俺がホストじゃなかったら
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#121 [ゆう]
「その子やばいって」

そう言ったのはトウヤだった

「客とホストとして知り合った男に、真剣にそんなこと言うとか相当だね」

確かに俺もそう思った

けど今更ハルカを傷つけることは、俺が嫌だった


だけどその気持ちがハルカを傷つけた

俺はただのバカだった

⏰:07/07/11 01:17 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#122 [ゆう]
ハルカとは店以外で会うことになった

ハルカは俺の『彼女』になった

それから毎日のように「早くホスト辞めて」「いつ辞めるの?」「あたしが本当の彼女だってみんなに言って」とか言うようになった

俺は正直それに疲れてた

けど誤魔化すだけで何も言えなかったんだ

⏰:07/07/11 01:21 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#123 [ゆう]
ハルカの行動はだんだんエスカレートしていった


ハルカには、手首を切る癖があった

俺が仕事に行く度に

「腕を切った」

というメールや電話が来た

だから少しの間仕事を休んでみても、今度は「辞めてくれないから」という理由で手首を切った

店からは「ユウに休まれると困る」と言われ、まさに板挟みだった

俺は頭がおかしくなりそうだった

⏰:07/07/11 02:20 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#124 [ゆう]
『ユウなんか早くホスト辞めろ』『本カノはハルカって子だよ』『ユウ辞めろ』

ホスラブの俺のスレにはこんな書き込みがあるとトウヤが教えてくれた

直感でハルカだと分かった

本気で辞めることも考えた

けど‥どうしてもハルカのためにこの仕事を辞めることは考えられなかった

俺は最低な人間

それは分かってた

⏰:07/07/11 02:25 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#125 [ゆう]
ある日

俺はハルカを部屋に呼んだ

ハルカは嬉しそうにやって来た

そんなハルカに俺は別れを告げた

「俺にはこの仕事しかない。ハルカと出会えたのも俺がホストだから。この仕事辞めるとか今は考えられない。それをハルカが理解できないなら俺ら一緒にはいれないよ」

俺はそう言った

ハルカの表情が変わる

⏰:07/07/11 02:28 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#126 [ゆう]
「別れるなら死ぬから!!」

ハルカはそう叫ぶとキッチンまで走っていった

俺は嫌な予感がしてすぐ追いかけた

ハルカがキッチンにおいてある包丁に手をかけた

「ここで死んでやる!」

ハルカは包丁を自分にむける

「やめろよ」

俺が近寄った瞬間ハルカは思いっきり包丁を振り降ろした

⏰:07/07/11 02:32 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#127 [ゆう]
その時の状況は、よくわからなかった

ただ、ハルカは無傷

俺の左腕には包丁がざっくり深く入った


俺はハルカを止めようとして抱きついた

多分その時に刺さったんだと思う

俺はホッとしたからか、すごい疲れて息が切れてた

冷や汗もいっぱい出た

⏰:07/07/11 02:36 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#128 [ゆう]
ハルカは何が何だか分かんないみたいに泣いてた

俺はとりあえずハルカを落ち着かせて、タクシーを呼んでハルカを家に帰らせてから病院に行った

何針か縫ったけど別に平気だったし、腕で良かったって何回も思った

ハルカが無事で良かったって何回も思った

⏰:07/07/11 02:41 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#129 [ゆう]
それからハルカはすんなり別れてくれた

何度も何度も謝られたけど、別に俺はこれで良かったんだと思っていた

ハルカの腕を切らせたのは俺

そう思う気持ちがあったから、何も言えなかったし何も言うこともなかった

ハルカの真剣な気持ちを甘く見た俺が悪かった


それからもハルカはたまに店に来た

その時は前みたいに喋れる二人だった

⏰:07/07/11 02:55 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#130 [ゆう]
それから季節は冬になった

俺は少し冬が嫌いになっていた

クリスマス
正月
俺の誕生日

クラブではイベントが沢山あった

一夜で動く金は桁が増えたりする

女に金を使わすのに少しトラウマを覚えていた

だからと言ってホストは辞めなかったし営業だってした

このままじゃホストとして使い物にならない

そう自分に言い聞かせた


俺は矛盾してたんだ

⏰:07/07/11 10:07 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#131 [ゆう]
月日は流れ、いくつかイベントが終わり、俺はいつの間にか21歳になっていた

