うまく言えない

「ほんなら電話でええから聞いて」

「何？」

「曜、まだ紗奈ちゃんのこと好きやから」

「…どんだけ前の話しよん？」

「曜はあれからずっと紗奈ちゃんのこと好きやったんやって。もし紗奈ちゃんがまだ曜のことちょっとでも好きなら、曜に会いに来てやって…」

「なんで佳基さんがそんなこと言うん？」

「あいつ元気ないから…。聞いたらまだ紗奈ちゃんのこと好きやって言うから…。余計なお世話かもしらんけど…」

､

「もう曜のこと好きやないから」

､

「…そっか。そんならええんや。ごめんな。元気でやりや」

佳基さんはそう言うと電話を切った。

涙が溢れ出した。

ほんまはな、まだ曜のこと好き。

大好きで仕方ない。

…でもな、結局は
自分が素直になれんだけなんよ。

なんだかんだで結局逃げてばっかりで

向き合おうとしてないのはうちなんよ。

なんでも勝手にほいほい決めて

後悔して泣いて

自分が向き合ってないのに

幸せになりたいなんて

馬鹿やんな。

曜…うちは曜のこと

ほんまに大好きや

曜が大好きやから涙が溢れる。

もうどおしたらええんかわからんくて

ほんまに自分馬鹿や…って思って

涙が溢れる…。

曜、なんでこんなうちを

好きでおってくれるん？

曜ならうちより良い女と

絶対付き合えるやん。

なのになんでうちなん？

何でこんな面倒くさい女なん？

うちはどうするのが一番正しいん？

素直やなくてごめんな…

うちは1週間後、電車に乗った。

…行き先はＨ市。

､

駅から出ると懐かしい光景。

いつものように溜まっている人たち。

うちが向かう先は曜の家…

ではなくて、佳基さんのところ。

あの、曜が連れて行ってくれた溜まり場。