偽りの“ジン”．．．

(待って、そういえば…)

私は過去の記憶を振り返った。

私のバイト先は焼肉屋。

昔ジンにそういった話をしたことがある。

『街中の焼肉屋さんで、松阪牛取り扱ってるんだよ！』

こんな話をジンに話したことがある。

(ジン…覚えていたの？)

“街中にある”

“松阪牛”

この２つで私のバイト先を突き止めたの？？

(ここまでするの…ジン？バイト先まで来るなんて辞めてよ…)

バイト先に何か迷惑かけてしまったらどうしようと心配だった。

そしてジンを案内した後輩が戻ってきた。

「今のお客さん、白菜キムチだけしか注文しなかった～。ドリンクはお冷やです」

「あははは。そんなときもあるさ。はい、お冷や」

そう言って店長は私にお冷やを渡した。

(えっ？私が行くの～！！)

まかされたからには行くしかなく、私はジンのところにお冷やを持っていった。

『失礼します』

「桃…！」

「俺のために来てくれたんだ。ありがとう！」

(来たくて来たんじゃねーよ！それにバイト先まで来たのはあんただろ)

『こちらタレ皿になります。』

私はジンの言葉は無視してタレ皿を出した。

「タレ皿はいいよ。もう注文もしたから。」

『白菜キムチだけでいいんですか？』

「うん。桃に会いにきただけやから」

そう言ったジンはすごく笑顔だった。

(キモい…。しかも焼肉屋来てお肉食べないのかよ)

『じゃ、失礼します』

「あ、待って。これ」

そう言ってジンは私に封筒を渡してきた。

「ラブレター。笑」

『はい？』

「受けとってくれなきゃ暴れちゃうぞ」

(でた…脅迫。)