店ではナンバー2か3あたりをウロウロしていた

きっとナンバー1を目指すこともできたけど、ナンバー1になるには何か抵抗があった

この頃は可もなく不可もない毎日だった

レナに失恋してからずっとこんな感じだった

トウヤには「女々しすぎる」と何度も言われた

それは俺も思うことだった

⏰:07/07/11 12:07 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#132 [ゆう]
「ユウ?」
「うわー!ユウくん!」

出勤前に店の通りを歩いていると後ろから誰かに名前を呼ばれた

振り向くと

「うわ!タツミさんとユキちゃん!」


タツミさんってのは俺が中学卒業してからすぐメンズバーで働いてた時にすごくお世話になった人

ユキちゃんは毎日飲みに来てたお客さん。

俺はこの二人が大好きだった

⏰:07/07/11 12:21 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#133 [ゆう]
「めちゃくちゃ久しぶりっすね!」

「ほんとだよ、ユウが全然店に顔見せに来ないからな」

何気ない会話がすごく懐かしくて不思議と癒された

「ユウくんかっこよくなったねー!今○○でホストしてるらしいじゃん、結構ユウくんの名前出てるよ」

ユキちゃんが俺をペタペタと触りながらうれしそうに言った

「お前、俺んとこで働きだした時ってまだ16歳だったもんな。立派になったなぁ」

そう言ったタツミさんが目を細めて俺を見た

⏰:07/07/12 00:28 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#134 [ゆう]
親がいない俺にとってこの二人は、メンズバーで働いてた当時、親みたいな存在だった

また店に顔を出すと約束して、その日は別れた

俺は煙草を買うためにコンビニに寄った

出勤前の知り合いのキャバ嬢やホストが沢山いた

適当に声をかけ合ってレジに並んだ

⏰:07/07/14 13:15 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#135 [ゆう]
「ナオキ‥?」

俺は、認識してから振り向くまでに少し時間がかかった

でも確かに俺のことだって分かった

この夜の街で俺の本当の名前を知ってるのはタツミさんとユキちゃん、あとはレナくらいしかいない

『ナオキ』

俺の本名だった

⏰:07/07/14 13:19 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#136 [ゆう]
「‥誰?」

俺を『ナオキ』と呼んだのは、どっかのクラブのママみたいなオバサンだった

けどやっぱりすぐ分かってしまう




俺の母親だった

⏰:07/07/14 13:22 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#137 [ゆう]
この女は、俺が中学生になると同時に家を出た

その前からあまり家にはいなかった

小学生だった俺には分からなかったけど、今なら分かる

この女はホストに狂っていた

息子と旦那を置いて、ホストを選んだ人だった

⏰:07/07/14 13:30 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#138 [ゆう]
俺は煙草を買ってコンビニを出た

俺を『ナオキ』と呼んだオバサンもついてきた


「どう?息子がホストになって」

俺はオバサンに聞いた

「‥少し前から知ってたわ‥会いたいと思ってたの」

「ふーん。こんな所にいるってことは、まだホストクラブとか通っちゃってんだ」

「‥お母さんね、悪いことしたと思ってる。ごめんね」

俺はイライラした

なんか、生理的に無理だった

⏰:07/07/14 13:37 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#139 [ゆう]
話すことなんかないと思った俺はオバサンを無視して歩きだした

オバサンは追いかけてくることはなかった

ただ後ろの方で

「お母さん今お金に困ってるの‥!」

そう言っていた

今更俺なんかには、こんな用事しかないらしい

少し悲しくなったけど振り向くこともせず、それからどこかで会うこともなかった

⏰:07/07/14 13:40 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#140 [ゆう]
会いたくない人に会ってしまった俺は少し機嫌が悪かった

そんな夜、最も会いたくない女が店に来た


その女は俺を指名した

その女は一番奥のテーブルに座っていた



レナだった

⏰:07/07/14 18:37 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#141 [ゆう]
「‥ひさしぶり」

