなんて言いたくなかった・・・。
:07/05/16 13:12 :W43CA :☆☆☆
#446 [林奈]
一瞬のうちに後悔した。
“何であんな事言ったんだろう”
アキヤを傷付けた。私最低じゃん。
溢れ出た涙・・・。
:07/05/16 13:15 :W43CA :☆☆☆
#447 [林奈]
その場で泣き崩れてた・・・。
“ごめん、ほんとにごめんね”
もっと他の言い方あったと思うのに。
心の中で何回謝っただろう・・。
:07/05/16 13:26 :W43CA :☆☆☆
#448 [林奈]
私はとっさに電話してた。
ノブヒロに叱ってもらいたくて・・。
「林奈?どうしたんだ?」
「私最低な事しちゃった」
「何があった?」
ノブヒロはすぐに来てくれたんだ。
:07/05/16 13:29 :W43CA :☆☆☆
#449 [林奈]
ノブヒロの家に行った。
アヤさんも私に駆け寄ってきた。
「何があった?」
私はアキヤの事を全部話した。
今の気持ちも、アキヤを傷付けてしまった後悔も・・。
:07/05/16 13:35 :W43CA :☆☆☆
#450 [林奈]
アヤさんは私を抱き締めてくれた。
そしてノブヒロは私に言った。
「林奈、お前間違ってるぞ。好きなら何でぶつからない?彼も林奈が好きなんじゃないか?」
「私なんてアキヤにふさわしくないよ」
「ふさわしいか何て、彼が決める事だ」
私は涙が止まらなかった。
:07/05/16 13:43 :W43CA :☆☆☆
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