微妙な10センチ。〜最終〜
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#101 [あき]
ただただ、静かな時間が流れる。
電話口で、泣き出す私に、それを黙って受け止める彼。しばらく泣いて、本当に何だかスッキリ。
ありがとうと言う私に彼は最後に言った。
僕には、これしか言えないからと前置きを残し。

《…今日は、もう仕事しなくてよしっ!!
今から、すぐにシャワー浴びて、そのままぐっすり寝る。これは今からの業務だから守って下さい。

そして
また明日あなたを待ってますね。》

そう言って、電話口で笑った彼。
泣いていたのに。

つられて私も笑っていたー…

⏰:09/07/19 20:23 📱:W65T 🆔:uu9YQiaQ


#102 [あき]
その日から、西条さんはあの夜の事は何も聞かない。言わない。

ただ、淡々とハンドルを握り、時折くだらない冗談を言っては、それに答えるかのように、私もおどけてみせる。

そんな西条さんとの些細な事が全てを事を忘れさせてくれ。

そうして。
私の一週間は終わろうとしていた。
近付いてきた別れの日。

⏰:09/07/22 20:29 📱:W65T 🆔:mmCe/RwQ


#103 [あき]
一週間前、初めて会ったターミナル。
少し早めに出発した車は、予想を覆し、流れに流れ、出発の一時間前にターミナルへと滑り込んだ。

『じゃ…お疲れ様でした。いろいろと有難うございました〃』

ひょいとおろしてくれた大きな荷物を彼から受け取ると、私は笑顔を見せた。

『お疲れ様。こちらこそ。有難うございました。時間、余りましたね。』

『まっ。ギリギリになるよりかは、いいですよ〃最後に美味しいもの食べて時間潰しますっ。』

『そうっ。』

『うんっ。』

⏰:09/07/22 20:38 📱:W65T 🆔:mmCe/RwQ


#104 [あき]
『…じゃぁ』
『…じゃぁ』

そう言って私は背中を向けた。ガラガラとやりすぎたでか荷物が私の後ろをついてくる。
来る時よりも、重くなったのは、彼がくれたご当地土産が入っているから。

《こっちじゃ有名な食い物やから。うまいよ?》
《そうなんだ〃ありがとう。》

私は振り返らずに、真っ直ぐ歩いた。

ターミナルを抜けて、タクシーが行き交う中横断歩道を渡り、改札口へと抜けるエスカレーターに乗る。
後ろを見てはいけないような気がした…

⏰:09/07/22 20:45 📱:W65T 🆔:mmCe/RwQ


#105 [あき]
エスカレーターが私を上へと運ぶ。
右下になっていくターミナル。

エスカレーターが終わる。目の前には、忙しそうに行き交う人。
ここを降りれば。
私は、もうあれに紛れるんだ。

もう終わる…
終わっちゃう…
エスカレーター終点。

ちらりと右下。
ターミナルを見た。


彼が、車の前で、大きく手を振っていた。

⏰:09/07/22 20:50 📱:W65T 🆔:mmCe/RwQ


#106 [あき]
『ありがとう!!ばいばいっ!!』

思わずそう叫んだ。
笑顔で、一生懸命手を振った。
右下。小さくなった彼が何かを叫んでいる。
雑音に紛れて、彼の声は聞こえなかった。


私は、またバイバイと大きく手を振って、エスカレーターを降り、人混みの中に消えた。

そして
私の一週間が終わりを告げた…


はずだった。

⏰:09/07/22 20:56 📱:W65T 🆔:mmCe/RwQ


#107 [あき]
『…で?何してるんですかっ!?〃』

『いや…お互い様でしょ。』


私は人混みに紛れたものの。まだ改札を抜ける気分にもなれず。
周辺を少し見物した後、改札が見える駅ビルの広場で、ベンチに座った。
夜風と街のネオンがとても気持ち良くて。一人座っていた。

そんな時
さっき別れたはずの、西条さんの声がした。
振り返ると。

なぜか、彼が立っていた。

⏰:09/07/22 21:08 📱:W65T 🆔:mmCe/RwQ


#108 [あき]
『だって時間まだあるし。西条さんこそ、まだ帰ってなかったの?びっくりした〃』

『タバコ買いにね…〃そしたら、まだいるから。』

『そっか〃』

西条さんは、ついでに最後まで付き合いますよと言って、横に座った。
いいですか?とタバコをトントンと叩いた。
私が、微笑むと、どうもと言って、なおちゃんとは違う仕草でカチリと音がして。なおちゃんとは違う匂いの煙が私を包んだ。

⏰:09/07/22 21:17 📱:W65T 🆔:mmCe/RwQ


#109 [あき]
妙な沈黙。妙な間。
なんとなく、西条さんが言いたい事がわかる。
だけど私は、それを言われたからと言って、どう答えていいかわからなかった。出来る事なら、触れないで欲しい。このまま終わらせて欲しい。そう願った。
何気ない会話を繰り返し、そろそろ、改札を抜ける時間。

『じゃ…そろそろ行きますね。』

『…えぇ。…あの…あの日。何もしてあげられなくてごめんね。あの時、俺はそう言ってやるしかできなかった。』


彼は、私の予想とは違う言葉で、最後にそう言った。

⏰:09/07/22 21:25 📱:W65T 🆔:mmCe/RwQ


#110 [あき]
なんの事?なんてとぼけてみた私に、西条さんは、こらこらと笑った。
それでも、おどけてみせる私に、西条さんは、ケラケラと笑いながら、心配して損したと言った。
私は、すっくと立ち上がり、お尻の汚れをぱんぱんっと叩きながら言う。

『…偶然の西条さんの電話に救われた〃ありがとう。あとっ…酷い事言って、ごめんなさい。じゃぁ。これでっ!!気をつけて帰って下さいねっ。また来ますっ!!』

彼の返事を待たずに私は歩きだす。
その私の背中に向かって、今度はハッキリと聞こえる声で、こう言った。

⏰:09/07/22 21:35 📱:W65T 🆔:mmCe/RwQ


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