レナは気まずそうに、ちょこんと座っていた

あぁ、やっぱり俺、この女好きだなぁ‥

そう思った


「すげー久しぶりじゃん!元気だった?」

俺は普通に接した

このテーブルにつく前にトウヤに

「レナちゃんはユウを裏切ったんだから‥もうあんま深入りすんなよ」

と釘を差してきた

それは俺も分かってた

でも、レナに会ってしまうとそんなことどうでもよくなってしまう

⏰:07/07/14 20:21 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#142 [ゆう]
久しぶりに会うレナは少し変わっていた

雰囲気が柔らかくなって、落ち着いてた

「あたしね、キャバ辞めたの」

レナが突然切り出した

「そうなんだ‥何で?」

「貢がなきゃいけない相手もいなくなったし、やっぱshop店員好きだからさ」

「セイヤさんは?」

「あの人はもういいや」

俺は素直にうれしかった

⏰:07/07/15 01:38 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#143 [ゆう]
「あの夜の電話、聞いてたんだよね?」

レナが気まずそうに切り出した

俺は、うん。とだけ言った

「あの電話の相手ね、ユウのお客さんだったの」

「え?」

「あたしと本気で付き合ってるって噂が流れててさ‥ユウのお客さんが、レナがいるならもう指名するの辞めようかな〜って言ってたから、気がないフリしたの」

⏰:07/07/15 02:52 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#144 [ゆう]
俺はなにも言わなかった

レナは話しを続けた

「ほんとはあんなこと思ってなかったよ。ただ、ユウのお客さんをあたしのせいで減らすのが嫌だったから‥あたしがああやって、ユウに気がないようなこと言えば大丈夫かなって思ったの」


信じていいのか?

そんな疑問はすぐ消えた

好きな女を信じないで誰を信じる?もうレナの悪い噂とかもどうでもよかった。俺はレナを信じる

きっと女に騙される奴はみんなこう思うんだろうなと思った

⏰:07/07/15 02:56 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#145 [ゆう]
「帰って来る?」

俺はレナに聞いた

レナは驚いた顔で

「いいの?」

って言った

「嫌ならいわねーよ笑」


俺はレナが大好きだった

何故かは分かんないけど、本当に大好きだった

⏰:07/07/15 03:09 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#146 [ゆう]
この日からまたレナと俺は一緒に暮らし始めた

トウヤは、やれやれって顔しながらでも応援してくれた

レナが夜の世界から足を洗ったから、俺たちの生活は真逆だった

レナが起きる頃に俺は仕事終わるし、レナが仕事終わる頃に俺は仕事に行く時間だった

けど楽しい毎日だった

⏰:07/07/15 03:15 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#147 [ゆう]
「ユウ最近元気よな」

営業が終わって、家に帰ろうとしていた俺にトウヤが言った

「そう?俺そんな分かりやすい?」

「うん。ユウ恋愛とか下手そうだし」

アフターがない日とか通常営業で終わる日は、レナが起きる時間に帰ってレナを起こすのが日課になっていたから、早く帰りたかった

⏰:07/07/15 04:51 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#148 [ゆう]
「俺さ、ホスト辞めるわ」



トウヤは確かにそう言った

「そうなんだ、何で?」

俺は別になにも思わなかった

トウヤは「夜の世界って怖いわ。もうこんな汚いこと続けていく自信ない」と言った

俺は、辞めれるトウヤがすごいなと思った

⏰:07/07/15 04:57 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#149 [ゆう]
確かに夜の世界は怖い


会いたくなったら金がいる

好きになったら金がいる

好きな人の一番になりたいならもっともっと金がいる

俺も夜の世界は怖いと思う

だけど俺にはこの仕事しかない

だから、

辞めて別の道を選べたトウヤがすごく羨ましかった

⏰:07/07/15 05:01 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#150 [ゆう]
「また俺の家ふつーに遊びに来いよ」

俺がそう言うとトウヤは

「やだよ、使用済みゴムとか普通に落ちてそうだし笑」

って冗談っぽく言った

「あ、俺、レナとやったことないよ」

俺の言葉にトウヤは少しびっくりした後、笑ってこう言った

「あはは、マジで?すげぇ、ユウが?ユウは本当にレナちゃんが好きなんだなー。がんばれよ、応援してる」


まぁこれからトウヤに会うことはなかったけど。

⏰:07/07/15 15:13 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


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