俺がホストじゃなかったら
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#130 [ゆう]
それから季節は冬になった

俺は少し冬が嫌いになっていた

クリスマス
正月
俺の誕生日

クラブではイベントが沢山あった

一夜で動く金は桁が増えたりする

女に金を使わすのに少しトラウマを覚えていた

だからと言ってホストは辞めなかったし営業だってした

このままじゃホストとして使い物にならない

そう自分に言い聞かせた


俺は矛盾してたんだ

⏰:07/07/11 10:07 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#131 [ゆう]
月日は流れ、いくつかイベントが終わり、俺はいつの間にか21歳になっていた

店ではナンバー2か3あたりをウロウロしていた

きっとナンバー1を目指すこともできたけど、ナンバー1になるには何か抵抗があった

この頃は可もなく不可もない毎日だった

レナに失恋してからずっとこんな感じだった

トウヤには「女々しすぎる」と何度も言われた

それは俺も思うことだった

⏰:07/07/11 12:07 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#132 [ゆう]
「ユウ?」
「うわー!ユウくん!」

出勤前に店の通りを歩いていると後ろから誰かに名前を呼ばれた

振り向くと

「うわ!タツミさんとユキちゃん!」


タツミさんってのは俺が中学卒業してからすぐメンズバーで働いてた時にすごくお世話になった人

ユキちゃんは毎日飲みに来てたお客さん。

俺はこの二人が大好きだった

⏰:07/07/11 12:21 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#133 [ゆう]
「めちゃくちゃ久しぶりっすね!」

「ほんとだよ、ユウが全然店に顔見せに来ないからな」

何気ない会話がすごく懐かしくて不思議と癒された

「ユウくんかっこよくなったねー!今○○でホストしてるらしいじゃん、結構ユウくんの名前出てるよ」

ユキちゃんが俺をペタペタと触りながらうれしそうに言った

「お前、俺んとこで働きだした時ってまだ16歳だったもんな。立派になったなぁ」

そう言ったタツミさんが目を細めて俺を見た

⏰:07/07/12 00:28 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#134 [ゆう]
親がいない俺にとってこの二人は、メンズバーで働いてた当時、親みたいな存在だった

また店に顔を出すと約束して、その日は別れた

俺は煙草を買うためにコンビニに寄った

出勤前の知り合いのキャバ嬢やホストが沢山いた

適当に声をかけ合ってレジに並んだ

⏰:07/07/14 13:15 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#135 [ゆう]
「ナオキ‥?」

俺は、認識してから振り向くまでに少し時間がかかった

でも確かに俺のことだって分かった

この夜の街で俺の本当の名前を知ってるのはタツミさんとユキちゃん、あとはレナくらいしかいない

『ナオキ』

俺の本名だった

⏰:07/07/14 13:19 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#136 [ゆう]
「‥誰?」

俺を『ナオキ』と呼んだのは、どっかのクラブのママみたいなオバサンだった

けどやっぱりすぐ分かってしまう




俺の母親だった

⏰:07/07/14 13:22 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#137 [ゆう]
この女は、俺が中学生になると同時に家を出た

その前からあまり家にはいなかった

小学生だった俺には分からなかったけど、今なら分かる

この女はホストに狂っていた

息子と旦那を置いて、ホストを選んだ人だった

⏰:07/07/14 13:30 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#138 [ゆう]
俺は煙草を買ってコンビニを出た

俺を『ナオキ』と呼んだオバサンもついてきた


「どう?息子がホストになって」

俺はオバサンに聞いた

「‥少し前から知ってたわ‥会いたいと思ってたの」

「ふーん。こんな所にいるってことは、まだホストクラブとか通っちゃってんだ」

「‥お母さんね、悪いことしたと思ってる。ごめんね」

俺はイライラした

なんか、生理的に無理だった

⏰:07/07/14 13:37 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#139 [ゆう]
話すことなんかないと思った俺はオバサンを無視して歩きだした

オバサンは追いかけてくることはなかった

ただ後ろの方で

「お母さん今お金に困ってるの‥!」

そう言っていた

今更俺なんかには、こんな用事しかないらしい

少し悲しくなったけど振り向くこともせず、それからどこかで会うこともなかった

⏰:07/07/14 13:40 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


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