俺がホストじゃなかったら

『直輝へ

みつけてくれてありがとう

直輝がこの手紙を見るのはいつ頃だろうね

あたしのこと最低だって思ってるよね？

いっぱい傷つけてごめんなさい

あたしはずっとセイヤが忘れられなかった

ずっと、セイヤが好きだった

直輝には本当に悪いことしたね

謝っても謝りきれない

子供、おろしてごめん

あたし、セイヤを忘れて直輝を好きになることも、直輝と結婚して直輝の子供育てることも、できないと思ったから逃げた
最低だよね

だけど最後に突き放したのは、あたしのこと嫌いになってほしかったから

直輝には別の子と幸せになってほしいと思った

あたしにずっと縛られるのはかわいそうだと思った

なんて今更言っても遅いよね

直輝と過ごした約３年間すごく楽しかったです

ごめんね

ありがとう

幸せになってね

レナより』

俺はしばらく、その紙をボーッと見つめていた

目頭が熱くなった

俺が愛した女の人は

俺を傷つけて

自分も傷ついて

そして俺の前から去って行った

目から溢れる涙を止めようとはしなかった

ただ、静かに

涙が流れるままに泣いた

だけど、後悔はなかった

俺はこの人を愛して良かったんだと、この時確かに思えた

愛してもらえなかったことは悲しいけど、

次は好きな人と幸せになって‥

そう思えた俺はここでやっと、レナに対する想いに区切りをつけた

もう残ってはいないけど

俺がレナを愛した日々は

レナからもらった幸せは

ここにあったはずだから

―

あれからまた時が流れ

俺は24歳になった

相変わらず俺はこの仕事を続けていて

あの子供部屋も残したまま

レナは今頃どこかで幸せにやってる、といいな

様々な恋愛を見て来た

裏切ったり

裏切られたり

傷つけたり

傷つけられたり

だけど俺は愛した人を

忘れられるまで想い続けたことに後悔はない

そうすれば最後には必ず

「幸せになってね」

って心から言えるんだ

『俺がホストじゃなかったら』

完結